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第二章
35.アカデミーの変態さん達
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(魔法円と基本構造が似てる⋯⋯召喚魔法に近い? いや、座標軸を使ってるイメージの方が近いかなぁ。起点と終点に魔法陣を設定して相互通行するパターンね、転移と違うのは起点と終点が明確になってるとこだね。面白そう)
膨大な魔力と繊細な魔法操作が必要な転移魔法陣はごく一部の人しか扱えず、数理学に燃えるオリー教授が使えるとは思っていなかった部員達が呆然としていた。
「グロリアは魔法陣を見たことが?」
「いえ、初めてです。凄いで⋯⋯」
グロリアの言葉の途中で魔法陣が輝きはじめ、厳しい顔のローブ姿の男や身軽な服装の男達が続々と現れた。
肌の色も髪や目の色も様々で服装もバラバラ。その中でも一番背が高く目立つ格好⋯⋯民族衣装にターバンを巻いた男性がオリー教授の方に手を差し出した。
「オリー、面白い事になってるそうじゃないか。できればはじまる前に呼んで欲しかったがね」
「生徒の命が脅かされたと言うのに相変わらずだな。しかも今日の服装はなんだ?」
「ええっ、ターバンとディスターシャを知らないのかい? 先日とても良い布を見つけたので作ってみたんだが、かなり評判がいいんだよ。
白髪のオリーは威厳が備わってナイスミドルってやつになってる」
眉間に皺を寄せ呆れたような顔をしたオリーに、鮮やかな色のターバンを巻いた男が服を見せびらかしている。
(本当は白色で丸襟のディスターシャだけど濃い緑に金色の刺繍飾りが入っている⋯⋯両手を広げてると孔雀みたい)
能天気そうな男と生真面目なやり取りを眺めていたグロリアの腕に鳥肌が立った。
「⋯⋯グロリア、こっちに来てくれるかな」
呆れたような顔をしたオリーが手招きしたが、妙な気配を感じて腕をさすっていたグロリアの足は固まったように動かなかった。
(このターバンの人⋯⋯目が怖い。それにどこかからすっごく嫌な気配がする)
不安そうに少し俯いたグロリアが転移してきた集団をチラ見しているとオリーが大きな溜息をついた。
「ロズウェル、グロリアが怖がってるから威圧するのはやめてくれないか?」
集団の後ろから出てきたのは所々繕った跡のあるローブを纏った男性で、手にルーン文字の刻まれた長い杖を持っていた。
(おお、ルーン文字だ! 使ってる人初めて見た⋯⋯なになに⋯⋯あ、なんでもない。見事な装飾です、はい)
「その女は⋯⋯魔法が使えんのだな」
「ロジー、最近の人間には魔法適正のない者も増えているんだし、珍しくもないだろう?」
「それは分かっておるが⋯⋯《鑑定》」
人に対して鑑定魔法を使うのはマナー違反だとされているが、ローブの男は全く気にしていないらしく平気で杖を向けてきた。
「むむ! 読めん⋯⋯俺様の鑑定が弾かれておるだと⋯⋯《バインド》」
バチン!
「は、俺様の神級魔法を弾いただと? 俺様の予想通り、貴様はやはり危険だ!!」
ロジーと呼ばれた男が顳顬を引くつかせながら杖を向けてきた。
(あ、防御結界したまんまだった⋯⋯これってヤバい? いま、結界を外したらますます怪しまれるよね)
「ロズウェル、私の生徒に手を出すのは許さんぞ!」
「そいつの正体を暴いてやるだけだ! 魔導具か⋯⋯神級魔法を弾く魔導具が開発されたなど聞いてないぞ! 吐けぇー!!」
「グロリア、申し訳ない。弟に代わって私が謝罪するよ。あの魔法オタクはロズウェル・V・アーサランド、あれでもアカデミーの中では魔法研究の第一人者なんだ」
「おお!」
ロズウェル・V・アーサランドは人と魔法の関わりを研究している。人がなんと思おうと気にせず突き進む唯我独尊タイプ。
「近年魔法適性のない者や魔法の使えない者が増えているだろう? その原因を調べるのが生き甲斐でね」
「その通り! その女は俺様がじっくり念入りに調べてやる。この女は今までの検体とは違っておる⋯⋯もしかしたら今度こそ何か分かるかもしれん」
「ロジー、今はそれどころじゃないだろう? 申し遅れたね、僕はこのアホの兄でヘニル・V・アーサランド。今の所アカデミーの代表を務めてる」
「わぁ!!」
(名前を聞くたびに怪しげな歓声を上げる生徒達がキモい。多分憧れの人とかなんだろうけど、この部屋に来てからの私への扱いが酷すぎたからちょっとなぁ。
もうちょっと落ち着かないと『巻き込まれた可哀想な先輩達』なのか『知らんがなって放置しても構わない先輩達』なのか分かんない)
ロズウェルは一緒に来た仲間達に引き摺られて見えなくなり、緊張して整列したままだった部員達は慌てて髪や服装を整えはじめた。
(みんななんだか嬉しそうで、顔色も良くなってる)
「初めまして、中等部一年グロリア・C・シビュレーです」
「オリーからある程度の話は聞いているから何も心配はいらない。グロリアがなんらかの攻撃をしていたとしても正当防衛だし、そこに転がっている奴らを見れば手加減したのは間違いないからね」
「ありがとうございます」
「うん、素直で可愛い。今度美味しいオヤツを⋯⋯ぐはっ!⋯⋯オリーを含め目撃者は大勢いるし、なんの心配もいらないからね。その後、ケーキでも⋯⋯ぐほっ!⋯⋯もう、痛いじゃないか!」
ヘニルが話の途中におかしな内容を挟もうとする度にどこかから攻撃が飛んできていたらしく、後ろに振り返って怒鳴った。
「うるさい、貴様がグロリアちゃんに手を出そうとするからじゃ! グロリアちゃんを一番先に見つけたのはワシじゃからな、愛でるのはワシに断ってからにせい!!」
人並みが割れた先にいたのは3人の男に拘束されかけて暴れるプロフェッサー・シェラードだった。
(マジかぁ、プロフェッサーいらしてたんですね)
グロリアが少し虚な目になった。
(ロズウェルさんとかヘニルさんもだし、さっきの戦いの方が楽だったりして)
シェラードは足元に倒れ伏したロズウェルを踏みつけて、右手に何か握りしめている。
「シェラード⋯⋯手に握ってる石を片付けてくれ。僕の後頭部は既に限界だから」
「貴様が小動物フェチなのは有名じゃからな、グロリアちゃんの半径5メートル以内には近づくな。離れるまではワシの豪速球が狙っておると覚悟せよ」
「先輩⋯⋯なんでいらっしゃったんですか⋯⋯てか、連れてこないでってあんなに頼んだのに」
オリー教授が頭を抱え溜息をついた。
膨大な魔力と繊細な魔法操作が必要な転移魔法陣はごく一部の人しか扱えず、数理学に燃えるオリー教授が使えるとは思っていなかった部員達が呆然としていた。
「グロリアは魔法陣を見たことが?」
「いえ、初めてです。凄いで⋯⋯」
グロリアの言葉の途中で魔法陣が輝きはじめ、厳しい顔のローブ姿の男や身軽な服装の男達が続々と現れた。
肌の色も髪や目の色も様々で服装もバラバラ。その中でも一番背が高く目立つ格好⋯⋯民族衣装にターバンを巻いた男性がオリー教授の方に手を差し出した。
「オリー、面白い事になってるそうじゃないか。できればはじまる前に呼んで欲しかったがね」
「生徒の命が脅かされたと言うのに相変わらずだな。しかも今日の服装はなんだ?」
「ええっ、ターバンとディスターシャを知らないのかい? 先日とても良い布を見つけたので作ってみたんだが、かなり評判がいいんだよ。
白髪のオリーは威厳が備わってナイスミドルってやつになってる」
眉間に皺を寄せ呆れたような顔をしたオリーに、鮮やかな色のターバンを巻いた男が服を見せびらかしている。
(本当は白色で丸襟のディスターシャだけど濃い緑に金色の刺繍飾りが入っている⋯⋯両手を広げてると孔雀みたい)
能天気そうな男と生真面目なやり取りを眺めていたグロリアの腕に鳥肌が立った。
「⋯⋯グロリア、こっちに来てくれるかな」
呆れたような顔をしたオリーが手招きしたが、妙な気配を感じて腕をさすっていたグロリアの足は固まったように動かなかった。
(このターバンの人⋯⋯目が怖い。それにどこかからすっごく嫌な気配がする)
不安そうに少し俯いたグロリアが転移してきた集団をチラ見しているとオリーが大きな溜息をついた。
「ロズウェル、グロリアが怖がってるから威圧するのはやめてくれないか?」
集団の後ろから出てきたのは所々繕った跡のあるローブを纏った男性で、手にルーン文字の刻まれた長い杖を持っていた。
(おお、ルーン文字だ! 使ってる人初めて見た⋯⋯なになに⋯⋯あ、なんでもない。見事な装飾です、はい)
「その女は⋯⋯魔法が使えんのだな」
「ロジー、最近の人間には魔法適正のない者も増えているんだし、珍しくもないだろう?」
「それは分かっておるが⋯⋯《鑑定》」
人に対して鑑定魔法を使うのはマナー違反だとされているが、ローブの男は全く気にしていないらしく平気で杖を向けてきた。
「むむ! 読めん⋯⋯俺様の鑑定が弾かれておるだと⋯⋯《バインド》」
バチン!
「は、俺様の神級魔法を弾いただと? 俺様の予想通り、貴様はやはり危険だ!!」
ロジーと呼ばれた男が顳顬を引くつかせながら杖を向けてきた。
(あ、防御結界したまんまだった⋯⋯これってヤバい? いま、結界を外したらますます怪しまれるよね)
「ロズウェル、私の生徒に手を出すのは許さんぞ!」
「そいつの正体を暴いてやるだけだ! 魔導具か⋯⋯神級魔法を弾く魔導具が開発されたなど聞いてないぞ! 吐けぇー!!」
「グロリア、申し訳ない。弟に代わって私が謝罪するよ。あの魔法オタクはロズウェル・V・アーサランド、あれでもアカデミーの中では魔法研究の第一人者なんだ」
「おお!」
ロズウェル・V・アーサランドは人と魔法の関わりを研究している。人がなんと思おうと気にせず突き進む唯我独尊タイプ。
「近年魔法適性のない者や魔法の使えない者が増えているだろう? その原因を調べるのが生き甲斐でね」
「その通り! その女は俺様がじっくり念入りに調べてやる。この女は今までの検体とは違っておる⋯⋯もしかしたら今度こそ何か分かるかもしれん」
「ロジー、今はそれどころじゃないだろう? 申し遅れたね、僕はこのアホの兄でヘニル・V・アーサランド。今の所アカデミーの代表を務めてる」
「わぁ!!」
(名前を聞くたびに怪しげな歓声を上げる生徒達がキモい。多分憧れの人とかなんだろうけど、この部屋に来てからの私への扱いが酷すぎたからちょっとなぁ。
もうちょっと落ち着かないと『巻き込まれた可哀想な先輩達』なのか『知らんがなって放置しても構わない先輩達』なのか分かんない)
ロズウェルは一緒に来た仲間達に引き摺られて見えなくなり、緊張して整列したままだった部員達は慌てて髪や服装を整えはじめた。
(みんななんだか嬉しそうで、顔色も良くなってる)
「初めまして、中等部一年グロリア・C・シビュレーです」
「オリーからある程度の話は聞いているから何も心配はいらない。グロリアがなんらかの攻撃をしていたとしても正当防衛だし、そこに転がっている奴らを見れば手加減したのは間違いないからね」
「ありがとうございます」
「うん、素直で可愛い。今度美味しいオヤツを⋯⋯ぐはっ!⋯⋯オリーを含め目撃者は大勢いるし、なんの心配もいらないからね。その後、ケーキでも⋯⋯ぐほっ!⋯⋯もう、痛いじゃないか!」
ヘニルが話の途中におかしな内容を挟もうとする度にどこかから攻撃が飛んできていたらしく、後ろに振り返って怒鳴った。
「うるさい、貴様がグロリアちゃんに手を出そうとするからじゃ! グロリアちゃんを一番先に見つけたのはワシじゃからな、愛でるのはワシに断ってからにせい!!」
人並みが割れた先にいたのは3人の男に拘束されかけて暴れるプロフェッサー・シェラードだった。
(マジかぁ、プロフェッサーいらしてたんですね)
グロリアが少し虚な目になった。
(ロズウェルさんとかヘニルさんもだし、さっきの戦いの方が楽だったりして)
シェラードは足元に倒れ伏したロズウェルを踏みつけて、右手に何か握りしめている。
「シェラード⋯⋯手に握ってる石を片付けてくれ。僕の後頭部は既に限界だから」
「貴様が小動物フェチなのは有名じゃからな、グロリアちゃんの半径5メートル以内には近づくな。離れるまではワシの豪速球が狙っておると覚悟せよ」
「先輩⋯⋯なんでいらっしゃったんですか⋯⋯てか、連れてこないでってあんなに頼んだのに」
オリー教授が頭を抱え溜息をついた。
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