前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

との

文字の大きさ
上 下
206 / 248
第三章

14.最恐なのは誰?

しおりを挟む
【ところで向こうの部屋でブルブル震えてる悪魔はいつ挨拶に来るのかねえ】

「あ、忘れてた~。エルにゃ、こっちにおいでよ」

【⋯⋯】

「沢山いるから恥ずかしいのかも! すっごいモフモフの雪豹で名前はエルだから、エルにゃって呼んでるんだ~。すぐ連れてくるね」

【【⋯⋯(悪魔だよね)】】



 昨日の部屋に行くとエルが隅っこに頭をくっつけて丸まりブルブルと震えていた。

【嘘にゃ! この家はおかしいにゃ。奴等をここに呼び寄せるとは思わにゃかったにゃ】

「エルにゃ~、お友達がいっぱい来ててエルにゃに会いたいって。一緒に向こうの部屋に行こう?」

【やだにゃ、殺されるにゃ。俺まだララちゃんと最後まで⋯⋯にゃあ⋯⋯殺される前にララちゃんとおぉぉ】

「えーっと、向こうにいるのはみんなオーディンを敵だと思ってるメンバーなんだよね~。あ、エイルはどうなんだろう?⋯⋯⋯⋯フレイヤの事は嫌いだって言ってるし男嫌いだから。うん、全員一緒の仲間だよ~」

【む、無理にゃ~。俺、帰りたいにゃ。悪魔達の城の方が怖くないにゃ】

「大丈夫だよ、ほれほれ」

 グロリアはエルを『うんしょ』と抱え上げてみんなのいる今にやってきた。

「お待たせです。この子がうっかり召喚したらしいエルにゃです。元は⋯⋯ フラウロスって言う異世界の悪魔ちゃんで、名前はメフリエルからとって『エル』にしたの」

【本当に雪豹だね~、モフってもいい?】

【わあ、俺っちもやってみた~い】

【ひいっ! こにゃいでにゃ、来たらダメにゃ】

【【にゃ? ⋯⋯可愛いぃぃぃ~】】

【グラネのなまかみたいでちゅ】

 全員に囲まれモフモフツンツンされたエルは早々に白目をむいてヘソ天になった。

【気の弱い悪魔だねえ、こんなので役に立つのかい?】

「すっごい物知りだし火魔法は多分神級でいっぱい助けてもらったから間違いなし」

「嘘つきで癖は強いがなんでも知ってるからな」

【フラウロスなら役に立ちそうじゃ】

「ええ? もしかしてヴァンは知ってるの?」

【序列までは覚えておらぬがフラウロスは地獄の大公爵。中々に強い魔神であったはず。敵を全て焼き尽くす力を持っておる上に他の悪魔や精霊から召喚者を守る】

 ヴァンはジェニと共にあちこちの世界を渡り歩いた時に軍団を率いて戦う様を見たことがあると言う。

「結構過激な戦い方をする奴だし、何より正確な情報を動かずに手に入れられる特典付きだからな」

【でもさあ、嘘つきなら信用できないよね?】

 3兄妹の中で一番おっとりとした性格のイオルが首を傾げた。

「普段は嘘つきだけど魔法陣の三角形の中では嘘をつけないから、昨夜も色々教えてくれたしね。セイズは我欲とか妄想が混じってるから嘘が多いって」

(そう言えば、この国の未来はどうなったのかなぁ? みんながここに来て変わったならいいんだけど)

【それは便利かも、俺っちの未来も教えてくれるかなぁ?】

 チラチラとヘルを見ながら聞いてきたマーナはヘルのひと睨みでイオルの陰に隠れた。



 広い居間にはそれぞれの好みの椅子やラグが持ち込まれてまったりとお茶やおやつを楽しんでいる。エルもカニスは怖くないと気付いたらしくぺったりと横に張り付いて一緒にジャーキーを齧っていた。

【で、アタシ達をここに呼んだのはイチャイチャを見せびらかしたいからってことかい?】

「へ?」「ええっ!」

 ソファに並んで座りおやつを交換したり耳元で内緒話をしては顔を赤らめたりしている事に、本人達は気づいていなかったらしい。

【全くいい歳して舞い上がって⋯⋯はぁ、超ウケるんだけど? 笑っちまいそうだよ】

「笑ったらいいじゃん。ヘルは元々笑い上戸なんだからさあ」

【エイル、アタシのイメージを壊すんじゃないよ! ヘルヘイムに君臨する恐怖の女神、死と再生を司り死者を支配するヘル様だよ!?】

「ブレイ◯ボードが動かないって尻餅ついて涙目になってたくせに~、こないだは携帯ゲーム機で魔物退治に失敗してゲーム機握りつぶして落ち込んでたんだよね~。
カッコつけるのそろそろ飽きてこないの?」

【⋯⋯ふん、エイルには一生薬草を分けてやらないからね】



「あ、薬草で思い出した! リンド医師がヤバいの。エルにゃ詳しく教えて欲しいからお願いね」

【もっしゃもっしゃ⋯⋯へ?】

 《ララちゃんのおねだり~》

【ちんまいちゃんらちいなまえでちゅ】

【⋯⋯おではグロリアにだけは名前付けさせないだにぃ】

「エルにゃ、エイルに関する質問に答えてね」

(この国の未来に関わることには触れないようにしなくちゃ。もし全てを消滅させるのが本来の定めだなんて話したら困るもん)

【⋯⋯いいにゃ、英雄スヴィプダグのせいで男嫌いににゃったエイルにゃ。薬草オタクは過去から未来まで変わらにゃいにゃ。死者の蘇生ができたのは過去、できにゃくにゃったのはフレイヤのせいにゃ】

「なんで知ってんの? 誰にも話したことなかったのに!?」

【俺は全てを知る悪魔にゃ。グロリアに召喚された後この世界の全てを知ったにゃ】

 ふふんと顎を上げて自慢げな顔をしたが、ヴァンと目が合うと尻尾を咥えて小さくなった。

「⋯⋯フレイヤがメングロズって名前でいた時、気まぐれで治療の真似事をしたんだ。で、薬を間違えて⋯⋯復活させろって言われて断ったら呪いをかけやがった。あんのクソ女、超ムカつく! 今度会ったら顔にイボができる薬飲ましてやる!!」

【リンドはエイルが好きだったにゃ、人間界に降りて追いかけるほどにゃ。何度か見つけたけどエイルは気付かにゃかったから今はエイルを恨んでるにゃ。エイルはリンドに捕まって魔導具で隷属させられるにゃ】

 全員が息を飲み込んだのを見たエルが『にゃ!』と意地悪そうに笑った。

【と言う未来は変わったにゃ。リンドはまだエイルとブロックがここに来てるのに気付いてにゃいにゃ。それが現在にゃ。
リンドはこれからもエイルを捕まえようとするにゃ。魔導具は作れにゃいにゃ。これが今ある未来にゃ】

「はあ、驚かせんじゃないわよ! もったいぶったクソ悪魔なんて可愛くもなんともないんんだからね! それにしても、フレイヤと言いリンドと言いただの八つ当たりじゃん。くっそムカつく! ひねくれ猫のあんたもね!」

【さっきの仕返しにゃ、悪魔の腹に『ぶぶ~』するのは禁止にゃ。あれはくすぐったくてくせににゃるにゃ】

【そそ、その魔導具ってもしかしておでが作る予定だったとかだにぃ】

 エルがチラッとグロリアの顔を見たのは返事をするかどうか確認しているのだろう。

【そうにゃ、ブロックとエイトリはエイルが拉致される時一緒に連れてかれてエイトリの命と引き換えに魔導具を作らされるはずだったにゃ。でもここに来たから未来が変わったにゃ。
ブロックはレーヴァテインの封印を解くにゃ。これがブロックの今ある未来にゃ】

「レーヴァテインか⋯⋯いや、アレは」

 ジェニが苦々しげな顔をして腕を組んだ。

「アレが今回の戦いに必要になるの?」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...