29 / 99
29.フォレスト公爵に期待大
しおりを挟む
フォレスト公爵様との待ち合わせはマーベル伯爵家から馬車で20分程度のところにあるカフェで、わざわざお店を貸切にしてくださったので周りを気にせず話ができそうです。
ターニャや数人の護衛と昨日と同じ秘書官もいますから誰かに見られても問題ありません。
「昨日は申し訳ありませんでした」
開口一番フォレスト公爵様が深々と頭を下げたのに気付いた秘書官のコナー氏が睨んでいます。
「声をかけていただいて助かりました。あの後何か不快な思いをされていないか心配でしたし、子供達の様子も知りたいと思っていました」
社交辞令とは思えない真剣な表情をしておられます。このご様子なら話を聞いていただけるかもしれないと期待してしまいます。
「こちらこそお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。わたくしの事はリリスティアとお呼びくださいませ。
あまり長居ができませんので本題に入らせていただいても宜しいでしょうか」
「勿論です。私の事はノアと呼んでいただければと思います。相談があると伺いましたがどういった内容でしょうか」
「お名前は⋯⋯ご容赦くださいませ。偽造書類が提出されていたのは驚いてしまったのですが⋯⋯マーベル一家への刑罰でお願いがございます」
「⋯⋯手心を加えろとか減刑をと言うのでなければ手伝えることがあるかもしれません。必ず聞き届けるとは言えなくても良ければお聞きします」
慎重な返答に信頼感が持てます。安易な返事をされる方は信用できません。
「減刑どころか思う存分⋯⋯と思っておりますの。わたくしのお願いは子供達のことでございます。マーベル伯爵夫妻やステファン様が子供達の事をどのように思っているかお聞きになられ、フォレスト公爵閣下はどのように思われましたでしょうか?」
「正直言ってあり得ないと思いました。選民主義と人権無視⋯⋯人として最低の行為です」
「幼児虐待の証拠を持っております。医師の診断書以外にメイドの証言もあります」
ケニス先生の書いた診断書とハンナが目撃した虐待の報告書をコナー氏に渡しました。コナー氏から渡された資料を読み進めるごとにフォレスト公爵様の眉間の皺が深くなっていきます。
「たった2日でこの診断書を?」
「はい。子供達に初めて会ったのは一昨日でしたが、虐待されている子供だと直ぐに分かりました。ラングローズ子爵家の伝手を使い、昨日の午後秘密裏に診察を受けさせましたの」
「すぐにわかるほどだったのですか?」
「幼い頃から定期的に孤児院に慰問に行っておりましたので、色々な子供に出会う機会が多かったのが功を奏したと申しますか。たまたま気付いたと言うべきかもしれません」
お母様を早くに亡くしお兄様とは10も歳が離れているわたくしは物心つく前から大人しかいない中で暮らしておりました。
お父様は仕事が忙しく子供同士の付き合いに連れて行くことも出来ないからと言う理由で毎週通わされていたのが子爵領内の孤児院でしたので、慰問というよりもお友達と遊ぶために行っていたようなものです。
学園に通うようになっても休みの日には孤児達と遊んだり手伝いをしておりました。わたくしにとって第二の我が家のような場所だったと思います。
「この書類を元に幼児虐待の罪も加算させていただいてもかまいませんか? 虐待は重罪ですから」
「はい、わたくしもそのつもりで準備しておりました。裁判所命令でマーベル一家やビビアン様に子供達との接見禁止命令を出していただく事は可能でしょうか? もしそれが可能であれば⋯⋯子爵家で引き取りたいのです。それが無理なら子爵領内の孤児院でも構いません。
ビビアン様の家族関係は存じませんしわたくしは血の繋がりも何もなく⋯⋯でも、誰よりも2人の幸せを願っております。
子を育てたこともないわたくしでは信用されないと思いますが、孤児院の近くに住んでも良いと思っております。お父様にはまだ許可を貰っておりませんが資金他の援助して下さるのは間違いありません」
「たった数日の関わりでそこまで」
フォレスト公爵様が不思議そうな顔をしておられますがわたくしも同じ気持ちです。
「人の縁と言うのでしょうか。もしかしたら一目惚れかもしれませんね。グレッグとチェイスの幼い笑顔に惹かれてしまいましたの。途中で投げ出さない自信はありますわ」
「お話し中失礼致します。リリスティア様の『投げ出さない・最後まで責任を持つ』は私自身が保障致します。孤児だった私を拾い上げてくれた方ですし、子爵家には他にも何人か同じように拾われた者がおります」
ターニャが後押ししてくれるなんて嬉しい限りです。
「リリスティア様の拾いぐせはラングローズ子爵も承知しておられます」
えーっと、もしかして⋯⋯応援ではなくディスられたのでしょうか。
ターニャや数人の護衛と昨日と同じ秘書官もいますから誰かに見られても問題ありません。
「昨日は申し訳ありませんでした」
開口一番フォレスト公爵様が深々と頭を下げたのに気付いた秘書官のコナー氏が睨んでいます。
「声をかけていただいて助かりました。あの後何か不快な思いをされていないか心配でしたし、子供達の様子も知りたいと思っていました」
社交辞令とは思えない真剣な表情をしておられます。このご様子なら話を聞いていただけるかもしれないと期待してしまいます。
「こちらこそお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。わたくしの事はリリスティアとお呼びくださいませ。
あまり長居ができませんので本題に入らせていただいても宜しいでしょうか」
「勿論です。私の事はノアと呼んでいただければと思います。相談があると伺いましたがどういった内容でしょうか」
「お名前は⋯⋯ご容赦くださいませ。偽造書類が提出されていたのは驚いてしまったのですが⋯⋯マーベル一家への刑罰でお願いがございます」
「⋯⋯手心を加えろとか減刑をと言うのでなければ手伝えることがあるかもしれません。必ず聞き届けるとは言えなくても良ければお聞きします」
慎重な返答に信頼感が持てます。安易な返事をされる方は信用できません。
「減刑どころか思う存分⋯⋯と思っておりますの。わたくしのお願いは子供達のことでございます。マーベル伯爵夫妻やステファン様が子供達の事をどのように思っているかお聞きになられ、フォレスト公爵閣下はどのように思われましたでしょうか?」
「正直言ってあり得ないと思いました。選民主義と人権無視⋯⋯人として最低の行為です」
「幼児虐待の証拠を持っております。医師の診断書以外にメイドの証言もあります」
ケニス先生の書いた診断書とハンナが目撃した虐待の報告書をコナー氏に渡しました。コナー氏から渡された資料を読み進めるごとにフォレスト公爵様の眉間の皺が深くなっていきます。
「たった2日でこの診断書を?」
「はい。子供達に初めて会ったのは一昨日でしたが、虐待されている子供だと直ぐに分かりました。ラングローズ子爵家の伝手を使い、昨日の午後秘密裏に診察を受けさせましたの」
「すぐにわかるほどだったのですか?」
「幼い頃から定期的に孤児院に慰問に行っておりましたので、色々な子供に出会う機会が多かったのが功を奏したと申しますか。たまたま気付いたと言うべきかもしれません」
お母様を早くに亡くしお兄様とは10も歳が離れているわたくしは物心つく前から大人しかいない中で暮らしておりました。
お父様は仕事が忙しく子供同士の付き合いに連れて行くことも出来ないからと言う理由で毎週通わされていたのが子爵領内の孤児院でしたので、慰問というよりもお友達と遊ぶために行っていたようなものです。
学園に通うようになっても休みの日には孤児達と遊んだり手伝いをしておりました。わたくしにとって第二の我が家のような場所だったと思います。
「この書類を元に幼児虐待の罪も加算させていただいてもかまいませんか? 虐待は重罪ですから」
「はい、わたくしもそのつもりで準備しておりました。裁判所命令でマーベル一家やビビアン様に子供達との接見禁止命令を出していただく事は可能でしょうか? もしそれが可能であれば⋯⋯子爵家で引き取りたいのです。それが無理なら子爵領内の孤児院でも構いません。
ビビアン様の家族関係は存じませんしわたくしは血の繋がりも何もなく⋯⋯でも、誰よりも2人の幸せを願っております。
子を育てたこともないわたくしでは信用されないと思いますが、孤児院の近くに住んでも良いと思っております。お父様にはまだ許可を貰っておりませんが資金他の援助して下さるのは間違いありません」
「たった数日の関わりでそこまで」
フォレスト公爵様が不思議そうな顔をしておられますがわたくしも同じ気持ちです。
「人の縁と言うのでしょうか。もしかしたら一目惚れかもしれませんね。グレッグとチェイスの幼い笑顔に惹かれてしまいましたの。途中で投げ出さない自信はありますわ」
「お話し中失礼致します。リリスティア様の『投げ出さない・最後まで責任を持つ』は私自身が保障致します。孤児だった私を拾い上げてくれた方ですし、子爵家には他にも何人か同じように拾われた者がおります」
ターニャが後押ししてくれるなんて嬉しい限りです。
「リリスティア様の拾いぐせはラングローズ子爵も承知しておられます」
えーっと、もしかして⋯⋯応援ではなくディスられたのでしょうか。
32
お気に入りに追加
2,747
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる