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第四章
23.本領を発揮するエレーナ
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かなり社交性がありそうなジェイクなら、公国兵の中に知り合いがいるはず。その伝手を使って、常時アンクレットを付けている兵を探し、彼等の様子を調べてもらうと決めた。
「ルーナ様、ジェイクに頼みたいことができたので、手伝っていただけませんでしょうか?」
エレーナが今日4冊目の帳簿を引き寄せるのを見たルーナが、驚きすぎて口をぽかんと開け目を見開いた。
「(さっきの帳簿、マジで終わってるの!? 信じらんない速さなんだけど⋯⋯アタシなんてメモを並べてるだけかも)い、いいよ! うん、なんでも言って言って」
エレーナに頼られたのが嬉しいのか、握った拳をブンブンと振って身を乗り出した。
「では、一時的にですがビルワーツの領地経営をお願いします」
「げっ! それは無理ぃ~。他のことじゃダメかな? アタシは医療関係と力技以外は壊滅的でさ、父ちゃんや母ちゃんにも匙を投げられてるの」
「わたくしがサポートさせていただきます。ルーナ様の的確な状況判断力やカリスマ性があれば大丈夫ですわ。相手の話を聞いてくださった後は、わたくしがなんとかいたします。
解決できないものについては、持ち帰ってジェイクに丸投げすれば良いと思いますし」
ループ前には、学園に通いながら壊滅的な王国の政務を引き受けていたのだから、余程の問題でなければなんとかできる自信がある。
愚鈍な癖に傲慢な大臣、働く気のない上級事務官、指示されたことしかやらない下級事務官。国庫は食い尽くされ、負債しかない王宮に次々と上がってくる陳情書。
(あの時の領主や議員・ギルド長・商人達とやり合うことを考えれば、大抵のことはできるはず)
「ん~、じゃあやってみるかな。エレーナがついてれば、なんとかなりそうな気がするもんね」
エレーナは見た目5歳だけど。
「では、今日中に帳簿を片付けて明日からはじめましょう」
エレーナの本気にルーナが目を丸くするまで、後1時間。魂が抜けかけるまでに凡そ2時間⋯⋯。
ミセス・メイベルの指示で宮殿の検査室に行き、鑑定結果を持ち帰ったジェイクが執務室のドアを開けると、ソファの背にもたれたルーナが放心状態になっていた。
「ただいま帰⋯⋯って、ルーナ様大丈夫ですか? なんか、からっからに干からびてる」
「ジェイク、アタシはもう無理⋯⋯後は任せた⋯⋯骨は拾ったげるから、アタシの事はいないものと思って。で、ジェイクの仕事分はほら、あそこの山⋯⋯」
ルーナが指差した先には帳簿と分厚いメモの山があり、その横でエレーナがせっせとメモを作り続けながら⋯⋯。
「ジェイク、領地で起きた問題ついて確認したいの。報告書を⋯⋯3年分もあれば良いかしら⋯⋯出しておいて。それとは別に、未解決や長期化しているものがあれば詳しい資料を。管理徴税している代官の一覧は、家族構成もあれば揃えておいて。
それと、ここ1年以内に移「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! メモしますからもう一度お願いします。ルーナ様、なんでこんなことになってんすか!? 惚けてないで説明して下さい!」」
「ジェイクにやって欲しい事があるって。んで、その間は領地経営を手伝うって言ってたよ」
「⋯⋯へ? 無理っしょ⋯⋯ルーナ様は脳味噌が医療に全フリで、その他は力技で捩じ伏せるタイプだし、エレーナ様は5歳だし」
ジェイクの的確な人物評価を聞いたルーナが、近場にあったクッションを投げつけた。
「この領地でとっている手法やジェイクのやり方を確認してから動くから、ジェイクの邪魔になる事はしないわ。必要以上に首を突っ込むつもりもないし、短い間の連絡係というスタンスで話をする。
申し訳ないけれど他に頼れる人を思いつかなくて、ジェイクには領地経営より大事な仕事を頼みたいの」
今の所、エレーナが信用しているのはルーナとジェイクだけ。マーカスは半々でミセス・メイベルは経過観察中といったところ。その他はジョーンズタイプだと思って警戒している。
(詮索する兆候が現れたら用心しなくちゃいけないけど、この2人だけが『なんで知ってる!?』って騒がないから⋯⋯)
「領地経営より大事って⋯⋯んなの、ありましたっけ?」
ジョーンズの後を引き継ぎ、侯爵家の経営を担ってきた自負のあるジェイクには、それ以上に大切なものが思いつかない。
(ミセス・メイベルが来てくれて屋敷の中は任せられるようになったし、横領の調査は今やってるし⋯⋯。他になんかあったっけか?)
「ディクセン・トリアリア連合王国による、ビルワーツ公国への侵略戦争⋯⋯」
ソファの背もたれに頭を預け、疲れた頭を癒していたルーナが飛び起き、ジェイクは持っていたクッションを床に落とした。
「可能性の段階⋯⋯いえ、起きるのか起きないのかを調査しようとしている段階ね。
アメリア様の落馬は事故⋯⋯運の悪い事故に遭い身罷られるのだとだと思っていたの。でも、そうじゃなかった。誰かの悪意・陰謀・復讐⋯⋯。
あの事故の半年後、連合王国が侵略戦争を仕掛けてくるのだけど、タイミングがおかしすぎるの。まるで⋯⋯事故が起きるのを知っていたみたい。
公王の突然の逝去で新公王を決定する選挙が行われ、新しい体制を整えている隙を狙ったように見えるけれど、侵略戦争なんてかなり前から計画しなければはじめられないわ。
事故が人為的なものなら、それに合わせて準備できる」
「いやいや、それはないっす。叔父さんから、連合王国は通商条約を結びたがってるって聞いてるんすから」
公国とオーレリアに挟まれ経済が停滞し続けている連合王国は、1年以上前から熱心に公国との関係の修復に努めているらしく、近々条約を結ぶ事になるだろうとジョーンズから聞いている。
「セルビアスが穏健派に転向したと宣言していて、部族長の末娘を連合王国の公妾に送り込んでいたら、ギルティだと決めていいと思うわ」
艶やかな肌と美貌、巧みな話術と洗練された身のこなしで、傾国の美姫と呼ばれる⋯⋯妖艶な美女ダニア。
「彼女は穏健派の国王を戦争に駆り立てる為に、王宮に乗り込んだ女狐なの。国王が溺愛し常にそばに置いているから、政務も議会の内容も全て把握してる。
侵略戦争が終わるまでは、『肩書きだけの公妾だから政治には全く口を出さない』っていうフリをしてたの。で、寝屋で囁く。
『連合王国の不運は全てビルワーツのせい』『今なら勝てる』って」
裏表のある輩が最も嫌いなルーナが『クソじゃん』と呟き、目の前のテーブルを蹴り付けた。
「ジェイクには、公国に入り込んだセルビアスの兵がいないかを調べて欲しいの。
彼等が絶対に外さないアンクレットには、セルビアスの紋章が彫られてるから、目印になるはず。
軍や宮殿に薬草を持ち込んで弱体化させ、一部の官僚や兵士を洗脳するのが彼等の目的だから、怪しい薬を勧めたり、医療・研究所・厨房なんかの所属を希望していたら疑うべきね」
素材や装飾によって部族内の立場と絶対の忠誠を示すアンクレットは、アクセサリーとしては無骨すぎるシンプルな物。他国へ潜入する兵士達は、装飾のないシンプルなアンクレットに部族の証だけを彫っている。
宮殿で見かけた看護士はセルビアスの兵士がつけている『お守り』を真似ているだけで、彼等のアンクレットの意味や、公国にいる理由は知らないのだと思いたい。
「かなり社交性がありそうなジェイクなら、公国兵の中に知り合いがいるでしょう? その伝手を使って、アンクレットを付けている公国兵の周りを調べて欲しいの。
入隊時から、シンプルなアンクレットをつけている人はいないか。疲れの取れる薬だとか、願いを叶えるおまじないを知ってるだとか⋯⋯冗談混じりに言ってるかも」
エレーナの話はまるで本当に見てきたように聞こえ、青褪めたルーナとジェイクの腕に鳥肌が立った。
「で、でも⋯⋯アメリア様の事故は失敗してるし⋯⋯意識はまだ戻られてないけど、でも」
「そうそう! ビルワーツには長い間一度も負けた事がない軍隊がいるし。もしセルビアスの兵が潜り込んでてもさあ、連合王国と一対一なら勝てるんじゃない?」
「ルーナ様、アメリア様のお命が奪われていた場合、次の公王は誰になったと思いますか? ジェイクは誰だと思う?」
「うーん、マーカスかなぁ。オーレリアでも有名だもん」
「俺もマーカス様だと思います」
先代のビルワーツ侯爵の時から勇猛果敢な戦士として知られ、戦略・統率力ともに認められているマーカス・パンフィール。
「マーカス様は、誰が見ても分かるほどの人気と信頼を得ているから、彼が公王に就任してオリバー・ハミルトンが次の軍総司令官になるの。
彼も優秀な指揮官だけど⋯⋯ 兵士が内部から弱体化させられているところに、軍のトップが変わると言うのは、兵士達の士気に大きく影響するわ。
しかも、アメリア様が崩御された後、ビルワーツの名を象徴する人は残っていない。レイモンド様もセレナ様も」
マーカスは、アメリアが愛し尊敬していた父レイモンドに『俺の右腕だ』と言われ、アメリアからも(父に向けていたような)絶大な信頼を寄せられている。彼本人もアメリアとレイモンドに忠誠を誓い⋯⋯。
「この国はまるで、レイモンド様が残したものを守る為の箱庭みたいで、とても歪んで見える。
レイモンド様とセレナ様が守っていた世界を、アメリア様やジョーンズさん達で維持し続けるのが目的みたいに。
だからこそ、マーカス様がいくら素晴らしくても、無意識に『彼はビルワーツではない』と思ってしまうの」
(それが兵士達の無意識に影響する)
「ルーナ様、ジェイクに頼みたいことができたので、手伝っていただけませんでしょうか?」
エレーナが今日4冊目の帳簿を引き寄せるのを見たルーナが、驚きすぎて口をぽかんと開け目を見開いた。
「(さっきの帳簿、マジで終わってるの!? 信じらんない速さなんだけど⋯⋯アタシなんてメモを並べてるだけかも)い、いいよ! うん、なんでも言って言って」
エレーナに頼られたのが嬉しいのか、握った拳をブンブンと振って身を乗り出した。
「では、一時的にですがビルワーツの領地経営をお願いします」
「げっ! それは無理ぃ~。他のことじゃダメかな? アタシは医療関係と力技以外は壊滅的でさ、父ちゃんや母ちゃんにも匙を投げられてるの」
「わたくしがサポートさせていただきます。ルーナ様の的確な状況判断力やカリスマ性があれば大丈夫ですわ。相手の話を聞いてくださった後は、わたくしがなんとかいたします。
解決できないものについては、持ち帰ってジェイクに丸投げすれば良いと思いますし」
ループ前には、学園に通いながら壊滅的な王国の政務を引き受けていたのだから、余程の問題でなければなんとかできる自信がある。
愚鈍な癖に傲慢な大臣、働く気のない上級事務官、指示されたことしかやらない下級事務官。国庫は食い尽くされ、負債しかない王宮に次々と上がってくる陳情書。
(あの時の領主や議員・ギルド長・商人達とやり合うことを考えれば、大抵のことはできるはず)
「ん~、じゃあやってみるかな。エレーナがついてれば、なんとかなりそうな気がするもんね」
エレーナは見た目5歳だけど。
「では、今日中に帳簿を片付けて明日からはじめましょう」
エレーナの本気にルーナが目を丸くするまで、後1時間。魂が抜けかけるまでに凡そ2時間⋯⋯。
ミセス・メイベルの指示で宮殿の検査室に行き、鑑定結果を持ち帰ったジェイクが執務室のドアを開けると、ソファの背にもたれたルーナが放心状態になっていた。
「ただいま帰⋯⋯って、ルーナ様大丈夫ですか? なんか、からっからに干からびてる」
「ジェイク、アタシはもう無理⋯⋯後は任せた⋯⋯骨は拾ったげるから、アタシの事はいないものと思って。で、ジェイクの仕事分はほら、あそこの山⋯⋯」
ルーナが指差した先には帳簿と分厚いメモの山があり、その横でエレーナがせっせとメモを作り続けながら⋯⋯。
「ジェイク、領地で起きた問題ついて確認したいの。報告書を⋯⋯3年分もあれば良いかしら⋯⋯出しておいて。それとは別に、未解決や長期化しているものがあれば詳しい資料を。管理徴税している代官の一覧は、家族構成もあれば揃えておいて。
それと、ここ1年以内に移「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! メモしますからもう一度お願いします。ルーナ様、なんでこんなことになってんすか!? 惚けてないで説明して下さい!」」
「ジェイクにやって欲しい事があるって。んで、その間は領地経営を手伝うって言ってたよ」
「⋯⋯へ? 無理っしょ⋯⋯ルーナ様は脳味噌が医療に全フリで、その他は力技で捩じ伏せるタイプだし、エレーナ様は5歳だし」
ジェイクの的確な人物評価を聞いたルーナが、近場にあったクッションを投げつけた。
「この領地でとっている手法やジェイクのやり方を確認してから動くから、ジェイクの邪魔になる事はしないわ。必要以上に首を突っ込むつもりもないし、短い間の連絡係というスタンスで話をする。
申し訳ないけれど他に頼れる人を思いつかなくて、ジェイクには領地経営より大事な仕事を頼みたいの」
今の所、エレーナが信用しているのはルーナとジェイクだけ。マーカスは半々でミセス・メイベルは経過観察中といったところ。その他はジョーンズタイプだと思って警戒している。
(詮索する兆候が現れたら用心しなくちゃいけないけど、この2人だけが『なんで知ってる!?』って騒がないから⋯⋯)
「領地経営より大事って⋯⋯んなの、ありましたっけ?」
ジョーンズの後を引き継ぎ、侯爵家の経営を担ってきた自負のあるジェイクには、それ以上に大切なものが思いつかない。
(ミセス・メイベルが来てくれて屋敷の中は任せられるようになったし、横領の調査は今やってるし⋯⋯。他になんかあったっけか?)
「ディクセン・トリアリア連合王国による、ビルワーツ公国への侵略戦争⋯⋯」
ソファの背もたれに頭を預け、疲れた頭を癒していたルーナが飛び起き、ジェイクは持っていたクッションを床に落とした。
「可能性の段階⋯⋯いえ、起きるのか起きないのかを調査しようとしている段階ね。
アメリア様の落馬は事故⋯⋯運の悪い事故に遭い身罷られるのだとだと思っていたの。でも、そうじゃなかった。誰かの悪意・陰謀・復讐⋯⋯。
あの事故の半年後、連合王国が侵略戦争を仕掛けてくるのだけど、タイミングがおかしすぎるの。まるで⋯⋯事故が起きるのを知っていたみたい。
公王の突然の逝去で新公王を決定する選挙が行われ、新しい体制を整えている隙を狙ったように見えるけれど、侵略戦争なんてかなり前から計画しなければはじめられないわ。
事故が人為的なものなら、それに合わせて準備できる」
「いやいや、それはないっす。叔父さんから、連合王国は通商条約を結びたがってるって聞いてるんすから」
公国とオーレリアに挟まれ経済が停滞し続けている連合王国は、1年以上前から熱心に公国との関係の修復に努めているらしく、近々条約を結ぶ事になるだろうとジョーンズから聞いている。
「セルビアスが穏健派に転向したと宣言していて、部族長の末娘を連合王国の公妾に送り込んでいたら、ギルティだと決めていいと思うわ」
艶やかな肌と美貌、巧みな話術と洗練された身のこなしで、傾国の美姫と呼ばれる⋯⋯妖艶な美女ダニア。
「彼女は穏健派の国王を戦争に駆り立てる為に、王宮に乗り込んだ女狐なの。国王が溺愛し常にそばに置いているから、政務も議会の内容も全て把握してる。
侵略戦争が終わるまでは、『肩書きだけの公妾だから政治には全く口を出さない』っていうフリをしてたの。で、寝屋で囁く。
『連合王国の不運は全てビルワーツのせい』『今なら勝てる』って」
裏表のある輩が最も嫌いなルーナが『クソじゃん』と呟き、目の前のテーブルを蹴り付けた。
「ジェイクには、公国に入り込んだセルビアスの兵がいないかを調べて欲しいの。
彼等が絶対に外さないアンクレットには、セルビアスの紋章が彫られてるから、目印になるはず。
軍や宮殿に薬草を持ち込んで弱体化させ、一部の官僚や兵士を洗脳するのが彼等の目的だから、怪しい薬を勧めたり、医療・研究所・厨房なんかの所属を希望していたら疑うべきね」
素材や装飾によって部族内の立場と絶対の忠誠を示すアンクレットは、アクセサリーとしては無骨すぎるシンプルな物。他国へ潜入する兵士達は、装飾のないシンプルなアンクレットに部族の証だけを彫っている。
宮殿で見かけた看護士はセルビアスの兵士がつけている『お守り』を真似ているだけで、彼等のアンクレットの意味や、公国にいる理由は知らないのだと思いたい。
「かなり社交性がありそうなジェイクなら、公国兵の中に知り合いがいるでしょう? その伝手を使って、アンクレットを付けている公国兵の周りを調べて欲しいの。
入隊時から、シンプルなアンクレットをつけている人はいないか。疲れの取れる薬だとか、願いを叶えるおまじないを知ってるだとか⋯⋯冗談混じりに言ってるかも」
エレーナの話はまるで本当に見てきたように聞こえ、青褪めたルーナとジェイクの腕に鳥肌が立った。
「で、でも⋯⋯アメリア様の事故は失敗してるし⋯⋯意識はまだ戻られてないけど、でも」
「そうそう! ビルワーツには長い間一度も負けた事がない軍隊がいるし。もしセルビアスの兵が潜り込んでてもさあ、連合王国と一対一なら勝てるんじゃない?」
「ルーナ様、アメリア様のお命が奪われていた場合、次の公王は誰になったと思いますか? ジェイクは誰だと思う?」
「うーん、マーカスかなぁ。オーレリアでも有名だもん」
「俺もマーカス様だと思います」
先代のビルワーツ侯爵の時から勇猛果敢な戦士として知られ、戦略・統率力ともに認められているマーカス・パンフィール。
「マーカス様は、誰が見ても分かるほどの人気と信頼を得ているから、彼が公王に就任してオリバー・ハミルトンが次の軍総司令官になるの。
彼も優秀な指揮官だけど⋯⋯ 兵士が内部から弱体化させられているところに、軍のトップが変わると言うのは、兵士達の士気に大きく影響するわ。
しかも、アメリア様が崩御された後、ビルワーツの名を象徴する人は残っていない。レイモンド様もセレナ様も」
マーカスは、アメリアが愛し尊敬していた父レイモンドに『俺の右腕だ』と言われ、アメリアからも(父に向けていたような)絶大な信頼を寄せられている。彼本人もアメリアとレイモンドに忠誠を誓い⋯⋯。
「この国はまるで、レイモンド様が残したものを守る為の箱庭みたいで、とても歪んで見える。
レイモンド様とセレナ様が守っていた世界を、アメリア様やジョーンズさん達で維持し続けるのが目的みたいに。
だからこそ、マーカス様がいくら素晴らしくても、無意識に『彼はビルワーツではない』と思ってしまうの」
(それが兵士達の無意識に影響する)
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