【完結】子供を抱いて帰って来た夫が満面の笑みを浮かべてます

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19.最短コースからざまぁコースまで取り揃えて

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 どんなルートを準備しているのかよく分からない?

 先ずよくあるのは『白い結婚』ですね。ステファン様は初夜を執事とメイド長の3人で過ごされましたから証人はおりますし、裏切られた時のために医師の診断書もいただいております。
 その後ステファン様とは2人になるどころかお会いすることもなかったのはご存知の通りです。


 それに、婚姻の申し入れがあった日からずっと詳細な日記をつけておりますので、婚約・婚姻の経緯から輿入れ後のわたくしへの対応まで全て記載されております。

 日記が証拠になると知った時は驚いてしまいました。


 わたくしは昨日までビビアン様達の存在を知らなかったのですがお父様は戦地でのステファン様の調査しておられたそうです。

 昨日の夜届いた調査書を見て驚きましたがステファン様とビビアン様の関係は任務についた直後からはじまっておりました。

 娼館に勤めておられたビビアン様を即日引き抜き衣食住の全てを負担しておられたそうですから、ビビアン様こそ『一目惚れ』のお相手だったのでしょう。

 高価なドレスやアクセサリーを取り寄せ、休暇の全てはビビアン様と過ごし旅行にも行かれていたので熱愛ですね。部隊の方々もご存知だったようですし、出産後には盛大なパーティーも開いておられたそうです。

 戦争中の⋯⋯戦地での出来事ですよ?

 ステファン様がお仕事中はお暇だったようで、ビビアン様の住まいにはその他にも殿が出入りしておられました。ビビアン様だけを熱愛しておられたステファン様は少しお可哀想な寝取られ男だったようです。

 ステファン様に不貞されたと知っても驚いただけだと思っておりましたが、寝取られていたと知った時『ざまぁ』と思ったわたくしはちょっぴり傷ついていたのかもしれません。


 この縁組をゴリ押しした父方の叔父とマーベル伯爵が脱税している証拠や共同で行なっている不法な人身売買も調べてあります。脱税をしたのがわたくしになっていたのを知った時は呆れ返ってしまいました。

 わたくしは『トカゲの尻尾』になるつもりはございませんので膨大な証拠を集めております。冤罪を押しつける家にはいられませんから、これを告発するタイミングでも離婚できるでしょう。


 離婚理由とは別のお話になりますけれど、持参金の使い込みや持参物の不当な売却だけでもマーベル伯爵家は領地や爵位を売却する他ないでしょうし、運良く生き残れたとしても社交界には出られなくなるでしょう。


 それに、先ほど届いたお父様からのお手紙にはフォルスト卿の情報と共に待ち望んでいた調査報告が入っておりましたから、それも使えそうです。この婚姻どころか婚約そのものが紛い物だったと言う内容でしたので。



 さて、問題の公爵様の情報ですが⋯⋯。

 第一部隊の総大将として数々の功績を上げて帰還されたフォルスト公爵様は現在29歳。

 一年前にご尊父様が亡くなられたのですが戦線を離れる事を拒否され戦争の早期終結に尽力された英雄のお一人で、今から一ヶ月前に戦争終結が確定して漸く戦線を離脱し公爵位を継がれたそうです。

 ご尊父の訃報をお聞きになられた後『父上ならば国と民を守れと仰るはず』だと最後まで戦地で戦ってこられたそうで、義に溢れた素晴らしい方だと社交界で大騒ぎになっているとか。

 隣国との境界を守っておられるタンゼント辺境伯とは学園生時代からの親友だと書かれておりました。

 国と民と友を守り抜いた御仁であればグレッグ達との顔合わせ程度は広いお心でお許しくださる可能性は高いかもしれません。

 不敬をしっかりと謝罪しなるべく早めに切り上げる事に致しましょう。いざという時は土下座も覚悟しておりますし、それなりの処罰にも甘んじるつもりでおります。

 勿論、グレッグとチェイスの為だけです。顔合わせを計画した伯爵夫妻や伯爵家への処遇はわたくしには関係ありませんもの。

 それにしてもこれほど評判の良い方がステファン様を特別に可愛がっておられた? 人を見る目は少しゆるゆるな方なのでしょう。性格や評判などは噂半分の可能性もあると心に留め置く事に致しました。



「若奥様、バース商会が参りました」

 ノックの後にドアの向こうからメイドの声がしました。

「ありがとう、青の間に行くので少し待ってからお通ししてくれる? 大勢で来ていても青の間にはできるだけ少人数でお願いね」

「畏まりました」

 お父様からの手紙を片付けて青の間に向かうと運悪くチェイスはお昼寝中で、グレッグは背中を向けたまま三角座りして振り向きもしません。

 困惑気味のメイサはグレッグから見える場所に座り込んでいますしハンナは眉間に皺を寄せています。

「グレッグ?」



 メイサがグレッグの顔を覗き込むと小さな膝に顔をつけていたグレッグは頭を両手で抱え込んでしまいました。

 こんな短い時間でいったい何があったのでしょう。

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