【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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34.サラッと悪辣

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「そんなに見え透いていたでしょうか?」

「いえ私自身話したいと思っていたので気付いただけだと思います。軍法会議だと中尉を恫喝した私が言うのもなんですが⋯⋯マーベル伯爵の慌てぶりが度を超しているので余罪があるのではないかと言う話が出て現在調査中です」

 完全に冷めてしまった紅茶を口にしてフォレスト公爵様が話を続けられました。

「今回の公文書偽造は内容からいってかなり軽微な罰で終わる程度のものです。にも関わらずあちこちに大金をばら撒いていますから、これはもう調べて下さいと言っているようなものですね」

 苦笑いをしてもかっこいいなんて⋯⋯フォレスト公爵様に匹敵するほどかっこよくなる事が確定しているグレッグやチェイスの将来が楽しみです。



「軽微な罪でわざわざ伯爵家までお越しになられたのですよね」

「⋯⋯それは別の思惑がありまして。それを話す前に子供達の件を話しても良いでしょうか?」

「はい、是非お聞かせ下さい」

 漸く本題です。マーベル伯爵家の今後は子供達に大きく影響してきますからとても大切なお話でしたが⋯⋯。

「ビビアンさんは幼児虐待で親権が取り上げられると決まっています。彼女には母親と兄がいますが親権者として適切とは言えない者達でした。
マーベル中尉も親権を取り上げられます。先日の発言から考えて伯爵夫妻やアリシア嬢は親権者として不適切ですが親権を取り上げるほどではないと判断されると思います。
リリスティア様は子供達と血の繋がりがありませんから親権者となる資格がないと判断されるでしょう。
マーベル伯爵家の親戚が養育する可能性もありますが孤児院へ入れられる可能性の方が高いです」

「わたくしが離婚していなければ子供達の先行きが決まるまで世話ができる可能性はあるでしょうか?」

「その場合は裁判官の裁量次第になると思われますがあまり期待はできません」



「引き取り手がいなかった場合、ラングローズ子爵家で引き取る事は可能ですか?」

「その条件付きであれば、ラングローズ子爵家の評判から考えるとなくはないです。ほんの数日の関わりしかなく血の繋がりもない子供の為に何故そこまで⋯⋯その原動力はマーベル中尉への愛ですか?」

 へ? 何故そのような発想が? フォレスト公爵様の目力が怖いです。前のめりになりすぎてテーブルがギシギシいってます!

「それはあり得ません。お恥ずかしい話ですが、初めての顔合わせから今までの間にステファン様とお会いした数は手の指で数えられるくらいですから」

「え? マジですか!?」

 流石に驚いておられますね。そう言うわたくしも驚いているのでおあいこです。ここ数日は遠目にチラッと見かける事があるので両手くらいはお顔を拝見してるはずですもの。

 5年で両手の数としたら⋯⋯1年で2回⋯⋯驚きました、思ったより多いです。

 1年に1度しか咲かないと言われるあの花の開花に会うより多いとは意外でした。本当はあの花も手入れをきちんとすると年2回咲くと言いますから負けてますね。



 現状で親権者として認められるのはマーベル伯爵夫妻とアリシア様と親戚の誰か⋯⋯。

 マーベル伯爵夫妻は虐待の噂を消そうとしてグレッグ達を引き取ると言いそうですが、その他の方は引き取りを拒否しそうです。となると、マーベル伯爵夫妻を潰せば孤児院一択?

 うん、伯爵夫妻は潰しましょう。

 引き取り手がいないと判明すると同時にお父様に手を上げていただいて、それが却下されたら孤児院へ⋯⋯必要があれば時期を見て養子縁組の希望を出しましょう。

 子供達の行き先が確定するまで目を光らせておきます。

 ターニャが近くにいたらアレコレ突っ込まれそうですが⋯⋯。



「先程マーベル伯爵家を調べておられると仰っておられましたが、お手伝いすることは可能でしょうか?」

「それは⋯⋯出来なくはないでしょうがあまり危険なことはしていただきたくありません。子供に手をあげるような輩は女性にも簡単に手を出します。実際、メイドが蹴りを入れられたと仰っておられましたよね」

「はい、運良く医師の診察を受けられて⋯⋯怪我はありませんでしたが数日痛みが残っているようでした」

「家の中というのは閉鎖的な空間ですから想像以上に危険なんです。できれば一日も早く子爵家に戻っていただきたいと思っています」

「⋯⋯マーベル伯爵家は脱税をしています。それとソラリス侯爵と一緒に違法な人身売買に手を出しています」

「⋯⋯はあぁ!?」


 フォレスト公爵様が叫んで立ち上がると同時にガタンと大きな音を立てて椅子が倒れました。血相を変えて走ってきた護衛がフォレスト公爵を囲み、ターニャがわたくしの前に立ち塞がりました。

 うん、秘書官は護衛とは違うんですね。コナー氏は立ち竦んでいますから。

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