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第二章
18.サイズで決めるのは良くないと思うよ?
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「えーっと、考えておきます?」
(この学園の先生だよね? 関わって『退学だ~!』って騒がれるのはもう懲り懲りだよ)
「今更で失礼だが、名前と学年とクラスを教えてくれないか?」
「一年Sクラスのグロリア・C・シビュレーです」
「⋯⋯ グロリア・C・シビュレー! シビュレー伯爵家の長女のグロリア様であらせられましたか!!」
立ち上がるタイミングを逃していたグロリアをガン見した数理学教師のオリーが『ならばあり得る』と呟き大きく頷いた。
「確かに⋯⋯聞いていた通りのサイズ」
「へ?」
(グロリア⋯⋯様? ディスられてばっかの私がなにゆえ『様』? しかもサイズで確認できるってどゆこと?)
口をぽかんと開けて首を傾げたグロリアの前にオリーがしゃがみ込み膝をついた。
「「ええっ!!」」
生徒と職員達が驚きの声を上げてもオリーは気にもせず、グロリアの手をガシッと握りしめた。状況が理解できないティウ達3人はグロリアのそばに立ち尽くしたまま、オリーの行動に目を光らせていた。
「アンドリュー・シェラード教授の事は覚えておいででしょうか? 専門はわたくしと同じ数理学でございます」
「ひぃぃ!」
(でた!! プロフェッサー・シェラードってあのヤバい人じゃん、あの人を知ってるって事は仲間? 危ない人仲間って事? 礼儀正しそうなふりをしててもこの押しの強さは関わっちゃダメなやつだよね。
せっかく実験が成功してスプラウトに『どや~』ってできそうだったのにぃ。チャンスを返せぇ!
すっくない『ざまぁ』のチャンスだったのに~!)
「シェラード教授は私の大学時代の先輩でありまして、グロリア様のお話は教授から何度も聞き及んでおりました。是非一度お会いしてご高説を賜りたいと思い伯爵家に何度も先触れを出しておりましたが、断られ続けて無念の涙を堪えておった次第です。
まさか⋯⋯まさかこの学園に入学しておられたとは⋯⋯私としたことがなんと迂闊な!」
(うわあーん! プロフェッサーから逃げられて喜んでたのに、また変なのがきたー)
慌てて中腰になり逃げ出そうとしたグロリアだったがオリーの手に益々力が入って外れない。
(痛い痛い痛い! 手が取れちゃう)
腰を二つ折りにしたグロリアが涙目でティウを見上げると、ハッと気付いた3人がオリーの手から助け出してくれた。
「オリー先生は誰かと間違っておられるようじゃな。此奴は間違ってこの学園に入学した『役立たず』ですぞ」
自分こそが『役立たず』を追い出した立役者だと学園長に報告するつもりだったスプラウトがグロリアを指差して怒鳴った。
「グロリア様を指さすなどなんと不敬な! グロリア様に魔法適性がない事はシェラード教授から聞き及んでおりますが、それがなんだと言うのでしょう!? グロリア様の知識に比べれば魔法など児戯に等しい」
グロリアの前には3人が作る巨大な壁があるが、オリーは更にその前に立ち塞がってスプラウトに向けて目を吊り上げて怒鳴り返した。
「グロリア様、このような輩のいる学園など貴方様には不釣り合いでございます。わたくしめにコリントス大学付属学園への転籍とアカデミーへの登録の手配させていただけませんでしょうか。
勿論わたくしもご一緒させていただく所存でございます」
職員と大半の生徒は知っているようでオリーの話に口をぽかんと開けている。
「あのー、アカデミーってなんですか?」
振り向いたオリーが『少し長くなりますが⋯⋯』と前置きして説明をはじめた。
「コリントス大学は我々の住むリンドバルム王国・カルマール王国・ミュルクウッド王国の3国に接するコリントス自治区に設立された大学でしたが、数十年前から教会の人材育成機関のようになり衰退の一途を辿っておりました。
そこで、自然科学を中心とした学問的研究の場がアカデミーとして大学の外に形成されるようになったのです」
その中で現在最も有名なのが『アルバライズ・ソサエティ』で、雑誌論文や学会誌も発行され多くの研究者達が名を連ねている。
「ですが、ここ数年はコリントス大学の抜本改革が進んでおりまして、講義の他にゼミナール(演習)やラボ(実験室)も併設されつつあります。それらの改革を推し進めておりますのが我等『アルバライズ・ソサエティ』のメンバーなのです。
コリントス大学の附属学園は大学入学を目指すエリート育成機関のような位置付けになっております」
自信満々に胸を張ったオリーがスプラウトに向けて鼻を鳴らした。
「お話はよく分かりましたが、突然そんな事を言われましても⋯⋯それに、おそらくお断りすることになると思います」
「そんな! 一体何故でございますか!?」
「えーっと、私が魔法適性のない『役立たず』と呼ばれる存在だからですね」
堂々と宣言したグロリアは『テヘッ』と笑って頬をさすった。
「おお、左様でした。シェラード教授はその事でグロリア様にご不快な思いをさせてしまったと心から悔やんでおられました。
研究者としてあり得ない行いであったと」
「あー、それってこの国ではごく普通ですし。ねっ」
意趣返しとばかりにスプラウトに向かって笑いかけたグロリア。
(あ、青い顔してる~。プロフェッサーって結構有名な人なのかも。ざまぁって気持ちいい~)
ふっふっと笑うグロリアは異世界転移の物語で『ざまぁ』が流行った理由をはじめて理解した。
「グロリア、これは一体どう⋯⋯」
沈着冷静なティウが言葉に詰まり、隣でリーグとフロディが固まっていた。
「プロフェッサー⋯⋯ シェラード教授には一度だけ勉強を教えてもらったと言うか、お会いしたことがある。その程度の関係だから何か勘違いしておられるだけだと思⋯⋯」
「いえいえ、教えていただいた概念は来月の学術誌にグロリア様のお名前と共に掲載されることになっております」
「⋯⋯はあっ!? 概念ってなんの事だろう?」
(概念、概念? はっ! まさかと思うけど⋯⋯)
これ以上驚くことはないだろうと思うほど⋯⋯グロリアは『驚きすぎて顎が外れそう』の意味をはじめて理解した。
「マジですか!?」
(この学園の先生だよね? 関わって『退学だ~!』って騒がれるのはもう懲り懲りだよ)
「今更で失礼だが、名前と学年とクラスを教えてくれないか?」
「一年Sクラスのグロリア・C・シビュレーです」
「⋯⋯ グロリア・C・シビュレー! シビュレー伯爵家の長女のグロリア様であらせられましたか!!」
立ち上がるタイミングを逃していたグロリアをガン見した数理学教師のオリーが『ならばあり得る』と呟き大きく頷いた。
「確かに⋯⋯聞いていた通りのサイズ」
「へ?」
(グロリア⋯⋯様? ディスられてばっかの私がなにゆえ『様』? しかもサイズで確認できるってどゆこと?)
口をぽかんと開けて首を傾げたグロリアの前にオリーがしゃがみ込み膝をついた。
「「ええっ!!」」
生徒と職員達が驚きの声を上げてもオリーは気にもせず、グロリアの手をガシッと握りしめた。状況が理解できないティウ達3人はグロリアのそばに立ち尽くしたまま、オリーの行動に目を光らせていた。
「アンドリュー・シェラード教授の事は覚えておいででしょうか? 専門はわたくしと同じ数理学でございます」
「ひぃぃ!」
(でた!! プロフェッサー・シェラードってあのヤバい人じゃん、あの人を知ってるって事は仲間? 危ない人仲間って事? 礼儀正しそうなふりをしててもこの押しの強さは関わっちゃダメなやつだよね。
せっかく実験が成功してスプラウトに『どや~』ってできそうだったのにぃ。チャンスを返せぇ!
すっくない『ざまぁ』のチャンスだったのに~!)
「シェラード教授は私の大学時代の先輩でありまして、グロリア様のお話は教授から何度も聞き及んでおりました。是非一度お会いしてご高説を賜りたいと思い伯爵家に何度も先触れを出しておりましたが、断られ続けて無念の涙を堪えておった次第です。
まさか⋯⋯まさかこの学園に入学しておられたとは⋯⋯私としたことがなんと迂闊な!」
(うわあーん! プロフェッサーから逃げられて喜んでたのに、また変なのがきたー)
慌てて中腰になり逃げ出そうとしたグロリアだったがオリーの手に益々力が入って外れない。
(痛い痛い痛い! 手が取れちゃう)
腰を二つ折りにしたグロリアが涙目でティウを見上げると、ハッと気付いた3人がオリーの手から助け出してくれた。
「オリー先生は誰かと間違っておられるようじゃな。此奴は間違ってこの学園に入学した『役立たず』ですぞ」
自分こそが『役立たず』を追い出した立役者だと学園長に報告するつもりだったスプラウトがグロリアを指差して怒鳴った。
「グロリア様を指さすなどなんと不敬な! グロリア様に魔法適性がない事はシェラード教授から聞き及んでおりますが、それがなんだと言うのでしょう!? グロリア様の知識に比べれば魔法など児戯に等しい」
グロリアの前には3人が作る巨大な壁があるが、オリーは更にその前に立ち塞がってスプラウトに向けて目を吊り上げて怒鳴り返した。
「グロリア様、このような輩のいる学園など貴方様には不釣り合いでございます。わたくしめにコリントス大学付属学園への転籍とアカデミーへの登録の手配させていただけませんでしょうか。
勿論わたくしもご一緒させていただく所存でございます」
職員と大半の生徒は知っているようでオリーの話に口をぽかんと開けている。
「あのー、アカデミーってなんですか?」
振り向いたオリーが『少し長くなりますが⋯⋯』と前置きして説明をはじめた。
「コリントス大学は我々の住むリンドバルム王国・カルマール王国・ミュルクウッド王国の3国に接するコリントス自治区に設立された大学でしたが、数十年前から教会の人材育成機関のようになり衰退の一途を辿っておりました。
そこで、自然科学を中心とした学問的研究の場がアカデミーとして大学の外に形成されるようになったのです」
その中で現在最も有名なのが『アルバライズ・ソサエティ』で、雑誌論文や学会誌も発行され多くの研究者達が名を連ねている。
「ですが、ここ数年はコリントス大学の抜本改革が進んでおりまして、講義の他にゼミナール(演習)やラボ(実験室)も併設されつつあります。それらの改革を推し進めておりますのが我等『アルバライズ・ソサエティ』のメンバーなのです。
コリントス大学の附属学園は大学入学を目指すエリート育成機関のような位置付けになっております」
自信満々に胸を張ったオリーがスプラウトに向けて鼻を鳴らした。
「お話はよく分かりましたが、突然そんな事を言われましても⋯⋯それに、おそらくお断りすることになると思います」
「そんな! 一体何故でございますか!?」
「えーっと、私が魔法適性のない『役立たず』と呼ばれる存在だからですね」
堂々と宣言したグロリアは『テヘッ』と笑って頬をさすった。
「おお、左様でした。シェラード教授はその事でグロリア様にご不快な思いをさせてしまったと心から悔やんでおられました。
研究者としてあり得ない行いであったと」
「あー、それってこの国ではごく普通ですし。ねっ」
意趣返しとばかりにスプラウトに向かって笑いかけたグロリア。
(あ、青い顔してる~。プロフェッサーって結構有名な人なのかも。ざまぁって気持ちいい~)
ふっふっと笑うグロリアは異世界転移の物語で『ざまぁ』が流行った理由をはじめて理解した。
「グロリア、これは一体どう⋯⋯」
沈着冷静なティウが言葉に詰まり、隣でリーグとフロディが固まっていた。
「プロフェッサー⋯⋯ シェラード教授には一度だけ勉強を教えてもらったと言うか、お会いしたことがある。その程度の関係だから何か勘違いしておられるだけだと思⋯⋯」
「いえいえ、教えていただいた概念は来月の学術誌にグロリア様のお名前と共に掲載されることになっております」
「⋯⋯はあっ!? 概念ってなんの事だろう?」
(概念、概念? はっ! まさかと思うけど⋯⋯)
これ以上驚くことはないだろうと思うほど⋯⋯グロリアは『驚きすぎて顎が外れそう』の意味をはじめて理解した。
「マジですか!?」
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