前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第三章

15.分かりはじめた過去

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【それは俺には関係ないにゃ。判断するのはお前達にゃ。俺はただ事実を知るだけにゃ。レーヴァテインを使うにゃら使った後の未来が見えて、使わにゃいにゃらその時の未来を見る。決めるのは俺ではにゃいにゃ】

「使ったら未来がどうなるかって言うのは無理ってこと?」

【そうにゃ、俺は未来には関与しにゃいにゃ。未来には正解も確定もにゃいにゃ】

 選択肢を並べ未来を知る方法を取れないのは、グロリア達が考え決断する度に未来は変わるから。その時起るはずの未来も別の要因で変化していく可能性がある。

 今回避難させたメンバーの中にたまたまブロックとエイトリもいたから未来が少し変わったのが良い例だろう。

 

「ブリーシンガメンについて教えてくれる?」

【アレはアールヴリッグ・ドヴァリン・ベルリング・グレールの4人のドヴェルグが作ったにゃ。
ラグナロクの後でリンドが盗んだにゃ。
リンドはエイルに呪いをかけたフレイヤに腹を立てていたにゃ。イーヴァルディの息子達にブリーシンガメンを渡して作り替えさせたにゃ】

【おで、ちょびっと知ってるだにぃ。イーヴァルディの息子らとアールヴリッグ達はいっつも喧嘩してただにぃ。ブリーシンガメンを作ったらフレイヤとエロいことできたってわざわざ自慢しに行っただにぃ】

【すんごい喧嘩になってみんなゲガだらけになっただにぃ。あんちゃんとおでは巻き込まれるのが嫌で逃げただにぃ】

【イーヴァルディの息子達はアールヴリッグ達にふくるうを誓ってただにぃ】

「復讐な」

【それだにぃ。んで、ブリーシンガメンを壊したってわざわざ言いにいってまた大喧嘩しただにぃ】

【溶かしたブリーシンガメンの端っこをマルデルがイズンから奪い取ってただにぃ。隷属のネックレスに使っただにぃ】

【ふふん! ブリーシンガメンの端っこだって気付いてなかったマルデルは間抜けだにぃ。あんちゃんは偉いだにぃ、あの端っこが持ってた力を利用しただにぃ】

 ブリーシンガメンの素材に染み付いていた呪いに近いフレイヤの執着心と、全てを思い通り手に入れてきた記憶が魔導具の力の元になった。

【セイズの時使ってた幻覚剤の効果も残ってただにぃ】

 ティウ達の隷属が鑑定魔法で読み取れなかった理由が判明した。



「リンド医師って知れば知るほどチグハグって感じがするね」

 上下水道の提案には名前を出し魔導具開発には名前を出していない理由はまだ分かっていないが、リンドは魔導具の開発が頓挫した時や手紙などをほぼ無視している。

 その陰でドヴェルグと交流を持ちリフィアの町を作り上げこの世界にはあり得ない医療機関を作り上げていた。

「マルデルが神族を隷属させるための魔導具を手に入れられるよう手伝ったけど、ブリーシンガメンは壊してる⋯⋯。リンド医師はマルデルの味方なのか敵なのか」

【リンドはマルデルの言葉を信じてるから、マルデルを使い勝手の良い駒だと考え接触したにゃ。
上下水道の件で人から注目される名誉とオッタルとの接点と金をもたらしたのは確実にフレイヤを操るためにゃ。魔導具開発は成功すると信じていたにゃ。他国から非難されると知っていたから名は出さなかったにゃ。魔法を使う人間の力を底上げしてこの国にいる元神族や元巨人族と相打ちにするのが目的にゃ。
派手に目立って英雄になってエイルに注目されたいにゃ。元神族や元巨人族を憎んでるにゃ。隷属させたエイルに自慢したいにゃ】

「リンドってアホの子のままなんだ。なっさけないったらないじゃん。
多分あれでしょ⋯⋯僕を嫌う母様や司法神の僕を馬鹿にした世界の奴等なんて嫌いだ! 僕は凄いんだからな~⋯⋯って。しかもその後で隷属って、だから男は嫌いなんだよ!」

「拗ねたガキが昔の恨みを引きずってるってか。くっそカッコわりい奴」

「イーヴァルディの息子達と弟子達について教えて」

【アイツらは自分達が最高の技術を持ったドヴェルグだと思ってるにゃ。他のドヴェルグが作った物を破壊するのが一番の楽しみにゃ。
ネックレスを直せってマルデルに文句言われて腹立ててるにゃ。敵の意志を奪いコントロールできる杖を作り上げるにゃ。蘇生の効果をつけるのは失敗するにゃ】

(持ち主の精神を乗っ取る妖刀とかの話って結構あった気がする。あれの逆バージョン?)

「そんなもんができるわけねえ⋯⋯よな?」

 ディルスの背にもたれて林檎を磨いていたブロックが手を止めて悩みはじめた。

【うーん、理論上⋯⋯あ、そうか⋯⋯いや⋯⋯できなくはないだにぃ】

「まじかあ」

【メテオリックアイアンを芯にすれば魔法は簡単に組み込めるだにぃ。ブリーシンガメンの素材とミルラを基本に⋯⋯ロトスもだにぃ。それをミスリルで覆えばいいだにぃ。
最後はグロリアを拉致してルーンを彫らせるだにぃ。レーヴァテインよりすんごいのになるかもだにぃ。
うん、作ってみたいだにぃ】

 ロトスは記憶喪失の実。心地好く楽しい忘我に陥り過去を忘れる。

 ミルラはゴム樹脂としても利用できる樹液。鎮静・殺菌・消臭等の効能を持ち、香・飲用薬・塗り薬など使い方も豊富なため頻繁に利用されている。

「ミルラは聖別の魔力を持ってて⋯⋯ロトスは記憶の混乱?」

「メテオリックアイアンかあ、あれは精錬技術が低くても使えるんだっけか?」

【天より授かった最強の金属だにぃ。どんな形にもなるしなんでも組み込めるだにぃ】

【ミスリルより希少だにぃ】

 硬さではなく加工のしやすさで最強と言われるメテオリックアイアンは、見つかるとすぐに売られ加工されてしまうのでなかなか手に入らない。

「で、そんなヤバいもんをイーヴァルディの息子達が作ってると⋯⋯あれ、さっき『作り上げる』つったよな。つまりグロリアは拉致られる未来って事か!? イーヴァルディの野郎はぶっ殺されてえようだな」

 目を吊り上げたジェニが目の前のテーブルを蹴り上げた。

 ガシャン⋯⋯

「売られた喧嘩なら買ってやろうじゃねえか! おい、イーヴァルディ達の住処はどこだ!?」

【はぁ⋯⋯ガキじゃあるまいしテーブル壊してバッカじゃないのかねえ。まだ売られてもない喧嘩だろ? ちょっとは落ち着きな!】

「⋯⋯いっつも屋敷中壊しまくってる娘っちに溜息つかれた。父ちゃんなんてテーブル一個なのに⋯⋯ブチブチ⋯⋯」

 しゃがみ込んで壊れたテーブルのカケラを拾っていたジェニの頭をグロリアが無意識に撫でた。

(は! わ、私ったらなんて事を!! きゃあ~)

 真っ赤な顔で見つめ合う二人を生暖か~い目が見つめていた。



【プフッ⋯⋯で、どうするんだい?】

 笑いを堪え切れなかったヘルが問いかけた。

「は! えっとだな⋯⋯ブロックにレーヴァテインを取りに行ってもらうのが良さそうだが⋯⋯うーん、どうすっかなぁ。ブロック一人じゃシンモラに腱を切られて終わりそうだしなあ⋯⋯。
スルトを呼び戻して護衛させるしかねえんだけどぉ」

 ジェニが言いにくそうに話しながらチラチラとヴァンを見ると、うたた寝のふりをしていたヴァンが立ち上がった。

【仕方あるまい、我がスルトのケツを叩いてやろう】

【ひぃぃ! ま、まさか⋯⋯おではヴァンと一緒に?】

【あんちゃん、ライドオンのチャンスだにぃ。練習の成果を見せるだにぃ。おむつの替はまだいっぱいあるだにぃ!】

 ヴァンの背に乗る事を想像したのかブロックがぶくぶくと泡を拭いて気絶した。

「やりぃ! ヴァンがいりゃスルトは馬車馬のように働くだろうし、シンモラもビビって大人しく⋯⋯うん、最高じゃねえか」



【問題のダーインスレイヴは、どこにあるのかも分かっておらんのだろう?】

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