49 / 99
49.馬車で、職務質問ですか!?
しおりを挟む
「ステファン様は結婚式の日泥酔してしまわれたので執事とメイド長の3人で夜を過ごされましたの。翌朝には出征されましたし。その次にお会いしたのは先日ビビアン様や子供達を連れて帰られた日ですから」
「それなのに今まで手続きをされなかったのは何か理由が?」
子供達を別の馬車にしたのはこの話をするためだったのだと漸くわかりました。子供達がいない方が落ち着いて話せますもの。
「一応縁あって嫁いだわけですし、遠方にいらっしゃる理由は国や国民の為でしたから。お帰りになられないうちにいなくなるのは失礼に当たるのではないかと思いましたの」
「なんと⋯⋯中尉は年に2回の休暇にも帰っていなかったのですね」
「はい、お手紙は何度かお出ししたのですがお返事がなくて。こちらから行くのは危険だからと伯爵夫妻から禁じられておりましたのでお会いした事はないままですの。それを証明できる書類も揃っておりますから直ぐに手続きは終わると思います」
伯爵夫妻は結婚した後も卒業まで学園に通う許可も下さいました。友達との交流は禁止されましたが子爵家経由でやり取りは続いておりますし、何度か内緒でお茶をしたこともあります。
比較的自由にさせてもらえてるのだからと思っておりましたが、お父様との話の後では理不尽だったと思うようになりました。だからと言って突然恨んだりもしておりませんけれど⋯⋯。
リリスティア・ラングローズに戻るのが今まで以上に嬉しくなったといった感じですね。
「その後については何か考えておられるのですか?」
「仕事を見つけようと思っております。お兄様も家族を連れて領地から戻られるでしょうから、それまでに住む場所と仕事を決めなくてはと思っておりますの」
「ご一緒には住まれないのですか?」
「出戻りの小姑として居座るのは気が進みませんから、小さな家を借りて孤児院の職員か通いのメイドの仕事を見つけたいと思っております」
王宮の登用試験は内緒にしておきます。お人好⋯⋯情に熱いフォレスト公爵様ですからコネ⋯⋯『強権発動』などと仰られるかもしれませんから。
それに、フォレスト公爵様が子供達を引き取られるのであればメイド希望とお伝えしておけば『うちに来ませんか?』と言っていただけるかもしれませんし。
邪な思いがバレていない事を祈ります。
「昨日ラングローズ卿からお預かりした資料はこれから念の為裏付け調査を行いますが、そのまま裁判に使えそうだと言われました。非常に喜んでいて、優秀な調査員として雇いたいと言っていたので勝手に断っておきました。人使いが荒い奴ですし手が早いので」
フォレスト公爵様が口角をあげてニヤリと笑われましたが、わたくしに対するお仕事のスカウトを潰されたと言う事でしょうか? 優秀だなんていう社交辞令を鵜呑みにするわけではありませんけれど、調査員ができたら面白そうでしたので少し残念な気が致します。
「危険な仕事はして欲しくありませんので」
「⋯⋯本気で仰ったわけではないと存じておりますわ。いずれにせよわたくしには荷が重すぎるお話ですしね」
「放浪癖のある医師というのは、もしかして子供達の診断書を書いて下さったケニス先生ですか?」
「はい、今は子爵領と王都を行き来して仕事をしておられますの。とても優秀な方ですからとても助かっています」
「司教になられた方と言いケニス医師といいリリスティア様の周りには優秀な方が集まっておられるのですね。ターニャさんも」
「ターニャは侍女としても護衛としても最高ですし、女性としても最高ですから」
気になっておられるなら馬車に乗っている今がチャンスだと思いますよ。
「私の護衛と同じくらいの反応速度でしたから、女性騎士として公爵家に欲しいくらいでした」
「⋯⋯えーっと、女性騎士としてですか?」
「はい、リリスティア様の護衛を引き抜きたいとは思いませんが、うちにも女性騎士がいますから時々手合わせして気合を入れて欲しいと思っています。男性騎士との戦いでもかなりいける気がしています」
「はぁ、そう⋯⋯ええ、かなりいけると思います」
フォレスト公爵様の『欲しい』は騎士としてだったのでしょうか。まあ、どちらにしてもターニャは凄いですから。
拍子抜けとはこんな感じかも。
フォレスト公爵様とケニス先生のバトルを楽しみにしていたのでちょっと残念です。
恋愛小説によくあるようなライバル同士の戦いを見てみたかったとか言いません。
ターニャを挟んで並ぶフォレスト公爵様とケニス先生という最高のシチュエーションを絵画にしたいとかも言いませんけれど、グレッグ達を含めたら並いる宗教画などよりも崇高な絵になりそう⋯⋯神と女神と天使⋯⋯なんて贅沢なんでしょうか。
またまた妄想に耽っているうちに教会に着いたようですが⋯⋯大変です、トーマス司教様自らが教会の前でお待ちになっておられます!!
「それなのに今まで手続きをされなかったのは何か理由が?」
子供達を別の馬車にしたのはこの話をするためだったのだと漸くわかりました。子供達がいない方が落ち着いて話せますもの。
「一応縁あって嫁いだわけですし、遠方にいらっしゃる理由は国や国民の為でしたから。お帰りになられないうちにいなくなるのは失礼に当たるのではないかと思いましたの」
「なんと⋯⋯中尉は年に2回の休暇にも帰っていなかったのですね」
「はい、お手紙は何度かお出ししたのですがお返事がなくて。こちらから行くのは危険だからと伯爵夫妻から禁じられておりましたのでお会いした事はないままですの。それを証明できる書類も揃っておりますから直ぐに手続きは終わると思います」
伯爵夫妻は結婚した後も卒業まで学園に通う許可も下さいました。友達との交流は禁止されましたが子爵家経由でやり取りは続いておりますし、何度か内緒でお茶をしたこともあります。
比較的自由にさせてもらえてるのだからと思っておりましたが、お父様との話の後では理不尽だったと思うようになりました。だからと言って突然恨んだりもしておりませんけれど⋯⋯。
リリスティア・ラングローズに戻るのが今まで以上に嬉しくなったといった感じですね。
「その後については何か考えておられるのですか?」
「仕事を見つけようと思っております。お兄様も家族を連れて領地から戻られるでしょうから、それまでに住む場所と仕事を決めなくてはと思っておりますの」
「ご一緒には住まれないのですか?」
「出戻りの小姑として居座るのは気が進みませんから、小さな家を借りて孤児院の職員か通いのメイドの仕事を見つけたいと思っております」
王宮の登用試験は内緒にしておきます。お人好⋯⋯情に熱いフォレスト公爵様ですからコネ⋯⋯『強権発動』などと仰られるかもしれませんから。
それに、フォレスト公爵様が子供達を引き取られるのであればメイド希望とお伝えしておけば『うちに来ませんか?』と言っていただけるかもしれませんし。
邪な思いがバレていない事を祈ります。
「昨日ラングローズ卿からお預かりした資料はこれから念の為裏付け調査を行いますが、そのまま裁判に使えそうだと言われました。非常に喜んでいて、優秀な調査員として雇いたいと言っていたので勝手に断っておきました。人使いが荒い奴ですし手が早いので」
フォレスト公爵様が口角をあげてニヤリと笑われましたが、わたくしに対するお仕事のスカウトを潰されたと言う事でしょうか? 優秀だなんていう社交辞令を鵜呑みにするわけではありませんけれど、調査員ができたら面白そうでしたので少し残念な気が致します。
「危険な仕事はして欲しくありませんので」
「⋯⋯本気で仰ったわけではないと存じておりますわ。いずれにせよわたくしには荷が重すぎるお話ですしね」
「放浪癖のある医師というのは、もしかして子供達の診断書を書いて下さったケニス先生ですか?」
「はい、今は子爵領と王都を行き来して仕事をしておられますの。とても優秀な方ですからとても助かっています」
「司教になられた方と言いケニス医師といいリリスティア様の周りには優秀な方が集まっておられるのですね。ターニャさんも」
「ターニャは侍女としても護衛としても最高ですし、女性としても最高ですから」
気になっておられるなら馬車に乗っている今がチャンスだと思いますよ。
「私の護衛と同じくらいの反応速度でしたから、女性騎士として公爵家に欲しいくらいでした」
「⋯⋯えーっと、女性騎士としてですか?」
「はい、リリスティア様の護衛を引き抜きたいとは思いませんが、うちにも女性騎士がいますから時々手合わせして気合を入れて欲しいと思っています。男性騎士との戦いでもかなりいける気がしています」
「はぁ、そう⋯⋯ええ、かなりいけると思います」
フォレスト公爵様の『欲しい』は騎士としてだったのでしょうか。まあ、どちらにしてもターニャは凄いですから。
拍子抜けとはこんな感じかも。
フォレスト公爵様とケニス先生のバトルを楽しみにしていたのでちょっと残念です。
恋愛小説によくあるようなライバル同士の戦いを見てみたかったとか言いません。
ターニャを挟んで並ぶフォレスト公爵様とケニス先生という最高のシチュエーションを絵画にしたいとかも言いませんけれど、グレッグ達を含めたら並いる宗教画などよりも崇高な絵になりそう⋯⋯神と女神と天使⋯⋯なんて贅沢なんでしょうか。
またまた妄想に耽っているうちに教会に着いたようですが⋯⋯大変です、トーマス司教様自らが教会の前でお待ちになっておられます!!
23
お気に入りに追加
2,747
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる