【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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31.お節介を焼いてみる

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 予定より遅くなってしまいましたがマーベル一家は今後の対応策を練るのに忙しく気付いておられないようでした。

 2階の自室に入るとハンナと子供達が笑顔で迎えてくれました。

「お留守番ありがとう。一人で大変だったでしょう?」

「チェイス様はお昼寝から起きたばかりで、グレッグ様は若奥様を探してそわそわしておられました」

 ニヤニヤ笑うハンナの言葉を聞いたグレッグが恥ずかしそうにわたくしのデイドレスを掴みました。

 グレッグのふわふわの髪をくしゃくしゃと撫でてから青の間を一人で守っているメイサの救出に向かうためそっと部屋を出て、青の間のドアをノックして声をかけました。

「わたくしです。開けてもいいかしら?」

 ドアの近くにスタンバイしていたのか、話の途中で勢いよくドアが開きました。

「お留守番ありがとう。大丈夫だった?」

「はい、どなたもいらっしゃいませんでした」

 ステファン様&ビビアン様対策で青の間に残っていたメイサが少しやつれて見えたのは緊張し続けていたからでしょう。

 自分一人の時に昨日暴力を振るってきたステファン様と対峙するかもしれないと言うプレッシャーは相当なものだったと思います。

「メイドを増やせなくてごめんなさいね。グレッグとチェイスはわたくし達が見ているから少し休憩していらっしゃいな」

 昨日のパーティー客も普段と同じでかなり派手にあちこちを汚しまわったようで、使用人達は皆掃除や修理に走り回っていました。

 午後の短時間だけでも誰か手伝いを⋯⋯と頼んだのですがメイド長に断られてしまったのです。

『申し訳ありません。エマーソンが役立たずになってしまった上に旦那様方のご機嫌も最悪で、いつも以上に人が足りないんです』

 そんなわけで可哀想だと思いつつ子供の扱いに慣れているハンナに二人を任せメイサに青の間を任せざるを得なくなったのです。


 昨日の今日で子供達をステファン様達に会わせるのは危険ですが、部屋を完全に留守にしてしまって家探しをされたら危険度が上がってしまいますから。



 ボールを使ってグレッグに遊んでもらっているチェイスはご機嫌で声を上げて笑っています。チェイスは転んでも泣かずにボールを追いかけていますが、グレッグはボールの行き先を確認してから追いかけています。

「こうして見ているとグレッグ様は泣き虫で慎重派、チェイス様は負けん気の強い行動派ですね」

「なんとなくだけどケニス先生とターニャみたい。すごく仲良しだし」

「はあ? 先生はともかく私は冷静で慎重なタイプですから。それに私達は仲良くないです」

 両腕を組んでムッとした顔になったターニャは少し顎を上げてプイッと顔を背けました。話を聞く気はないというターニャの合図ですが今日は少しつついてみるつもりです。

「意地を張らなくてもいいと思うんだけどなぁ。すごくお似合いなのに」

「⋯⋯あり得ませんよ、貴族と平民なんて」

「高貴な貴族の血って言う考え方がおかしいと思うの。先生もそうだって仰ってたでしょう?」

「⋯⋯切ったら同じ血が出る」

「そうそれ」

 ターニャは『高貴な血』に拘りすぎて前に進めないのです。

 ケニス先生は隣国の侯爵家の三男です。家に帰れば大きな屋敷にいるのは子供に甘い両親と至れり尽くせりの使用人だそうです。

 ターニャは親に捨てられて子爵家に拾われた孤児ですが、当時の朧げな記憶からあまり裕福ではない平民だろうと予想しています。

 学園を卒業した後、気儘な暮らしがしたいと家を飛び出しあちこちを放浪していたケニス先生がラングローズ子爵領を拠点に活動するようになったのは『ターニャがいるから』

 ターニャは頑として『子爵領が気に入ったから』だと言い続けています。

「いつまでも待たせてたらケニス先生がケニス爺ちゃんになっちゃうわよ?」

「何年先の話ですか。そうなる前に家に帰ってどこかのご令嬢と結婚されると思います」

「何度も言うけどラングローズ子爵家と養子縁組しない?」

「しません。私は一生リリスティア様の護衛をするって決めてますから」

 文句を言いながらでもターニャはとても美味しいお茶を淹れてくれました。

「意地を張らずにちゃんと自分の気持ちをケニス先生に話してみて。わたくしはここを出たらどこに住むか考えなくちゃいけないから⋯⋯。あの子達を見てたら自分の子供が欲しいなんて思わない?」

「リリスティア様こそ。セルゲイ爺ちゃんだと子供は望めませんよ」

「あら、そこはわからないわよ」

 くすくすと笑うと揶揄われたと勘違いしたターニャが少し声を張り上げました。

「わかりますって! いくらなんでもあり得ません」



「わたくしが離婚するまでをタイムリミットにしましょう。わたくしは見たくないものを見ないふりして誤魔化すのはやめることにしたの。だからターニャも逃げないで、ちゃんと話し合ってきて。
それが出来ないなら担当を変えてもらうわよ」

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