【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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40.こちょこちょ&ほっぺすりすりの刑

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「じゃあ、グレッグの大好きなマドレーヌを焼いてもらわなくちゃね」

 おやつに負けたままは悔しいのでおやつで勝ちを⋯⋯と言う姑息な作戦です。

 拗ねたフリで耳をそば立てていたグレッグがパッと顔を上げてキラキラのオーラを全開にしている気配がしました。

 ふふっ、わたくしの作戦勝ちですわ。



 でもまだわたくしからは声をかけません。

 こういう時は相手が来るまで知らん顔をしておくべきなのだそうです。下手に声をかけると次もこの手が使えると思って味を占めますし、注意したり叱ったりすると心を閉じてしまうそうですから。

 本当は『おいで』と声をかけて抱っこしてあげたいのです。思いの外長時間のお出かけになってしまいましたし、早くグレッグが来てくれないとグレッグ欠乏症になりそうです。

 ふわふわの髪と少し赤ちゃんっぽい匂い、チェイスのようなぷくぷく程ではありませんがほっぺの柔らかさも格別です。

 一緒にいる間だけはたっぷり堪能したいのですが⋯⋯。今だけですよ? 一緒に暮らしている今だけですから。

 わたくしの心の声が聞こえているのか、ターニャは可哀想な子を見る目でわたくしの事を見てますが、ターニャはしきりにチェイスをチラ見してますから『おあいこ』です。



 ソファに座ってメイド達と他愛ない話をしながらお茶をいただきました。3人目に子供達専用メイドとなったケイトが得意なカモミールのハーブティーですね。緊張と話疲れが消えていくようです。

 痺れを切らしたグレッグがわたくしの足にしがみついてくるまで5分もかかりませんでした。

 待たせたグレッグにはこちょこちょ&ほっぺすりすりの刑を執行しました。

 ターニャ、お願いですからジト目はやめましょうね。
 


 子供達の夕食の間にターニャには子爵家へ連絡に行ってもらう予定です。フォレスト公爵がお父様に声をかけて下さるそうですが、わたくしからもお願いしておかなくてはいけませんもの。その時にターニャにわたくしの荷物も持って行ってもらえば一石二鳥です。

 もう直ぐ夕食が届くのでグレッグとチェイスはメイド達と一緒になっておもちゃの片付けをしています。わたくしはそれを横目で見ながらターニャと打ち合わせをする事にしました。

 因みにラングローズ子爵家では自分の使ったおもちゃは自分で片付けますしできる限り自分の事は自分でやると決まっています。

 貴族学園のお友達から聞いた話では貴族の子女は『従者・侍女・メイド』が全てやってくれるそうです。グレッグ達は今後どこでどのような暮らしをするかはっきり決まっているわけではありませんので、ラングローズ流で暮らしています。


「明日は朝から馬車を待機させましょう」

 過保護なターニャの発言にわたくしは首を横に振りました。

「わたくしの出発は午後にした方がいいと思うの。それに何時になるか分からないから辻馬車を拾うわ」

「ダメです。ここから辻馬車乗り場までどの位あるかご存知ですか!?」

「うーん、距離はわからないけど場所はわかるから大丈夫よ」

「お一人で長距離歩くとか辻馬車を拾うとか⋯⋯危険しかないです。ポヤポヤしたリリスティア様の事だからまた拾い物をしてくるかもですし」

「それは流石にないと思う⋯⋯多分だけど」

 お父様曰く『戦争でわが国がどのくらい疲弊してるかはリリスティアに聞けばいい』だそうです。

 軍事費の為に取り立てが厳しくなったり税率が上がると生活困難者が増え、その人達をわたくしが見つけて連れて帰ってくると言いたいそうです。

 子供だったわたくしにはそんな状況など分かりませんし、少し社会情勢が分かるようになってからもそのような崇高な考えでいたわけではありません。

 誰でも彼でも連れて帰るわけではありませんし⋯⋯『連れて帰らなきゃ!』と思う出会いがごくたまにあるだけです。

 彼等は子爵家や別の貴族や商会で働いています。

 以前お兄様から『ラングローズ人材派遣会社、社長リリスティア』と書かれたプレートをいただいた時は嬉しかったのですが『反省しろ』という意味だったようです。

 8歳の子供には意味なんて分かりませんもの。

 本当に『人材派遣業』をするのも良いかもです。今までのようにお父様に丸投げせずに最後まで責任を持ってお世話するべき年ですもの。

 家に帰ったらお父様に相談してみましょう。



「ここを出る時間を決めれば待ち惚けする事もないわね。子供達がこの屋敷を出て3時間後にしましょう。ポプラの公園の陰で待っててもらえば見つからないと思うわ」



 食事が届くのと入れ替わるようにターニャが部屋を出て行きました。

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