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第三章
49.ダーインスレイヴ
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ジェニの挑発を無視してリンドがエルに話しかけた。
【それは面白そうにゃ。オセが契約とは】
(リンドの手にあるのはよくできたレプリカ⋯⋯ダーインスレイヴはリンドの斜め後ろの男が持ってるね)
(他のやつは俺が引きつける、グロリアはダーインスレイヴを狙え。エルにゃはオセを頼む、グロリアに近づけさせるなよ)
(オッケー!)【にゃ!】
ジェニが大股で男達に向かいながら中指を立てると、全員の目が吊り上がった。
(この程度で釣れるとか⋯⋯チョロすぎじゃね?)
「うおりゃぁぁ!」
浅黒い長髪の男が剣を大きく振りかぶりジェニに斬りかかったのを合図に数人の男がジェニに向かって飛びかかった。
ガキン⋯⋯ドカン⋯⋯
ジェニが敵と斬り合いはじめたのを無視し横をすり抜けて奥まで走り込んだグロリアが初めて四郎くんを日本刀に持ち替えた。
(久々の『るんるん』⋯⋯よろしく~)
蛍が刀を癒してくれると言う伝説を持つ日本刀の名前が⋯⋯蛍の『る』をとって『るんるん』となった時、『四郎くん』より可哀想だと全員からダメ出しを受けた。
「リンドさん、ダーインスレイヴは神界に返してください!」
リンドが偽ダーインスレイヴを構えた後ろで背の低い痩せた男が本物のダーインスレイヴを背に隠してジリジリと左に動きはじめた。
「そうだ、君の前世の父親は剣道とやらの先生でしたね。君が持っている不思議な剣はその世界のものですか? 細くてすぐに折れそうだが子供ならちょうど良いのかもしれませんねえ」
「⋯⋯」
無言のグロリアに業を煮やしたのか舌打ちしたリンドが大きく横に薙ぎ払うように剣を振り回し、後ろに飛んで躱したグロリアがもう一人の男を目で追いかけた瞬間リンドから短剣が飛んできた。
パリン⋯⋯
床に落ちた短剣を蹴り飛ばそうとした時、エルの【にぎゃ~】と言う声が聞こえてグロリアの足が止まった。
「《チェック》⋯⋯毒?」
「ロキの結界ですか。魔法が使えない『役立たず』でほんの少し剣術を嗜んだ程度の子供が真面に戦えるとでも? それともダーインスレイヴにもう一度斬られて死にたいんですかね」
リンドの後方にいた男はジリジリと動き続け今ではグロリアから全身が見える位置に移動していた。
(後ろの奴は左利きって事ね。となると、あと少し横にずれたら剣先がこっちまで届きそう。リンドが邪魔! そこにいたら切っちゃうかも)
相変わらずグロリアの後ろでは剣と剣がぶつかり合う甲高い音と野太い罵声が聞こえてくる。
「もうちょっと頑張ってくんねえと~。せ~っかく来たのに弱すぎてつまんねえんだけど?」
相変わらず飄々としたジェニの声がグロリアの気持ちを落ち着かせてくれた。
(大丈夫、あの程度の人数なら余裕だもんね)
オセはエルの唸り声で脂汗を垂らしながらじわりじわりと後ろに下がっていた。
【フラウロス⋯⋯俺とこの世界で楽しもうじゃないか】
【ふふっ! 俺が怖いか!? だろうなぁ。俺は全部知ってるぜ? 貴様があの男と契約? 笑わせるな】
(あれ? エルにゃってば『にゃ』って言ってないじゃん)
リンドが剣に炎を付与し斬りかかるのを受け流しながら後ろの男の動きを追いかける続けるグロリアの額に汗が滲みはじめた。
リンドの攻撃はねずみを痛ぶる猫のようなわざとらしい大振りが多くグロリアを苛立たせていった。
グリーズがいない場合は極力魔術を使わない予定だったがあまりの暑さで刀も自分ももたなくなりそうな気がした。
(マジ熱くてウザい!? もう無理!《クールダウン》からのぉ《シャワー》)
「ジェニ、助かったよ~ありがとう」
グロリアの言葉は『今の現象はジェニの魔法だよ~』と誤魔化すためのもの。
ジュッと音を立てて剣から炎が消えると『くそっ、ジェニの野郎!』と悪態をつきながらリンドが一歩下がった。
「殺れ!」
横から飛び出した男がダーインスレイヴを大きく振りかぶった。
(きた!)
振り下ろされたダーインスレイヴを躱しながら結界を解いたグロリアがポーチから短剣を出して左手で構えた。『くそぉ!』と言いながら男が下から斬りあげて来たダーインスレイヴの刃を短剣で受けると、短剣の刃が当たった場所から白い光が溢れダーインスレイヴを包み込みはじめた。
「な、なんだこれは! くそぉぉぉ」
力で押し切るつもりなのか男は目を血走らせ両手に力を込めていく。『るんるん』を片付け短剣を両手で握りしめたものの身体強化したグロリアの足は床をズルズルと滑りはじめた。
ダーインスレイヴがグロリアの顔のすぐ前まで近付き男がニヤリと笑った後ろでリンドが剣を構えて叫び声を上げた。
「殺れぇぇぇ!」
「リアァァァ!⋯⋯(バシュン)」
「あぎゃ~!」
グロリアの目の前の男が叫び声を上げると同時にバランスを崩し、押し付けられていたダーインスレイヴの力が弱まった。
(助かった~、マジでヤバかった~)
ダーインスレイヴから禍々しい気配が揺らぎはじめると、リンドとグロリアに切り掛かっていた男が目を大きく見開いた。
「な、なんだ⋯⋯」
(どうかお願い、お願い! 《チェック》⋯⋯ダーインスレイヴ、特殊能力は⋯⋯⋯⋯なし! やったぁ! んじゃ《結界》からの⋯⋯)
短剣と『るんるん』を持ち替えたグロリアは身体強化プラス硬化した腕力でダーインスレイヴを持った男の腹に峰打ちを喰らわせた。
吹き飛ぶ直前に上半身を曲げた状態で固まった男からダーインスレイヴをもぎ取ったグロリアはリンドに向かって歩き出した。
「ごふっ! ゲホッゲホッ⋯⋯」
「な、なんだ!? さっきの光は!」
動揺してダーインスレイヴを見つめていたリンドの手首を峰打ちしたグロリアは腹に蹴りを叩き込んだ。
グホッ⋯⋯ドガン⋯⋯カランカラン⋯⋯
「い、院長!」
壁にめり込むようにして倒れ偽ダーインスレイヴを落としたリンドがグロリアを指差して叫んだ。
「グホッ、こ、殺せ! そのガキを殺すんだぁぁぁ!」
リンドが落とした剣を拾い上げた男がグロリアに向けて奇声を放ちながら切り込んできた。
「ぎゃあ~」
ドガッ⋯⋯フグゥ⋯⋯
グロリアの右拳が顎の下から突き上げられ男が後ろに吹っ飛んで大の字になって倒れた。
「お~、グロリア! 終わった? ならこっちも⋯⋯ゴミ掃除といくかあ」
ちまちまと男達を翻弄していたジェニの前で剣を振り上げていた男が蹴り一発で倒され、残っていたもうひとりも顔にパンチを叩き込まれ倒れ込んで悶絶した。
「殺さない・怪我させないは大変だわ~。まあ、ちょびっとの怪我ならすぐ治るよな、隣は有名な病院だし?」
「オ、オセ⋯⋯こいつらを、こいつらを叩きのめすんだ!」
【戦いは俺様の担当じゃねえ。お前らみたいな弱い奴とはもう遊ばねえ!
フラウロス、お前も間違って飛んできたんだろ? 一緒にどっか遊びに行こうぜ】
【たかが総裁の分際で、我にそのような口を聞いてただで済むと思っておるのか!? 貴様のような愚か者と行動するなどあり得ぬ! さっさとねぐらに帰るがよい!】
【それがさぁ、帰れねえの。召喚者もいねえのによお、なんでここに来たのかも分かんねえんだもん】
【帰る方法は知っておろう! 目障りだ、我に殺されたくなくば、さっさといね!】
オセがエルとジェニの顔を見比べて首を傾げた後グロリアをチラ見して『いや、まさかな。相手はフラウロスだせ?』と呟いて消えた。
「ジェニとエルにゃ、さっきはありがとう。それと目標達成! この後どうする!?」
【それは面白そうにゃ。オセが契約とは】
(リンドの手にあるのはよくできたレプリカ⋯⋯ダーインスレイヴはリンドの斜め後ろの男が持ってるね)
(他のやつは俺が引きつける、グロリアはダーインスレイヴを狙え。エルにゃはオセを頼む、グロリアに近づけさせるなよ)
(オッケー!)【にゃ!】
ジェニが大股で男達に向かいながら中指を立てると、全員の目が吊り上がった。
(この程度で釣れるとか⋯⋯チョロすぎじゃね?)
「うおりゃぁぁ!」
浅黒い長髪の男が剣を大きく振りかぶりジェニに斬りかかったのを合図に数人の男がジェニに向かって飛びかかった。
ガキン⋯⋯ドカン⋯⋯
ジェニが敵と斬り合いはじめたのを無視し横をすり抜けて奥まで走り込んだグロリアが初めて四郎くんを日本刀に持ち替えた。
(久々の『るんるん』⋯⋯よろしく~)
蛍が刀を癒してくれると言う伝説を持つ日本刀の名前が⋯⋯蛍の『る』をとって『るんるん』となった時、『四郎くん』より可哀想だと全員からダメ出しを受けた。
「リンドさん、ダーインスレイヴは神界に返してください!」
リンドが偽ダーインスレイヴを構えた後ろで背の低い痩せた男が本物のダーインスレイヴを背に隠してジリジリと左に動きはじめた。
「そうだ、君の前世の父親は剣道とやらの先生でしたね。君が持っている不思議な剣はその世界のものですか? 細くてすぐに折れそうだが子供ならちょうど良いのかもしれませんねえ」
「⋯⋯」
無言のグロリアに業を煮やしたのか舌打ちしたリンドが大きく横に薙ぎ払うように剣を振り回し、後ろに飛んで躱したグロリアがもう一人の男を目で追いかけた瞬間リンドから短剣が飛んできた。
パリン⋯⋯
床に落ちた短剣を蹴り飛ばそうとした時、エルの【にぎゃ~】と言う声が聞こえてグロリアの足が止まった。
「《チェック》⋯⋯毒?」
「ロキの結界ですか。魔法が使えない『役立たず』でほんの少し剣術を嗜んだ程度の子供が真面に戦えるとでも? それともダーインスレイヴにもう一度斬られて死にたいんですかね」
リンドの後方にいた男はジリジリと動き続け今ではグロリアから全身が見える位置に移動していた。
(後ろの奴は左利きって事ね。となると、あと少し横にずれたら剣先がこっちまで届きそう。リンドが邪魔! そこにいたら切っちゃうかも)
相変わらずグロリアの後ろでは剣と剣がぶつかり合う甲高い音と野太い罵声が聞こえてくる。
「もうちょっと頑張ってくんねえと~。せ~っかく来たのに弱すぎてつまんねえんだけど?」
相変わらず飄々としたジェニの声がグロリアの気持ちを落ち着かせてくれた。
(大丈夫、あの程度の人数なら余裕だもんね)
オセはエルの唸り声で脂汗を垂らしながらじわりじわりと後ろに下がっていた。
【フラウロス⋯⋯俺とこの世界で楽しもうじゃないか】
【ふふっ! 俺が怖いか!? だろうなぁ。俺は全部知ってるぜ? 貴様があの男と契約? 笑わせるな】
(あれ? エルにゃってば『にゃ』って言ってないじゃん)
リンドが剣に炎を付与し斬りかかるのを受け流しながら後ろの男の動きを追いかける続けるグロリアの額に汗が滲みはじめた。
リンドの攻撃はねずみを痛ぶる猫のようなわざとらしい大振りが多くグロリアを苛立たせていった。
グリーズがいない場合は極力魔術を使わない予定だったがあまりの暑さで刀も自分ももたなくなりそうな気がした。
(マジ熱くてウザい!? もう無理!《クールダウン》からのぉ《シャワー》)
「ジェニ、助かったよ~ありがとう」
グロリアの言葉は『今の現象はジェニの魔法だよ~』と誤魔化すためのもの。
ジュッと音を立てて剣から炎が消えると『くそっ、ジェニの野郎!』と悪態をつきながらリンドが一歩下がった。
「殺れ!」
横から飛び出した男がダーインスレイヴを大きく振りかぶった。
(きた!)
振り下ろされたダーインスレイヴを躱しながら結界を解いたグロリアがポーチから短剣を出して左手で構えた。『くそぉ!』と言いながら男が下から斬りあげて来たダーインスレイヴの刃を短剣で受けると、短剣の刃が当たった場所から白い光が溢れダーインスレイヴを包み込みはじめた。
「な、なんだこれは! くそぉぉぉ」
力で押し切るつもりなのか男は目を血走らせ両手に力を込めていく。『るんるん』を片付け短剣を両手で握りしめたものの身体強化したグロリアの足は床をズルズルと滑りはじめた。
ダーインスレイヴがグロリアの顔のすぐ前まで近付き男がニヤリと笑った後ろでリンドが剣を構えて叫び声を上げた。
「殺れぇぇぇ!」
「リアァァァ!⋯⋯(バシュン)」
「あぎゃ~!」
グロリアの目の前の男が叫び声を上げると同時にバランスを崩し、押し付けられていたダーインスレイヴの力が弱まった。
(助かった~、マジでヤバかった~)
ダーインスレイヴから禍々しい気配が揺らぎはじめると、リンドとグロリアに切り掛かっていた男が目を大きく見開いた。
「な、なんだ⋯⋯」
(どうかお願い、お願い! 《チェック》⋯⋯ダーインスレイヴ、特殊能力は⋯⋯⋯⋯なし! やったぁ! んじゃ《結界》からの⋯⋯)
短剣と『るんるん』を持ち替えたグロリアは身体強化プラス硬化した腕力でダーインスレイヴを持った男の腹に峰打ちを喰らわせた。
吹き飛ぶ直前に上半身を曲げた状態で固まった男からダーインスレイヴをもぎ取ったグロリアはリンドに向かって歩き出した。
「ごふっ! ゲホッゲホッ⋯⋯」
「な、なんだ!? さっきの光は!」
動揺してダーインスレイヴを見つめていたリンドの手首を峰打ちしたグロリアは腹に蹴りを叩き込んだ。
グホッ⋯⋯ドガン⋯⋯カランカラン⋯⋯
「い、院長!」
壁にめり込むようにして倒れ偽ダーインスレイヴを落としたリンドがグロリアを指差して叫んだ。
「グホッ、こ、殺せ! そのガキを殺すんだぁぁぁ!」
リンドが落とした剣を拾い上げた男がグロリアに向けて奇声を放ちながら切り込んできた。
「ぎゃあ~」
ドガッ⋯⋯フグゥ⋯⋯
グロリアの右拳が顎の下から突き上げられ男が後ろに吹っ飛んで大の字になって倒れた。
「お~、グロリア! 終わった? ならこっちも⋯⋯ゴミ掃除といくかあ」
ちまちまと男達を翻弄していたジェニの前で剣を振り上げていた男が蹴り一発で倒され、残っていたもうひとりも顔にパンチを叩き込まれ倒れ込んで悶絶した。
「殺さない・怪我させないは大変だわ~。まあ、ちょびっとの怪我ならすぐ治るよな、隣は有名な病院だし?」
「オ、オセ⋯⋯こいつらを、こいつらを叩きのめすんだ!」
【戦いは俺様の担当じゃねえ。お前らみたいな弱い奴とはもう遊ばねえ!
フラウロス、お前も間違って飛んできたんだろ? 一緒にどっか遊びに行こうぜ】
【たかが総裁の分際で、我にそのような口を聞いてただで済むと思っておるのか!? 貴様のような愚か者と行動するなどあり得ぬ! さっさとねぐらに帰るがよい!】
【それがさぁ、帰れねえの。召喚者もいねえのによお、なんでここに来たのかも分かんねえんだもん】
【帰る方法は知っておろう! 目障りだ、我に殺されたくなくば、さっさといね!】
オセがエルとジェニの顔を見比べて首を傾げた後グロリアをチラ見して『いや、まさかな。相手はフラウロスだせ?』と呟いて消えた。
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