39 / 99
39.拗ねてます
しおりを挟む
「リリスティア様は子供達と一緒かその前のどちらかに伯爵家を出るのは可能ですか?」
「後からであれば⋯⋯昔から影が薄いのが自慢ですからマーベル一家が慌てている間なら裏口から出られると思います。
それよりも、子供達をお連れいただく際ターニャを同行させていただけませんでしょうか。知らない大人達だけだとグレッグがパニックになってしまう可能性がありますがターニャがいれば宥める事ができます。
チェイスもターニャに懐いていますから」
「それではリリスティア様が敵地で一人になってしまう」
「使用人達がおりますから大丈夫です。伯爵夫妻やステファン様から手をあげられたことはございませんし、対応策を練るのに忙しくてわたくしの事など気付かないと思います」
「だと良いのですか⋯⋯」
子供達を緊急避難させる理由にわたくしが関わっているとは知られていないので大丈夫でしょう。フォレスト公爵様とお会いしてこのように打ち合わせをしている事もバレていない自信がありますし。
「このような急な話でもラングローズ子爵は子供達を子爵家に避難させて下さいますか?」
「わたくしが突然人を連れて帰るのには家人全員が慣れておりますから問題ありませんわ。今日中に連絡を入れておきます」
見知らぬ人を何人も連れ帰った経験が役に立つとは思いませんでした。
大人から子供まで年齢も性別も様々でしたから、子爵家には全年齢でどちらの性別でも可能な準備がいつの間にか出来上がっておりましたの。
グレッグの着替えは間違いなく大丈夫だと思いますが、流石にチェイスのような赤ちゃんのサイズはないかも⋯⋯。あ、あります。以前赤ちゃんを連れたご婦人を連れて帰った事がありましたから大丈夫ですね。
呆れた顔をするだけで叱られなくなったのは何人目だったか⋯⋯まあ、2桁もの人を連れて帰ったのなら覚えていなくても仕方ないですね。
「私もこの後お父上にご挨拶に伺ってお願いしておきます。明日は午前中にマーベル伯爵家を急襲しますから、リリスティア様は知らないふりでお願いします」
「はい、子供達と一緒にお待ちしております」
この問題が落ち着いたら何かお礼しなくては。10日間子供達と遊んでいただけでなんの解決策も思いつかず悶々としていただけのわたくしと違い、全ての問題を片付ける為に動いて下さっているフォレスト公爵様に感謝の念が堪えません。
わたくしの周りの方は本当に良い方が多く、いつまでもそれに甘えてばかり⋯⋯22歳にもなってこんなことではいけませんね。子爵家に戻った後は人に迷惑をかけないしっかりと自立した人間になるよう心を入れ替えようと思います。
公爵様と別れマーベル伯爵家に戻るとグレッグが飛びついて⋯⋯来ません。部屋の隅で三角座りして顔を膝に埋めています。
拗ねてます。『寂しかった』と猛アピールしているのが少し面倒くさいと同時に可愛いくて堪りません。
笑顔や素直な態度は警戒心を持っている時や相手の機嫌を損ねたくなくてご機嫌をとっているだけの事もあるのでよく観察をする必要があると教わりました。
拗ねたり怒ったりするのは我儘だけでなく相手を試している時もあるそうですし、無意識にそれを受け入れてくれると感じている相手にしかしないそうですからちょっと嬉しくもあります。
グレッグが心を開きはじめているしるしですから⋯⋯全部シスターからの受け売りです。
ハンナの側で遊んでいたチェイスまでグレッグの横に並んで座り込むと、チラッと横目でチェイスを見たグレッグが肘で押し除けようとしています。
コロンと転んだのが楽しかったのか声を上げて笑ったチェイスがグレッグの隣に座り直すと再び肘が⋯⋯。
楽しそうなので放っておきましょう。
泣き虫で少しマイナス思考に走りやすいグレッグと、お兄ちゃんが大好きで空気の読めなさそうなチェイスは最高のコンビですもの。
「何か聞いておくことはあるかしら?」
わたくしが出かけていた間に問題がなかったかを少し曖昧な言い方で問いかけました。
「いえ、今日のおやつがチェイス様の大好きなパウンドケーキでしたので、グレッグ様のおやつを狙って⋯⋯攻防戦が楽しそうでした」
「どっちが勝ったのか聞かなくても予想がついたかも」
「はい、明日のチェイス様のおやつは半分グレッグ様にあげる約束になっています」
あれ? わたくしがいなくて寂しかったのではなくて、おやつ争奪戦に負けて拗ねてる?
料理長の作るパウンドケーキには勝てませんね。
「後からであれば⋯⋯昔から影が薄いのが自慢ですからマーベル一家が慌てている間なら裏口から出られると思います。
それよりも、子供達をお連れいただく際ターニャを同行させていただけませんでしょうか。知らない大人達だけだとグレッグがパニックになってしまう可能性がありますがターニャがいれば宥める事ができます。
チェイスもターニャに懐いていますから」
「それではリリスティア様が敵地で一人になってしまう」
「使用人達がおりますから大丈夫です。伯爵夫妻やステファン様から手をあげられたことはございませんし、対応策を練るのに忙しくてわたくしの事など気付かないと思います」
「だと良いのですか⋯⋯」
子供達を緊急避難させる理由にわたくしが関わっているとは知られていないので大丈夫でしょう。フォレスト公爵様とお会いしてこのように打ち合わせをしている事もバレていない自信がありますし。
「このような急な話でもラングローズ子爵は子供達を子爵家に避難させて下さいますか?」
「わたくしが突然人を連れて帰るのには家人全員が慣れておりますから問題ありませんわ。今日中に連絡を入れておきます」
見知らぬ人を何人も連れ帰った経験が役に立つとは思いませんでした。
大人から子供まで年齢も性別も様々でしたから、子爵家には全年齢でどちらの性別でも可能な準備がいつの間にか出来上がっておりましたの。
グレッグの着替えは間違いなく大丈夫だと思いますが、流石にチェイスのような赤ちゃんのサイズはないかも⋯⋯。あ、あります。以前赤ちゃんを連れたご婦人を連れて帰った事がありましたから大丈夫ですね。
呆れた顔をするだけで叱られなくなったのは何人目だったか⋯⋯まあ、2桁もの人を連れて帰ったのなら覚えていなくても仕方ないですね。
「私もこの後お父上にご挨拶に伺ってお願いしておきます。明日は午前中にマーベル伯爵家を急襲しますから、リリスティア様は知らないふりでお願いします」
「はい、子供達と一緒にお待ちしております」
この問題が落ち着いたら何かお礼しなくては。10日間子供達と遊んでいただけでなんの解決策も思いつかず悶々としていただけのわたくしと違い、全ての問題を片付ける為に動いて下さっているフォレスト公爵様に感謝の念が堪えません。
わたくしの周りの方は本当に良い方が多く、いつまでもそれに甘えてばかり⋯⋯22歳にもなってこんなことではいけませんね。子爵家に戻った後は人に迷惑をかけないしっかりと自立した人間になるよう心を入れ替えようと思います。
公爵様と別れマーベル伯爵家に戻るとグレッグが飛びついて⋯⋯来ません。部屋の隅で三角座りして顔を膝に埋めています。
拗ねてます。『寂しかった』と猛アピールしているのが少し面倒くさいと同時に可愛いくて堪りません。
笑顔や素直な態度は警戒心を持っている時や相手の機嫌を損ねたくなくてご機嫌をとっているだけの事もあるのでよく観察をする必要があると教わりました。
拗ねたり怒ったりするのは我儘だけでなく相手を試している時もあるそうですし、無意識にそれを受け入れてくれると感じている相手にしかしないそうですからちょっと嬉しくもあります。
グレッグが心を開きはじめているしるしですから⋯⋯全部シスターからの受け売りです。
ハンナの側で遊んでいたチェイスまでグレッグの横に並んで座り込むと、チラッと横目でチェイスを見たグレッグが肘で押し除けようとしています。
コロンと転んだのが楽しかったのか声を上げて笑ったチェイスがグレッグの隣に座り直すと再び肘が⋯⋯。
楽しそうなので放っておきましょう。
泣き虫で少しマイナス思考に走りやすいグレッグと、お兄ちゃんが大好きで空気の読めなさそうなチェイスは最高のコンビですもの。
「何か聞いておくことはあるかしら?」
わたくしが出かけていた間に問題がなかったかを少し曖昧な言い方で問いかけました。
「いえ、今日のおやつがチェイス様の大好きなパウンドケーキでしたので、グレッグ様のおやつを狙って⋯⋯攻防戦が楽しそうでした」
「どっちが勝ったのか聞かなくても予想がついたかも」
「はい、明日のチェイス様のおやつは半分グレッグ様にあげる約束になっています」
あれ? わたくしがいなくて寂しかったのではなくて、おやつ争奪戦に負けて拗ねてる?
料理長の作るパウンドケーキには勝てませんね。
19
お気に入りに追加
2,747
あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。

氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる