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第三章
53.強烈すぎるけど、これもひとつのヤキモチ
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グロリアは右手のるんるんはそのままで、左手に名前のない短剣を構えて魔物の動きを目で追いかけた。
(まだ変化は現れてないから、持つだけなら大丈夫みたい。次は⋯⋯)
ぴたりと動きを止めた魔物は前に1頭、左右の少し後ろに2頭。正面の1番身体の大きな魔物が大きく口を開けて咆哮した。
グオォォォーン!
頭を下げて跳躍しかけた時、左斜め後ろの魔物が飛びかかって来た。
(ブラフ!?)
正面の1頭を見据えたまま、飛びかかって来た魔物に短剣を突き刺した。
グジュ⋯⋯
腹にめり込む感触に怖気をふるいながら短剣を抜くと、勢いよく血を噴き出した魔物がどさりと横倒しになった。グロリアの左半身を染めた血はねっとりと張り付き、鉄錆と腐臭を撒き散らして短剣がぬるりと滑り落ちそうになった。
(うへっ! すごい臭い⋯⋯めちゃくちゃ気持ち悪いけど、短剣も私も落ち着いてて⋯⋯うん、大丈夫みたい)
安堵の溜息を漏らしかけたグロリアだったが、強烈な熱と殺気を感じて振り返った。
斜め後ろの1頭が突然炎に巻かれ、グロリアの目の前まで迫っていた魔物は大きく口を開けたまま首が跳ね飛んでいる。
「な、なに⋯⋯」
【ふわぁぁぁ⋯⋯グロリア、実験は終わったかにゃ?】
黒炭になった魔物の向こうで呑気に顔を洗っていたエルにゃが、大欠伸をしている。
「え? うん。大丈夫、エルにゃを見ても斬りかかりたくなってないからね」
「ま~ったく、ちょ~っと目を離しただけで⋯⋯オイタが過ぎるんじゃねえか?」
「え? いいい、今、ジェ、ジェニの声がした。妄想? エルにゃ、ヤバいよ! 私おかしくなってる。短剣のせい? 私、混乱して⋯⋯」
【はぁ、おかしいのはジェニにゃ。しつこいのは嫌われるにゃ】
バサバサと音を立てて木の上からジェニが飛び降りて来た。
「勝手な行動をする奴は~『ごつん』じゃあぁぁ!」
「いっだ~い!」
両手にるんるんや短剣を持ったまま、頭を抱え込んだグロリアがしゃがみ込んだ。
「取り敢えず《浄化》な」
血だらけだったグロリア自身も刀も短剣もすっかり綺麗になったが、ジェニが発する威圧が怖すぎて顔が上げられない。
「なあ、超スペッシャルなお仕置き3連発くらいしねえと治んねえ気分なんだけど? なんか言い訳がありゃ聞いてやらんでもない⋯⋯ような気もしたり、しなかったり」
(やばい! ジェニが本気で怒ってる⋯⋯でも)
グロリアはるんるんと短剣をポーチに納めて立ち上がり、仁王立ちしてジェニの目を見つめた。
「あ、謝んないからね。なんて言われても謝んない! 心配かけたって分かってるけど⋯⋯おんなじ状況になったらおんなじ事をやる! だから謝んない!」
もし短剣がダーインスレイヴ化したら、周りの人に危害を加える可能性がある。
(自分がジェニ達に怪我をさせるとかって⋯⋯癒えない傷をつけたら耐えらんないもん)
「ほっほう、エイトリの短剣が信用できんかったか?」
「違う! ただ鞘も作って貰わずにポーチに放り込んでたから、そのせいで問題が起きたらエイトリが悲しむ。
すごい短剣で⋯⋯そのお陰でダーインスレイヴを無力化できたのに、私の管理が悪くって何かあったら申し訳ないじゃん」
「へぇ⋯⋯せめて俺に声をかけようとは思わなかったか?」
「え、全然思わなかったよ? 誰も一緒に来て欲しくなかったから、寝るの待ってたもん。まあ、エルにゃには脅されたから一緒に来たけど」
「あのなぁ、あの短剣はダーインスレイヴ対策でエイトリが考えたんだよな」
「多分⋯⋯うん、そうだと思う」
「お漏らしばっかしてっけど、ドヴェルグの中じゃ奴等はトップクラスの腕なんだぞ? 鞘がないと危険なら先に言うか、鞘も一緒に作って渡すんじゃね?」
「⋯⋯あ!」
「エルにゃは大丈夫って言ったんだろ? だから連れて来たんだよな~」
「あ、うん。でも、未来って簡単に変わるじゃない。なにが起きるかわかんないのに怖くて⋯⋯エルにゃなら最悪の未来に変わったらすぐにわかるから対処できるしって思って⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯」
「ほ~、俺よりエルにゃを信じるってか? そりゃたまげた! お仕置き山盛りのてんこ盛りでも足りねえよなあ。
コイツ殺っちゃおうかな~。んで~、俺が勝ちゃあ良いんだよな?」
「へ?」
【へ? (ま、待て、待てにゃ! なんでそうなるにゃ!?)】
目を眇めたジェニの殺気に当てられたエルにゃが、尻尾を尻の下に巻き込んで震えはじめた。
「俺よりエルにゃを信じてるって事だよな? んならソイツに勝てば俺の方が信用できるって事だよなぁ」
「い、意味が違うじゃん! そういう問題じゃな⋯⋯」
「なにが起きても大丈夫だってグロリアが思える相手が誰か⋯⋯ 俺にとっちゃそう言う問題なんだよ!
例えば、ここ一番で俺がグロリアよりヴァンを頼ったら? 『ヴァンだけは信用できる』って俺が言ったら?」
怒りで髪がゆらゆらと揺らぎはじめたジェニの前で、きょとんと首を傾げたグロリアが、へにょりと眉を下げて呟いた。
「あ、それは⋯⋯寂しいのは寂しいけど、実際そうだから仕方ないかな」
【(グロリアァ! 空気読んでにゃ! 俺様、ジェニに殺られるにゃ)】
「⋯⋯⋯⋯はぁ~。コイツの自信のなさは天下一品だっての、忘れてたぜ」
気が削がれたらしいジェニがしゃがみ込み辺りを見回した。
グロリアに蹂躙され尽くした魔物の死体は数えきれない。
(自力で覚えた魔術で敵をほぼ殲滅したのによお⋯⋯なんでいまだに自信がねえんだ? はぁぁぁ)
殺気が消え失せたジェニががっくりと肩を落とした。
「いや、だってほら。魔法は使えないし魔術はしょっちゅう暴走するし、料理は壊滅的だし。あ、剣道は少しできるからさ、成長期が来たらもっと役に立つかもだね。
それに昔よりは暴走しない魔術が増えてきたから⋯⋯少しはマシになってきたかなあって思ってるし、攻撃以外の魔術にはちょびっと自信があるんだ~。
けど、攻撃用の魔術は壊滅的だったから、いまだにドキドキすることが多いんだよね」
「⋯⋯なにが言いたかったんだ?」
「え? 色々できるようになってきたっていう成長の報告を少し? 日進月歩してますよ~っていう自分語りですね」
ジェニの能力が底知れないのと同じで、周りにいるのはトップクラスの実力者ばかり。その中でグロリアはいつもみんなに甘やかされている自覚がある。
グロリアが自己評価に数値をつけるとしたら、マイナスから少し⋯⋯ほんの少しプラスになったくらい。
「取り敢えず気が済んだみてえだし、帰るか」
「うん、失敗もあったけど成功もあったし、結果オーライだね」
雷は狙いより大きくなったが、水は上手くコントロールできたとほくそ笑むグロリアは、ジェニに手を引かれて自室に転移した。
「心配してくれてありがとう。それとお迎えもありがとうだね」
「無駄に能天気なのに、自信が皆無なんだよな~」
「ん? 謝らないとは言ったけど、お礼を言うのは人として当然だよ」
風呂と着替えを済ませてベッドに潜り込んだグロリアは、あっという間に眠りに落ちた。
お気に入りのラグごとグロリアとは別の部室に移動させられたエルは⋯⋯。
【(本気の殺気がヤバかったにゃ。奴は俺を本気で殺す気だったにゃ。悪魔より悪魔らしい奴の嫉妬と癇癪は怖過ぎるにゃ⋯⋯ガクガクブルブル)】
産まれて初めて感じた恐怖で一睡も出来ず夜を明かした。
翌日、エイトリを捕まえたグロリアは部屋に篭って、剣に付与する魔法と剣につける特殊能力の違いについてレクチャーしてもらった。
「じゃあ、剣の特殊能力は中に埋め込まれてて、付与は外側に一時的にコーティングしてるイメージって事ね」
【そうだにぃ。剣の能力は錬成の時に剣の芯に埋め込むもんだにぃ】
「でもでも、後から魔剣になったりするじゃん」
【あれは呪いの一種だにぃ。ダーインスレイヴはヒャズニングの戦いの為に呪いを付与されただにぃ。
ティルヴィングは無理やり作らされて怒ったドヴァリンとドゥリンが呪いを付与しただにぃ。
アンドヴァリは、黄金を生み出す指輪を無理やり持ってこうとしたロキに腹を立てて呪いを付与しただにぃ】
「じゃあ、ドヴェルグも呪いを使えるの?」
途中で聞こえた『ロキ』と言う名前は完全スルーして質問を続けた。
(アレって確かオーディン達と出かけてた時の話だっけ。ロキって色々派手にやってたねえ)
【使えるのとちょびっと使えるのと使えないのがいるだにぃ。土精の力だにぃ】
四大元素のうち、土を司る土の精は小柄で豊かな土壌を好む精霊。埋蔵物の探知や貴金属や財宝の発掘が得意で、非常に賢く器用で美しい細工品を作る。
【むか~し昔、ドヴェルグは土の精と仲良しだったから加護を貰っただにぃ。そん時から素材集めや錬成の腕が上がって、魔法も扱えるようになっただにぃ。呪いも付与できるようになったけどおで達はしないだにぃ】
「自分の大切な作品に呪いを付与なんて、余程のことがなきゃしないよね」
【ダーインスレイヴはダーインの遺産だにぃ。可哀想だにぃ】
「ヒャズニングの戦いはオーディンの計画をフレイヤが実行したんだっけ?」
【フレイヤが指示してゴンドゥルが王を唆しただにぃ。死者の蘇生をして戦いを続けさせたのはヒルドだにぃ】
2人の王は元々同盟を結んでいたが、ゴンドゥルに騙されたのをきっかけに争いがはじまった。
(ほんとあいつらってロクなことしないよね)
グロリアはあと2つ大切な質問をエイトリに投げかけた。
(まだ変化は現れてないから、持つだけなら大丈夫みたい。次は⋯⋯)
ぴたりと動きを止めた魔物は前に1頭、左右の少し後ろに2頭。正面の1番身体の大きな魔物が大きく口を開けて咆哮した。
グオォォォーン!
頭を下げて跳躍しかけた時、左斜め後ろの魔物が飛びかかって来た。
(ブラフ!?)
正面の1頭を見据えたまま、飛びかかって来た魔物に短剣を突き刺した。
グジュ⋯⋯
腹にめり込む感触に怖気をふるいながら短剣を抜くと、勢いよく血を噴き出した魔物がどさりと横倒しになった。グロリアの左半身を染めた血はねっとりと張り付き、鉄錆と腐臭を撒き散らして短剣がぬるりと滑り落ちそうになった。
(うへっ! すごい臭い⋯⋯めちゃくちゃ気持ち悪いけど、短剣も私も落ち着いてて⋯⋯うん、大丈夫みたい)
安堵の溜息を漏らしかけたグロリアだったが、強烈な熱と殺気を感じて振り返った。
斜め後ろの1頭が突然炎に巻かれ、グロリアの目の前まで迫っていた魔物は大きく口を開けたまま首が跳ね飛んでいる。
「な、なに⋯⋯」
【ふわぁぁぁ⋯⋯グロリア、実験は終わったかにゃ?】
黒炭になった魔物の向こうで呑気に顔を洗っていたエルにゃが、大欠伸をしている。
「え? うん。大丈夫、エルにゃを見ても斬りかかりたくなってないからね」
「ま~ったく、ちょ~っと目を離しただけで⋯⋯オイタが過ぎるんじゃねえか?」
「え? いいい、今、ジェ、ジェニの声がした。妄想? エルにゃ、ヤバいよ! 私おかしくなってる。短剣のせい? 私、混乱して⋯⋯」
【はぁ、おかしいのはジェニにゃ。しつこいのは嫌われるにゃ】
バサバサと音を立てて木の上からジェニが飛び降りて来た。
「勝手な行動をする奴は~『ごつん』じゃあぁぁ!」
「いっだ~い!」
両手にるんるんや短剣を持ったまま、頭を抱え込んだグロリアがしゃがみ込んだ。
「取り敢えず《浄化》な」
血だらけだったグロリア自身も刀も短剣もすっかり綺麗になったが、ジェニが発する威圧が怖すぎて顔が上げられない。
「なあ、超スペッシャルなお仕置き3連発くらいしねえと治んねえ気分なんだけど? なんか言い訳がありゃ聞いてやらんでもない⋯⋯ような気もしたり、しなかったり」
(やばい! ジェニが本気で怒ってる⋯⋯でも)
グロリアはるんるんと短剣をポーチに納めて立ち上がり、仁王立ちしてジェニの目を見つめた。
「あ、謝んないからね。なんて言われても謝んない! 心配かけたって分かってるけど⋯⋯おんなじ状況になったらおんなじ事をやる! だから謝んない!」
もし短剣がダーインスレイヴ化したら、周りの人に危害を加える可能性がある。
(自分がジェニ達に怪我をさせるとかって⋯⋯癒えない傷をつけたら耐えらんないもん)
「ほっほう、エイトリの短剣が信用できんかったか?」
「違う! ただ鞘も作って貰わずにポーチに放り込んでたから、そのせいで問題が起きたらエイトリが悲しむ。
すごい短剣で⋯⋯そのお陰でダーインスレイヴを無力化できたのに、私の管理が悪くって何かあったら申し訳ないじゃん」
「へぇ⋯⋯せめて俺に声をかけようとは思わなかったか?」
「え、全然思わなかったよ? 誰も一緒に来て欲しくなかったから、寝るの待ってたもん。まあ、エルにゃには脅されたから一緒に来たけど」
「あのなぁ、あの短剣はダーインスレイヴ対策でエイトリが考えたんだよな」
「多分⋯⋯うん、そうだと思う」
「お漏らしばっかしてっけど、ドヴェルグの中じゃ奴等はトップクラスの腕なんだぞ? 鞘がないと危険なら先に言うか、鞘も一緒に作って渡すんじゃね?」
「⋯⋯あ!」
「エルにゃは大丈夫って言ったんだろ? だから連れて来たんだよな~」
「あ、うん。でも、未来って簡単に変わるじゃない。なにが起きるかわかんないのに怖くて⋯⋯エルにゃなら最悪の未来に変わったらすぐにわかるから対処できるしって思って⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯」
「ほ~、俺よりエルにゃを信じるってか? そりゃたまげた! お仕置き山盛りのてんこ盛りでも足りねえよなあ。
コイツ殺っちゃおうかな~。んで~、俺が勝ちゃあ良いんだよな?」
「へ?」
【へ? (ま、待て、待てにゃ! なんでそうなるにゃ!?)】
目を眇めたジェニの殺気に当てられたエルにゃが、尻尾を尻の下に巻き込んで震えはじめた。
「俺よりエルにゃを信じてるって事だよな? んならソイツに勝てば俺の方が信用できるって事だよなぁ」
「い、意味が違うじゃん! そういう問題じゃな⋯⋯」
「なにが起きても大丈夫だってグロリアが思える相手が誰か⋯⋯ 俺にとっちゃそう言う問題なんだよ!
例えば、ここ一番で俺がグロリアよりヴァンを頼ったら? 『ヴァンだけは信用できる』って俺が言ったら?」
怒りで髪がゆらゆらと揺らぎはじめたジェニの前で、きょとんと首を傾げたグロリアが、へにょりと眉を下げて呟いた。
「あ、それは⋯⋯寂しいのは寂しいけど、実際そうだから仕方ないかな」
【(グロリアァ! 空気読んでにゃ! 俺様、ジェニに殺られるにゃ)】
「⋯⋯⋯⋯はぁ~。コイツの自信のなさは天下一品だっての、忘れてたぜ」
気が削がれたらしいジェニがしゃがみ込み辺りを見回した。
グロリアに蹂躙され尽くした魔物の死体は数えきれない。
(自力で覚えた魔術で敵をほぼ殲滅したのによお⋯⋯なんでいまだに自信がねえんだ? はぁぁぁ)
殺気が消え失せたジェニががっくりと肩を落とした。
「いや、だってほら。魔法は使えないし魔術はしょっちゅう暴走するし、料理は壊滅的だし。あ、剣道は少しできるからさ、成長期が来たらもっと役に立つかもだね。
それに昔よりは暴走しない魔術が増えてきたから⋯⋯少しはマシになってきたかなあって思ってるし、攻撃以外の魔術にはちょびっと自信があるんだ~。
けど、攻撃用の魔術は壊滅的だったから、いまだにドキドキすることが多いんだよね」
「⋯⋯なにが言いたかったんだ?」
「え? 色々できるようになってきたっていう成長の報告を少し? 日進月歩してますよ~っていう自分語りですね」
ジェニの能力が底知れないのと同じで、周りにいるのはトップクラスの実力者ばかり。その中でグロリアはいつもみんなに甘やかされている自覚がある。
グロリアが自己評価に数値をつけるとしたら、マイナスから少し⋯⋯ほんの少しプラスになったくらい。
「取り敢えず気が済んだみてえだし、帰るか」
「うん、失敗もあったけど成功もあったし、結果オーライだね」
雷は狙いより大きくなったが、水は上手くコントロールできたとほくそ笑むグロリアは、ジェニに手を引かれて自室に転移した。
「心配してくれてありがとう。それとお迎えもありがとうだね」
「無駄に能天気なのに、自信が皆無なんだよな~」
「ん? 謝らないとは言ったけど、お礼を言うのは人として当然だよ」
風呂と着替えを済ませてベッドに潜り込んだグロリアは、あっという間に眠りに落ちた。
お気に入りのラグごとグロリアとは別の部室に移動させられたエルは⋯⋯。
【(本気の殺気がヤバかったにゃ。奴は俺を本気で殺す気だったにゃ。悪魔より悪魔らしい奴の嫉妬と癇癪は怖過ぎるにゃ⋯⋯ガクガクブルブル)】
産まれて初めて感じた恐怖で一睡も出来ず夜を明かした。
翌日、エイトリを捕まえたグロリアは部屋に篭って、剣に付与する魔法と剣につける特殊能力の違いについてレクチャーしてもらった。
「じゃあ、剣の特殊能力は中に埋め込まれてて、付与は外側に一時的にコーティングしてるイメージって事ね」
【そうだにぃ。剣の能力は錬成の時に剣の芯に埋め込むもんだにぃ】
「でもでも、後から魔剣になったりするじゃん」
【あれは呪いの一種だにぃ。ダーインスレイヴはヒャズニングの戦いの為に呪いを付与されただにぃ。
ティルヴィングは無理やり作らされて怒ったドヴァリンとドゥリンが呪いを付与しただにぃ。
アンドヴァリは、黄金を生み出す指輪を無理やり持ってこうとしたロキに腹を立てて呪いを付与しただにぃ】
「じゃあ、ドヴェルグも呪いを使えるの?」
途中で聞こえた『ロキ』と言う名前は完全スルーして質問を続けた。
(アレって確かオーディン達と出かけてた時の話だっけ。ロキって色々派手にやってたねえ)
【使えるのとちょびっと使えるのと使えないのがいるだにぃ。土精の力だにぃ】
四大元素のうち、土を司る土の精は小柄で豊かな土壌を好む精霊。埋蔵物の探知や貴金属や財宝の発掘が得意で、非常に賢く器用で美しい細工品を作る。
【むか~し昔、ドヴェルグは土の精と仲良しだったから加護を貰っただにぃ。そん時から素材集めや錬成の腕が上がって、魔法も扱えるようになっただにぃ。呪いも付与できるようになったけどおで達はしないだにぃ】
「自分の大切な作品に呪いを付与なんて、余程のことがなきゃしないよね」
【ダーインスレイヴはダーインの遺産だにぃ。可哀想だにぃ】
「ヒャズニングの戦いはオーディンの計画をフレイヤが実行したんだっけ?」
【フレイヤが指示してゴンドゥルが王を唆しただにぃ。死者の蘇生をして戦いを続けさせたのはヒルドだにぃ】
2人の王は元々同盟を結んでいたが、ゴンドゥルに騙されたのをきっかけに争いがはじまった。
(ほんとあいつらってロクなことしないよね)
グロリアはあと2つ大切な質問をエイトリに投げかけた。
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