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3.伯爵夫妻と義妹は能天気
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「はぁ、疲れたわ。リリスティア、お茶を入れてちょうだい」
近くにメイドはおりますがお義母様は細々とした仕事をわたくしに言いつけるのがお好きなので、黙ってお茶の準備をはじめました。
「お兄様かっこよかったわね~、陛下から直々にお言葉をいただいてたし」
お兄様ラブのアリシア様は今日の為に誂えた若草色のドレスにエメラルドとダイヤモンドの豪華なネックレスです。3年前に結婚されたのですが浮気がバレて離婚して今は伯爵家で暮らしておられます。
「当然ですよ、何しろ数多くの手柄を立てたんですからね」
緋色に近い濃い赤のドレスを纏ったお義母様もエメラルドのアクセサリーで全身をコーディネートしておられます。濃い赤に緑の色が埋没している気がしますが本人の好みもありますからノーコメントです。
赤はお義母様のラッキーカラーだそうですし愛する息子の出迎えをされるお義母様にはこれ以外の選択肢はないのでしょう。
「あの様子ならマーベル伯爵家も侯爵に陞爵されるかもしれんな」
お義父様のお衣装はカフの大きなコートと腰が隠れるほどの長さで豪奢な刺繍の入ったウエストコートです。凝った結びのクラバットにもエメラルドが飾られていました。
財務資料を見たことがあるのは秘密ですから口にはしませんけれど、どれも新しく仕立てたり購入したものばかりで請求書が届くのが不安になってしまいました。
マーベル伯爵領は手付かずの荒れ地が多く麦と羊でかろうじて生きながらえています。さしたる特産品もなく税収は右肩下がりですがマーベル伯爵達は気にしていないようで領地に手を入れる気もなく代官任せ、わたくしの提案も却下され続けています。
わたくしの持参金もほぼ使い切っていますし、わたくしの父ラングローズ子爵家から支援金をもぎ取ろうと画策していることも知っています。
このような状況で愛人や庶子を連れてきてどうするつもりなのか⋯⋯何を言い出すのか少し楽しみにしています。
お義父様は熱々で、お義母様と義妹は少し温めのお茶をお出しして次の指示を待ちました。
わたくしのお茶ですか? そんな物を準備したら嫌味の嵐確定ですからソファの横で静観しています。この方達と一緒にお茶をいただいた覚えはないですし、嫁はソファに座るのも禁止だそうですしね。
この家のしきたりだと初日に教えられてからずっとですからもう慣れてしまいました。
因みに食事も毎回一人自室でいただくよう言われておりますが、今日はどうなるのか⋯⋯。
マーベル家の方達とはこのような状態ですが使用人達とはとても良い関係です、多分。
自分勝⋯⋯傲m⋯⋯えーっと、少しばかり気難しいマーベル伯爵夫妻と、我儘⋯⋯ではなく自由奔放と言うか自分の心に忠実な義妹に仕えるのは色々と気苦労があるようで、使用人達のストレスは他家よりもマシマシのようです。
給金が減っているのも原因の一つです。
そんな状況だからなのかマーベル家の方達からメイド扱いされて家事を手伝うわたくしに同情票が集まっているのかもしれません。
一応若奥様と呼ばれておりますがおかげさまで洗濯や皿洗いも上達しました。
ピンクさんについてお聞きしたいのですがこちらから声をおかけすると叱られてしまう事が多いのでここは黙っていた方が賢明でしょう。
「ビビアンや子供達の身の回りの品を一新しなくてはならないから、明日は仕立て屋を呼びましょう。ステファンの物も誂えなくてはね」
お義母様の話からすると、やっぱりピンクさんはここに住むようです。それにしても4人分の身の回りの品⋯⋯いったいいくらかかるのでしょう。
「グレッグのお披露目パーティーもしなくちゃね」
「それは来年だな」
今4歳となると戦地に行って直ぐにピンクさんを妊娠させたのですね。一目惚れだと大騒ぎしておいて⋯⋯なんともあっさりと心変わりしたものです。
「ええ、5歳になったら正式にお披露目しなくてはいけないからそれまでにマナーを教えなくては。
見たところまともに挨拶もできないみたいだから、ビビアンにもマナー教師をつけなくては伯爵家が恥をかいてしまうわ」
「頑張るって言ってた。1年あれば大丈夫でしょ?」
「ステファンの為ですもの、頑張って覚えるでしょう。
リリスティア、話を聞いていたからわかると思うけれどグレッグのお披露目までにやることが山積みなの。家庭教師はわたくしが手配しますがその後の事は頼みましたよ。勉強以外の雑事に手を取られないようにスケジュール管理やお世話はあなたの仕事ですからね。
手を抜いたり邪魔したりしないでね」
「あの、ビビアン様やグレッグ様はステファン様とどのような関係の方なのでしょうか?」
大切なことですから念の為確認しておきましょう。
近くにメイドはおりますがお義母様は細々とした仕事をわたくしに言いつけるのがお好きなので、黙ってお茶の準備をはじめました。
「お兄様かっこよかったわね~、陛下から直々にお言葉をいただいてたし」
お兄様ラブのアリシア様は今日の為に誂えた若草色のドレスにエメラルドとダイヤモンドの豪華なネックレスです。3年前に結婚されたのですが浮気がバレて離婚して今は伯爵家で暮らしておられます。
「当然ですよ、何しろ数多くの手柄を立てたんですからね」
緋色に近い濃い赤のドレスを纏ったお義母様もエメラルドのアクセサリーで全身をコーディネートしておられます。濃い赤に緑の色が埋没している気がしますが本人の好みもありますからノーコメントです。
赤はお義母様のラッキーカラーだそうですし愛する息子の出迎えをされるお義母様にはこれ以外の選択肢はないのでしょう。
「あの様子ならマーベル伯爵家も侯爵に陞爵されるかもしれんな」
お義父様のお衣装はカフの大きなコートと腰が隠れるほどの長さで豪奢な刺繍の入ったウエストコートです。凝った結びのクラバットにもエメラルドが飾られていました。
財務資料を見たことがあるのは秘密ですから口にはしませんけれど、どれも新しく仕立てたり購入したものばかりで請求書が届くのが不安になってしまいました。
マーベル伯爵領は手付かずの荒れ地が多く麦と羊でかろうじて生きながらえています。さしたる特産品もなく税収は右肩下がりですがマーベル伯爵達は気にしていないようで領地に手を入れる気もなく代官任せ、わたくしの提案も却下され続けています。
わたくしの持参金もほぼ使い切っていますし、わたくしの父ラングローズ子爵家から支援金をもぎ取ろうと画策していることも知っています。
このような状況で愛人や庶子を連れてきてどうするつもりなのか⋯⋯何を言い出すのか少し楽しみにしています。
お義父様は熱々で、お義母様と義妹は少し温めのお茶をお出しして次の指示を待ちました。
わたくしのお茶ですか? そんな物を準備したら嫌味の嵐確定ですからソファの横で静観しています。この方達と一緒にお茶をいただいた覚えはないですし、嫁はソファに座るのも禁止だそうですしね。
この家のしきたりだと初日に教えられてからずっとですからもう慣れてしまいました。
因みに食事も毎回一人自室でいただくよう言われておりますが、今日はどうなるのか⋯⋯。
マーベル家の方達とはこのような状態ですが使用人達とはとても良い関係です、多分。
自分勝⋯⋯傲m⋯⋯えーっと、少しばかり気難しいマーベル伯爵夫妻と、我儘⋯⋯ではなく自由奔放と言うか自分の心に忠実な義妹に仕えるのは色々と気苦労があるようで、使用人達のストレスは他家よりもマシマシのようです。
給金が減っているのも原因の一つです。
そんな状況だからなのかマーベル家の方達からメイド扱いされて家事を手伝うわたくしに同情票が集まっているのかもしれません。
一応若奥様と呼ばれておりますがおかげさまで洗濯や皿洗いも上達しました。
ピンクさんについてお聞きしたいのですがこちらから声をおかけすると叱られてしまう事が多いのでここは黙っていた方が賢明でしょう。
「ビビアンや子供達の身の回りの品を一新しなくてはならないから、明日は仕立て屋を呼びましょう。ステファンの物も誂えなくてはね」
お義母様の話からすると、やっぱりピンクさんはここに住むようです。それにしても4人分の身の回りの品⋯⋯いったいいくらかかるのでしょう。
「グレッグのお披露目パーティーもしなくちゃね」
「それは来年だな」
今4歳となると戦地に行って直ぐにピンクさんを妊娠させたのですね。一目惚れだと大騒ぎしておいて⋯⋯なんともあっさりと心変わりしたものです。
「ええ、5歳になったら正式にお披露目しなくてはいけないからそれまでにマナーを教えなくては。
見たところまともに挨拶もできないみたいだから、ビビアンにもマナー教師をつけなくては伯爵家が恥をかいてしまうわ」
「頑張るって言ってた。1年あれば大丈夫でしょ?」
「ステファンの為ですもの、頑張って覚えるでしょう。
リリスティア、話を聞いていたからわかると思うけれどグレッグのお披露目までにやることが山積みなの。家庭教師はわたくしが手配しますがその後の事は頼みましたよ。勉強以外の雑事に手を取られないようにスケジュール管理やお世話はあなたの仕事ですからね。
手を抜いたり邪魔したりしないでね」
「あの、ビビアン様やグレッグ様はステファン様とどのような関係の方なのでしょうか?」
大切なことですから念の為確認しておきましょう。
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