【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

との

文字の大きさ
上 下
33 / 99

33.おやつ抜きと情報収集

しおりを挟む
「お忙しい中度々お時間をいただき申し訳ありません」

 前回同様コナー氏と護衛を連れたフォレスト公爵様でしたがコナー氏も護衛の方達も、今日はわたくし達が座った席からかなり離れた場所に待機しておられます。

 部屋の隅に並ぶ護衛達の元に連れて行かれたターニャはコナー氏と睨み合いを続けていますが、さりげなくコナー氏に蹴りを入れたのは見逃しません。

 明日はオヤツ抜きの刑ですね。

 

「こちらこそ⋯⋯少し時間がかかり申し訳なく思っています」

 フォレスト公爵様は相変わらず端正なお顔立ちをしておられます。

 ターニャが調べた情報では3年近く前に相手側からの希望で婚約を解消され、現在は独身で婚約者もおられないそうです。

 血筋も爵位もトップクラスで数々の武勲と戦争終結の立役者⋯⋯その上これ程容姿端麗なのですから、アリシア様やビビアン様がチャンスを狙おうと鼻息を荒くしていたのは少し理解できる気が致します。

 わたくしは参戦しませんよ。

 煌びやかな社交界を生き抜いておられる猛⋯⋯女性達に勝てる気など皆無ですし、今後のわたくしの人生設計に『結婚』は含まれておりませんの。

 あ、セルゲイ爺ちゃんは別です。

 このように個別でフォレスト公爵とお会いしている事がバレないように徹底的に注意しなくては皆様からのご不興を買ってしまいますね。不要な関心など引いてしまってはトラブルの元ですからお会いするのは今回で最後にしたいと思っています。



「先ずはマーベル伯爵家について報告させていただきますが、まだ公表されていない内容ばかりなので口外されないようお願いします」

 わたくしはしっかりと頷きました。逮捕される前に知られて逃亡などされては許せませんから。

「マーベル中尉は公文書偽造と幼児虐待の容疑で軍法会議にかけられ、懲役刑が確定すると思われます。
マーベル伯爵夫妻とビビアンさんはマーベル中尉と同じ容疑で通常裁判にかけられます。加担していた比重が違うため伯爵夫妻は罰金刑、ビビアンさんは懲役刑になるかと思われます。
アリシア嬢は任意同行の予定ですが、恐らく罰金刑が課せられると思います」

「伯爵夫妻も虐待での罪に問われるのですか?」

 屋敷に来る前に既に何か関わりがあったのでしょうか? ステファン様とビビアン様が子供達に関わらないようにとメイド達に指示しておりましたが、伯爵夫妻にも注意が必要だったかもしれないと少し慌ててしまいました。

「伯爵夫妻は書類の偽造理由が子供達を貶めるものだと⋯⋯少し強引な理由付けをしました。公文書偽造だけであれば裁判官によっては軽微な罪で終わらせる可能性がありますから少しでも反省を促せればと。
彼等は情状酌量を狙ってあちこちの貴族の間を駆け回っているので、手の者に醜聞を広げています」



 実は今回の件では色々と気になっている事があります。

 公文書偽造という言ってみれば軽微な犯罪でわざわざフォレスト公爵様がマーベル伯爵家にいらっしゃったのが不思議でならないのです。戦争は終結したばかりですから様々な仕事がおありでしょうし、それにプラスして爵位を継がれたばかりであればどれほどお忙しいかわたくしなどには想像もつきません。

 そのような方が部下のしでかした事と言っても『わざわざ出向いて』まで手を下す必要があるようには思えないのです。

 その後わたくしが幼児虐待の証拠をお渡し致しましたので状況は変わってきておりますが、それは後付けの理由ですし⋯⋯。

 何か別の思惑でもあるのではないかと勘繰ってしまっても仕方ないのではないでしょうか。と言い訳をしつつフォレスト公爵様に探りを入れてみようと心に決めました。



「⋯⋯マーベル伯爵は以前からわたくしの叔父とかなり親交が深いのですがご存知でいらっしゃいますか?」

「ラングローズ子爵の兄ソラリス侯爵ですね。リリスティア様の婚約・婚姻の際にも立ち会われたと聞き及んでおります」

 まさかの情報に驚いてしまいました。

「叔父は確か司法省に強いコネがあると言っておられた気がします」

 叔父とマーベル伯爵が人身売買などと言う犯罪に手をつけたのは『いざとなれば助けて貰える』と安直な考えでいるからではないかと思っています。

 軍法会議会議という言葉に慌てふためいていたステファン様は兎も角として、毎日青息吐息でマーベル伯爵が走り回っているのは余罪を調べられないように隠蔽工作をしているのでしょう。

 フォレスト公爵様やその他の方々はどの辺りで線引きされるおつもりなのか⋯⋯どう言えばそれを上手く聞き出せるのか、対人スキルを磨いておくべきでした。



「ついでと言う言い方をするのは問題がありますが、ソラリス侯爵を含め徹底的にやるつもりです。リリスティア様がお聞きになりたかった疑問に対する答えになっておりますか?」

しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

処理中です...