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第一章
15.俺様の鴉魂って⋯⋯なにしたの?
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【⋯⋯情報じゃと? 何故貴様らがワシに手を貸す?】
【ガァ~! だって俺ら、あの鬼畜に酷使された仲間同士じゃん。今世は助け合って行こうかなーなんてね】
【ガァ~! にいちゃんは退屈だったんだよね~】
【貴様らは、ラグナロクの時ギャラルホルンが鳴った後、速攻で逃げ出したくせに!】
【ガァ~! だってあんな戦いアホくさくてよ。アンタだって羽がありゃ逃げてたろ?】
【ま、まあそれはそうじゃが⋯⋯ブツブツ】
【ガァ~! みんなにお知らせして回ってあったから、負けるって分かってたしね~】
【まさか! 貴様らは神族と巨人族の因縁を話したのか? よくあの男にバレずにできたものよ】
【ガァ~! 命かけた鴉の勇気、凄えだろ!? だってよお、エインヘイヤル達って超哀れじゃん? ろくでもねえ奴に騙されてさ】
ビシッと片羽を上げたのはフギン。
神と巨人族の最終決戦であったラグナロクだが、両者が対立するキッカケを作ったのはオーディンと愉快な仲間達だった。
世界に氷塊と絡みつく炎しかなかった頃、巨人族の始祖となるユミルと雌牛が現れた。
その雌牛がアース神族の祖先であるブーリを産み、その息子が巨人族の娘と結婚してオーディン達3兄弟が産まれた。
時が経ち、巨人族に不満を持ったオーディン達は始祖ユミルを殺害し彼の身体を解体して新たな世界を作り、巨人族を海の果てに追いやってしまった。
【ガァ~! 巨人族が恨んでもしょうがねえよな。俺だってさぁ、爺ちゃん殺されてバラバラにされた上に棲家から追い出されたらタダじゃおかねえよ】
片羽を頬に当ててうんうんと一人で納得しているフギンと『だよねぇ』と相槌だけのムニン。
【ガァ~! それによお⋯⋯クソ野郎が人間作ったからって好き勝手に使い捨てにするのは、俺様の鴉魂が『違えだろ!』って叫んだわけよ】
【鴉のドヤ顔なんぞ、みとうもないわい。どおりでエインヘイヤル達にやる気がなかったわけじゃ】
ヴァルキューレによって集められたエインヘイヤル達は朝から夜半まで戦い続け、死んだ者は生き返らされ傷も癒やされる。
美しいヴァルキューレは酒池肉林で彼等をもてなし、オーディンが時折甘言を囁く。
『其方達は神に選ばれた偉大なる戦士。来たるべき日に備えよ、其方達は神々に栄光をもたらす者なり』
心が折れないようにヴァルキューレが寄り添い男達の欲を満たし、嘘くさい笑みを浮かべたオーディンはごくたまにやってきて戦士達を褒め称え戦いに向かう為の強い心を待ち続けろと鼓舞する。
ラグナロクの日に神の優秀な駒となるために、一人でも多くの巨人族を打ち滅ぼす生贄となる為に。
死後ヴァルハラに迎えられることが戦士としての最高の栄誉と信じていた気高い魂の持ち主であっても、血みどろになり命を落としても終わらない戦いと耳障りの良い言葉と美しい女に埋もれる日々は心を澱ませていった。
『いつまでこんな暮らしを?』
『その後俺達はどうなるんだ?』
『女も酒も飽きた⋯⋯面白い事はねえし、休みもねえ』
生前の彼等が戦っていたのは国や家族を守る為。神々の為に戦う事こそ正しいと信じている⋯⋯それだけが心の支えだったが。
豪奢な衣装と煌びやかな宝具を持ち自由気ままに遊んでいるらしい神々の噂、寝屋の相手をしながらも冷ややかな目を隠しきれないヴァルキューレ達から感じる侮蔑。
『神とはいったい⋯⋯俺達は何をみていたんだ』
『名誉と信念はどこに』
【ガァ~! 長ーい時間が経つと見えてくるもんがあるよな。死んでも死んでも戦わにゃならんなんて、美味い飯や女を食っても心は持たねえよ。だから、休憩していいんだぜ~って教えてやったのさ】
【ガァ~! 大義名分からして間違ってるんだぞって見せてあげたんだ~】
【ガァ~! 一番効果があったのは『生前のお前達が戦いで負けた時加護が消え失せたのは、オーディンの野郎の気まぐれなんだぜ』って教えたときかな?】
【ガァ~! 記憶見せたげた】
【オーディンは実に自分勝手で気まぐれな奴じゃったからな。自身の欲望のためなら白を黒と平気で言い切るような⋯⋯『石ならばルーンを刻んで置いておけるが、手入れをせねば役に立たぬ人間なぞはそれ以下だな』と言うたことがあったわい】
【ガァ~! クソ野郎がパクッとやられた時は『ざまぁ』ってな】
ガッハッハと大口を開けて笑う鴉。
鴉と本が話し込んでいるうちに空がうっすらと明るくなりはじめた。使用人が起きて来るまでに話を終わらせなければ⋯⋯。
【拙い! まあ、そのなんだ。貴様の言う情報とやら、聞いてやらんでもないぞ】
長い間ジェニの収納に入れっぱなしにされていた『本』は現在の社会情勢に疎くなっている。
【ガァ~! ほうこく~、ゲリとフレキ兄弟が近々遊びに来まーす】
【⋯⋯はあ? 彼奴ら、生きておったのか?】
貪欲なものと呼ばれるゲリとフレキ兄弟は2頭の狼。オーディンに使役され優雅な暮らしをしていた奴等だが、フギン達と同様にラグナロクの戦いの時から行方不明になっていた。
【ガァ~! 元気だぜ。この辺りにはやばい奴いんじゃん、だからよっぽどじゃなけりゃ近寄りたくないみたいだけどな】
【つまり余程のことがあると?】
【ガァ~! 理由は分かってんだろ? オッサンが力を取り戻すまでまだ時間はありそうだけど気をつけろよ】
【ああ、ワシのせいじゃな】
【ガァ~! だって俺ら、あの鬼畜に酷使された仲間同士じゃん。今世は助け合って行こうかなーなんてね】
【ガァ~! にいちゃんは退屈だったんだよね~】
【貴様らは、ラグナロクの時ギャラルホルンが鳴った後、速攻で逃げ出したくせに!】
【ガァ~! だってあんな戦いアホくさくてよ。アンタだって羽がありゃ逃げてたろ?】
【ま、まあそれはそうじゃが⋯⋯ブツブツ】
【ガァ~! みんなにお知らせして回ってあったから、負けるって分かってたしね~】
【まさか! 貴様らは神族と巨人族の因縁を話したのか? よくあの男にバレずにできたものよ】
【ガァ~! 命かけた鴉の勇気、凄えだろ!? だってよお、エインヘイヤル達って超哀れじゃん? ろくでもねえ奴に騙されてさ】
ビシッと片羽を上げたのはフギン。
神と巨人族の最終決戦であったラグナロクだが、両者が対立するキッカケを作ったのはオーディンと愉快な仲間達だった。
世界に氷塊と絡みつく炎しかなかった頃、巨人族の始祖となるユミルと雌牛が現れた。
その雌牛がアース神族の祖先であるブーリを産み、その息子が巨人族の娘と結婚してオーディン達3兄弟が産まれた。
時が経ち、巨人族に不満を持ったオーディン達は始祖ユミルを殺害し彼の身体を解体して新たな世界を作り、巨人族を海の果てに追いやってしまった。
【ガァ~! 巨人族が恨んでもしょうがねえよな。俺だってさぁ、爺ちゃん殺されてバラバラにされた上に棲家から追い出されたらタダじゃおかねえよ】
片羽を頬に当ててうんうんと一人で納得しているフギンと『だよねぇ』と相槌だけのムニン。
【ガァ~! それによお⋯⋯クソ野郎が人間作ったからって好き勝手に使い捨てにするのは、俺様の鴉魂が『違えだろ!』って叫んだわけよ】
【鴉のドヤ顔なんぞ、みとうもないわい。どおりでエインヘイヤル達にやる気がなかったわけじゃ】
ヴァルキューレによって集められたエインヘイヤル達は朝から夜半まで戦い続け、死んだ者は生き返らされ傷も癒やされる。
美しいヴァルキューレは酒池肉林で彼等をもてなし、オーディンが時折甘言を囁く。
『其方達は神に選ばれた偉大なる戦士。来たるべき日に備えよ、其方達は神々に栄光をもたらす者なり』
心が折れないようにヴァルキューレが寄り添い男達の欲を満たし、嘘くさい笑みを浮かべたオーディンはごくたまにやってきて戦士達を褒め称え戦いに向かう為の強い心を待ち続けろと鼓舞する。
ラグナロクの日に神の優秀な駒となるために、一人でも多くの巨人族を打ち滅ぼす生贄となる為に。
死後ヴァルハラに迎えられることが戦士としての最高の栄誉と信じていた気高い魂の持ち主であっても、血みどろになり命を落としても終わらない戦いと耳障りの良い言葉と美しい女に埋もれる日々は心を澱ませていった。
『いつまでこんな暮らしを?』
『その後俺達はどうなるんだ?』
『女も酒も飽きた⋯⋯面白い事はねえし、休みもねえ』
生前の彼等が戦っていたのは国や家族を守る為。神々の為に戦う事こそ正しいと信じている⋯⋯それだけが心の支えだったが。
豪奢な衣装と煌びやかな宝具を持ち自由気ままに遊んでいるらしい神々の噂、寝屋の相手をしながらも冷ややかな目を隠しきれないヴァルキューレ達から感じる侮蔑。
『神とはいったい⋯⋯俺達は何をみていたんだ』
『名誉と信念はどこに』
【ガァ~! 長ーい時間が経つと見えてくるもんがあるよな。死んでも死んでも戦わにゃならんなんて、美味い飯や女を食っても心は持たねえよ。だから、休憩していいんだぜ~って教えてやったのさ】
【ガァ~! 大義名分からして間違ってるんだぞって見せてあげたんだ~】
【ガァ~! 一番効果があったのは『生前のお前達が戦いで負けた時加護が消え失せたのは、オーディンの野郎の気まぐれなんだぜ』って教えたときかな?】
【ガァ~! 記憶見せたげた】
【オーディンは実に自分勝手で気まぐれな奴じゃったからな。自身の欲望のためなら白を黒と平気で言い切るような⋯⋯『石ならばルーンを刻んで置いておけるが、手入れをせねば役に立たぬ人間なぞはそれ以下だな』と言うたことがあったわい】
【ガァ~! クソ野郎がパクッとやられた時は『ざまぁ』ってな】
ガッハッハと大口を開けて笑う鴉。
鴉と本が話し込んでいるうちに空がうっすらと明るくなりはじめた。使用人が起きて来るまでに話を終わらせなければ⋯⋯。
【拙い! まあ、そのなんだ。貴様の言う情報とやら、聞いてやらんでもないぞ】
長い間ジェニの収納に入れっぱなしにされていた『本』は現在の社会情勢に疎くなっている。
【ガァ~! ほうこく~、ゲリとフレキ兄弟が近々遊びに来まーす】
【⋯⋯はあ? 彼奴ら、生きておったのか?】
貪欲なものと呼ばれるゲリとフレキ兄弟は2頭の狼。オーディンに使役され優雅な暮らしをしていた奴等だが、フギン達と同様にラグナロクの戦いの時から行方不明になっていた。
【ガァ~! 元気だぜ。この辺りにはやばい奴いんじゃん、だからよっぽどじゃなけりゃ近寄りたくないみたいだけどな】
【つまり余程のことがあると?】
【ガァ~! 理由は分かってんだろ? オッサンが力を取り戻すまでまだ時間はありそうだけど気をつけろよ】
【ああ、ワシのせいじゃな】
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