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第一章
6.思い出した前世
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「んで、どこまで思い出した?」
3匹を引き連れてグロリアとジェニは庭のガゼボに向かった。昼前の庭は気持ちの良い暖かさで、花の中から妖精が顔を出し空を飛ぶエルフがグロリアに向かって手を振っている。
「前世の名前は霧森花梨。この間会ったシグルドは更科飛偉梠って言うレイプ犯だから手を触った途端気持ち悪くなったのは当然で、ここはいわゆる異世界」
「いや異世界ってのは微妙に違うかな。グロリアはファミリーツリーって知ってるか?」
「えっと、家系図だっけ?」
「そう。ファミリーツリーってのは王の家系図を1本の木をモチーフに描かれたことからはじまったんだが、この世界はそこから途中ではみ出した枝葉の一本って感じだな。
グロリアが花梨として生きていた世界と此処は大本は同じだがちょっとした事があって、別の次元と繋がっちまった。んで、別世界みたいになったって言ったら分かるか?」
ジェニは空に大きな木の幻影を描きながら説明してくれた。『ちょっとした事』についてジェニは語らなかったのでグロリアには分からないが、今いる世界の成り立ちはよく分かった。
「何となく分かったかも。だから似たとこと全然違うとこがあるのね」
「そう言う事だな」
前世では魔力や魔法は存在しなかったが、今世にあるような食べ物や馬車などは前世にも存在していた時代があった。
「いずれこの国にも電気や飛行機が発明されるのかな?」
「うーん、魔法がこのまま廃れずにいたらないかもな」
あんな風にと言いながらジェニが指差したのは、空を飛ぶエルフを追いかけるフェンリルの姿。
「天翔るってやつ?⋯⋯かっこいい」
グロリアがフェンリルを褒めたからか空中や海上を走れる靴をどこからともなく取り出したジェニは、子供のようなドヤ顔をして転移もできると自慢してきた。
「花梨の前世で流行ってた異世界物とは結構違うかもな」
「うん、ロキ達は前世の神話に出てきたもの。神話の神様や人達はここには住んでいるって事?」
「ごく一部がな。別の場所に生まれ変わってるやつもいりゃあ、生まれ変わらなかった奴もいる」
「どうして?」
「本人の意思だったり、それしか選べなかったり⋯⋯色々だな、ふふん」
何を思い出したのか分からないがジェニの顔が物凄い悪人顔になった。
不思議そうに首を傾げたグロリアの頭をジェニがポンポンと叩いた。
「ふっふっふ、最高の出来事をちょい思い出したぜ」
「え~、悪巧みを思い出した感じに見えたけど?」
「そうとも言うなぁ。俺の一番ムカつく奴が今どこにいるのか思い出して⋯⋯ふはは」
【オーディンだよねっ! 僕らを酷い目に合わせた奴】
【彼奴は復活できなんだ事を恨んでおる】
【ざまぁっ】
離れたところで走り回っているのに聞こえていたらしい。
「なんだか、神様達の深~い闇を感じるなぁ」
「俺は神じゃねえぜ。生粋の巨人族だったし、今は正真正銘の人間」
ロキだとバレたジェニは遠慮する必要がなくなったと思ったのか、どこからともなくテーブルに紅茶やケーキを出した。
「前世が巨人族で今世は人間?」
「そう言う事。前世が花梨で今世がグロリアなのとおんなじだな」
種族まで変わるのは随分違うと思ったが、細かいことを気にしても仕方ないとグロリアは湯気のたつ紅茶に口をつけた。
蝶を追いかけるのが好きなマーナが『俺っちの~』と言いながら飛び回り、花に顔を突っ込んで妖精を驚かすのがお気に入りのイオルが『ぼ、僕の鼻が』と言いながら花粉だらけになってクシャミをした。ヴァンはフサフサとした尻尾をハタハタと動かして『我は虫は好かん』と言いつつ追い払い、悠々と昼寝を決め込もうとしていた。
いつもと変わらない長閑な景色を見ながら肝心なことを口に出来ないグロリアはジェニから目線を逸らしたままお菓子を手に取った。
エルフが放った矢をガルムが躱すと、ヨルムガンドが巨大化してエルフを丸呑みした。少し離れた場所で欠伸をしていたフェンリルがヨルムガンドの背後から攻撃を仕掛けるとエルフ達が口から飛び出した。
(いつ見ても凄い危険な遊び方に見えるんだけど⋯⋯楽しそうなのよね)
「私が前世で知ってた話では、エルフって人型で背が高いってなってた気がする」
「この世界のエルフは小妖精とか良い子のリョースアールヴと言われてるな。悪い子のデックアールヴはドヴェルグなんかが有名」
「ドヴェルグはこの世界でも鍛冶屋さん?」
「ああ、会える奴は限られてるが今でもトンカンやってるぜ。魔法が使える奴でもそう簡単には会えねえ、ってか見えねえってやつだな。奴らに会えりゃ魔導具なんてショボいもんを開発する必要はなくなる」
妖精が見えているグロリアにはドヴェルグも見えると言われたが、情報量が多すぎて妖精の世界の蘊蓄は遠慮することにした。
「グロリアは自分の能力を知ってるか?」
3匹を引き連れてグロリアとジェニは庭のガゼボに向かった。昼前の庭は気持ちの良い暖かさで、花の中から妖精が顔を出し空を飛ぶエルフがグロリアに向かって手を振っている。
「前世の名前は霧森花梨。この間会ったシグルドは更科飛偉梠って言うレイプ犯だから手を触った途端気持ち悪くなったのは当然で、ここはいわゆる異世界」
「いや異世界ってのは微妙に違うかな。グロリアはファミリーツリーって知ってるか?」
「えっと、家系図だっけ?」
「そう。ファミリーツリーってのは王の家系図を1本の木をモチーフに描かれたことからはじまったんだが、この世界はそこから途中ではみ出した枝葉の一本って感じだな。
グロリアが花梨として生きていた世界と此処は大本は同じだがちょっとした事があって、別の次元と繋がっちまった。んで、別世界みたいになったって言ったら分かるか?」
ジェニは空に大きな木の幻影を描きながら説明してくれた。『ちょっとした事』についてジェニは語らなかったのでグロリアには分からないが、今いる世界の成り立ちはよく分かった。
「何となく分かったかも。だから似たとこと全然違うとこがあるのね」
「そう言う事だな」
前世では魔力や魔法は存在しなかったが、今世にあるような食べ物や馬車などは前世にも存在していた時代があった。
「いずれこの国にも電気や飛行機が発明されるのかな?」
「うーん、魔法がこのまま廃れずにいたらないかもな」
あんな風にと言いながらジェニが指差したのは、空を飛ぶエルフを追いかけるフェンリルの姿。
「天翔るってやつ?⋯⋯かっこいい」
グロリアがフェンリルを褒めたからか空中や海上を走れる靴をどこからともなく取り出したジェニは、子供のようなドヤ顔をして転移もできると自慢してきた。
「花梨の前世で流行ってた異世界物とは結構違うかもな」
「うん、ロキ達は前世の神話に出てきたもの。神話の神様や人達はここには住んでいるって事?」
「ごく一部がな。別の場所に生まれ変わってるやつもいりゃあ、生まれ変わらなかった奴もいる」
「どうして?」
「本人の意思だったり、それしか選べなかったり⋯⋯色々だな、ふふん」
何を思い出したのか分からないがジェニの顔が物凄い悪人顔になった。
不思議そうに首を傾げたグロリアの頭をジェニがポンポンと叩いた。
「ふっふっふ、最高の出来事をちょい思い出したぜ」
「え~、悪巧みを思い出した感じに見えたけど?」
「そうとも言うなぁ。俺の一番ムカつく奴が今どこにいるのか思い出して⋯⋯ふはは」
【オーディンだよねっ! 僕らを酷い目に合わせた奴】
【彼奴は復活できなんだ事を恨んでおる】
【ざまぁっ】
離れたところで走り回っているのに聞こえていたらしい。
「なんだか、神様達の深~い闇を感じるなぁ」
「俺は神じゃねえぜ。生粋の巨人族だったし、今は正真正銘の人間」
ロキだとバレたジェニは遠慮する必要がなくなったと思ったのか、どこからともなくテーブルに紅茶やケーキを出した。
「前世が巨人族で今世は人間?」
「そう言う事。前世が花梨で今世がグロリアなのとおんなじだな」
種族まで変わるのは随分違うと思ったが、細かいことを気にしても仕方ないとグロリアは湯気のたつ紅茶に口をつけた。
蝶を追いかけるのが好きなマーナが『俺っちの~』と言いながら飛び回り、花に顔を突っ込んで妖精を驚かすのがお気に入りのイオルが『ぼ、僕の鼻が』と言いながら花粉だらけになってクシャミをした。ヴァンはフサフサとした尻尾をハタハタと動かして『我は虫は好かん』と言いつつ追い払い、悠々と昼寝を決め込もうとしていた。
いつもと変わらない長閑な景色を見ながら肝心なことを口に出来ないグロリアはジェニから目線を逸らしたままお菓子を手に取った。
エルフが放った矢をガルムが躱すと、ヨルムガンドが巨大化してエルフを丸呑みした。少し離れた場所で欠伸をしていたフェンリルがヨルムガンドの背後から攻撃を仕掛けるとエルフ達が口から飛び出した。
(いつ見ても凄い危険な遊び方に見えるんだけど⋯⋯楽しそうなのよね)
「私が前世で知ってた話では、エルフって人型で背が高いってなってた気がする」
「この世界のエルフは小妖精とか良い子のリョースアールヴと言われてるな。悪い子のデックアールヴはドヴェルグなんかが有名」
「ドヴェルグはこの世界でも鍛冶屋さん?」
「ああ、会える奴は限られてるが今でもトンカンやってるぜ。魔法が使える奴でもそう簡単には会えねえ、ってか見えねえってやつだな。奴らに会えりゃ魔導具なんてショボいもんを開発する必要はなくなる」
妖精が見えているグロリアにはドヴェルグも見えると言われたが、情報量が多すぎて妖精の世界の蘊蓄は遠慮することにした。
「グロリアは自分の能力を知ってるか?」
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