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30.上限突破する覚悟
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「拾いぐせですか⋯⋯それはまた珍しい特技をお持ちですね」
「た、たまたまです。ターニャの時も顔を見て直ぐわかりましたし、そういう出会いが何度かあっただけですの。人に対して拾うとか⋯⋯そんな失礼な事は考えておりませんわ」
子爵領の外れにある森で親に捨てられて泣いていたターニャと出会ったのは5歳の時でした。自分の歳がわからないと言うのでわたくしと同い年で同じ誕生日に決めて以来毎年一緒にお祝いをしております。
改めて考えるとかなり強引な性格で恥ずかしくなります。
「でも2桁は確実に拾ってます。ケニス医師まで拾いましたしね」
「あれはほら⋯⋯たまたま」
学園からの帰り道で馬車の窓からふと外を見た時に道端にしゃがみ込んでいたのがケニス先生でした。
心配になって馬車を停めて声をかけるとお腹が空いたと仰ったので屋敷に招待したのがきっかけでした。その後お兄様のお友達だと知って吃驚致しました。
「大人まで拾う⋯⋯羨ま⋯⋯ゴホン! 一つ気になることがあるのですが、お聞きしても宜しいですか?」
「はい、なんでもお聞きくださいませ」
「孤児院の近くに転居されるという事は別居されるという事でしょうか?」
「いえ、離婚する予定ですの。準備は終わっておりますからいつ言っても構わないのですがこのような状況になりましたので。取り敢えず子供の将来を決めてからにしようかなあと思っております。
あっ! 離婚して独り身になったら益々子供達を引き取りにくいというのであれば少しお待ちいただければなんとか致します」
「⋯⋯なんとか?」
「はい、配偶者を準備しますので少しだけお待ちいただければ大丈夫です」
ターニャの溜息が聞こえたような気がしますが気にしたら負けです。
「お付き合いされている方がおられるのですね」
「まあ、そんな事をしたら不貞になってしまいます。わたくしはそのような不誠実な事は致しません」
「リリスティア様、ダメです・反対します・禁止です」
「ターニャ、あなたは黙ってて。フォレスト公爵閣下のお時間を無駄にしているから、この話はやめましょうね。侍女は話に割り込んだりしないものでしょう?」
ターニャにはわたくしの行動の全てを把握されているので頼りになる反面とても厄介です。
「因みに誰を想定しておられるのかお聞きしても宜しいですか?」
「ダメですわ」
「セルゲイ爺ちゃん」
「「は?」」
「まあ、コナー氏とは別ですの。たまたまお名前がかぶっていただけですからご心配なさらないでくださいね」
「でも『爺ちゃん』ですか?」
「別に年齢制限はありませんでしょう? 下限はあると思いますけれど、上限はありませんわ」
「孫はリリスティア様より年上ですけどね」
フォレスト公爵様とコナー氏のジト目が辛いです。でも全く浮いた話のないわたくしに結婚を申し込んでくれたのはセルゲイ爺ちゃんだけなんです。
彼は『結婚できなんだらワシがもろうちゃる』と言ってくれた唯一の望みですからね。
釣書も届かない影の薄いわたくしに離婚歴が付くのですから、セルゲイ爺ちゃんの言葉は心の支えですわ。グレッグやチェイスの事だってひ孫が増えたと喜んでくれる事間違いなしです。
彼は我が家のお祖父様の代から仕えてくれる天才庭師ですの。すごく綺麗な花を咲かせる魔法の手の持ち主で、いつも笑顔で出迎えてくれるので結婚相手としては十分だと思います。
勿論、本気ですよ。
短い結婚生活になる可能性はありますが、心温かい暮らしと笑顔の溢れる毎日になるのは間違いありません。
「⋯⋯この話はもうやめましょう。兎に角、どのような条件であれば子供達を引き取れるのか教えていただければ、その条件を必ずクリア致します」
「リリスティア様が本気だということはよく分かりました」
「ありがとうございます。慌ただしくて申し訳ありませんがラングローズ子爵家宛に条件をご連絡いただければ、どのように難しい条件であっても必ず叶えさせていただく覚悟でおります」
「本当に子供達の事を心配しておられるのですね」
「子供達の周りにいる大人達の横暴が子供達に与える影響については心配しておりますが、子供達については全く心配しておりません。
ダブル天使ですから彼らは大丈夫ですわ」
こういう時の勘は外れたことがありませんの。わたくしの唯一無二の自慢ですわね。
「先ほどお渡しした診断書は写しですので裁判で証拠として正式採用することが決まりましたら原本をお渡しいたします」
「失礼な言い方かもしれませんが⋯⋯女性にしてはしっかりしておられる」
「お父様の教えで『どんな小さな剣でも手元になければ役に立たない』と叩き込まれましたの」
「た、たまたまです。ターニャの時も顔を見て直ぐわかりましたし、そういう出会いが何度かあっただけですの。人に対して拾うとか⋯⋯そんな失礼な事は考えておりませんわ」
子爵領の外れにある森で親に捨てられて泣いていたターニャと出会ったのは5歳の時でした。自分の歳がわからないと言うのでわたくしと同い年で同じ誕生日に決めて以来毎年一緒にお祝いをしております。
改めて考えるとかなり強引な性格で恥ずかしくなります。
「でも2桁は確実に拾ってます。ケニス医師まで拾いましたしね」
「あれはほら⋯⋯たまたま」
学園からの帰り道で馬車の窓からふと外を見た時に道端にしゃがみ込んでいたのがケニス先生でした。
心配になって馬車を停めて声をかけるとお腹が空いたと仰ったので屋敷に招待したのがきっかけでした。その後お兄様のお友達だと知って吃驚致しました。
「大人まで拾う⋯⋯羨ま⋯⋯ゴホン! 一つ気になることがあるのですが、お聞きしても宜しいですか?」
「はい、なんでもお聞きくださいませ」
「孤児院の近くに転居されるという事は別居されるという事でしょうか?」
「いえ、離婚する予定ですの。準備は終わっておりますからいつ言っても構わないのですがこのような状況になりましたので。取り敢えず子供の将来を決めてからにしようかなあと思っております。
あっ! 離婚して独り身になったら益々子供達を引き取りにくいというのであれば少しお待ちいただければなんとか致します」
「⋯⋯なんとか?」
「はい、配偶者を準備しますので少しだけお待ちいただければ大丈夫です」
ターニャの溜息が聞こえたような気がしますが気にしたら負けです。
「お付き合いされている方がおられるのですね」
「まあ、そんな事をしたら不貞になってしまいます。わたくしはそのような不誠実な事は致しません」
「リリスティア様、ダメです・反対します・禁止です」
「ターニャ、あなたは黙ってて。フォレスト公爵閣下のお時間を無駄にしているから、この話はやめましょうね。侍女は話に割り込んだりしないものでしょう?」
ターニャにはわたくしの行動の全てを把握されているので頼りになる反面とても厄介です。
「因みに誰を想定しておられるのかお聞きしても宜しいですか?」
「ダメですわ」
「セルゲイ爺ちゃん」
「「は?」」
「まあ、コナー氏とは別ですの。たまたまお名前がかぶっていただけですからご心配なさらないでくださいね」
「でも『爺ちゃん』ですか?」
「別に年齢制限はありませんでしょう? 下限はあると思いますけれど、上限はありませんわ」
「孫はリリスティア様より年上ですけどね」
フォレスト公爵様とコナー氏のジト目が辛いです。でも全く浮いた話のないわたくしに結婚を申し込んでくれたのはセルゲイ爺ちゃんだけなんです。
彼は『結婚できなんだらワシがもろうちゃる』と言ってくれた唯一の望みですからね。
釣書も届かない影の薄いわたくしに離婚歴が付くのですから、セルゲイ爺ちゃんの言葉は心の支えですわ。グレッグやチェイスの事だってひ孫が増えたと喜んでくれる事間違いなしです。
彼は我が家のお祖父様の代から仕えてくれる天才庭師ですの。すごく綺麗な花を咲かせる魔法の手の持ち主で、いつも笑顔で出迎えてくれるので結婚相手としては十分だと思います。
勿論、本気ですよ。
短い結婚生活になる可能性はありますが、心温かい暮らしと笑顔の溢れる毎日になるのは間違いありません。
「⋯⋯この話はもうやめましょう。兎に角、どのような条件であれば子供達を引き取れるのか教えていただければ、その条件を必ずクリア致します」
「リリスティア様が本気だということはよく分かりました」
「ありがとうございます。慌ただしくて申し訳ありませんがラングローズ子爵家宛に条件をご連絡いただければ、どのように難しい条件であっても必ず叶えさせていただく覚悟でおります」
「本当に子供達の事を心配しておられるのですね」
「子供達の周りにいる大人達の横暴が子供達に与える影響については心配しておりますが、子供達については全く心配しておりません。
ダブル天使ですから彼らは大丈夫ですわ」
こういう時の勘は外れたことがありませんの。わたくしの唯一無二の自慢ですわね。
「先ほどお渡しした診断書は写しですので裁判で証拠として正式採用することが決まりましたら原本をお渡しいたします」
「失礼な言い方かもしれませんが⋯⋯女性にしてはしっかりしておられる」
「お父様の教えで『どんな小さな剣でも手元になければ役に立たない』と叩き込まれましたの」
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