前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第一章

9.返品不可の通販業者と希少生物

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「どんな話になってるのかなあって。ほら、状況からしたら三角関係のもつれとか言われてそうでしょ? それだけは絶対、絶対嫌なんですよね」

「今、花梨のご両親の働きかけで再調査が行われています。酔った飛偉梠が花梨を樹里と間違えて襲ったことも、樹里が勘違いして花梨を刺したことも必ず公になるようにいたします」

「ありがとうございます。両親と姉にだけは誤解されたくないんで助かります」

 花梨の最大の不安が解消された。少女趣味なパジャマを着ていた事がバレるのは嬉しくはないけれど仕方ないと諦めたが、飛偉梠のことを好きだの付き合っていただのと思われるのは耐えられない。

(あんな⋯⋯中身からっぽで他力本願で自信だけしかない訳のわかんない奴と付き合ってたなんて勘違いされるのだけは嫌だもん)

「そ、そこまで嫌ってるとは」

「頭の中、読まないでもらえます? あっ、お互い様か。でも、うん、樹里なんてもっと嫌い! 男なら誰にでも媚び売って、自分の都合の良いように人を振り回して。嘘つきで嘘泣き得意で、何かあると直ぐ人のせいにするんですよ!
どれだけ、どれだけあの2人に苦労させられたか!!」

 フーフーと鼻息荒く樹里への不満を言い立てる花梨の怒りは止まらない。

「樹里の口癖知ってます? 『彼氏なんてぇ何人いてもぉ良いじゃない。浮気? やあねぇ違うもん、味見よ、あ・じ・み。
だぁってぇ、しょぼいテクと持ち物に時間かけるなんて無駄でしょ? うふっ』だよ?
その上、『え~、樹里しらな~い。花梨がぁ⋯⋯それって花梨だもん』って嘘吐かれて、何回私のとこに彼氏取られたって人が乗り込んできたか!
うちの家族、樹里にすっかり騙されてて『樹里ちゃん困ってるって泣いてたから、助けてあげなさい』って縁も切れずにこのザマなんだからね!!」

 はーはーと荒い息を吐く花梨はキラキラバルドルに指を突きつけた。

「あれが女神!? ふざけんな! 悪魔よ、アイツは間違いなく『あ・く・ま』だから!!」



「お、お詫びと言ってはなんですが、花梨の転生に一つプレゼントをさせていただきますね。プレゼントを活用できる力もセットでおつけしますし。それでご容赦いただければ、その」

「⋯⋯(なーんか、怪しい通販か訪問販売みたい)それってどんな物ですか?」

 不機嫌さマックスの花梨は腕を組んで仁王立ちしたままジト目でエセ通販業者⋯⋯キラキラを見た。


「えーっとですね、それは届いてからのお楽しみとしましょう。(気に入らなかったらヤバそうだし)
か、花梨の新しい人生が実り豊かになるような特別な贈り物です、はい。
花梨は特定の世界に引き寄せられているので、その能力があれば必ず役に立つと断言いたします」

(はい、この状況ですからねえ、気に入らなかったらブチギレると思いますよ。神様だろうが何だろうがボコボコにしてやるから!
それにまーた不穏な言葉が出てきた⋯⋯特定の世界に引き寄せられてる?)

「き、聞こえてました? へ、返品不可でお願いできれば⋯⋯。
あ、あとですね、ダーインスレイヴで刺された時、花梨の魂が輪廻の輪から外れまして。それをヒュンドラと言う名の巫女が引き上げたのです。⋯⋯それにそのぉ⋯⋯ 飛偉梠といたしたせいで色々問題が」

「レイプ! 暴れて叫んだの!! 頑張ったけど、力負けしたんだもん」

「はい! 存じております。ただ、その。残念ながらその時、あの、縁がつながってしまったもので、ごにょごにょ」

 だんだん声が小さくなっていくバルドルは俯き加減になりながら花梨の顔色を窺った。

「まさか! 転生先にも飛偉梠が?」

「あー、じゅ、樹里は飛偉梠と常にセットで転生しておりまして。はい」


 飛偉梠はかつてオッタルという名の人間だった時に女神だった樹里の愛人だった。その時から飛偉梠に執着している樹里⋯⋯フレイヤはオッタルが転生する度に同じ世界に転生しているという。

(それってストーカーじゃん)

「いや、あのですね。飛偉梠⋯⋯オッタルも女神を愛人にしている俺様凄えと鼻高々でして。2人だけで考えるとwin-winな関係なわけです」

「もしかしてですけど、私みたいな被害者って他にもいたりしません?」

「(ギクッ!!) こ、今回本気の討伐隊が万全の体制で向かいましたので、二度とこのような事は起こらないよう致しますです。
詳細はリーダーのロキに聞いていただければ⋯⋯⋯⋯あー、ロキ、ロキ。おーい、起きてくださーい」

 話の途中で突然現れた鏡に向かってキラキラが声を張り上げた。鏡の中には大の字になって寝ている男が映っており、口を開けた間抜けな姿を晒している。

「ローキー!」

「彼がリーダー? 綺麗な顔してそうだから直ぐに樹里に喰われちゃいそう」

「大丈夫です! 彼は一度もフレイヤの毒牙にかかったことのない希少生物、唯一の男ですから!!」

「ふーん(って事は、キラキラさんは喰われたんだ)」

「あ、あ、あれはですね。寝込みを襲われてその⋯⋯一度、一度だけ無理矢理その」

「あ、ごめんなさい。味見で終わったんですね」

 男としてのプライドが崩壊したキラキラバルドルが膝をついた。




「んあ?」

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