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18.色々と準備は進めてありますから
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「ケニス医師は一昨日から少し遠方に出かけておられたのですがお昼すぎには戻って来てくださるそうです。3時に裏門です。
それと旦那様から手紙を預かってまいりました」
手紙を受け取りながらお義母様の無謀な指示とエマーソンと打ち合わせた内容を話しました。
「あの方達は馬鹿ですか? 今更ですけど。この状況になっても打開策を考えるとか、リリスティア様はアホですか!? こんな家とっとと捨ててしまえばいいじゃないですか! パーティーの最中なら誰にも気付かれずに出ていけます」
パーティーの最中は家人も使用人も忙しくしていますからわたくしの事を気にする余裕などないでしょう。ステファン様が帰ってこられた時のご様子で円満離婚が叶わなそうだと思ったらそうしようと思っていたりもしたのですが⋯⋯。
「それも良いかなって思ってたのだけど、今は少し悩んでいるの。わたくしはほら、監禁されてるわけでも監視されてるわけでもないでしょう? だからいつでも出ていけるの。取り敢えず医師の診察と公爵様とグレッグ達の面会を終わらせながら考えてみるわ」
マーベル伯爵家の方々はわたくしが出ていくとは思っておられないようで比較的自由にさせてくれます。
実家に帰るとかお茶会や夜会への参加などは禁止されておりますけれど、買い物や教会などでの外出は許可が下ります。監視役代わりの護衛などがつくわけでもありませんから逃げ出すのは簡単です。嫁入りで持ってきた貴重品はもう残っておりませんから手ぶらで出ていけば良いのです。
貴重品? お父様に買っていただいたドレスやアクセサリーなどです。結婚してすぐにお義母様やアリシア様が持っていかれましたけれど特に気にしておりません。
持参した持ち物は全て書類に記載してありますし亡くなられたお母様の形見などの大切な物は実家に置いたままですから。
この国では正妻を守るための法が整備されているのです。庶子や第二夫人についてのように嫁入りの際の持参物についても妻の権利が守られています。
婚姻前契約書を作成する際持参金や各自の財産の取り扱いについての取り決めを行いますが、婚家に持参した品については治安判事の認める代理人立ち会いで正式な書類を作成しておけば離婚の際に持ち出しが可能になります。
戦好きの先代国王の御代、財産狙いでの婚姻・離婚が頻発しておりました。戦争で疲弊した貴族は立場の弱かった妻から全てを奪い家から追い出しては新たな婚姻を結ぶ事を繰り返していたのです。
不当な扱いを受け裁判所に駆け込む者達が続出し司法は混迷を極め他国へ醜聞が広まってしまいました。
そこで制定されたのが特別財産保護法です。婚姻時に持参した物は当人の所有物とみなし、正当なる理由がない場合は離婚後の持ち出しが可能となりました。
勿論夫側にも適応されるのでおあいこです。
と言うわけで⋯⋯お義母様やアリシア様が持ち出したわたくしの貴重品は返品もしくはそれと同額の弁償していただくことが出来ますの。
え? 弁償となった場合の減価償却ですか? 勿論致しますとも、どんな物でも必ず経年劣化致しますからね。その計算はとても複雑で全ての金額が判明するまで財産が凍結される場合もあると言う恐ろしい法です。
因みに不当に奪われた時点での価格を算定します。この計算を一品ずつ行うのですから膨大な時間がかかる場合もありますし、担当官は見せしめのように公で調査するのです。
真面な思考の持ち主なら危険回避しておられたでしょうに⋯⋯とても残念に思っております。
物さえあれば古びていても傷がついていても問題はありませんから本人が破棄・紛失した事にできるよう売却先を必死で誤魔化すのですが、伯爵家の方々はその辺りも緩くておられるようです。
お父様の伝手を使い全て調べ尽くしておりますの。販売先・販売金額等々。
このような不法に手に入れた品の売却など闇ルートしか使えませんから返品・弁償していただけなかった場合は速攻で訴える予定で訴状は準備完了しております。
アリシア様の嫁入りの際に代理人を同行したと仰っておられましたからお義母様達はご存知ですのに、わたくしが書類を作成した事は忘れておられるのでしょう。
確実に離婚できるルートはいくつも準備してあるのでわたくしには余裕があるのです。マーベル伯爵家を守りたいならエマーソンはもっと伯爵夫妻を上手に転がすべきでした。
ラングローズ子爵家を甘く見過ぎているだけかもしれませんが⋯⋯。
えーっと、どんなルートを準備しているのかよく分からない? でございますか?
それと旦那様から手紙を預かってまいりました」
手紙を受け取りながらお義母様の無謀な指示とエマーソンと打ち合わせた内容を話しました。
「あの方達は馬鹿ですか? 今更ですけど。この状況になっても打開策を考えるとか、リリスティア様はアホですか!? こんな家とっとと捨ててしまえばいいじゃないですか! パーティーの最中なら誰にも気付かれずに出ていけます」
パーティーの最中は家人も使用人も忙しくしていますからわたくしの事を気にする余裕などないでしょう。ステファン様が帰ってこられた時のご様子で円満離婚が叶わなそうだと思ったらそうしようと思っていたりもしたのですが⋯⋯。
「それも良いかなって思ってたのだけど、今は少し悩んでいるの。わたくしはほら、監禁されてるわけでも監視されてるわけでもないでしょう? だからいつでも出ていけるの。取り敢えず医師の診察と公爵様とグレッグ達の面会を終わらせながら考えてみるわ」
マーベル伯爵家の方々はわたくしが出ていくとは思っておられないようで比較的自由にさせてくれます。
実家に帰るとかお茶会や夜会への参加などは禁止されておりますけれど、買い物や教会などでの外出は許可が下ります。監視役代わりの護衛などがつくわけでもありませんから逃げ出すのは簡単です。嫁入りで持ってきた貴重品はもう残っておりませんから手ぶらで出ていけば良いのです。
貴重品? お父様に買っていただいたドレスやアクセサリーなどです。結婚してすぐにお義母様やアリシア様が持っていかれましたけれど特に気にしておりません。
持参した持ち物は全て書類に記載してありますし亡くなられたお母様の形見などの大切な物は実家に置いたままですから。
この国では正妻を守るための法が整備されているのです。庶子や第二夫人についてのように嫁入りの際の持参物についても妻の権利が守られています。
婚姻前契約書を作成する際持参金や各自の財産の取り扱いについての取り決めを行いますが、婚家に持参した品については治安判事の認める代理人立ち会いで正式な書類を作成しておけば離婚の際に持ち出しが可能になります。
戦好きの先代国王の御代、財産狙いでの婚姻・離婚が頻発しておりました。戦争で疲弊した貴族は立場の弱かった妻から全てを奪い家から追い出しては新たな婚姻を結ぶ事を繰り返していたのです。
不当な扱いを受け裁判所に駆け込む者達が続出し司法は混迷を極め他国へ醜聞が広まってしまいました。
そこで制定されたのが特別財産保護法です。婚姻時に持参した物は当人の所有物とみなし、正当なる理由がない場合は離婚後の持ち出しが可能となりました。
勿論夫側にも適応されるのでおあいこです。
と言うわけで⋯⋯お義母様やアリシア様が持ち出したわたくしの貴重品は返品もしくはそれと同額の弁償していただくことが出来ますの。
え? 弁償となった場合の減価償却ですか? 勿論致しますとも、どんな物でも必ず経年劣化致しますからね。その計算はとても複雑で全ての金額が判明するまで財産が凍結される場合もあると言う恐ろしい法です。
因みに不当に奪われた時点での価格を算定します。この計算を一品ずつ行うのですから膨大な時間がかかる場合もありますし、担当官は見せしめのように公で調査するのです。
真面な思考の持ち主なら危険回避しておられたでしょうに⋯⋯とても残念に思っております。
物さえあれば古びていても傷がついていても問題はありませんから本人が破棄・紛失した事にできるよう売却先を必死で誤魔化すのですが、伯爵家の方々はその辺りも緩くておられるようです。
お父様の伝手を使い全て調べ尽くしておりますの。販売先・販売金額等々。
このような不法に手に入れた品の売却など闇ルートしか使えませんから返品・弁償していただけなかった場合は速攻で訴える予定で訴状は準備完了しております。
アリシア様の嫁入りの際に代理人を同行したと仰っておられましたからお義母様達はご存知ですのに、わたくしが書類を作成した事は忘れておられるのでしょう。
確実に離婚できるルートはいくつも準備してあるのでわたくしには余裕があるのです。マーベル伯爵家を守りたいならエマーソンはもっと伯爵夫妻を上手に転がすべきでした。
ラングローズ子爵家を甘く見過ぎているだけかもしれませんが⋯⋯。
えーっと、どんなルートを準備しているのかよく分からない? でございますか?
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