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第四章
21.ミセス・メイベル登場
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「おっ、もう起きてるんだぁ。早起きさんだねえ。ちゃんと栄養取らなきゃだからさ、食堂に行こうね」
元気いっぱいのルーナに連れられて、初めて食堂に足を踏み入れたエレーナは、グレーのドレスを着た細身の女性が立っているのに気付いて足を止めた。
年齢はジョーンズに近いだろう。後ろで一つの固いシニヨンにまとめた髪と、すっきりと伸びた背や揃えられた両手に、長年上級使用人を勤めているとすぐに分かる気品がある。
壁際にはメイドとフットマンが並んで立っているが、背をまっすぐに伸ばし、見た事もないほど緊張していた。
「エレーナ様、おはようございます。ビルワーツ侯爵家でミセス・ブラッツの前に家政婦長をしておりましたケイト・メイベルと申します。
お久しぶりでございますと申し上げたいところでございますが、恐らくエレーナ様は覚えておいでにはならないのではないかと存じます。長い間、何も気付かずにおりました事、心よりお詫び申し上げます」
ミセス・メイベルが深々と頭を下げると、壁際に立つメイド達やジェイクも一斉に頭を下げた。
(流石だわ、多分侯爵邸についてほんの数時間だと思うけど、既にメイドやフットマンを従えている)
日頃見かけていた、ダラダラしたり欠伸をしたり、お喋りに興じる姿からは想像もできない使用人等の仕草や表情で、エレーナの頭の中に『やればできる子』と言う文字が浮かんだ。
(お生まれになられた時より益々、セレナ様に似ておられる⋯⋯)
エレーナを見ながら、ミセス・メイベルがそんな事を考えているとも思わず。
「ミセス・メイベルは夜明け前に突然やって来たの。んで、暫く? 侯爵家で家政婦長をしてくれるって」
隣に並んでいたルーナに頭を撫でられたエレーナは、気付かないまま警戒して強張っていた背中の力が、ふっと抜けるのを感じた。
「昨夜ジョーンズより話を聞き、準備してまいりました。侯爵邸で務めるお許しをいただけますでしょうか?」
ミセス・メイベルの目に、怒りの炎がチラついていたのは気のせいではない。ジョーンズから話を聞いたミセス・メイベルは初めて人を殴りつけたのだから。
(1発で済ませたのは失敗でしたわ。まさかこれほど痩せ細っておられるなんて⋯⋯なのに、アメリア様の事故に関わっているはずだと言い募って責め立てたなど、決して許せません!)
(この人がいれば、侯爵家は大丈夫そうね。そのまま働くにしても、次の候補を見つけるまでにしても、ジェイクの指導と補佐ができそう)
「わたくしに物申す資格があるかは疑問ですが、ジェイクと共に侯爵家の現在の使用人についてや、今後の侯爵家の雇用について話し合ってください」
「畏まりました。エレーナ様のお許しをいただき感謝と共に、誠心誠意努めさせていただく事をお誓いいたします。
ルーナ様にも心からお礼申し上げます」
深々と頭を下げたミセス・メイベルはまさに家政婦長の鑑とでも言うべき⋯⋯鍵を腰につけているにも関わらず、全く音がしなかった。
「ただ、ひとつ⋯⋯わたくしはアメリア様をお母様とは認識していませんし、この屋敷を我が家だと思えた事は一度もありません。
アメリア様は、国と民の為に献身しておられる偉大なる建国王であり、心優しい当主⋯⋯わたくしにとってそれ以外ではありえず、今後も変わることはありません。
ミセス・メイベルが、今後に何を期待しようとも、使用人達はアメリア様とお会いしたことさえないわたくしに、仕える事など望んでもいないはずです。
わたくしの言動を、ミセス・メイベルやこの屋敷の使用人達が『アメリア様に対し不敬』と思ったとしても抗議も訂正もする事はありませんし、わたくしの考えを押し付けるつもりもありません。ここにいる間は適切な距離をあけ、お互いの考えを尊重し合えればと思っています。
わたくしは近々侯爵家を離れ、ビルワーツ侯爵家から離籍いたします。侯爵家に対し今現在もなんら権利を持っていないと認識していますし、将来もまた同じ。
わたくしの指示に従う理由も指示を仰ぐ理由もなく、わたくしに忖度する必要もございません。
使用人達には、今まで同様に放置で構わないけれど、失礼な言動は控えるようにとだけお伝えください」
エレーナが言葉を発するたびに、壁際の使用人達の顔が不快そうに歪む。
(彼等にどう思われようと、別に構わないわ。怯えて石になっていた、昔のわたくしは卒業したのだから)
「畏まりました。エレーナ様のお言葉は至極ごもっともでございます。一度だけ本心を口にする無礼をお許しください。
アメリア様のなさりようは、人の子の親として許されるものではございませんでした。アメリア様にどんな理由があろうともでございます。
エレーナ様はアメリア様と同じく、この屋敷で敬われるべきお方であり、紛れもない後継者であらせられます。
ミセス・ブラッツ以下、使用人達の言動は許されるものではなく、厳罰に処すと決めてここに参りました。
そして、不安を抱きながらも何もせずにおりましたわたくしも同罪。いえ、不安を抱いていただけに、罪はより重いと思っており、このような状況になる前に、手を打たなかった愚かしさに恥いるばかりでございます。
屋敷内で起きていたことを知り、エレーナ様が侯爵家に見切りをつけられたのは、当然だと思っております。わたくし達の行いが代々続いていたビルワーツの血を、この領地から去らせる理由になった事、決して忘れてはならないと肝に銘じて参ります」
長く続いたビルワーツ侯爵家の統治で栄え、安全で豊かな暮らしを享受していた事を忘れていた使用人達は、いずれ自分達のしでかした罪の重さを自覚することになるかもしれない。
「この豊かな地を狙うアルムヘイルや、その他の国からの脅威に晒されたことは一度もなく、平和と安寧の中で暮らしていたのは、ビルワーツ侯爵家の方々のお陰でございました」
「歴代のビルワーツ侯爵家の方々の偉業は、歴史書で読んでおりますが、わたくしとは別世界の方々ですわ。わたくしは過去の当主様方やアメリア様のような叡智も才覚もない、ただの凡夫にすぎません。
いずれアメリア様がお認めになられ、皆からも尊敬される後継者をお立てになることでしょう」
ミセス・ブラッツを雇い入れる前に不安を感じたのはミセス・メイベルだけだった。その時にもっと強く意見を言っていれば、その後屋敷の様子を一度でも確認にきていれば⋯⋯。
(5歳とは思えない痩せ細った小さな身体。お顔の色も優れず、髪やお肌のご様子も⋯⋯。お召し物が擦り切れたチュニックと、薄汚れて繕った跡のある部屋ばきだなどあり得ません。
一度でもお会いしようとしていれば、すぐに気付けましたのに)
「ここにいらっしゃる間だけは、エレーナ様を当主様のご令嬢として、侯爵家嫡子としてお仕えする事をお許しください」
「⋯⋯分かりました。無理のないように」
(家政婦長として信用できるならそれで十分。わたくしに対して気を使う必要はないし、わたくしも気にするつもりはないのに⋯⋯そんな事に一喜一憂している時間などないかもしれない)
ループ後のニールが何を考え何をしたのか、そしてこれから何をしようとしているのか。
ループ前のニールがエレーナに恨みを抱いていたのは間違いないが、エレーナをエドワードの婚約者にした理由は分かっていない。
連合王国内の動向とセルビアス⋯⋯調べるべきか、誰かに伝えるべきか。
(屋敷の金庫の中の遺言状がどうなっているのかも調べておきたいし)
ミセス・メイベルが合図すると、真顔で会話を聞いていたジェイクがエレーナに近付いてきた。
10人以上でも利用できそうな大きなダイニングテーブルには、2人分の朝食の準備ができており、その一つにルーナが腰掛け、エレーナ用の席には硬いクッションが置かれていた。
「新しい椅子を準備致しており、今日のお昼には間に合う予定でございます。今朝はご不便をおかけいたしますこと、大変申し訳ございません」
ジェイクが小さく頭を下げてからはじめの一皿を給仕し、エレーナの左後ろに立つと、フットマンが次の皿を準備しはじめた。
ルーナに給仕するのはメイド達で、エレーナの給仕がフットマンなのは、恐らくメイド達に虐められていたエレーナへの忖度だろう。誰がどのような態度を取っていたか判明していない今は、できる限りメイドを近付けないつもりのように見受けられた。
黴が生えたパンは料理長の差金だったに違いないが、踏み潰した形跡やスープに浮いていたゴミを入れたのが、誰かは分からないから。
(口に入るものだから、気を遣ってもらえたのは助かるわ⋯⋯そう言えば、こういう時に《鑑定》⋯⋯あ、できた! となるとカトラリーも? 誰にも気づかれていないし、こんな風に説明が出るなら今後は安心だわ)
料理名以外に使用している食材も表示され、カトラリーには『毒・バイケイソウ・嘔吐及び腹痛』と表示されていた。
「ジェイク、カトラリーを交換してくれるかしら」
少し後ろに顔を向けジェイクに声をかけると、メイドの一人が急いで駆け寄り、並んでいるカトラリーに手を伸ばした。
「ちょーっと待った! そんなに急ぐことはないんじゃないかしらぁ。昨日に比べて随分と機敏な動きだったけど、なんでなのか、是非とも説明してくれるかしら?」
エレーナの左後ろにはジェイクがおり、メイドよりフットマンの方がエレーナの近くにいたのだから、メイドがカトラリーを交換しに走る必要はない。
「あ、あの⋯⋯て、手が空いておりましたし。こ、こういったことは、その⋯⋯慣れてると言いますか」
元気いっぱいのルーナに連れられて、初めて食堂に足を踏み入れたエレーナは、グレーのドレスを着た細身の女性が立っているのに気付いて足を止めた。
年齢はジョーンズに近いだろう。後ろで一つの固いシニヨンにまとめた髪と、すっきりと伸びた背や揃えられた両手に、長年上級使用人を勤めているとすぐに分かる気品がある。
壁際にはメイドとフットマンが並んで立っているが、背をまっすぐに伸ばし、見た事もないほど緊張していた。
「エレーナ様、おはようございます。ビルワーツ侯爵家でミセス・ブラッツの前に家政婦長をしておりましたケイト・メイベルと申します。
お久しぶりでございますと申し上げたいところでございますが、恐らくエレーナ様は覚えておいでにはならないのではないかと存じます。長い間、何も気付かずにおりました事、心よりお詫び申し上げます」
ミセス・メイベルが深々と頭を下げると、壁際に立つメイド達やジェイクも一斉に頭を下げた。
(流石だわ、多分侯爵邸についてほんの数時間だと思うけど、既にメイドやフットマンを従えている)
日頃見かけていた、ダラダラしたり欠伸をしたり、お喋りに興じる姿からは想像もできない使用人等の仕草や表情で、エレーナの頭の中に『やればできる子』と言う文字が浮かんだ。
(お生まれになられた時より益々、セレナ様に似ておられる⋯⋯)
エレーナを見ながら、ミセス・メイベルがそんな事を考えているとも思わず。
「ミセス・メイベルは夜明け前に突然やって来たの。んで、暫く? 侯爵家で家政婦長をしてくれるって」
隣に並んでいたルーナに頭を撫でられたエレーナは、気付かないまま警戒して強張っていた背中の力が、ふっと抜けるのを感じた。
「昨夜ジョーンズより話を聞き、準備してまいりました。侯爵邸で務めるお許しをいただけますでしょうか?」
ミセス・メイベルの目に、怒りの炎がチラついていたのは気のせいではない。ジョーンズから話を聞いたミセス・メイベルは初めて人を殴りつけたのだから。
(1発で済ませたのは失敗でしたわ。まさかこれほど痩せ細っておられるなんて⋯⋯なのに、アメリア様の事故に関わっているはずだと言い募って責め立てたなど、決して許せません!)
(この人がいれば、侯爵家は大丈夫そうね。そのまま働くにしても、次の候補を見つけるまでにしても、ジェイクの指導と補佐ができそう)
「わたくしに物申す資格があるかは疑問ですが、ジェイクと共に侯爵家の現在の使用人についてや、今後の侯爵家の雇用について話し合ってください」
「畏まりました。エレーナ様のお許しをいただき感謝と共に、誠心誠意努めさせていただく事をお誓いいたします。
ルーナ様にも心からお礼申し上げます」
深々と頭を下げたミセス・メイベルはまさに家政婦長の鑑とでも言うべき⋯⋯鍵を腰につけているにも関わらず、全く音がしなかった。
「ただ、ひとつ⋯⋯わたくしはアメリア様をお母様とは認識していませんし、この屋敷を我が家だと思えた事は一度もありません。
アメリア様は、国と民の為に献身しておられる偉大なる建国王であり、心優しい当主⋯⋯わたくしにとってそれ以外ではありえず、今後も変わることはありません。
ミセス・メイベルが、今後に何を期待しようとも、使用人達はアメリア様とお会いしたことさえないわたくしに、仕える事など望んでもいないはずです。
わたくしの言動を、ミセス・メイベルやこの屋敷の使用人達が『アメリア様に対し不敬』と思ったとしても抗議も訂正もする事はありませんし、わたくしの考えを押し付けるつもりもありません。ここにいる間は適切な距離をあけ、お互いの考えを尊重し合えればと思っています。
わたくしは近々侯爵家を離れ、ビルワーツ侯爵家から離籍いたします。侯爵家に対し今現在もなんら権利を持っていないと認識していますし、将来もまた同じ。
わたくしの指示に従う理由も指示を仰ぐ理由もなく、わたくしに忖度する必要もございません。
使用人達には、今まで同様に放置で構わないけれど、失礼な言動は控えるようにとだけお伝えください」
エレーナが言葉を発するたびに、壁際の使用人達の顔が不快そうに歪む。
(彼等にどう思われようと、別に構わないわ。怯えて石になっていた、昔のわたくしは卒業したのだから)
「畏まりました。エレーナ様のお言葉は至極ごもっともでございます。一度だけ本心を口にする無礼をお許しください。
アメリア様のなさりようは、人の子の親として許されるものではございませんでした。アメリア様にどんな理由があろうともでございます。
エレーナ様はアメリア様と同じく、この屋敷で敬われるべきお方であり、紛れもない後継者であらせられます。
ミセス・ブラッツ以下、使用人達の言動は許されるものではなく、厳罰に処すと決めてここに参りました。
そして、不安を抱きながらも何もせずにおりましたわたくしも同罪。いえ、不安を抱いていただけに、罪はより重いと思っており、このような状況になる前に、手を打たなかった愚かしさに恥いるばかりでございます。
屋敷内で起きていたことを知り、エレーナ様が侯爵家に見切りをつけられたのは、当然だと思っております。わたくし達の行いが代々続いていたビルワーツの血を、この領地から去らせる理由になった事、決して忘れてはならないと肝に銘じて参ります」
長く続いたビルワーツ侯爵家の統治で栄え、安全で豊かな暮らしを享受していた事を忘れていた使用人達は、いずれ自分達のしでかした罪の重さを自覚することになるかもしれない。
「この豊かな地を狙うアルムヘイルや、その他の国からの脅威に晒されたことは一度もなく、平和と安寧の中で暮らしていたのは、ビルワーツ侯爵家の方々のお陰でございました」
「歴代のビルワーツ侯爵家の方々の偉業は、歴史書で読んでおりますが、わたくしとは別世界の方々ですわ。わたくしは過去の当主様方やアメリア様のような叡智も才覚もない、ただの凡夫にすぎません。
いずれアメリア様がお認めになられ、皆からも尊敬される後継者をお立てになることでしょう」
ミセス・ブラッツを雇い入れる前に不安を感じたのはミセス・メイベルだけだった。その時にもっと強く意見を言っていれば、その後屋敷の様子を一度でも確認にきていれば⋯⋯。
(5歳とは思えない痩せ細った小さな身体。お顔の色も優れず、髪やお肌のご様子も⋯⋯。お召し物が擦り切れたチュニックと、薄汚れて繕った跡のある部屋ばきだなどあり得ません。
一度でもお会いしようとしていれば、すぐに気付けましたのに)
「ここにいらっしゃる間だけは、エレーナ様を当主様のご令嬢として、侯爵家嫡子としてお仕えする事をお許しください」
「⋯⋯分かりました。無理のないように」
(家政婦長として信用できるならそれで十分。わたくしに対して気を使う必要はないし、わたくしも気にするつもりはないのに⋯⋯そんな事に一喜一憂している時間などないかもしれない)
ループ後のニールが何を考え何をしたのか、そしてこれから何をしようとしているのか。
ループ前のニールがエレーナに恨みを抱いていたのは間違いないが、エレーナをエドワードの婚約者にした理由は分かっていない。
連合王国内の動向とセルビアス⋯⋯調べるべきか、誰かに伝えるべきか。
(屋敷の金庫の中の遺言状がどうなっているのかも調べておきたいし)
ミセス・メイベルが合図すると、真顔で会話を聞いていたジェイクがエレーナに近付いてきた。
10人以上でも利用できそうな大きなダイニングテーブルには、2人分の朝食の準備ができており、その一つにルーナが腰掛け、エレーナ用の席には硬いクッションが置かれていた。
「新しい椅子を準備致しており、今日のお昼には間に合う予定でございます。今朝はご不便をおかけいたしますこと、大変申し訳ございません」
ジェイクが小さく頭を下げてからはじめの一皿を給仕し、エレーナの左後ろに立つと、フットマンが次の皿を準備しはじめた。
ルーナに給仕するのはメイド達で、エレーナの給仕がフットマンなのは、恐らくメイド達に虐められていたエレーナへの忖度だろう。誰がどのような態度を取っていたか判明していない今は、できる限りメイドを近付けないつもりのように見受けられた。
黴が生えたパンは料理長の差金だったに違いないが、踏み潰した形跡やスープに浮いていたゴミを入れたのが、誰かは分からないから。
(口に入るものだから、気を遣ってもらえたのは助かるわ⋯⋯そう言えば、こういう時に《鑑定》⋯⋯あ、できた! となるとカトラリーも? 誰にも気づかれていないし、こんな風に説明が出るなら今後は安心だわ)
料理名以外に使用している食材も表示され、カトラリーには『毒・バイケイソウ・嘔吐及び腹痛』と表示されていた。
「ジェイク、カトラリーを交換してくれるかしら」
少し後ろに顔を向けジェイクに声をかけると、メイドの一人が急いで駆け寄り、並んでいるカトラリーに手を伸ばした。
「ちょーっと待った! そんなに急ぐことはないんじゃないかしらぁ。昨日に比べて随分と機敏な動きだったけど、なんでなのか、是非とも説明してくれるかしら?」
エレーナの左後ろにはジェイクがおり、メイドよりフットマンの方がエレーナの近くにいたのだから、メイドがカトラリーを交換しに走る必要はない。
「あ、あの⋯⋯て、手が空いておりましたし。こ、こういったことは、その⋯⋯慣れてると言いますか」
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