【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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38.計画

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「それで⋯⋯その、離婚の延期は中止してもらえないでしょうか。証拠集めや手続きは手伝わせていただきますし、子供達はリリスティア様が伯爵家を出るのに合わせてラングローズ子爵領の孤児院へ避難させます」

「⋯⋯そんな事が可能なんですか？」

「リリスティア様の流儀に反する気がして黙っていましたが、軍部のコネや公爵家の権力でゴリ押しすればできます」

「確かに、権力を使ってゴリ押しするのはあまり好きではありませんが⋯⋯今の環境が子供達にとって良くないのも確かですし」

「やはり何かあるんですね」

「顔合わせの日の前日以外は特に何かあったわけではないのですが⋯⋯危険から守るために常にメイドやわたくし達と行動するようにして警戒しています。
グレッグはそれに気付いているようで時々不安そうな顔をしていますし、グレッグの精神状態にチェイスも引き摺られてしまうので⋯⋯もっと落ち着いた環境で暮らさせてあげたいと思っております」

　グレッグは周りの雰囲気に酷く敏感です。言動には気をつけているつもりですが誰かが部屋のドアをノックした時や部屋を出る時などにわたくし達が警戒しているのに気付いているようで、不安そうな顔をしています。

　グレッグはわたくしが視界から消えるのを嫌がりますし、チェイスはハンナにベッタリで後追いをしています。

「では強制的に一時避難させましょう。場所はラングローズ子爵領の孤児院で良いですか？　もっと別の場所が良ければ教えて下さい」

「ラングローズ子爵家に避難できればベストですが⋯⋯現状ではラングローズ子爵領の孤児院が最適のような気がします」

　子爵家ならしっかりとした塀に囲まれておりお父様や護衛達がいるので安心ですが、引き取れる可能性が少ないなら孤児院に避難させて護衛を配置するのが無難な選択でしょう。

「リリスティア様がマーベル伯爵家を出る日を決めてその日に子供達も引越ししましょう。大まかで良いので準備にどのくらいの日数が必要か教えていただけますか？」

「子供達の移動許可が出ればそれに合わせますわ」

「⋯⋯普通は引越しだけでもかなり準備があると思うのですが。話せる事だけで構わないので状況を教えていただけますか？」

「子供達もわたくしも着替えが少しある程度ですから、手ぶらとたいして変わらないくらいで移動できますの」

「えーっと、荷物がない？」

　驚かれて当然なのですが本当にものがないのです。

「はい。小ぶりのトランク一つあれば十分ですね」

「婚姻の際に持って行かれた物とか普段お使いの物とかは？」

「持ってきた物はお義母様達が売ってしまわれたみたいですね。お茶会や夜会には出た事がありませんので⋯⋯あるのは買い物用のデイドレスとメイド服くらいです」

「メイド服って、そんな生活をさせられてたんですか！？」

「特に不自由はありませんでしたの。メイドと一緒に仕事をしなければ時間が余って退屈してたと思います」

　フォレスト公爵の顳顬がヒクヒクしてます。

「使用人達はみんないい人ばかりですからとても楽しく過ごしていますの。売られた物は正式書類に記載されてますし持ち出された日もメモを残しておきましたから弁償していただくので全然気にしておりませんの」

「当然です！　全くなんて奴等だ！！」

　そんなに目くじらを立てなくてもいいと思うのですが、フォレスト公爵はターニャと気が合いそうですわ。

「準備の日数によっては先にマーベル中尉とビビアンさんを拘束します。２人がいなければかなり安全になるのではありませんか？」

「子供達に暴言や暴力を振るう可能性があるのは今の所あの2人だけですけど、ステファン様が逮捕されたら伯爵夫妻も危険になると思っております」

　ステファン様は可愛がっている大切な嫡男ですから八つ当たりされる可能性は高いと思っております。特に容疑に幼児虐待があるとバレたら『お前達のせいだ』と子供達を恨んだり⋯⋯。腹立ち紛れに売り飛ばそうとしかねません。

「であれば⋯⋯明日はいかがですか？　お迎えに参りますので先に子供達と一緒に孤児院ではなく子爵家に避難しましょう。正式書類なんかどうにでもなりますから」

「フォレスト公爵閣下のご迷惑になりませんか？」

「逆に私が行かなければ奴等に騒ぎ立てるきっかけを与える事になると思います。
書類が後付けでも避難先を知らせなくても私の独断で子供達の緊急避難を決定すると言えばマーベル一家は文句を言わないはずです」

　顔合わせの際に全員が媚びたり怯えたりしておられましたから、フォレスト公爵様が仰る通り権力には弱そうです。

　アリシア様とビビアン様が張り切らない事だけ祈っておきますね。あの時かなり本気のご様子でしたから、復活戦に走りそうな予感がします。

「リリスティア様は子供達と一緒かその前のどちらかに伯爵家を出るのは可能ですか？」

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