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22.ケニス先生登場
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午後2時を過ぎて少しずつ招待客が集まりはじめ、屋敷の中がザワザワと騒がしくなってきました。
カラッと晴れた青空の下で行われるガーデンパーティーですが、招待客が多いので裏庭だけでなく一階の応接室やホールも開放しています。
青の間からは裏庭が見えないのですが時々招待客達の声や歓声が聞こえてくることがあり、その度にグレッグとチェイスがビクビクと震え上がっています。
「ターニャはね、すっごく強いの。男の人だってポイって投げちゃうのよ」
ステファン様がメイドの前で平気で手を出すのならこちらもそれなりに対応策を考えなくてはなりません。
メイサは少し戦えるようですが仕えている主人に逆らう事はできないでしょう。ターニャの雇い主はラングローズ子爵ですからメイサよりもマーベル一家に抵抗できます。
「つよい?」
「そう、いーっぱい練習したからね。悪い奴なんかけちょんけちょんにしちゃうんだ。腕相撲してみる?」
キョトンと首を傾げたグレッグはキラキラした目でターニャを見つめています。怖い思いをした後に『強い』は何よりも魅力的なはずです。
チェイスとハンナが応援する前でターニャとグレッグが腕相撲をして⋯⋯メイサは審判です。
ビクビクそわそわしていたグレッグの気を逸らしている間にわたくしは顔合わせ用の服の準備です。
グレッグ達のマナー? 気にしません。チェイスはまだ一歳なのでハンナに抱っこして貰う予定ですし、グレッグはわたくしと手を繋いだままでちょこんと頭を下げれば十分です。
喋るなと言い付けたのはステファン様ですからね。
3時前になったのでターニャがそっとケニス先生を迎えに行き、グレッグはメイサと真剣勝負をはじめました。チェイスの『にぃ、にぃ!』は最高の応援ですね。
こんな可愛い子供達に暴言・暴力だなんてタダではおきません。子供達の安全のためなら離婚は延期です。
明日子供達の出生届けの確認をしてみる予定でおります。ステファン様が父親として明記されていたなら庶子ですが、もし父親欄が空白なんて事になれば対応も変えなくては。
マーベル伯爵家の庶子なのか父親のいないビビアン様の子供なのか。
敵の数が変わってきますもの。
小さくノックした後でターニャがケニス先生とやって来ました。目に見えて怯えたグレッグ達を見たケニス先生がドアの近くで立ち止まりました。
「ようこそお越しくださいました。そしてお久しぶりですね」
わたくしが少し大袈裟な笑顔を浮かべてケニス先生に挨拶をするとグレッグ達の緊張が少し解けた気がします。
「やあ、ターニャから聞いたんだけどまたまた面白そうな事になってるね」
ケニス先生は一箇所に定住せず気紛れにフラフラと飛び回っていた変わり者のお医者様ですが腕は確かなのです。知り合ってしばらくしてからわたくしのお兄様が留学中に知り合ったお医者様だと知った時は驚きました。
「こんにちは。僕はケニス、お医者さんって分かるかな?」
しゃがみ込んでグレッグ達と目の高さを合わせたケニス先生は商人を装っていますが、寝癖のついた髪と薄ら伸びた無精髭はそのままでした。
これでは誰もお医者様だとは思いませんから、裏門を抜けた後出会った使用人達も気にも留めなかったでしょう。
「お?」
「そう、お医者さん。近くに行ってもいい?」
グレッグが頷くまで辛抱強く待ってからコーヒーテーブルの前にドカンと座ったケニス先生がターニャにおねだりをはじめました。
「超喉乾いてるんだよな~。ターニャの淹れたお茶が飲みたいなあ。あ! このクッキー食べてもいい?」
「それはグレッグ様とチェイス様のオヤツです。大人が子供のオヤツの横取りとかあり得ないでしょうが」
「はは。んじゃグレッグにおねだりしようかなあ。可哀想なお兄ちゃんにクッキーを恵んで下さい」
パチンと音を立てて両手を合わせ頭を下げたケニス先生を見たグレッグは目を丸くしています。面白がったチェイスは手をパチパチと叩いてハンナに抱きつきました。
ニパッと笑ったケニス先生にそっとクッキーを差し出したグレッグ⋯⋯大丈夫そうですね。
「うー、美味い。ナッツとか入ってないやつだ」
「当然でしょう4歳と1歳用なんですから」
惚けたケニス先生と手厳しいターニャの掛け合いは子爵家では定番です。ハンナやメイサにも好評のようで笑顔が浮かびはじめました。
「んで? 一杯服が並んでるとこを見るとこれから着てみるってやつ? わあ、僕めちゃめちゃいい時に来た感じかな。グレッグはどれを着るの? チェイスのは?」
無言のグレッグを無視してケニス先生だけが話を続けています。
カラッと晴れた青空の下で行われるガーデンパーティーですが、招待客が多いので裏庭だけでなく一階の応接室やホールも開放しています。
青の間からは裏庭が見えないのですが時々招待客達の声や歓声が聞こえてくることがあり、その度にグレッグとチェイスがビクビクと震え上がっています。
「ターニャはね、すっごく強いの。男の人だってポイって投げちゃうのよ」
ステファン様がメイドの前で平気で手を出すのならこちらもそれなりに対応策を考えなくてはなりません。
メイサは少し戦えるようですが仕えている主人に逆らう事はできないでしょう。ターニャの雇い主はラングローズ子爵ですからメイサよりもマーベル一家に抵抗できます。
「つよい?」
「そう、いーっぱい練習したからね。悪い奴なんかけちょんけちょんにしちゃうんだ。腕相撲してみる?」
キョトンと首を傾げたグレッグはキラキラした目でターニャを見つめています。怖い思いをした後に『強い』は何よりも魅力的なはずです。
チェイスとハンナが応援する前でターニャとグレッグが腕相撲をして⋯⋯メイサは審判です。
ビクビクそわそわしていたグレッグの気を逸らしている間にわたくしは顔合わせ用の服の準備です。
グレッグ達のマナー? 気にしません。チェイスはまだ一歳なのでハンナに抱っこして貰う予定ですし、グレッグはわたくしと手を繋いだままでちょこんと頭を下げれば十分です。
喋るなと言い付けたのはステファン様ですからね。
3時前になったのでターニャがそっとケニス先生を迎えに行き、グレッグはメイサと真剣勝負をはじめました。チェイスの『にぃ、にぃ!』は最高の応援ですね。
こんな可愛い子供達に暴言・暴力だなんてタダではおきません。子供達の安全のためなら離婚は延期です。
明日子供達の出生届けの確認をしてみる予定でおります。ステファン様が父親として明記されていたなら庶子ですが、もし父親欄が空白なんて事になれば対応も変えなくては。
マーベル伯爵家の庶子なのか父親のいないビビアン様の子供なのか。
敵の数が変わってきますもの。
小さくノックした後でターニャがケニス先生とやって来ました。目に見えて怯えたグレッグ達を見たケニス先生がドアの近くで立ち止まりました。
「ようこそお越しくださいました。そしてお久しぶりですね」
わたくしが少し大袈裟な笑顔を浮かべてケニス先生に挨拶をするとグレッグ達の緊張が少し解けた気がします。
「やあ、ターニャから聞いたんだけどまたまた面白そうな事になってるね」
ケニス先生は一箇所に定住せず気紛れにフラフラと飛び回っていた変わり者のお医者様ですが腕は確かなのです。知り合ってしばらくしてからわたくしのお兄様が留学中に知り合ったお医者様だと知った時は驚きました。
「こんにちは。僕はケニス、お医者さんって分かるかな?」
しゃがみ込んでグレッグ達と目の高さを合わせたケニス先生は商人を装っていますが、寝癖のついた髪と薄ら伸びた無精髭はそのままでした。
これでは誰もお医者様だとは思いませんから、裏門を抜けた後出会った使用人達も気にも留めなかったでしょう。
「お?」
「そう、お医者さん。近くに行ってもいい?」
グレッグが頷くまで辛抱強く待ってからコーヒーテーブルの前にドカンと座ったケニス先生がターニャにおねだりをはじめました。
「超喉乾いてるんだよな~。ターニャの淹れたお茶が飲みたいなあ。あ! このクッキー食べてもいい?」
「それはグレッグ様とチェイス様のオヤツです。大人が子供のオヤツの横取りとかあり得ないでしょうが」
「はは。んじゃグレッグにおねだりしようかなあ。可哀想なお兄ちゃんにクッキーを恵んで下さい」
パチンと音を立てて両手を合わせ頭を下げたケニス先生を見たグレッグは目を丸くしています。面白がったチェイスは手をパチパチと叩いてハンナに抱きつきました。
ニパッと笑ったケニス先生にそっとクッキーを差し出したグレッグ⋯⋯大丈夫そうですね。
「うー、美味い。ナッツとか入ってないやつだ」
「当然でしょう4歳と1歳用なんですから」
惚けたケニス先生と手厳しいターニャの掛け合いは子爵家では定番です。ハンナやメイサにも好評のようで笑顔が浮かびはじめました。
「んで? 一杯服が並んでるとこを見るとこれから着てみるってやつ? わあ、僕めちゃめちゃいい時に来た感じかな。グレッグはどれを着るの? チェイスのは?」
無言のグレッグを無視してケニス先生だけが話を続けています。
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