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第四章
22.使用人達の攻撃をすり抜けて
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席を立ったルーナに顔を覗き込まれたメイドが目を逸らして、しどろもどろで答えを返した。
「見てくれるかしら、ほらこれなんだけど⋯⋯この魔導具は鑑定ができる優れものなの。最新式だから⋯⋯状態がとても詳しく出るの。
カトラリーで試してみて、もし『毒・バイケイソウ・嘔吐及び腹痛』なんて表示されたら、どうしたら良いと思う? ねえ、どうしたら良いか言ってみて?」
エレーナが『交換を』と言ったと同時にルーナは鑑定を行った。ミセス・メイベルがやって来て、屋敷の中はすぐに落ち着いていくだろうと思っていたが、逆効果だったのだろうか。
(それとも、コイツらは普段からこんな事をしてた?)
「ジェーン、下がりなさい。わたくしの部屋で詳しく話を聞かせてもらいます。ジェイクはカトラリーの交換をお願いします。
ルーナ様、エレーナ様のお使いになられる食器や、料理の全てを鑑定する事はできますでしょうか?」
「ええ、これからは全部チェックした方が良さそうね」
ジェイクが新しく並べたカトラリーや皿には異常が見られなかったが、この後に出たハムが『汚染』と表示され、料理長のクビが確定するまで後10分。
本来なら、子供は乳母や専属の侍女やメイドに世話をされて別室で食事をし、多少のルール違反や粗相を許されながら、緊張する事なく食事をすることができる。
(こんな風に大勢に見られながら食事をするのは、ループ前と今の両方で初めてだわ。ルーナ様がいてくださって良かった)
スープからはじまりハム・卵料理・パン・バターとジャム・オレンジ。エレーナはその半分も食べられずにフォークを置いた。
1日2食、パンとスープだけだったエレーナは極端に胃が小さくなっていて、スープと卵料理が終わった時点で限界が来た。
「お腹がいっぱいでもう食べられませんの。次からは半分程度にして下さい」
「畏まりました。お茶の時間に、少しボリュームのあるお菓子をお出しいたしますね」
席を立ちルーナと一緒に食堂を出るエレーナの後ろ姿を見ながら、ミセス・メイベルは内心溜め息をついた。
(ミセス・ブラッツの報告内容に、ほんの僅かでも真実があったとは思えない。
マナーもイレギュラーに対する対応も全て完璧、使用人への指示も的確。中身が見た目や実年齢とこれほど違う令嬢は、見たことがないくらいだわ。
それなのに、侯爵家を離籍するおつもりだなんて⋯⋯凡夫だなどとんでもない! 話しの組み立て方やその内容から考えて、歴代のご当主様に引けを取らない程の才覚をお持ちだわ。アメリア様は『動』のレイモンド様、エレーナ様は『静』のセレナ様に似ておられる。それ以上かも⋯⋯なんとか離籍を思いとどまってもらう事は出来ないかしら。
まずは、あのメイドと料理長ね! 見せしめも兼ねて大勢に知らしめなくては)
表情や態度は変わらないがミセス・メイベルから、凍るような冷気が漂っている気がした。
「ジェイク、集めたカトラリーとハムを宮殿の研究所に持ち込み、最速で鑑定結果を正式書類にしてきてください。彼等を侯爵家令嬢の殺害未遂として、司法へ引き渡します。
わたくしはすぐに使用人達と面談を行います。どうやら、思った以上に悪質な者が蔓延っているようだから」
小さく頷いたジェイクの後ろで、使用人達がガタガタと震え出した。
食堂を出たエレーナとルーナは、そのまま執務室に向かった。途中で会ったメイド達は睨みつける・無視する・怯えるの3種類。
(あまりいい兆候とは言えないけど、ミセス・メイベルを信じるしかないわ)
執務室に入りすぐに帳簿のチェックをはじめたエレーナの横で、昨日ジェイクが作っていた一覧表を見たルーナは顔を顰めた。
「数字かぁ、検査結果とかなら楽々で頭に入るのに⋯⋯そうだ! カトラリーの毒よく気がついたね~」
「えっと、はい」
(魔法のこと、聞いてみようかしら⋯⋯ルーナ様ならご自身も魔法をお使いだし、自然に受け入れてくださると思う。
⋯⋯うーん⋯⋯でも、ここを出てからの方が安全かしら)
これからしばらくの間はまだ、何があるか分からない。魔法を有益だと思われて、侯爵家から出られなくなる可能性も考えなくてはならない。
「あの、ルーナ様はビルワーツと親戚になられるんですよね?」
ルーナと話している間も、帳簿のページはどんどん捲られ、エレーナの使っている羽ペンは同じ速度でメモを取り続けている。
「そうだよ。エレーナの祖父ちゃんのお母さん⋯⋯ひいばあちゃんね。彼女のお兄ちゃんがアタシの祖父ちゃんなの。因みに、祖父ちゃんの息子が今のオーレリアの王様やってるアタシの父ちゃん。
でね、エレーナの祖父ちゃんの妹はオーレリアに住んでるの。旦那ちゃんがいい年してベッタベタの甘々でさ、子供が2人いて孫が3人いるの。
アタシも3人もエレーナの『はとこ』とか『またいとこ』ってやつ。その3人はエレーナちゃんと年が近いから一緒に遊べると思うんだ~。
まあ、その内の2人は双子で見分けがつかなくて、いたずらっ子で手がかかるけど、やられたらビシッてやり返せばいいからね」
(年が近い⋯⋯子供なら本を読むとかかしら。ちょっと自信がないかも」
「でしたら先代のビルワーツ侯爵夫妻が亡くなられた騒動はお詳しいですか?」
エレーナから次々に渡されるメモを順番に並べ、ルーナは数字や名前を一覧表に書き込んでは溜め息をついていた。
「独立するきっかけになったから、一通りは知ってるかな~。我儘坊やが王位簒奪狙ってて、その煽りを受けたレイモンド様とセレナ様が敵に殺られたんだよね」
「はい、その時簒奪を狙ったのは現王ランドルフ。彼には王家の血は流れていなくて、廃太子されそうになってクーデターを起こしたんです。ついでに言えば、ランドルフ王自身も托卵されかけましたの。
それを証明したのはオーレリアの魔導具なんです」
「ええっ! 我儘坊やじゃなくて托卵坊やが托卵されかけたって⋯⋯アルムヘイルの下半身事情は乱れてるね~。ん? じゃあ、この間立太子したなんとかって子も王家の血が流れてないんだ」
チラッと横目で見るとエレーナは既に次の帳簿に取り掛かり、ルーナの目の前にはメモが山になっている。
「恐らくエドワード第二王子ですね。ランドルフ王とジュリエッタ王妃の間に生まれた王子です。その兄に当たるタイラー第一王子は、亡くなられたキャロライン王妃との間にお生まれになられたので、王家の血を引いておられます」
ランドルフが簒奪を計画したのは、前国王マクベスがランドルフを廃太子し、タイラー第一王子を立太子させようとしたから。
「そのせいでアルムヘイル王国が潰れかけてるんだから、『ざまぁ』だよ。今、あの国はボロボロだからね」
「ランドルフ王が頼りにしていたクレベルン王国は、ビルワーツの資産を奪えなかったので手を引きましたし、長年支援していた皇帝が逝去され、新皇帝は一切の支援をお切りになられましたから」
ルーナがどんな反応をするか知る為に、公になっていない情報も含めてみたが、詮索するような言葉も表情も感じられなかった、
「砂上の楼閣だねえ、アルムヘイル潰れちゃえ~って」
アルムヘイルのランドルフ現国王が王太子の時代に、王位簒奪を狙い手を組んだのが、クレベルン王国と連合王国内の、ハザラスやセルビアスを含む4つの戦闘部族。
セルビアスは魔女狩りから逃れた者達の子孫と、棲家を失った呪術師や呪医などが集い、ひとつの部族になった比較的小さな集団だが、武力に付随して薬草と呪術を使うのが大きな特徴。
魔女と呼ばれた民間療法の担い手達から受け継がれた薬草の知識と、呪術師が行うと言う呪詛や天文学を基礎とした占い⋯⋯毒薬草で武力の強化を行い、占いで戦略を決め、呪詛で敵の弱体化を狙うと言われている。
(セルビアスの信念は『世界の理念を覆す』⋯⋯だったかしら。魔女は迫害され呪術は恐れられ、魔法は喜ばれる⋯⋯それが許せないのよね)
彼等は魔除けの意味を持つアンクレットを身に着けて部族への服従を示し、素材や装飾によって部族内の立場を明確に示している。
ループ前の記憶では、表向きは穏健派に転向したと宣言したセルビアスの部族長の末娘が、連合王国の公妾になっていた。
『この国が困窮しはじめたのは、ビルワーツ公国とオーレリア国が手を結んだせいですわ』
『オーレリアの魔法頼りでのさばるビルワーツは脆弱な愚か者達の集まり⋯⋯虎の威を借る狐でしかありませんわ』
『オーレリアが口を挟む前に叩いてしまえば、簡単に落ちますとも』
ビルワーツ公国との通商条約を結ぼうと画策していた王の耳元で囁き続け、その裏では公国に入り込んだセルビアスの兵が、軍や宮殿に薬草を持ち込んで弱体化させ、一部の官僚や兵士を洗脳していた。
資料に『呪術の効果か⋯⋯公国は建国王逝去の頃より、様々な不運に見舞われた』と書いてあったが、オーレリアが参戦を決めるまで、苦戦を強いられたのは事実だった。
(セルビアスの話をするべきか、様子を見るべきか⋯⋯もし本当に戦争が起きるなら話すべきだけど、今回の落馬事件のようになるのは困るわ)
連合王国の侵攻は、オーレリアの参戦表明であっという間に終結した。
火薬が発見されてから兵器はどんどん進化し威力や範囲は上がっているが、広範囲攻撃魔法を連発されればひとたまりもない。オーレリアは攻撃や防御に特化した魔導士が国防に携わり、生活魔法に特化した魔導士と魔導具士が国内の経済活動の中心になっている。
連合王国やセルビアスだけでなく、他の国もオーレリアの魔法を恐れているのは、魔導士の数だけでなく練度の高さと種類の多さにもある。
(連合王国の公妾とセルビアスの兵について調べるのが先決よね⋯⋯その間に金庫の中を確認できれば)
「見てくれるかしら、ほらこれなんだけど⋯⋯この魔導具は鑑定ができる優れものなの。最新式だから⋯⋯状態がとても詳しく出るの。
カトラリーで試してみて、もし『毒・バイケイソウ・嘔吐及び腹痛』なんて表示されたら、どうしたら良いと思う? ねえ、どうしたら良いか言ってみて?」
エレーナが『交換を』と言ったと同時にルーナは鑑定を行った。ミセス・メイベルがやって来て、屋敷の中はすぐに落ち着いていくだろうと思っていたが、逆効果だったのだろうか。
(それとも、コイツらは普段からこんな事をしてた?)
「ジェーン、下がりなさい。わたくしの部屋で詳しく話を聞かせてもらいます。ジェイクはカトラリーの交換をお願いします。
ルーナ様、エレーナ様のお使いになられる食器や、料理の全てを鑑定する事はできますでしょうか?」
「ええ、これからは全部チェックした方が良さそうね」
ジェイクが新しく並べたカトラリーや皿には異常が見られなかったが、この後に出たハムが『汚染』と表示され、料理長のクビが確定するまで後10分。
本来なら、子供は乳母や専属の侍女やメイドに世話をされて別室で食事をし、多少のルール違反や粗相を許されながら、緊張する事なく食事をすることができる。
(こんな風に大勢に見られながら食事をするのは、ループ前と今の両方で初めてだわ。ルーナ様がいてくださって良かった)
スープからはじまりハム・卵料理・パン・バターとジャム・オレンジ。エレーナはその半分も食べられずにフォークを置いた。
1日2食、パンとスープだけだったエレーナは極端に胃が小さくなっていて、スープと卵料理が終わった時点で限界が来た。
「お腹がいっぱいでもう食べられませんの。次からは半分程度にして下さい」
「畏まりました。お茶の時間に、少しボリュームのあるお菓子をお出しいたしますね」
席を立ちルーナと一緒に食堂を出るエレーナの後ろ姿を見ながら、ミセス・メイベルは内心溜め息をついた。
(ミセス・ブラッツの報告内容に、ほんの僅かでも真実があったとは思えない。
マナーもイレギュラーに対する対応も全て完璧、使用人への指示も的確。中身が見た目や実年齢とこれほど違う令嬢は、見たことがないくらいだわ。
それなのに、侯爵家を離籍するおつもりだなんて⋯⋯凡夫だなどとんでもない! 話しの組み立て方やその内容から考えて、歴代のご当主様に引けを取らない程の才覚をお持ちだわ。アメリア様は『動』のレイモンド様、エレーナ様は『静』のセレナ様に似ておられる。それ以上かも⋯⋯なんとか離籍を思いとどまってもらう事は出来ないかしら。
まずは、あのメイドと料理長ね! 見せしめも兼ねて大勢に知らしめなくては)
表情や態度は変わらないがミセス・メイベルから、凍るような冷気が漂っている気がした。
「ジェイク、集めたカトラリーとハムを宮殿の研究所に持ち込み、最速で鑑定結果を正式書類にしてきてください。彼等を侯爵家令嬢の殺害未遂として、司法へ引き渡します。
わたくしはすぐに使用人達と面談を行います。どうやら、思った以上に悪質な者が蔓延っているようだから」
小さく頷いたジェイクの後ろで、使用人達がガタガタと震え出した。
食堂を出たエレーナとルーナは、そのまま執務室に向かった。途中で会ったメイド達は睨みつける・無視する・怯えるの3種類。
(あまりいい兆候とは言えないけど、ミセス・メイベルを信じるしかないわ)
執務室に入りすぐに帳簿のチェックをはじめたエレーナの横で、昨日ジェイクが作っていた一覧表を見たルーナは顔を顰めた。
「数字かぁ、検査結果とかなら楽々で頭に入るのに⋯⋯そうだ! カトラリーの毒よく気がついたね~」
「えっと、はい」
(魔法のこと、聞いてみようかしら⋯⋯ルーナ様ならご自身も魔法をお使いだし、自然に受け入れてくださると思う。
⋯⋯うーん⋯⋯でも、ここを出てからの方が安全かしら)
これからしばらくの間はまだ、何があるか分からない。魔法を有益だと思われて、侯爵家から出られなくなる可能性も考えなくてはならない。
「あの、ルーナ様はビルワーツと親戚になられるんですよね?」
ルーナと話している間も、帳簿のページはどんどん捲られ、エレーナの使っている羽ペンは同じ速度でメモを取り続けている。
「そうだよ。エレーナの祖父ちゃんのお母さん⋯⋯ひいばあちゃんね。彼女のお兄ちゃんがアタシの祖父ちゃんなの。因みに、祖父ちゃんの息子が今のオーレリアの王様やってるアタシの父ちゃん。
でね、エレーナの祖父ちゃんの妹はオーレリアに住んでるの。旦那ちゃんがいい年してベッタベタの甘々でさ、子供が2人いて孫が3人いるの。
アタシも3人もエレーナの『はとこ』とか『またいとこ』ってやつ。その3人はエレーナちゃんと年が近いから一緒に遊べると思うんだ~。
まあ、その内の2人は双子で見分けがつかなくて、いたずらっ子で手がかかるけど、やられたらビシッてやり返せばいいからね」
(年が近い⋯⋯子供なら本を読むとかかしら。ちょっと自信がないかも」
「でしたら先代のビルワーツ侯爵夫妻が亡くなられた騒動はお詳しいですか?」
エレーナから次々に渡されるメモを順番に並べ、ルーナは数字や名前を一覧表に書き込んでは溜め息をついていた。
「独立するきっかけになったから、一通りは知ってるかな~。我儘坊やが王位簒奪狙ってて、その煽りを受けたレイモンド様とセレナ様が敵に殺られたんだよね」
「はい、その時簒奪を狙ったのは現王ランドルフ。彼には王家の血は流れていなくて、廃太子されそうになってクーデターを起こしたんです。ついでに言えば、ランドルフ王自身も托卵されかけましたの。
それを証明したのはオーレリアの魔導具なんです」
「ええっ! 我儘坊やじゃなくて托卵坊やが托卵されかけたって⋯⋯アルムヘイルの下半身事情は乱れてるね~。ん? じゃあ、この間立太子したなんとかって子も王家の血が流れてないんだ」
チラッと横目で見るとエレーナは既に次の帳簿に取り掛かり、ルーナの目の前にはメモが山になっている。
「恐らくエドワード第二王子ですね。ランドルフ王とジュリエッタ王妃の間に生まれた王子です。その兄に当たるタイラー第一王子は、亡くなられたキャロライン王妃との間にお生まれになられたので、王家の血を引いておられます」
ランドルフが簒奪を計画したのは、前国王マクベスがランドルフを廃太子し、タイラー第一王子を立太子させようとしたから。
「そのせいでアルムヘイル王国が潰れかけてるんだから、『ざまぁ』だよ。今、あの国はボロボロだからね」
「ランドルフ王が頼りにしていたクレベルン王国は、ビルワーツの資産を奪えなかったので手を引きましたし、長年支援していた皇帝が逝去され、新皇帝は一切の支援をお切りになられましたから」
ルーナがどんな反応をするか知る為に、公になっていない情報も含めてみたが、詮索するような言葉も表情も感じられなかった、
「砂上の楼閣だねえ、アルムヘイル潰れちゃえ~って」
アルムヘイルのランドルフ現国王が王太子の時代に、王位簒奪を狙い手を組んだのが、クレベルン王国と連合王国内の、ハザラスやセルビアスを含む4つの戦闘部族。
セルビアスは魔女狩りから逃れた者達の子孫と、棲家を失った呪術師や呪医などが集い、ひとつの部族になった比較的小さな集団だが、武力に付随して薬草と呪術を使うのが大きな特徴。
魔女と呼ばれた民間療法の担い手達から受け継がれた薬草の知識と、呪術師が行うと言う呪詛や天文学を基礎とした占い⋯⋯毒薬草で武力の強化を行い、占いで戦略を決め、呪詛で敵の弱体化を狙うと言われている。
(セルビアスの信念は『世界の理念を覆す』⋯⋯だったかしら。魔女は迫害され呪術は恐れられ、魔法は喜ばれる⋯⋯それが許せないのよね)
彼等は魔除けの意味を持つアンクレットを身に着けて部族への服従を示し、素材や装飾によって部族内の立場を明確に示している。
ループ前の記憶では、表向きは穏健派に転向したと宣言したセルビアスの部族長の末娘が、連合王国の公妾になっていた。
『この国が困窮しはじめたのは、ビルワーツ公国とオーレリア国が手を結んだせいですわ』
『オーレリアの魔法頼りでのさばるビルワーツは脆弱な愚か者達の集まり⋯⋯虎の威を借る狐でしかありませんわ』
『オーレリアが口を挟む前に叩いてしまえば、簡単に落ちますとも』
ビルワーツ公国との通商条約を結ぼうと画策していた王の耳元で囁き続け、その裏では公国に入り込んだセルビアスの兵が、軍や宮殿に薬草を持ち込んで弱体化させ、一部の官僚や兵士を洗脳していた。
資料に『呪術の効果か⋯⋯公国は建国王逝去の頃より、様々な不運に見舞われた』と書いてあったが、オーレリアが参戦を決めるまで、苦戦を強いられたのは事実だった。
(セルビアスの話をするべきか、様子を見るべきか⋯⋯もし本当に戦争が起きるなら話すべきだけど、今回の落馬事件のようになるのは困るわ)
連合王国の侵攻は、オーレリアの参戦表明であっという間に終結した。
火薬が発見されてから兵器はどんどん進化し威力や範囲は上がっているが、広範囲攻撃魔法を連発されればひとたまりもない。オーレリアは攻撃や防御に特化した魔導士が国防に携わり、生活魔法に特化した魔導士と魔導具士が国内の経済活動の中心になっている。
連合王国やセルビアスだけでなく、他の国もオーレリアの魔法を恐れているのは、魔導士の数だけでなく練度の高さと種類の多さにもある。
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