【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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24.カオスな顔合わせ

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「なんだゾロゾロと使用人を引き連れおって」

「幼い子供ですから世話する者が側にいるのは当然のことですわ」

「たかが挨拶にぃ大袈裟な。大量の使用人など引き連れていたらぁフォレスト卿に笑われてしまうじゃないかぁ!」

 少し呂律の回っていないステファン様が眉間に皺を寄せで怒鳴っておられますが敵陣の中ですからわたくし一人では2人の子供を支えられません。

「それにその服はどう言うこと? 平民のようじゃないの」

 完全放置だったくせにお義母様がグレッグ達の服装を咎めました。貴族と平民の間に出来た庶子であればこのくらいがちょうど良いはず。下位貴族の子息か大商人の息子程度ですから豪華すぎるくらいのはずです。

「現状に相応しい服を選ばせていただきました」

「何を言ってるの!? サッサと着替え」

「フォレスト公爵閣下をこれ以上お待たせするのはいかがなものかと」

 着替えさせてくるように仰るお義母様の言葉を遮ってエマーソンがドアの前に立ちました。

 コンコンと3回ノックし中から返答があるのを待ちました。今をときめく公爵様との対面ですからマーベル一家は皆頬を赤らめ胸を張って襟や袖のレース飾りを整えています。

 そう言えばまだ籍を入れていないビビアン様もいらっしゃるので、グレッグ達の事を説明する時にご紹介されるのでしょう。それであれば子供達は近くにいた方がいいように思いますが⋯⋯。

 部屋に入るとフォレスト公爵様がゆったりとソファに腰掛けておられました。少し伸びたハニーブロンドと鮮やかな碧眼、夜の訪れにふさわしい焦茶色のコートと白地のウエストコートには金糸と銀糸で刺繍が施されています。コートと同じ素材のブリーチズが上品さを引き立てていました。

 お父様から届いた資料には敵に単騎で飛び込むほど勇猛果敢な戦士だとありましたが、穏やかな佇まいは戦場よりも王立図書館の方が似合っておられるように思われます。

 つまり⋯⋯かなりの曲者だと言う事でしょう。

 その後ろと両脇には大きな体躯の護衛が4人、帯剣をしておられて迫力満点です。もう1人文官タイプの方がおられるのは秘書官の方でしょう。


 わたくし達は一列に並んだマーベル一家の後ろに並ぶようお義母様から目と顎で合図されましたのでステファン様の後ろあたりに並び、グレッグと手を繋いだままでできる限り丁寧なカーテシーをして待ちました。

「どうぞ頭をお上げください。こちらはフォレスト公爵となられたノア・フォレスト様であらせられます。本日は非公式の訪問でございます故そのように。
わたくしはフォレスト公爵閣下の秘書官をしておりますセルゲイ・コナーと申します」

「今日はわざわざ我が息子ステファンの祝いの席にお越しくださり恐悦至極に存じます。マーベル伯爵家当主フレッド・マーベルでございます。以後お見知り置きくださいますようお願い致します。こちらにおりますのは妻のナディアと娘のアリシア、ステファンと第二夫人のビビアンでございます」

 アリシア様だけならいざ知らずビビアン様まで媚を売るような怪しいクネクネになったのはなぜなのでしょう。

 アリシア様は離婚しておられますから少しわかる気がしなくもありませんが、ビビアン様はこれから第二夫人になられると言うのにステファン様の隣でフォレスト公爵様に向かって謎のポーズをとるのは何故?

 いえ、斜め後ろから見ておりますので多分勘違いでしょう。自分で思うより緊張しているのか、おかしな妄想が見えていたようです。


「フォレスト公爵閣下! わたくしはステファン兄様の妹のアリシアと申しますの。夜会で何度かお見かけした事が⋯⋯宜しければこの後少しお喋りいたしませんこと? 最上級のワインを別室に準備しておりますの。フォレスト閣下のお話を是非お聞かせくださいませ!」

 お酒のせいですね。アリシア様もかなりお酒がお好きですし、先ほどチラッと見た限りですが少しフラフラしておられましたから。酔うと自制心が吹っ飛ぶタイプですが、開口一番これはあまりにも⋯⋯。

「アタシの事覚えておられますかぁ? 向こうで何度もお見かけした事があるんですけど? ビビアンです! ずーっとお話ししたいなあって思ってたんで、会いに来てくださるって聞いてぇ凄く楽しみにしてました!」

「な! ビビアン⋯⋯お前、何を!!」



 カオスです。

 まさかこのような事態になるとは思っておりませんでしたが、この後2人の発言が頭から消え失せるほどの事実を知らされるのです。

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