前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第一章

76.久しぶりのグロリア登場

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「⋯⋯⋯⋯⋯⋯えー、私の勘違いだったら申し訳ないんだけどぉ。キラキラさんって神界限定で神様の監視をしてて後は放置って事?」

 ニコニコしているセティは気付いていないがグロリアは既に爆発寸前。火山で言えば微弱地震が頻発し煙を吐き出して噴石が火口からポンポン飛びはじめているくらいのギリギリの状態になっている。

「父様は神界の最高神だから色々制限があるんだよね~」

「ほっほう、つまりキラキラの野郎は人間界の元神々に関してはノータッチってことね。『わたくしは神界の神々だけを監視するのがお仕事ですぅ~、だから後のことは知らんがな』って言うつもりなんだねえ」

「えっ、そこまで言わなくても⋯⋯父様だって心配しておられたんだよ?」

 ポーチからピアスを取り出したグロリアが口を歪ませて怒鳴り声を上げた。

「キラキラァ!! 聞こえてるかあー!!」

【え? わ、何でグロリアの声が!?】

「よーく聞け! 心配してるだけでお腹が膨れるわけないじゃん!! 問題起こしてる奴は人間界に逃げ出せば好き放題のやり放題ってどゆこと!?
あー、だから悪魔のフレイヤは自由を満喫し続けて勝手放題してるんだ。最高神がまさかまさかの後出しジャンケン!?
駄目だ、もう信用するの無理!! やる気がないならありますオーラ出すのやめてもらおうじゃん!」

【あ、あの⋯⋯】

「こっちに丸投げしといて『コンティニューする? ニューゲームにする?』とか言う気!?
成功して『ご苦労様』って言われても、失敗して『転生?』って言われても殴るから、ぼこぼこに殴るから!!」

 グロリアが完全にキラキラを見限った。

「あの、なんかごめん? 僕達はそう言うもんだって昔から知ってるか⋯⋯」

「そーだよねー、偉大なる神様からしたら人間界がどうなろうと知ったこっちゃないもんねえ。あっちこっちにいろんな種類の世界があってそこでゴミムシみたいに這いずり回って生きてる人間だもん」

【いや、そん⋯⋯】

「元神族がいろんな能力やら記憶やら宝物やら持って好き放題したって、無茶苦茶したってぜんっぜん問題ないもんね。
子供が『怪獣ごっこだー』とか言ってブロックを粉々にするのと大して変わんないよね。元神は壊れたら別の世界に鞍替えして遊べばいいんだもん。
神界はキラキラがチェックしてるフリしてるんだろうけど、それもゆるゆるだし? 人間界に降りて好き放題すれば誰にも文句言われないんだもん。そりゃもう盛大にやらかして反省しなくて当然だよねえ。
不敬だって言うならすーぐにヘルんとこ送って!! ヘルと女子会して遊ぶから。ニヴルヘイムならオーディン吊し上げる!」

【わわ、なんかほんとごめんなさい。で、あの⋯⋯】

 キラキラが話している途中で通信をブチ切ったグロリアが立ち上がった。

「あの、あの⋯⋯グロリア、ほんとごめんなさい!! 謝りますぅ!!」

「ごめん、セティに言ったんじゃなくて。ちょっと頭冷やしてくる。1時間したら戻ってくるけど、セティは無理して付き合わなくていいからね」




 ジェニの屋敷には芝の植えられた広い庭の奥にイングリッシュガーデン風のエリアがある。

 外から見た敷地面積は他の貴族の屋敷とそれほど変わらないが、一歩敷地内に入ると3匹が走り回っても余裕がある広さに驚く。

(初めて来た頃は全然気付かなくて『このお家広~い』とか思ってたんだけど、これってジェニの魔法で空間を広げているんだよね)

 煉瓦敷きの小道を挟んで雰囲気の変わる花壇は通年を通して色とりどりの草花が咲き乱れ、ツルの巻きついたパーゴラやラベンダーやチェリーセージなどのハーブが甘い匂いを漂わせているエリアもある。

 奥にあるガゼボはクッションを並べた椅子に座ると自動で紅茶とお菓子がテーブルに並ぶ親切設計。

(ジェニって本当に変わってる。パーゴラの下のベンチに座ると噴水から水が流れはじめたり鳥が飛んできたりするし。ガゼボのお茶やお菓子はいつも種類が変わるし⋯⋯秋に抹茶と栗金時が出てきた時は笑っちゃった)

 庭師がいるとは思えないのにいつも手入れは完璧で、季節も産地も無茶苦茶な果樹園は夏なのに林檎やレモンがなっていたり、冬にバナナがなっていたり⋯⋯。

(ここを維持するための魔力や魔法って、ちょっと羨ましいかも)

 今日のおやつは緑茶と雷おこしときび団子。近くを飛び回るエルフ達が花を摘んでグロリアの髪に飾ってくれた。お礼に雷おこしのかけらをあげると可愛くお辞儀して飛んでいく。

(あ、ピーナッツのがある⋯⋯これっていつもお姉ちゃんと取り合いになってたんだよね~。うーん、美味しい)

 お茶を楽しんでいるとテーブルの上に手のひらサイズの可愛くラッピングされたボンボニエールが現れた。

「うわ、磁器のボンボニエール? 中は⋯⋯金平糖?」

 白地に小花模様が映える丸型のボンボニエールの中に色とりどりの金平糖が並び、一粒摘むとふわっと浮かび上がったリボンに『奴には一粒銅貨2枚』と書いてあった。

 ぷっと吹き出したグロリアはボンボニエールを手に立ち上がった。

(仲直り用のおやつまで準備してくれるなんて⋯⋯ジェニ、ありがとう。今度肩揉みしたげる)



 煉瓦の道を小走りに駆け抜けて戻ると肩を落としたセティがベンチの下で胡座を組んで目を瞑っていた。

「えーっと、瞑想中なら出直そうか?」

「ううん、もう終わってる」

(うーん、さっき爆発しすぎたからセティが壊れちゃったかなぁ)

「えっと、さっきはごめんなさい」

 グロリアは最敬礼の中でも最も深く頭を下げる拝90度で謝った。これは相手を最大限に敬う神社参拝で行うお辞儀で母親から徹底的に仕込まれたもの。

「うわ、ちょっと。やめてやめて! 謝るのも頭を下げるのもなしだよ」

「セティに嫌な思いさせてごめんなさい」

「僕達友達だよね、だったら座って話そうよ」

 セティから少し離れたところに正座したグロリアは両手をそろえて太ももの上に置き背筋を伸ばした。身体を前に傾けながら手を前に滑らせて床に付き、深くお辞儀をした。

「もしかして土下座ってやつ? 初めて見たけど流石だね、所作がめちゃ綺麗」

「前世の両親に仕込まれた座礼ってやつ。ジャンピング土下座も多分できる」

「プハッ! 頭を上げて普通に話そうよ。耳の痛い話だったけど、グロリアの言った事は間違いじゃないから。
いろんな世界で元神族や元巨人族がやらかしてるのは何度も見てるんだ。流石にダーインスレイヴ持ち出してやらかすような凄いのは見た事なかったけどね。
まあその、だから今回は少しでも手伝いたいって思ってる」

「ありがとう?」

「こちらこそ、ありがとうだよ」

 にっこり笑ったセティにジェニからだと言って金平糖を差し出した。

「わあ、初めて見た。星の形? 可愛いおやつだね。んで、どこまで話したんだっけ」

「えーっと、ヴィーザル情報とか?」

「ヴィーザルは大切な防具を貰ったくらい母親から応援されてたし、みんなから頼りにもされてたから特に問題なんてないはずだよ」

「ヴィーザルは『フェンリル狼の敵で殺し手』だっけ?」

「そうだね、フェンリルは最強の狼だからヴィーザルくらい強くないと戦えないもん」

「逆に言えば、フェンリルを倒すためにそこまで強くなった?」

 セティは『そうかも』と言いながら頷いた。

「強くて信頼されてたけど普段は森に引きこもってたんだ」

(やっぱりヴィーザルも違和感バリバリだなあ。引きこもりの理由ってなんだろう。人見知り⋯⋯神見知りとかってあるのかな?)

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