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17.兄弟喧嘩にもならない
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マーベル伯爵家の方々のわたくしに対する扱いが粗雑なおかげで使用人達との距離が近くなったと思うと複雑な気分ですけれど、難しく考えずラッキーだと思うことにしておりますの。
学園生の頃どなたかに『強制ポジティブシンキングが発動ね』と揶揄われたことがありました。うーん、どなただったか思い出せませんね。
若奥様と呼ばれながら使用人と一緒になって掃除や洗濯をするわたくしとの仕事や会話はさぞやりにくかったと思います。
立場は使用人達と対等ではないはずなのに仕事内容は対等ですから。粗略に扱われても仕方ないと覚悟しておりましたのにとても親切にしてもらったのですから感謝しかないのです。
巷に溢れている物語とは随分違っていてわたくしの5年間はとても幸せでした。
仲のいい家族や気立ての良い使用人に囲まれて元気いっぱいの子供のいる暮らしなら⋯⋯。
うっかり妄想してしまったせいでお義母様の仰った言葉を思い出してしまいました。
お義母様の仰るように『自分の子供が持てないせいでグレッグ達に執着している』のだとしたら気をつけなくてはいけません。あの子達を誰かの身代わりにするなんて間違っていますものね。
孤児院の子供達と一緒でグレッグ達とも今だけの関係、あまり夢中になると別れが辛くなります。
実家に帰ったら昔のように孤児院に慰問に行きましょう。たくさんの子供に会えるのですからここは我慢して適切な距離をあけなくては。
シスターになる自信はありませんが孤児院で働けないか探してみるのも良いかもです。昔から子供は大好きですし、わたくしにでもできることがあるかもしれませんしね。
22歳の離婚経験者では年配の方の後妻くらいしか縁はありませんから自分の子供はとっくに諦めています。血が繋がっていなくでも子供に関われる仕事が出来れば最高なので早めに調べてみることにしましょう。
離婚後の不安が少しずつ解消できて嬉しくなりました。時間の余裕は心の余裕にも繋がるみたいです。第一候補は孤児院の職員で、第二候補はメイドですね。
わたくしにはメイドの方が侍女よりも向いている気がするのです。お天気のいい日にお洗濯をするのも窓ガラスがピカピカになるのもとても気持ちいいのです。
メイドならコルセットとも踵の高い靴とも縁が切れます。メイド服に慣れてしまったらコルセットや重いドレスに不満が爆発ですから、貴族令嬢には戻れそうにありません。
「グレッグの目は鮮やかな青なんだけどチェイスはどうかしら」
少し前から確認しようとしていたのですが常に動き回るチェイスは濃い色のような気はしています。
「チェイス様は⋯⋯その、琥珀色なんです」
おや⋯⋯チェイスの髪は所々メッシュが入ったように見えるダークブロンドで⋯⋯いえ、たかが色くらい気にしなくていいでしょう。ハンナが少し不安そうな顔をしているのでわたくしはにっこり笑って言いましたの。
「隔世遺伝かしら。わたくしの従姉妹もそうなのよ。両親と全然違う髪色で生まれなのだけど、母方のお祖母様と同じお色だったの」
「そうなんですね~、平民は雑多に混じってるから親と違う色なんて当たり前のようにありますけど、貴族の方にもあるんですね」
「勿論よ、貴族も平民も同じ人間だもの。そう言えば遠い昔なんだけど、王族には高貴な青い血が流れてるって信じている国があったそうよ」
「いや、それ本気で怖くないですか?」
「ええ、話を聞いた時青い血なんて魔物みたいだって思ったもの」
上手く話を切り替えられたようで一安心です。この状況でおかしな噂が流れたら大変なことになりますから、危険な芽は早めに摘みましょう。
「確かに! チェイス様には赤ーい血が流れてますからねー。悪戯好きの立派な人間なので優しいお兄ちゃんのグレッグ様に感謝して、オヤツを取り上げるのはやめましょうねー」
ハンナに抱き上げられたチェイスの笑い声が聞こえてきました。
うっ、可愛い! チェイスはグレッグとは違った可愛さがあります。グレッグはまん丸お目目の泣き虫天使ですが、少しつり目のチェイスは遠くを見る時に少しキリッとした顔をする時があって⋯⋯。
どちらも女の子に追いかけ回される未来しか見えません。
ターニャが帰ってきた時も青の間で呑気に過ごしていたわたくしは慌てて目の前のクッキーを貢いでしまいました。
「自室で話をしましょう。わたくしからも新しい話があるの」
商人が来たら教えて欲しいと言いおいて自室に戻りました。
学園生の頃どなたかに『強制ポジティブシンキングが発動ね』と揶揄われたことがありました。うーん、どなただったか思い出せませんね。
若奥様と呼ばれながら使用人と一緒になって掃除や洗濯をするわたくしとの仕事や会話はさぞやりにくかったと思います。
立場は使用人達と対等ではないはずなのに仕事内容は対等ですから。粗略に扱われても仕方ないと覚悟しておりましたのにとても親切にしてもらったのですから感謝しかないのです。
巷に溢れている物語とは随分違っていてわたくしの5年間はとても幸せでした。
仲のいい家族や気立ての良い使用人に囲まれて元気いっぱいの子供のいる暮らしなら⋯⋯。
うっかり妄想してしまったせいでお義母様の仰った言葉を思い出してしまいました。
お義母様の仰るように『自分の子供が持てないせいでグレッグ達に執着している』のだとしたら気をつけなくてはいけません。あの子達を誰かの身代わりにするなんて間違っていますものね。
孤児院の子供達と一緒でグレッグ達とも今だけの関係、あまり夢中になると別れが辛くなります。
実家に帰ったら昔のように孤児院に慰問に行きましょう。たくさんの子供に会えるのですからここは我慢して適切な距離をあけなくては。
シスターになる自信はありませんが孤児院で働けないか探してみるのも良いかもです。昔から子供は大好きですし、わたくしにでもできることがあるかもしれませんしね。
22歳の離婚経験者では年配の方の後妻くらいしか縁はありませんから自分の子供はとっくに諦めています。血が繋がっていなくでも子供に関われる仕事が出来れば最高なので早めに調べてみることにしましょう。
離婚後の不安が少しずつ解消できて嬉しくなりました。時間の余裕は心の余裕にも繋がるみたいです。第一候補は孤児院の職員で、第二候補はメイドですね。
わたくしにはメイドの方が侍女よりも向いている気がするのです。お天気のいい日にお洗濯をするのも窓ガラスがピカピカになるのもとても気持ちいいのです。
メイドならコルセットとも踵の高い靴とも縁が切れます。メイド服に慣れてしまったらコルセットや重いドレスに不満が爆発ですから、貴族令嬢には戻れそうにありません。
「グレッグの目は鮮やかな青なんだけどチェイスはどうかしら」
少し前から確認しようとしていたのですが常に動き回るチェイスは濃い色のような気はしています。
「チェイス様は⋯⋯その、琥珀色なんです」
おや⋯⋯チェイスの髪は所々メッシュが入ったように見えるダークブロンドで⋯⋯いえ、たかが色くらい気にしなくていいでしょう。ハンナが少し不安そうな顔をしているのでわたくしはにっこり笑って言いましたの。
「隔世遺伝かしら。わたくしの従姉妹もそうなのよ。両親と全然違う髪色で生まれなのだけど、母方のお祖母様と同じお色だったの」
「そうなんですね~、平民は雑多に混じってるから親と違う色なんて当たり前のようにありますけど、貴族の方にもあるんですね」
「勿論よ、貴族も平民も同じ人間だもの。そう言えば遠い昔なんだけど、王族には高貴な青い血が流れてるって信じている国があったそうよ」
「いや、それ本気で怖くないですか?」
「ええ、話を聞いた時青い血なんて魔物みたいだって思ったもの」
上手く話を切り替えられたようで一安心です。この状況でおかしな噂が流れたら大変なことになりますから、危険な芽は早めに摘みましょう。
「確かに! チェイス様には赤ーい血が流れてますからねー。悪戯好きの立派な人間なので優しいお兄ちゃんのグレッグ様に感謝して、オヤツを取り上げるのはやめましょうねー」
ハンナに抱き上げられたチェイスの笑い声が聞こえてきました。
うっ、可愛い! チェイスはグレッグとは違った可愛さがあります。グレッグはまん丸お目目の泣き虫天使ですが、少しつり目のチェイスは遠くを見る時に少しキリッとした顔をする時があって⋯⋯。
どちらも女の子に追いかけ回される未来しか見えません。
ターニャが帰ってきた時も青の間で呑気に過ごしていたわたくしは慌てて目の前のクッキーを貢いでしまいました。
「自室で話をしましょう。わたくしからも新しい話があるの」
商人が来たら教えて欲しいと言いおいて自室に戻りました。
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