【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

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第一章 お花畑の作り方

08.完全勝利したビルワーツ侯爵

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 この出来事の後ビルワーツ侯爵家が離反を取りやめた為、侯爵家が膝を折ったかに見えたが⋯⋯。

 王国がサインした和解内容を知った者達は絶句した。

『侯爵家は離反しなかったが、この国は終わったんじゃないか?』

『侯爵家は帝国より恐ろしい』

1 理由の如何に問わず、貸付の停止
2 貸付金の返済は毎年の納税と相殺
3 式典等への参加不参加は不問(永代)
4 議会への参加不参加は不問(永代)
5 王命に対する拒否権(永代)
6 ビルワーツ侯爵家及び侯爵領への不干渉・不可侵(永代)

 王家と完全に距離を置いたビルワーツ侯爵家は、王国側の全ての街道に関所を設置し、通行税の増額と検問を強化。騎士団による定期巡回も強化した。

 貴族であれば必ず出席しなければならない生誕祭や、開国記念式典など全てを欠席し、たまに顔を出せば会場中が静まり返る。



 エロイーズのお強請りで、帝国兵を送り込んだ証拠を突きつけられても罪を認めない皇帝と、罪を認めて謝罪しろと叫ぶ第一皇子は部屋が半壊するほどの大喧嘩をやらかした。

『帝国に楯突く田舎領主など捻り潰してやる! 兵を纏めて出陣じゃ!!』

『金貨3枚などと何を考えておられたのか! しかも帝国兵をビルワーツ侯爵領に送り込み狼藉を働かせるなど、帝国兵は破落戸の集団かと、他国からも蔑まれております!!
我が国の尊厳と娘の我儘のどちらが大切か、何故お分かりになられなかったのですか!?」

『煩い煩い煩ーい! 田舎貴族など、潰してしまえ! 帝国に刃向かった不届者に鉄槌を下したと広めるのじゃ!』

『ビルワーツ侯爵家をただの田舎領主だなどと、何を見ておられるのか! ビルワーツをこれ以上刺激すれば、魔法大国のオーレリアが動きます。我が国の軍を全て動員しても彼の国の魔導士達には勝てません!!
オーレリア以外にもビルワーツ侯爵家と懇意にしている国は多数、その全てと戦うおつもりですか!!』

 皇帝が支払いを渋っている間に国際裁判所の判決が出たが、当然の事ながらエロイーズと皇帝の完全敗訴。帝国は大幅に増額された慰謝料や賠償金を支払う羽目になった。

『だからさっさと払えと言ったのです! 証拠や証人を押さえられているのに勝てるわけがないと、何故分からなかったのですか』

『エロイーズの尻拭いで国を傾けるおつもりですか? いかに力のある帝国でも湯水のように使う金などありません。
エロイーズは他国の妃になり、帝国の皇女としての予算は組まれなくなりました。今後も尻拭いをされるのであれば、皇帝の個人資産からお出しいただくしかありません』

 その結果⋯⋯。

1 ビルワーツ侯爵領で捕縛された賊の引き渡しと慰謝料
2 令嬢に対する名誉毀損の慰謝料
3 破損した家屋・家財等の損害賠償及び慰謝料
4 暴行その他の被害者に対する治療費及び慰謝料
5 賊の討伐及び領内警備等に係る諸費用
6 ビルワーツ侯爵家及び侯爵領への不干渉・不可侵(永代)



『我儘放題に育ったエロイーズを、強引に他国に嫁がせたのが間違いだったのです。それを止めきれなかった私にも責任がありますが、いい加減目を覚ましてください。
ビルワーツ侯爵家は口にしませんでしたが、婚約破棄されたリディア嬢に対し、誠意ある謝罪と共に慰謝料も支払わねばなりません。
武力で全てを従える時代は、既に終わりを迎えています。帝国であっても他国の意思を尊重し、友好な関係を築いていかなければ生き残れない。
今回の醜聞で同盟を保留にしてきた国や、関税の見直しを伝えてきた国もありますが、当然の事だと思います。
王太子との婚約破棄の慰謝料が、金貨3枚だなどあり得ません。その上、正規の兵士を送り込んで破壊活動など⋯⋯。これからは帝国の為、賢明なご判断をお願い致します。
二度とビルワーツ侯爵家には関わらないとお約束下さい』



 その後、謝罪の為にビルワーツ侯爵領を訪れたいと言う、第一皇子からの手紙が届いたが、侯爵の返事は⋯⋯。

『我が妹の心情をご理解いただけるならば、今後の関わりは差し控えていただきたくお願い申し上げます。
領民もいまだ不安な夜を過ごしており、焼き払われ失われた畑や家屋に涙する者や、負傷し療養している者もおります。他国からのご使者に恐れを抱く者がいないとも限らず、領民の安寧を守る為、武器を所持した騎士団員の増強及び警戒を強めている状況でございます。
今はただ以前と変わらぬ安穏な日々となるよう心を配る日々を過ごしております事、ご理解いただければ幸いに存じます』

 丁寧な言葉で綴られた返事を要約すると『絶対に来るんじゃねえ。怪しげな奴には武力行使を許可してるからな!』と言ったところか。

 レイモンド強し! 領主の鏡、兄ちゃんの見本。

 謝罪を受け入れてもらえた暁には『ビルワーツ侯爵家との縁を結べるかも』と第一皇子が思っていたとしたら、落胆して膝をついていたかもしれない。



 帝国との繋がりを得て、皮算用を決め込んでいた者達は真っ青になって騒ぎ立てた。

『ここまで大きな騒ぎになっては、帝国から見捨てられるかも』

『今からでもビルワーツ侯爵家に阿った方が得策』

『帝国から支援を切られる可能性はないのか』

 アルムヘイル王国は、ビルワーツ侯爵領の納税分が借金の支払いと相殺された為、税収が半減。周りからの白い目に耐えられなくなったエロイーズは、帝国への支援金増額を願い出たが、その代わりとして帝国から持ち出した宝石類の一部返却を求められたと言う。

 アルムヘイル王国とザンダリス帝国は、愚かな婚約破棄騒ぎとその結末を知った各国から嘲笑の的になり、国際会議に出席するたびに冷ややかな視線を浴び、外交に支障をきたすようになった。



 帝国で我儘放題で暮らしていたエロイーズの過去が王国の社交界に広まったのは、ビルワーツ侯爵家の仕業だろう。

『成人前からありとあらゆる男性と⋯⋯』

『気に入れば、既婚者でも婚約者がいても⋯⋯』

『欲しい物があれば暴力や恐喝も平気で行う』

『気に入らない事があれば暴言や暴力でねじ伏せる癖がある』

『王の権力を振り翳すのが得意技』

 それらの噂が蔓延する中でも、マクベスと違う髪色や目の色の子供を産んだエロイーズは、ある意味あっぱれと言えるのかもしれない。



 商売の大半を隣国と行うようになったビルワーツ侯爵家は、王家が貸付金の支払いを終わらせた時に、王国を離反するだろうと噂されている。

 エロイーズの強引な輿入れについて『国を救うためには仕方なかった』『帝国からの申し入れは断れない』と言っていた貴族も、日和見主義ではいられなくなった。なぜなら⋯⋯。

『今度、王太子妃や帝国にやられるのは自分かもしれない』



 使用人達が自室に戻り、レイモンドビルワーツ侯爵セレナビルワーツ侯爵夫人はようやく落ち着いてきたお祝いをしようと、ワインを準備してソファに腰掛けた。

「お疲れ様、思ったより長くなって驚いたわ」

「皇帝があれほど愚かだとは思わず、びっくりだよ」

「第一皇子の事だけど、断って良かったの?」

「今はまだ帝国内の第一皇子の立場はかなり危ういんだ。皇帝派や第二皇子派から『ビルワーツは第一皇子派』だなんて勘違いされては、後々面倒に巻き込まれる可能性が高いからね。
関わりを持つとしたら⋯⋯第一皇子が皇帝になるまでに自身の派閥の手綱をしっかりと握って、第二皇子派を押さえ込めた時だろうね」

 武力重視の皇帝と、外交重視の第一皇子は昔から水と油のように相性が悪く、第一皇子は25歳になった今も皇太子に任命されていない。第一皇子の派閥内ではそれを不安に思う者も出始めており、統率が取れているとは言えない状況になっている。

 それに対し、第二皇子はタカ派と呼ばれる皇帝寄りの考えを全面に打ち出し、徐々に派閥を広げはじめた。

「第二皇子の場合、口先だけのタカ派だからメッキが剥がれたらおしまいなんだが、こういう奴が一番タチが悪いと言うか危険なんだ」

 時勢を読むのが聡いと言えば聞こえは良いが、都合が悪くなると簡単に意見を翻すので、下手に関わると寝首を掻かれる。

「我が家にとって帝国との商いに魅力がないから、無理して交流する必要はないものね」

 帝国のある西の方へは王国を横断しなければ輸出も輸入もできないが、王国内は街道の整備が全くと言っていいほど出来ていない上に犯罪率も高い。輸送中の危険や高額な輸送費用を考えると、ビルワーツ領と隣接する国や、魔法大国のオーレリアと取引する方が効率がいい。

お婆様外祖母のお陰で転移魔法が使えるのはラッキーだよな。本人に知られると鼻高々で自慢をはじめるから言わないけど」

 レイモンドとリディアの母は魔法大国オーレリアの出身。レイモンド達は魔法など使えないが、外祖母達はオーレリアでもトップクラスの魔導士で、突然転移魔法で現れては『遊びに来ちゃった』と言って驚かすのが趣味の困ったお婆ちゃま。

「魔法と言えば⋯⋯リディアのことを考えると、帝国なんか潰して下さいって言いたくなっちゃう」

お婆様外祖母の前で言ったら、速攻で飛び出して行きそうで、その台詞は怖すぎる」

「それも良いかも⋯⋯早く元気になって欲しいわ」

「きっと時間が癒してくれるさ。最近は奴からきた手紙を読んでるみたいだし⋯⋯」

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