前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第三章

42.追いかけ回される蝿

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「なら、ひとつずつ解決するしかないよな。まずは一番簡単なとこから片付けていけば良いだろ?」

「と言うと?」

「エイルを捕まえる。リンドはあの女が欲しいんだよな。で、フレイヤを捨てない本当の理由はエイルにかけられた呪いを解かせる事」

「⋯⋯蘇生は僕達の計画には欠かせないからね。ヘルに手を出せばロキの逆鱗に触れるけどエイルなら問題ない。ロキは自分の子供達以外には興味がない奴だからエイルを狙ってるんだよ。それ以外の理由なんて⋯⋯遠い昔のことだから忘れたよ」

「エイルはロキの屋敷に籠ってるだろ? ロキが今この町にいる時に王都の屋敷を襲撃すれば簡単に捕まえられる」

「ロキのいない屋敷を襲撃か⋯⋯ロキが帰れないとなったら残っているメンバーで戦うはずだけど、フェンリルやヨルムガンドの相手をするのは大変そうだけど?」

「幻術と弱体化のできる魔導具が出来上がったから奴等くらいなんとでもなる。フェンリルは俺が仕留めたいしな」

「積年の恨みといつやつかい? ロキの幻術で逃げおおせたフェンリルを幻術で捕まえるとはグリーズはそんなにしつこい性格だったかなあ。だが、悪くない。上手くいけばヘルが出てくるかも⋯⋯ヘルの死者復活が手に入れば計画はもっと簡単になるんだよね」

「エイルと一緒にヘルを捕まえればロキの足枷にできるしな」

「そう言う考え方もあったね。ロキは激怒するだろうがヘルを捕まえておけば身動き取れない。急いで2つ目の隷属の首輪をこっちに運ばせよう」

「俺がメテオリックアイアンを持って帰って来たら即決行だな」

「今回はどこに?」

「ミュルクウッド王国だ。少し前にあそこで見つかった」

「その間に手紙を出してテュール達をこちらに呼んでおこう。聞いている症状を治して僕に隷属させてしまえば役に立つからね」

「ああ、奴等を従えれば全部まとめて終わらせられるな」

「ここまで来て足踏み状態が続いてたからね、ドヴェルグ頼りなのがもどかしかったけどテュール達を隷属できれば怖いものなしだよ。ヘイムダルのルーン魔術が手に入ればセイズの優先順位は下がってしまうし、フレイは妖精族やエルフを引き連れてくる。テュールの頭脳と能力は折り紙つきだしトールの馬鹿力はいくらでも使い道がある⋯⋯となると、益々フレイヤは不要になるからすぐに処分できるね」

 満足そうに部屋を出て行ったグリーズの背中を見ていたリンドが冷めたお茶を飲み干した。

「エイルか⋯⋯君の欲しがりそうなものは全部揃えておいたよ。世界中の薬草を集めた薬草園と異世界の知識を集結した病院。どんな顔をするかとても楽しみだ」

(キモ! やっぱコイツ変質者じゃん)

 満足そうに伸びをするリンドにこっそり中指を立て(たつもりで)ジェニは屋敷に帰る事に決めた。

(いや~、もう無理! アイツらキモすぎるぜ。それにしてもチャンス到来?)

「奴等を使役できるようになればこちらの有利は揺るがない、ロキなど虫ケラ同然の⋯⋯」

 リンドの最後の呟きを小耳に挟みながらグロリア達の待つ屋敷に向けて飛び立った。

(いやぁ、現状も虫ですからね~)



 あれこれ考えながらポヤポヤと屋敷に戻ったジェニはエイルに追いかけ回された。

「どこから入って来たのよ! 叩き潰してやる」

(ヤベェ、蝿のままだよ~!)

 天井に張り付いたジェニにエイルの鞭が飛ぶとヘルが笑い出した。

【パッパ~ったら超間抜け~! そんなに潰されたかったのかい?】

「へ? パパって、あの蝿ってジェニなの!?」

 ようやく変身を解くことができたジェニが頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「熱烈な出迎え、ご苦労!」

【さっさと風呂に入って来な! 腐った生ゴミ以下の臭いさせて笑ってるんじゃないよ!】

【ジェニ、くたいでちゅ】

 グラネが前足で鼻を押さえた。




 風呂から出たジェニやグロリアも集まりテーブルに料理が並べられると、ジェニがガツガツと貪るように食べはじめた。

【⋯⋯話どころじゃなさそうだねえ】

「⋯⋯ずっと食べてなかった人みたい」

「そりゃ⋯⋯モグモグ⋯⋯ずーっと蝿の⋯⋯モグモグ⋯⋯」

【いいから黙って食いな! 食いながら喋るなんて汚いったらありゃしない】

 料理をあらかた食べ尽くしたジェニが満足そうに腹をさすりながら聞いたばかりの話をグロリア達に話して聞かせた。

【グリーズが出かけてる間を狙うってことかい?】

「ああ、罠の可能性もなくはないがチャンスでもあるからな。隠し場所がハッキリわかってからやりたかったが、あの隠し扉から攻める。
その後の屋敷の襲撃は妖精とエルフを逃がしときゃ問題はねえ」

(あの屋敷、壊されちゃうのは寂しいなあ)

 グロリアにとって王都のジェニの屋敷は今世の実家のようなもの。壊されると知っていて放置するのはかなり寂しい気がした。

「⋯⋯まあ、屋敷はあれだな。ダーインスレイヴの確保を狙ってから考えるか。魔導具の出来次第だがなんとかなるだろう」

【奴等の作った魔導具の幻術は上級魔法レベルだにぃ。弱体化はもう少し上の超級だにぃ。剣に仕込んであっただにぃ】

 この世界の魔法は下級・中級・上級がある。かつてはその上に超級・帝級・神級 があったが使える者がいなくなり、上級以上は全て神級で伝説扱いされている。

「隷属の首輪はどんな感じだ?」

【2種類あっただにぃ。1個は本物の神級でヤバいだにぃ。後のは帝級くらいだにぃ】

「隷属の首輪は作りやすいってことか」

【昔はよく作らされてただにぃ。作り方がわかってるだにぃ】



「なら決行は3日後、俺とグロリアとエルにゃでやる。イオルとラプスはヘル達の護衛だな。
俺は明日の朝一番で王都を覗いてくる。ティウ達の内誰か一人でも奴等の手に落ちたらめんどくささが跳ね上がるからな」

 王都にはマーナとディルスとカニスしかいない。戦力外のカニスを除けばマーナとディルスのみで、守る相手が4人いるのではどうやっても手が足りない。

【有名な医者から治療してやるなんて手紙をもらったら、アイツらの親は大喜びで送り出しそうだしねえ】

「うーん、一箇所にまとめられたらいいのにね。リンド医師達に捕まるくらいなら先に捕まえちゃう手もある気がする。ほら、ヘルの出した鳥籠に放り込んでおくとか。
それか、フロディはアルフヘイムに行く力があるからそこに全員放り込んどくとか」

「⋯⋯捕獲か⋯⋯⋯⋯そいつはいい手かも、面白そうだしな。リンド達は俺とグロリアしかここに来てないと思ってたから、ここを監禁場所にするのはいいかもしれねえ。
アルフヘイムにするとしたら誰に説得させるかが問題だな」

「セティ経由でキラキラさんに言わせるとかは? 暫くアルフヘイムから出てくるなって言わせるの。流石にバルドルからのお言葉で~すってなったら言うこと聞くんじゃないかなぁ」

 セティでは説得力が無さそうだが現最高神バルドルの言葉に逆らうことはないだろう。

【面白いじゃないか、グロリアがキラキラに言い聞かせるんだろ?】

「うん、キラキラさんに言いたいこと溜まってるしちょうどいいかもって思ってる。鳥籠の中でティウ達4人にウジウジされても面倒そうだもんね」

【ついでにセティに伝言を頼めるかい?】

 ヘルがジェニの耳元でボソボソと呟いているとグラネが笑顔で呟いた。

【やっぱりちんまいちゃんがいちばんつおくて、こわいでちゅね~】



 次回、グロリア爆発か?

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