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第二章 育ったお花から採れた種
06.絶好調のアメリアとマクベス国王
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「恋人や愛人の数が多すぎて、集計に手間取っているうちに夜会の日を迎えた(嘘だけど)事は私の手落ちではありますが、王家の方々が気楽に契約を破棄されるのは、周知の事実でございますので、調査せずにいられなかった心情はご理解いただけるかと。
しかも破棄だけでなく負担は全て相手任せ、ご自身達に被害が出れば無理矢理でも相手に責を問う。ありもしない瑕疵を作りあげて、ご自身の行いから世間の目を逸らそうとされた事もおありです。
そのような過去の経験や、手元の情報から鑑みて、危険予測した次第です。ダンビール子爵家や子爵令嬢と関わりがないことは、調べていただければお分かりいただけるはずです。
夜会の費用が増えるたびに、王宮に出向き確認いたしましたが、請求額は増えるばかり。ほんの数ヶ月の間に王妃殿下のドレスは67着、メアリー様29着、マクベス国王陛下3着。因みに王太子殿下は男性用54着、女性用に至っては81着でした。宝石類に関しては数が多すぎて、宝飾店ごとの合計額でご報告させていただいた方が宜しいかと。
私には招待状も届いておりませんし、参加もしておりませんが、王家主催や王妃殿下主催のお茶会や夜会の費用は、茶葉の代金から手土産代までビルワーツ侯爵家に請求がきております。
新しく作られた馬車とそれ専用の馬。王妃殿下と王太子殿下及び王女殿下の、私室の改装と家具一式。王宮の侍女から下働きまで制服を一新し、それに加えて使用人の給与も請求がきております。騎士団には制服と防具や武器と馬具を配布。
離宮と別邸の改修費用と、夜会で使われた大広間のシャンデリアや天井画の請求は、数年前から支払われていなかったものだそうで、利息までついておりました。
その他にも、日々王宮に納入される食材・アルコール類・洗剤に至るまで、全ての請求が侯爵家に届いております。疑問に思いお伺いしたところ、『婚姻前契約に則り、王家及び王宮において発生した経費は全て、婚約予定となった為に発生したと見做す』との返答を文書にていただいており、ご署名は王妃殿下と法務大臣。
以前より、王妃殿下のビルワーツ侯爵家に対する言動に、不安を抱いてはおりましたが、懸念は日に日に強まるばかりでございます。
先程、国を潰すつもりかと言うお言葉がございましたが、婚姻前契約書の内容を無視するおつもりであるならば、王家は今度こそ、なんとしてでも、ビルワーツ侯爵家を潰すおつもりで、今回の王命を出されたのだと思わざるを得ません。
正直申し上げますと⋯⋯このような状況でございましたので、ランドルフ王太子殿下の行動には余程のお覚悟がおありになり、それをお止めにならず演奏を望まれた王妃殿下のお心の広さに感動している次第でございます」
「⋯⋯陛下。アメリア嬢の申される事に間違いはございません。エロイーズ王妃殿下がサインをされる前に確認をしたのは法務大臣であり、連名でサインをしておられます。
費用負担についての書類をお持ちになられた時アメリア嬢からお聞きして驚き、エロイーズ王妃に何度も確認をさせていただきました。
費用を抑えるべきだと、繰り返し進言致しましたが『ビルワーツは払わざるを得ないのだから気にすることはない。少しでも多く資産を使ってやる予定だ』と仰せになられました」
財務大臣は、アメリアが請求書の内訳について問い合わせていた相手。アメリアは誰が何を購入したのか、サインしたのは誰なのかを調べ上げた上で、財務大臣に確認をとった。
ビルワーツ侯爵家が払うべきものなのか、エロイーズに最終確認をとったのも財務大臣。
断れなかったと、一国の大臣が何度も頭を下げるのを申し訳なく思いながら、王宮を後にした回数は数えきれない。
「先程は申し訳なかった。詳しい事情も知らず、不確かな情報で非難してしまったのは我が不徳の致すところ⋯⋯で、先程のアメリア嬢の言葉で少し気になったのだが、お聞きしても宜しいだろうか」
「勿論です。多分、どんな内容でもお答えできると思います」
「懸念が強まったと言うのは⋯⋯その⋯⋯以前から王家に潰されそうだと思っていたと言うことかな?」
ビルワーツ侯爵家とあまり親しくない貴族であれば、当然思う疑問だろう。
マクベス国王が王太子の時代に、婚約破棄騒動があった事は知れ渡っているが、それ以外の事は知らない人もいる。
ビルワーツ侯爵家が王家と関わりを持たず、領地に引き篭もっているのを『いつまでも根に持って』と言う輩もいるほど。
「デクスター閣下、おやめ下さい! アメリア嬢、今の質問は聞かなかった事にしなさい。
この場で不敬罪に問われずとも、後々は分かりませんぞ! 子供の言葉だとしても限度があると知「宰相、随分と慌てておるが何か身に覚えでもあるのではないか? 余が発言を許し、どのような内容であったとしても不敬には問わぬと申したのじゃ。それに、先程の其方の物言いは、脅しと取られても仕方ない言葉であったと気付いておるのか?」」
赤から青に変わっていた顔色が、白くなった宰相が大声を張り上げた。
「陛下、エロイーズ王妃殿下の名誉に関わることであった場合、皇帝のご不興を買う可能性があるとお気付きですか!?」
「勿論知っておるとも。長年に渡り皇帝の顔色を窺い、王妃の言動から目を逸らして来たからこその今じゃ。この度の問題は婚約者候補が変更になったなどと言う、生ぬるいものではない。王家とそれに関わる者達がしでかしてきたことの、集大成だと思うておる。
其方は帝国の手の者であったな。気に入らねばすぐに帝国へ帰るがよい。
王妃との密約、帝国の公爵位と領地は叶わぬ夢のようじゃが、溺愛する娘が産んだ子の父親を無碍に扱うことはあるまいて」
「な、なんのことを仰っておられるのか⋯⋯私には分かりかねます」
息を殺すようにして王宮で暮らしている国王が、まさか王妃と宰相のことを口にするとは思わなかった。
「密約の詳細を知っているとは思わなんだと顔に書いてあるぞ? 余はお飾りの王だと蚊帳の外に置かれておるが、耳も目もついておる。さて、アメリアよ。先程の質問に答える気はあるか?」
「はい。王妃殿下とそれ以外の方から、いくつもの書状がビルワーツ侯爵家当主宛に届いております。宰相殿からのものも多数保管しておりますが、アルフヘイル王国宰相としてのものと、帝国の使者としての二種類がございます。
それと同じで王国と帝国で兼任されている方は他にもおられますので『自分だけではない』と思えば宰相殿のお心が休まるかもしれません。
内容についてですが、最も多いものはビルワーツ侯爵領の鉱山を譲渡せよというもの。次に多いのは鉱山から産出された物を、全て献上せよというもの。その次は産出された宝石の売価の何割かを、支援金や寄付として差し出せというもの。金額を指定し寄付や支援を強制するもの。
領地込みで帝国に下れというものもございました。これは帝国の数人の方と、王国貴族の数人の方から届いており、王家を見限り皇帝又は第二皇子の庇護下に入るべきだと書かれておりました。
今回、王妃殿下が婚姻前契約書の草案に書いておられたのと同じで、ビルワーツ侯爵領の全ての鉱山を持参金の一部として、公妾になれというのは王家・帝国共何通も届いております。
枚数の多い順にお相手を申し上げると皇帝、第二皇子、ランドルフ王太子殿下、第一皇子。貴族の方々からは同様の条件で妻・後妻・第二夫人になれというものが届いております」
「嘘をおっしゃい! お父様がアンタみたいな小娘を公妾!? ふざけんじゃないわよ」
目を吊り上げて立ち上がったエロイーズがアメリアに向けて、折れ曲がった扇子を投げつけた。
鉄扇はヒュンっと音を立ててアメリアの横を通り過ぎたが、目も閉じず微動だにしないアメリアの胆力に、大人達が硬直した。
その程度の攻撃で、アメリアが怯えるなどあり得ない。この場で王妃を潰す覚悟できているのだから。
それに気付いた貴族は果たして何人いたのか⋯⋯。
「こ、この頭のおかしい売女を、牢へ連れて行きなさい!⋯⋯それよりも、この場で首を刎ねておしまい!」
最愛の父親が孫と同じ年頃の娘に懸想したように感じられたのか、普段の傲慢な態度をかなぐり捨てて騒ぎ立てた。
「マクベス、衛兵に命令しなさい! あの娘を処刑しろって命令を出すのよ!!」
無表情で前を向いたままのマクベス国王と、微動だにしない衛兵が命令を聞く気がないと知ったエロイーズは、爪を噛みながら『あり得ないわ、お父様はこんなガキを欲しがるはずがない』と言い続けた。
頭に血が上っているエロイーズは気付いていないが、皇帝とアメリアの年齢差を考えれば、余程特殊な性志向の持ち主でない限り、資産だけが狙いなのは間違いないはず。
「王妃を客室に!」
「な、何ですって! 誰のお陰で玉座に座らせてもらえてるかわかってるの!? わたくしにそんな口を利くなんて、今までどれだけわたくしに助けられてきたと思ってるのよ!!」
「その口を閉じておけないならば、退出させると申したはず。衛兵、王妃を私室ではなく客室に。部屋から出すでない⋯⋯必要なら拘束しても構わん」
お飾りの国王とは思えない厳しい口調で、マクベスが指示を出した。
「きゃあ! 離しなさい⋯⋯やめ⋯⋯やめて! わたくしは王妃よ、この国で最も高貴な王妃⋯⋯お父様に言いつけてやる! 帝国には今でもわたく⋯⋯」
バタン⋯⋯
癇癪を起こしたエロイーズが衛兵に連れ出され、一気に静まりかえった謁見の間にマクベスの低い声が響いた。
「アメリア、続きを申すが良い」
言葉を発するたびに覚悟が決まるのか、弱々しさが消え王の風格を漂わせていくよう。
しかも破棄だけでなく負担は全て相手任せ、ご自身達に被害が出れば無理矢理でも相手に責を問う。ありもしない瑕疵を作りあげて、ご自身の行いから世間の目を逸らそうとされた事もおありです。
そのような過去の経験や、手元の情報から鑑みて、危険予測した次第です。ダンビール子爵家や子爵令嬢と関わりがないことは、調べていただければお分かりいただけるはずです。
夜会の費用が増えるたびに、王宮に出向き確認いたしましたが、請求額は増えるばかり。ほんの数ヶ月の間に王妃殿下のドレスは67着、メアリー様29着、マクベス国王陛下3着。因みに王太子殿下は男性用54着、女性用に至っては81着でした。宝石類に関しては数が多すぎて、宝飾店ごとの合計額でご報告させていただいた方が宜しいかと。
私には招待状も届いておりませんし、参加もしておりませんが、王家主催や王妃殿下主催のお茶会や夜会の費用は、茶葉の代金から手土産代までビルワーツ侯爵家に請求がきております。
新しく作られた馬車とそれ専用の馬。王妃殿下と王太子殿下及び王女殿下の、私室の改装と家具一式。王宮の侍女から下働きまで制服を一新し、それに加えて使用人の給与も請求がきております。騎士団には制服と防具や武器と馬具を配布。
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その他にも、日々王宮に納入される食材・アルコール類・洗剤に至るまで、全ての請求が侯爵家に届いております。疑問に思いお伺いしたところ、『婚姻前契約に則り、王家及び王宮において発生した経費は全て、婚約予定となった為に発生したと見做す』との返答を文書にていただいており、ご署名は王妃殿下と法務大臣。
以前より、王妃殿下のビルワーツ侯爵家に対する言動に、不安を抱いてはおりましたが、懸念は日に日に強まるばかりでございます。
先程、国を潰すつもりかと言うお言葉がございましたが、婚姻前契約書の内容を無視するおつもりであるならば、王家は今度こそ、なんとしてでも、ビルワーツ侯爵家を潰すおつもりで、今回の王命を出されたのだと思わざるを得ません。
正直申し上げますと⋯⋯このような状況でございましたので、ランドルフ王太子殿下の行動には余程のお覚悟がおありになり、それをお止めにならず演奏を望まれた王妃殿下のお心の広さに感動している次第でございます」
「⋯⋯陛下。アメリア嬢の申される事に間違いはございません。エロイーズ王妃殿下がサインをされる前に確認をしたのは法務大臣であり、連名でサインをしておられます。
費用負担についての書類をお持ちになられた時アメリア嬢からお聞きして驚き、エロイーズ王妃に何度も確認をさせていただきました。
費用を抑えるべきだと、繰り返し進言致しましたが『ビルワーツは払わざるを得ないのだから気にすることはない。少しでも多く資産を使ってやる予定だ』と仰せになられました」
財務大臣は、アメリアが請求書の内訳について問い合わせていた相手。アメリアは誰が何を購入したのか、サインしたのは誰なのかを調べ上げた上で、財務大臣に確認をとった。
ビルワーツ侯爵家が払うべきものなのか、エロイーズに最終確認をとったのも財務大臣。
断れなかったと、一国の大臣が何度も頭を下げるのを申し訳なく思いながら、王宮を後にした回数は数えきれない。
「先程は申し訳なかった。詳しい事情も知らず、不確かな情報で非難してしまったのは我が不徳の致すところ⋯⋯で、先程のアメリア嬢の言葉で少し気になったのだが、お聞きしても宜しいだろうか」
「勿論です。多分、どんな内容でもお答えできると思います」
「懸念が強まったと言うのは⋯⋯その⋯⋯以前から王家に潰されそうだと思っていたと言うことかな?」
ビルワーツ侯爵家とあまり親しくない貴族であれば、当然思う疑問だろう。
マクベス国王が王太子の時代に、婚約破棄騒動があった事は知れ渡っているが、それ以外の事は知らない人もいる。
ビルワーツ侯爵家が王家と関わりを持たず、領地に引き篭もっているのを『いつまでも根に持って』と言う輩もいるほど。
「デクスター閣下、おやめ下さい! アメリア嬢、今の質問は聞かなかった事にしなさい。
この場で不敬罪に問われずとも、後々は分かりませんぞ! 子供の言葉だとしても限度があると知「宰相、随分と慌てておるが何か身に覚えでもあるのではないか? 余が発言を許し、どのような内容であったとしても不敬には問わぬと申したのじゃ。それに、先程の其方の物言いは、脅しと取られても仕方ない言葉であったと気付いておるのか?」」
赤から青に変わっていた顔色が、白くなった宰相が大声を張り上げた。
「陛下、エロイーズ王妃殿下の名誉に関わることであった場合、皇帝のご不興を買う可能性があるとお気付きですか!?」
「勿論知っておるとも。長年に渡り皇帝の顔色を窺い、王妃の言動から目を逸らして来たからこその今じゃ。この度の問題は婚約者候補が変更になったなどと言う、生ぬるいものではない。王家とそれに関わる者達がしでかしてきたことの、集大成だと思うておる。
其方は帝国の手の者であったな。気に入らねばすぐに帝国へ帰るがよい。
王妃との密約、帝国の公爵位と領地は叶わぬ夢のようじゃが、溺愛する娘が産んだ子の父親を無碍に扱うことはあるまいて」
「な、なんのことを仰っておられるのか⋯⋯私には分かりかねます」
息を殺すようにして王宮で暮らしている国王が、まさか王妃と宰相のことを口にするとは思わなかった。
「密約の詳細を知っているとは思わなんだと顔に書いてあるぞ? 余はお飾りの王だと蚊帳の外に置かれておるが、耳も目もついておる。さて、アメリアよ。先程の質問に答える気はあるか?」
「はい。王妃殿下とそれ以外の方から、いくつもの書状がビルワーツ侯爵家当主宛に届いております。宰相殿からのものも多数保管しておりますが、アルフヘイル王国宰相としてのものと、帝国の使者としての二種類がございます。
それと同じで王国と帝国で兼任されている方は他にもおられますので『自分だけではない』と思えば宰相殿のお心が休まるかもしれません。
内容についてですが、最も多いものはビルワーツ侯爵領の鉱山を譲渡せよというもの。次に多いのは鉱山から産出された物を、全て献上せよというもの。その次は産出された宝石の売価の何割かを、支援金や寄付として差し出せというもの。金額を指定し寄付や支援を強制するもの。
領地込みで帝国に下れというものもございました。これは帝国の数人の方と、王国貴族の数人の方から届いており、王家を見限り皇帝又は第二皇子の庇護下に入るべきだと書かれておりました。
今回、王妃殿下が婚姻前契約書の草案に書いておられたのと同じで、ビルワーツ侯爵領の全ての鉱山を持参金の一部として、公妾になれというのは王家・帝国共何通も届いております。
枚数の多い順にお相手を申し上げると皇帝、第二皇子、ランドルフ王太子殿下、第一皇子。貴族の方々からは同様の条件で妻・後妻・第二夫人になれというものが届いております」
「嘘をおっしゃい! お父様がアンタみたいな小娘を公妾!? ふざけんじゃないわよ」
目を吊り上げて立ち上がったエロイーズがアメリアに向けて、折れ曲がった扇子を投げつけた。
鉄扇はヒュンっと音を立ててアメリアの横を通り過ぎたが、目も閉じず微動だにしないアメリアの胆力に、大人達が硬直した。
その程度の攻撃で、アメリアが怯えるなどあり得ない。この場で王妃を潰す覚悟できているのだから。
それに気付いた貴族は果たして何人いたのか⋯⋯。
「こ、この頭のおかしい売女を、牢へ連れて行きなさい!⋯⋯それよりも、この場で首を刎ねておしまい!」
最愛の父親が孫と同じ年頃の娘に懸想したように感じられたのか、普段の傲慢な態度をかなぐり捨てて騒ぎ立てた。
「マクベス、衛兵に命令しなさい! あの娘を処刑しろって命令を出すのよ!!」
無表情で前を向いたままのマクベス国王と、微動だにしない衛兵が命令を聞く気がないと知ったエロイーズは、爪を噛みながら『あり得ないわ、お父様はこんなガキを欲しがるはずがない』と言い続けた。
頭に血が上っているエロイーズは気付いていないが、皇帝とアメリアの年齢差を考えれば、余程特殊な性志向の持ち主でない限り、資産だけが狙いなのは間違いないはず。
「王妃を客室に!」
「な、何ですって! 誰のお陰で玉座に座らせてもらえてるかわかってるの!? わたくしにそんな口を利くなんて、今までどれだけわたくしに助けられてきたと思ってるのよ!!」
「その口を閉じておけないならば、退出させると申したはず。衛兵、王妃を私室ではなく客室に。部屋から出すでない⋯⋯必要なら拘束しても構わん」
お飾りの国王とは思えない厳しい口調で、マクベスが指示を出した。
「きゃあ! 離しなさい⋯⋯やめ⋯⋯やめて! わたくしは王妃よ、この国で最も高貴な王妃⋯⋯お父様に言いつけてやる! 帝国には今でもわたく⋯⋯」
バタン⋯⋯
癇癪を起こしたエロイーズが衛兵に連れ出され、一気に静まりかえった謁見の間にマクベスの低い声が響いた。
「アメリア、続きを申すが良い」
言葉を発するたびに覚悟が決まるのか、弱々しさが消え王の風格を漂わせていくよう。
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