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1.結構驚きの5年間の終わりには
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長年続いていた隣国との戦いが終わり漸く夫が帰って来る日を迎え、わたくし達は出迎えの準備に皆朝早くから走り回っていました。
夫である伯爵家嫡男ステファン・マーベル様は戦場で数々の手柄を立てたそうです。多くの家からお祝いが届き、義両親や義妹と親戚は喜色満面で今日と言う日を待ち望んでいました。
義両親と義妹は既に出迎えの為に王宮に向かっているので屋敷での出迎えの差配はわたくしの担当です。絵姿でしか顔を覚えていない夫の帰還に喜びよりも不安を抱えているのを内心申し訳なく思いながらも、屋敷や庭の隅々まで確認し使用人にあれこれと指示を出してはこっそりと溜息をついておりました。
どこかの夜会でわたくしに一目惚れをしたと言ってステファン様が婚約を申し込んできたのは5年前。ステファン様は当時20歳で既に騎士団に所属しており、わたくしは17歳で貴族学園の最上級生でした。
ステファン様のお父様であるフレッド・マーベル伯爵とわたくしの父方の叔父が知人だったことや格上からの申し入れを断るのが厳しかった事から、あっという間に婚約が決まり2年の婚約期間で交流を深めてから婚姻の予定でおりました。
ところが戦況の悪化により婚約直後にステファン様は戦場に向かうことになってしまったのです。
『帰って来るまでにリリスティアを誰かに奪われたら嫌だ』
出征前に結婚と初夜だけは済ませたいとステファン様が言い出したのです。
その時点では顔合わせを含めても3回しかお会いしたことがありませんでしたのにね。
勿論わたくしも両親も反対しました。長年の婚約者なら違っていたと思いますが婚約したと言ってもまだ1ヶ月も経っておらず、為人もわからない方と結婚するなんてあり得ないと思いました。
婚約の申し入れ自体がかなり強引でしたし。
断りきれず婚約したと言っても時間をかけて良い関係を作っていきたいとは思っておりましたが、流石に即結婚と言うのは二の足を踏んでしまっても仕方ないのではないかと思います。
我が家は子爵家でしたがこの縁談を勧めてきた父方の叔父は侯爵家でステファン様は伯爵家です。
侯爵家と伯爵家から『これから戦地へ向かう者の願いは叶えるべき。それを断るのは貴族として言語道断』と騒ぎ立てられ仕方なく了承致しました。
嫁入り道具の準備やウエディングドレスなど勿論間に合いません。持っていたドレスを着て家族と近くに住む親族に見守られて婚姻届にサインし、伯爵家でガーデンパーティーをしただけ。
既製品のドレスでも良いから贈ってくださるとかブーケだけでも準備して下さったならステファン様の気持ちが伝わってきたと思うのですが、婚約してから花一輪頂いたことがありませんので⋯⋯ねえ。
『結婚指輪? なにそれ、美味しいの?』
でございます。
戦時中ですから多くは望んでおりませんがそのような状況でも持参金だけは結婚当日迄に準備しろと言われた時にはお父様がブチギレそうになりました。
それ程強引に事を進めたステファン様でしたが、結婚式の後調子に乗りすぎて前後不覚になるほど泥酔し閨を共にすることも叶わないまま戦地に向かったのは少し⋯⋯かなり『ざまぁ』と思っております。
そのような状況で結婚して5年経ちましたがステファン様は休暇の時にも一度も帰ってこられませんでした。
ステファン様の好みなど全く知らないわたくしは、長年この家に勤めている料理長に夫の好きな物をたくさん準備して貰うよう一週間以上前からお願いしておきました。
「料理は準備はできてるかしら?」
「はい、若奥様。鴨肉のローストと鹿肉の煮込みを昨日から仕込んでおります」
「戦地では栄養が偏るって聞くから⋯⋯お野菜も宜しくね」
「はい、ステファン様が食べられるように工夫しておりますのでご安心下さい」
おや、好き嫌いがおありのようですから今後も口を出さない方が良さそうです⋯⋯などと心にメモをして自室に向かいました。
凱旋する騎士たちのパレードはそろそろはじまっているでしょう。その後は陛下との謁見がありステファン様と義両親達は屋敷に一緒に帰って来られることになっています。
パレードを見に行こうかと思ったりもしましたが『どの方が夫かわからなそう』と思いやめておく事にしました。
なんと言ってお出迎えするべきか悩んだりしておりましたが、この後それどころではない事態になるとは思いもよりませんでした。
夫である伯爵家嫡男ステファン・マーベル様は戦場で数々の手柄を立てたそうです。多くの家からお祝いが届き、義両親や義妹と親戚は喜色満面で今日と言う日を待ち望んでいました。
義両親と義妹は既に出迎えの為に王宮に向かっているので屋敷での出迎えの差配はわたくしの担当です。絵姿でしか顔を覚えていない夫の帰還に喜びよりも不安を抱えているのを内心申し訳なく思いながらも、屋敷や庭の隅々まで確認し使用人にあれこれと指示を出してはこっそりと溜息をついておりました。
どこかの夜会でわたくしに一目惚れをしたと言ってステファン様が婚約を申し込んできたのは5年前。ステファン様は当時20歳で既に騎士団に所属しており、わたくしは17歳で貴族学園の最上級生でした。
ステファン様のお父様であるフレッド・マーベル伯爵とわたくしの父方の叔父が知人だったことや格上からの申し入れを断るのが厳しかった事から、あっという間に婚約が決まり2年の婚約期間で交流を深めてから婚姻の予定でおりました。
ところが戦況の悪化により婚約直後にステファン様は戦場に向かうことになってしまったのです。
『帰って来るまでにリリスティアを誰かに奪われたら嫌だ』
出征前に結婚と初夜だけは済ませたいとステファン様が言い出したのです。
その時点では顔合わせを含めても3回しかお会いしたことがありませんでしたのにね。
勿論わたくしも両親も反対しました。長年の婚約者なら違っていたと思いますが婚約したと言ってもまだ1ヶ月も経っておらず、為人もわからない方と結婚するなんてあり得ないと思いました。
婚約の申し入れ自体がかなり強引でしたし。
断りきれず婚約したと言っても時間をかけて良い関係を作っていきたいとは思っておりましたが、流石に即結婚と言うのは二の足を踏んでしまっても仕方ないのではないかと思います。
我が家は子爵家でしたがこの縁談を勧めてきた父方の叔父は侯爵家でステファン様は伯爵家です。
侯爵家と伯爵家から『これから戦地へ向かう者の願いは叶えるべき。それを断るのは貴族として言語道断』と騒ぎ立てられ仕方なく了承致しました。
嫁入り道具の準備やウエディングドレスなど勿論間に合いません。持っていたドレスを着て家族と近くに住む親族に見守られて婚姻届にサインし、伯爵家でガーデンパーティーをしただけ。
既製品のドレスでも良いから贈ってくださるとかブーケだけでも準備して下さったならステファン様の気持ちが伝わってきたと思うのですが、婚約してから花一輪頂いたことがありませんので⋯⋯ねえ。
『結婚指輪? なにそれ、美味しいの?』
でございます。
戦時中ですから多くは望んでおりませんがそのような状況でも持参金だけは結婚当日迄に準備しろと言われた時にはお父様がブチギレそうになりました。
それ程強引に事を進めたステファン様でしたが、結婚式の後調子に乗りすぎて前後不覚になるほど泥酔し閨を共にすることも叶わないまま戦地に向かったのは少し⋯⋯かなり『ざまぁ』と思っております。
そのような状況で結婚して5年経ちましたがステファン様は休暇の時にも一度も帰ってこられませんでした。
ステファン様の好みなど全く知らないわたくしは、長年この家に勤めている料理長に夫の好きな物をたくさん準備して貰うよう一週間以上前からお願いしておきました。
「料理は準備はできてるかしら?」
「はい、若奥様。鴨肉のローストと鹿肉の煮込みを昨日から仕込んでおります」
「戦地では栄養が偏るって聞くから⋯⋯お野菜も宜しくね」
「はい、ステファン様が食べられるように工夫しておりますのでご安心下さい」
おや、好き嫌いがおありのようですから今後も口を出さない方が良さそうです⋯⋯などと心にメモをして自室に向かいました。
凱旋する騎士たちのパレードはそろそろはじまっているでしょう。その後は陛下との謁見がありステファン様と義両親達は屋敷に一緒に帰って来られることになっています。
パレードを見に行こうかと思ったりもしましたが『どの方が夫かわからなそう』と思いやめておく事にしました。
なんと言ってお出迎えするべきか悩んだりしておりましたが、この後それどころではない事態になるとは思いもよりませんでした。
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