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第四章
43.呆れた! そんな話を誰が信じる?
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「そうすれば、大切な娘との時間が作れるようになる!」
テーブルの上の資料を見て、エレーナの隣にオルシーニ一家が並んでいる事を考えれば、何が起きているのか簡単に気付けたのだろう。
オルシーニはエレーナを侯爵家から連れ出し、侯爵家と縁を切らせるつもりだと。
(俺の大切な金蔓を奪われてたまるか! しかも、ブラッツの横領が発覚し俺も疑われてる。このままでは何もかもが⋯⋯。
エレーナの予算は俺の物だ、それをどうしようが俺の勝手だろうが! それを横領だと? 巫山戯んな!
ケチくさくて嫉妬深いアメリアがいつまでもしつこく僻んでいたのが悪いんだ。
このままじゃ、折角芽を出しはじめた俺の作戦が⋯⋯。あちこちに手を回して作り上げたのに。ここまでお膳立てするのにどんだけ苦労したか。
ようやく動きはじめたとこなのに、なんでバレた? いや、バレたのは横領だけのようだし、アレは横領なんかじゃねえからな。親が子供の代わりに予算を運用してやっただけだから大した事はないが、ブラッツが何をどこまで知ってるか⋯⋯。アメリアが死んでりゃ侯爵家に乗り込んでたのに、クソ忌々しい)
先代当主から縁談が持ち込まれた時、子爵家が大騒ぎになったのは言うまでもない。
子爵家への援助くらい侯爵家なら余裕だと喜ぶ両親はニールに媚びへつらい、贅沢し放題になる弟を妬む兄は顔を見るたびに嫌味を言う。ニールは潤沢な資金を引き出して豪遊し、アルムヘイルの社交界で幅を利かせて垂涎の的となる⋯⋯輝かしい未来予想図に舞い上がり、侯爵家に乗り込んだ。
弱小子爵・貧乏貴族と蔑んでいた奴らの鼻を明かしてやれるはずが、蓋を開けてみれば⋯⋯。
先代当主が生きていた頃は領地経営の補佐としての勉強ばかりで、ロクに遊ぶ時間もない。領地を知る為だと言って鉱夫と共に坑道に押し込まれ、訓練だと言って兵と一緒に野営させられた。
俺には戦争だなんて野蛮な事はできるわけがない⋯⋯アルムヘイルで暮らしていた時は戦争などただの絵空事だったニールは、戦いが始まる前に逃げ出した。
愛人と庶子を作った事など、ちょっとした気晴らしでたまたま子供ができただけ⋯⋯貴族にはよくある事だと気儘に社交界で豪遊し、資金不足で渋々侯爵家に戻ったら⋯⋯全ての権利を奪われ、母屋に足を踏み入れることさえ禁止されて種馬扱い。
(俺の自由になる予算が少な過ぎる。納得できねえ。俺をバカにしやがって!)
不満を溜め込みながら離れで鬱々と過ごしていると、アメリアが侯爵家から宮殿に越すと聞き⋯⋯。
ブラッツはニールの愛人イライザの叔母で、勤めていた屋敷を解雇されたばかりだと知って、使用人をかき集めている侯爵家の家政婦長に応募させた。
(俺の言う事を聞く奴が家政婦長になれば、発言権がなくても侯爵家を思い通りにできる⋯⋯)
あっさりと家政婦長の職に就いたブラッツから、執事は半人前の若造だと聞いて『チャンスだ』と思い、暇に飽かせて考えていた策を実行する事に⋯⋯。
仕方なく作った興味のかけらもない娘の予算があれば、アメリアへ仕返しができる。
アメリアへの復讐の準備を進めていくのに、ブラッツ程役に立つ女はいなかった。元の勤め先でも屋敷の品を横流しして利鞘を稼いでいたブラッツは、ニールの望み通りの商売相手を簡単に見つけてきた。
仕入れ先はどこでも構わないが、販売先はアメリアを恨んでいる奴をターゲットに。闇で流れている貴重な品を侯爵家の名前を出して買い叩き、実家や友人を利用して定価より安く売る。
長く商売できるように、少しでもアメリア達の目につかないように⋯⋯アメリアを憎む奴等とのコネを作るのが目的で、利益は侯爵家を乗っ取れば何倍にもなって帰ってくる。
資金なら毎年エレーナ用の金⋯⋯ニールの予算などとは比べ物にならない金額がニールの懐に転がり込む。足りなければ、エレーナが壊した・エレーナが欲しがると言えば追加の金が届く。
その合間に少しずつ情報を流し、ゆっくりひっそりと罠を巡らしてきた。情報を流せば相手からネタが流れ込んでくる⋯⋯それを使って作戦を練り直していくたびに、絶対に逃げられない完璧な計画に仕上がっていく。
ニールの悪意は既に公国に広がり、公国を包囲している。
(戦争が先か経済制裁が先か⋯⋯ どっちに転んでも最後に勝つのは俺。
そこまで準備できてるってのに、ようやく動きはじめたってのに! 頭の沸いた奴らにとっておきの作戦を植え付けて、物の手配まで手伝ってやって、このままじゃ美味しいとこだけ奴等に持ってかれてしまう。
⋯⋯奴等を手の上で転がすにはまだまだ金が必要なのに、ここで俺の金蔓を連れてかれるのはマズい。
アメリアの血を受け継いだエレーナは、最後の最後まで俺の役に立ってもらう。その為だけに産まれてきたんだ、目の前のいけすかないガキは)
「エレーナ⋯⋯君に会いたいと思っても屋敷には入れないし、何故か部屋から出てくる事もないから、接点を作りたくても作れない。ずっと悩んでたんだよ⋯⋯だから、エレーナが侯爵家を出ていくのなら、俺はエレーナのそばで支えてやれるようになるんだな。
本当の親の愛情に勝るものはないと、教えてやれるのは俺しかいないだろ? だから、エレーナはもちろんお父様と一緒に行きたいと言ってくれるよな?
オーレリアで一緒に暮らそう。初めての場所で不安ばかりだが、オルシーニ家がついているなら、安心して移住できるじゃないか」
エレーナに向かって伸ばされたニールの手は、無言で睨むルーナにはたき落とされた。
「エレーナちゃんに触らないでくれる? エレーナちゃんはもううちの子だから、酒臭い息をこっちに向けて吐かないでよね」
臭いだけで酔いそうだと言って鼻に皺を寄せたルーナが、ニールからエレーナを隠すように抱き込んだ。
「今更感が半端ないし、嘘臭過ぎて誰も信じるわけないじゃん」
(今までの中でニール様が最高に気持ち悪い⋯⋯頭の中が透けて見えるような気がしますもの。ここに残ればブラッツと共に取り調べを受ける。わたくしがいなくなれば資金調達ができなくなる。わたくしについて行けばオーレリアとオルシーニ家を食い物にできる)
「おとうさまがこのくにをでたら、イライザさんやターニャさんはどうするの?」
「確かにこのままだと⋯⋯見捨てるわけにはいかないし、うーん、そうだなあ。エレーナは優しい子だから、二人とも仲良くできるんじゃないかな。ほら、新しい家族ができたら嬉しいだろ? 知らない国に行っても両親と妹がいれば寂しくないし。イライザは子供が大好きだし、ターニャは楽しい遊びをいっぱい教えてくれるからね」
「イライザさんはこどもがすきなの? でも、ターニャさんのおにいさんは『こじいん』にすてられたのだから、こどもはきらいだとおもうの」
ニールからの援助金が少なく、ターニャの世話に人を雇えないと聞いたイライザが癇癪を起こし、ターニャの兄はアルムヘイルにある孤児院に送られた。
(産まれた時からターニャはすごく可愛くて、男の子より将来役に立ちそうだと言うのが理由だったわ)
「それは、色々と理由があったんだよ。子供には分からない大人の理由がね」
「うーん、おとうさまは3人をやしなえるの? おかねがすっごくたくさんいるでしょ?」
「それは、ほら⋯⋯しばらくの間は助けてもらう事になるけど、仕事が見つかればね。子供はそんなことを気にしなくても大丈夫。子供には親が必要だって、オルシーニ陛下はちゃんと分かってくださるから」
「モーガンさん、親権の取り上げについての裁判で、今の内容を報告して下さいますか? ニール様は明らかに『寄生』を狙っておられます。しかも、当人とわたくしだけでなく愛人や庶子の生活費まで、オルシーニ陛下に出していただくつもりのようですわ」
「な、何を言うんだ! しかもその口調「わたくしの予算を横領した上に虐待の主犯であるブラッツとの親密な関係を考えれば、ニール様がわたくしに対して親としての情をもっているとは思えません。
横領等についての罪から逃れ、オルシーニ公爵家へ寄生する為に、わたくしに対し擦り寄っている。オーレリアの中枢への伝手を狙っている可能性すら考えられます。
アメリア様とニール様から親権の全取り上げを望むだけでなく、接見禁止をお願いします」」
「バカなことを! そんな事をすれば、実の親に二度と会えなくなるんだぞ!?」
「今まで一度もお会いしたことがありませんのに、都合が悪くなった途端『親子の情』などと言い出す方に、二度と会えなくともなんの問題もありません。それよりも、わたくしを養護してくださると名乗りをあげてくださった方々に、ご迷惑をお掛けする方が問題です」
「ほんの数年⋯⋯いや、それなりの仕事が見つかるまでの間の事じゃないか! 仕事が見つかれば、援助していただいた金はお返しすればいいのだし」
「ニール、俺はわざわざ犯罪者をオーレリアに迎え入れる気はないし、エレーナ以外の奴に援助するつもりなどない。もしオーレリアに移住してきたら、貴族として親として⋯⋯お前がやってきた事を公表してやる。オルシーニもオーレリアも貴様のような奴を受け入れるとは思わん事だな。
ジョーンズ、ニールをしっかりと見張っておけよ。コイツが少しでもエレーナや俺達に関与しようとした時点で、オーレリア国王として公国にそれなりの制裁を加える。つまり、アメリアはオーレリアの後ろ盾なく公国を支えていく事になるって意味だ。
アメリアの為だけに動いてるお前らでも、今回ばかりは真面に頭が働くと期待してるからな」
「畏まりました。ニール殿の事は公国にお任せ下さい。決してオーレリアにもオルシーニ公爵家にもご迷惑はおかけしないとお約束致します」
(ニール様は策を練るのはお好きだけど、考えを纏めるのには時間がかかるタイプ。そのくせ短気だから⋯⋯。
そのお陰で膿を全部出せたかも。オーレリアとの同盟がなくなればアメリア様は窮地に立たされるのだから、ニール様がわたくし達に関わらないようにジョーンズ達は最善を尽くすはず)
アメリア教も使い方次第?
テーブルの上の資料を見て、エレーナの隣にオルシーニ一家が並んでいる事を考えれば、何が起きているのか簡単に気付けたのだろう。
オルシーニはエレーナを侯爵家から連れ出し、侯爵家と縁を切らせるつもりだと。
(俺の大切な金蔓を奪われてたまるか! しかも、ブラッツの横領が発覚し俺も疑われてる。このままでは何もかもが⋯⋯。
エレーナの予算は俺の物だ、それをどうしようが俺の勝手だろうが! それを横領だと? 巫山戯んな!
ケチくさくて嫉妬深いアメリアがいつまでもしつこく僻んでいたのが悪いんだ。
このままじゃ、折角芽を出しはじめた俺の作戦が⋯⋯。あちこちに手を回して作り上げたのに。ここまでお膳立てするのにどんだけ苦労したか。
ようやく動きはじめたとこなのに、なんでバレた? いや、バレたのは横領だけのようだし、アレは横領なんかじゃねえからな。親が子供の代わりに予算を運用してやっただけだから大した事はないが、ブラッツが何をどこまで知ってるか⋯⋯。アメリアが死んでりゃ侯爵家に乗り込んでたのに、クソ忌々しい)
先代当主から縁談が持ち込まれた時、子爵家が大騒ぎになったのは言うまでもない。
子爵家への援助くらい侯爵家なら余裕だと喜ぶ両親はニールに媚びへつらい、贅沢し放題になる弟を妬む兄は顔を見るたびに嫌味を言う。ニールは潤沢な資金を引き出して豪遊し、アルムヘイルの社交界で幅を利かせて垂涎の的となる⋯⋯輝かしい未来予想図に舞い上がり、侯爵家に乗り込んだ。
弱小子爵・貧乏貴族と蔑んでいた奴らの鼻を明かしてやれるはずが、蓋を開けてみれば⋯⋯。
先代当主が生きていた頃は領地経営の補佐としての勉強ばかりで、ロクに遊ぶ時間もない。領地を知る為だと言って鉱夫と共に坑道に押し込まれ、訓練だと言って兵と一緒に野営させられた。
俺には戦争だなんて野蛮な事はできるわけがない⋯⋯アルムヘイルで暮らしていた時は戦争などただの絵空事だったニールは、戦いが始まる前に逃げ出した。
愛人と庶子を作った事など、ちょっとした気晴らしでたまたま子供ができただけ⋯⋯貴族にはよくある事だと気儘に社交界で豪遊し、資金不足で渋々侯爵家に戻ったら⋯⋯全ての権利を奪われ、母屋に足を踏み入れることさえ禁止されて種馬扱い。
(俺の自由になる予算が少な過ぎる。納得できねえ。俺をバカにしやがって!)
不満を溜め込みながら離れで鬱々と過ごしていると、アメリアが侯爵家から宮殿に越すと聞き⋯⋯。
ブラッツはニールの愛人イライザの叔母で、勤めていた屋敷を解雇されたばかりだと知って、使用人をかき集めている侯爵家の家政婦長に応募させた。
(俺の言う事を聞く奴が家政婦長になれば、発言権がなくても侯爵家を思い通りにできる⋯⋯)
あっさりと家政婦長の職に就いたブラッツから、執事は半人前の若造だと聞いて『チャンスだ』と思い、暇に飽かせて考えていた策を実行する事に⋯⋯。
仕方なく作った興味のかけらもない娘の予算があれば、アメリアへ仕返しができる。
アメリアへの復讐の準備を進めていくのに、ブラッツ程役に立つ女はいなかった。元の勤め先でも屋敷の品を横流しして利鞘を稼いでいたブラッツは、ニールの望み通りの商売相手を簡単に見つけてきた。
仕入れ先はどこでも構わないが、販売先はアメリアを恨んでいる奴をターゲットに。闇で流れている貴重な品を侯爵家の名前を出して買い叩き、実家や友人を利用して定価より安く売る。
長く商売できるように、少しでもアメリア達の目につかないように⋯⋯アメリアを憎む奴等とのコネを作るのが目的で、利益は侯爵家を乗っ取れば何倍にもなって帰ってくる。
資金なら毎年エレーナ用の金⋯⋯ニールの予算などとは比べ物にならない金額がニールの懐に転がり込む。足りなければ、エレーナが壊した・エレーナが欲しがると言えば追加の金が届く。
その合間に少しずつ情報を流し、ゆっくりひっそりと罠を巡らしてきた。情報を流せば相手からネタが流れ込んでくる⋯⋯それを使って作戦を練り直していくたびに、絶対に逃げられない完璧な計画に仕上がっていく。
ニールの悪意は既に公国に広がり、公国を包囲している。
(戦争が先か経済制裁が先か⋯⋯ どっちに転んでも最後に勝つのは俺。
そこまで準備できてるってのに、ようやく動きはじめたってのに! 頭の沸いた奴らにとっておきの作戦を植え付けて、物の手配まで手伝ってやって、このままじゃ美味しいとこだけ奴等に持ってかれてしまう。
⋯⋯奴等を手の上で転がすにはまだまだ金が必要なのに、ここで俺の金蔓を連れてかれるのはマズい。
アメリアの血を受け継いだエレーナは、最後の最後まで俺の役に立ってもらう。その為だけに産まれてきたんだ、目の前のいけすかないガキは)
「エレーナ⋯⋯君に会いたいと思っても屋敷には入れないし、何故か部屋から出てくる事もないから、接点を作りたくても作れない。ずっと悩んでたんだよ⋯⋯だから、エレーナが侯爵家を出ていくのなら、俺はエレーナのそばで支えてやれるようになるんだな。
本当の親の愛情に勝るものはないと、教えてやれるのは俺しかいないだろ? だから、エレーナはもちろんお父様と一緒に行きたいと言ってくれるよな?
オーレリアで一緒に暮らそう。初めての場所で不安ばかりだが、オルシーニ家がついているなら、安心して移住できるじゃないか」
エレーナに向かって伸ばされたニールの手は、無言で睨むルーナにはたき落とされた。
「エレーナちゃんに触らないでくれる? エレーナちゃんはもううちの子だから、酒臭い息をこっちに向けて吐かないでよね」
臭いだけで酔いそうだと言って鼻に皺を寄せたルーナが、ニールからエレーナを隠すように抱き込んだ。
「今更感が半端ないし、嘘臭過ぎて誰も信じるわけないじゃん」
(今までの中でニール様が最高に気持ち悪い⋯⋯頭の中が透けて見えるような気がしますもの。ここに残ればブラッツと共に取り調べを受ける。わたくしがいなくなれば資金調達ができなくなる。わたくしについて行けばオーレリアとオルシーニ家を食い物にできる)
「おとうさまがこのくにをでたら、イライザさんやターニャさんはどうするの?」
「確かにこのままだと⋯⋯見捨てるわけにはいかないし、うーん、そうだなあ。エレーナは優しい子だから、二人とも仲良くできるんじゃないかな。ほら、新しい家族ができたら嬉しいだろ? 知らない国に行っても両親と妹がいれば寂しくないし。イライザは子供が大好きだし、ターニャは楽しい遊びをいっぱい教えてくれるからね」
「イライザさんはこどもがすきなの? でも、ターニャさんのおにいさんは『こじいん』にすてられたのだから、こどもはきらいだとおもうの」
ニールからの援助金が少なく、ターニャの世話に人を雇えないと聞いたイライザが癇癪を起こし、ターニャの兄はアルムヘイルにある孤児院に送られた。
(産まれた時からターニャはすごく可愛くて、男の子より将来役に立ちそうだと言うのが理由だったわ)
「それは、色々と理由があったんだよ。子供には分からない大人の理由がね」
「うーん、おとうさまは3人をやしなえるの? おかねがすっごくたくさんいるでしょ?」
「それは、ほら⋯⋯しばらくの間は助けてもらう事になるけど、仕事が見つかればね。子供はそんなことを気にしなくても大丈夫。子供には親が必要だって、オルシーニ陛下はちゃんと分かってくださるから」
「モーガンさん、親権の取り上げについての裁判で、今の内容を報告して下さいますか? ニール様は明らかに『寄生』を狙っておられます。しかも、当人とわたくしだけでなく愛人や庶子の生活費まで、オルシーニ陛下に出していただくつもりのようですわ」
「な、何を言うんだ! しかもその口調「わたくしの予算を横領した上に虐待の主犯であるブラッツとの親密な関係を考えれば、ニール様がわたくしに対して親としての情をもっているとは思えません。
横領等についての罪から逃れ、オルシーニ公爵家へ寄生する為に、わたくしに対し擦り寄っている。オーレリアの中枢への伝手を狙っている可能性すら考えられます。
アメリア様とニール様から親権の全取り上げを望むだけでなく、接見禁止をお願いします」」
「バカなことを! そんな事をすれば、実の親に二度と会えなくなるんだぞ!?」
「今まで一度もお会いしたことがありませんのに、都合が悪くなった途端『親子の情』などと言い出す方に、二度と会えなくともなんの問題もありません。それよりも、わたくしを養護してくださると名乗りをあげてくださった方々に、ご迷惑をお掛けする方が問題です」
「ほんの数年⋯⋯いや、それなりの仕事が見つかるまでの間の事じゃないか! 仕事が見つかれば、援助していただいた金はお返しすればいいのだし」
「ニール、俺はわざわざ犯罪者をオーレリアに迎え入れる気はないし、エレーナ以外の奴に援助するつもりなどない。もしオーレリアに移住してきたら、貴族として親として⋯⋯お前がやってきた事を公表してやる。オルシーニもオーレリアも貴様のような奴を受け入れるとは思わん事だな。
ジョーンズ、ニールをしっかりと見張っておけよ。コイツが少しでもエレーナや俺達に関与しようとした時点で、オーレリア国王として公国にそれなりの制裁を加える。つまり、アメリアはオーレリアの後ろ盾なく公国を支えていく事になるって意味だ。
アメリアの為だけに動いてるお前らでも、今回ばかりは真面に頭が働くと期待してるからな」
「畏まりました。ニール殿の事は公国にお任せ下さい。決してオーレリアにもオルシーニ公爵家にもご迷惑はおかけしないとお約束致します」
(ニール様は策を練るのはお好きだけど、考えを纏めるのには時間がかかるタイプ。そのくせ短気だから⋯⋯。
そのお陰で膿を全部出せたかも。オーレリアとの同盟がなくなればアメリア様は窮地に立たされるのだから、ニール様がわたくし達に関わらないようにジョーンズ達は最善を尽くすはず)
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