前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第一章

7.ファイナルアンサーの前に

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「グロリアは自分の能力を知ってるか?」

「ないんじゃないかと⋯⋯あっ、そう言えばキラキラの人が何かをくれるって言ってたっけ」

「グロリアはルーン文字とかルーン魔術に特化した能力を持ってる」

「秘密のプレゼントって言ってたアレのことね。ルーン⋯⋯名前しか聞いた事ないなぁ」

「グロリアは今の所、今世で唯一それを使いこなせる人間で加護の代わりに大量の魔力を持ってる。セイズも使えるがあれはまあ色々問題があるから禁止だな」

 それぞれのルーン文字は複数の意味と強大な力を持っている。これを用いて行うルーン魔術の中でも古フサルクと呼ばれるルーン文字を使う魔術を行使できる者はもう残っておらず、現在では研究者がわずかに残る資料をもとに研究しているのみ。

「護符を作るとか武器や防具にルーンを刻むとかが基本だが、魔法円を使えばあらゆることができる。使ったそれらを動かすのに魔力を使うんだ」

「魔法が使えない『役立たず』だと言われていた私の特技ってことね」

「大いなる力を持って産まれたせいで魔法なんてチンケなもんは使えないのか、いずれ使えるようになるのか⋯⋯。
その辺はまだ分からんが、魔法と違ってルーン魔術はかなり勉強しなきゃ使えん」

「勉強は好きだけど⋯⋯」

「ルーン魔術が使いこなせれば現存する魔法も失われた魔法も行使できるし、まだ完成してない魔法だって使えるものもある」

「そんな凄いものなんだ」

「クソ野郎⋯⋯オーディンが最高神だとか言われてるのだってルーン魔術やセイズを使えたからってのが大きいんだ。知識と権力の為なら何でもやる最低野郎だったからな。奴がその2つを知らなかったら世界は大きく変わってたと思う」

 ジェニはオーディンの事がかなり嫌いらしく、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

(世界を変えるほどの力を持った魔術なんて、私に扱えるんだろうか?)


「どうしたい?」

(ジェニが凄く真剣な顔してる。それにヴァン達も⋯⋯)

 真剣な顔のジェニと3匹の様子からすると、グロリアがルーン魔術を使えるようになる事はジェニ達の今後に大きく影響するのかもしれない。未知の強力な魔術への恐怖とジェニ達へどんな影響があるのか分からない不安でグロリアは言葉に詰まった。

「どうって、私は⋯⋯⋯⋯」

 楽しそうに遊んでいた3匹が尻尾を揺らすこともなく遠くから見つめている。

「俺達の事は気にすんなよ。グロリアがどっちを選んでも幼馴染だからな」

 見た目は2人とも8歳だが頭と心は女子大生のグロリアと、神話の時代からどれほどの生を繰り返してきたのか分からないジェニ。

(あの子達3匹もジェニ⋯⋯ロキと同じだけ生きてるんだっけ)





「⋯⋯樹里もこの世界に来てるんだよね。で、ジェニは彼女を追いかけてきたってあのキラキラした人が言ってた」

「げっ、その言い方はやめてくれ。俺はあくまでも恨みを晴らしたいだけで、それ以外にあんなビッチに興味はねえよ。
それとキラキラした奴ってもしかし⋯⋯ブハッ⋯⋯た、確かにアイツって妙にテカテカしてたよなぁ」

【俺っちはヘルヘイムでテカテカとしょっちゅう遊んでたぜ】

 一時期ヘルヘイムにいたキラキラのテカテカ改めバルドルはマーナガルムの遊び仲間。

【テカテカはいい子すぎてつまんなそう。海に連れてったら溺れそうだし】

イオルヨルムガンドが泳ぐのは多分海底近くだから⋯⋯)

【⋯⋯ 光り輝く美貌と金髪に白いまつ毛じゃったか? ドラウプニルも黄金、家も黄金で出来ておる】

ヴァンフェンリル、真面目に考えるのはやめろ。きんきらのバルドルがきんきらの腕輪 ドラウプニルを嵌めてきんきらに住む⋯⋯ぶはっ! は、腹が痛え⋯⋯」

(確かに、超絶眩しかったもんねぇ)
 



 前世で樹里に刺された後⋯⋯。

 花梨が目を覚ますと広々とした神殿のような場所にいた。

(ここってどこだろう。広くて良い匂いがする、しかも暖かいけど眩し過ぎ)

 目を眇めた花梨がヨロヨロと立ち上がるとフリフリのプ○キュアのパジャマが目に入った。

(そうだ、樹里に刺されたんだ。最後の衣装がこれとか⋯⋯最悪じゃん。寝込んでて洗濯間に合わなかったって⋯⋯引っ越しの時家に置いておけば良かったって今更言っても遅いしなあ。はぁ~)

 パジャマを握りしめて花梨が一人脳内会議をしていると、『こほん』と小さな咳払いの音が聞こえた。ギョッとして顔を上げると、目が痛くなるほどキラキラと輝く男性が小柄な男性を伴って立っていた。

『目が覚めたようで安心しました。初めまして、私はバルドルと言います。彼はヘズ、目が見えないのでそこの所は宜しくお願いします』

(うわぁ、キラキラしい人の前でプ○キュア!)

「あ、あの。これは昔のパジャマで、今はもうこういうフリフリとかは着ませんから! はい、今はもっとシンプルな⋯⋯」

「落ち着いて下さい。どのようなお召し物でも問題はありませんし⋯⋯。ここに来られて一番初めに気にされたのがお召し物の柄とは、今回は非常に珍しい方が来られたようですね」

「変わり者のヒュンドラが選んだ人だから? 類は友を呼ぶと言うアレなのかもしれません、兄様気をつけて下さいね」

 キラキラのバルドルの横でチビっこが不満そうに『フンッ』と鼻を鳴らした。

(バルドルさんって多分神様とかだよね。となると感じ悪そうなチビっこのヘズも神様? それにヒュンドラが選んだって何のこと?)



「あの、ここって何処ですか? うちに帰れたりなんて⋯⋯しませんよね~」

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