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第一章 お花畑の作り方
06.クズの周りにクズが1匹、クズが2匹⋯⋯
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「今のビルワーツ侯爵はエレーナが成人するまでの代理でさ、エレーナが成人したらビルワーツ侯爵代理は平民になるんだって。ターニャはビルワーツ侯爵代理の隠し子だから、侯爵夫人って言われてる人とターニャも平民になるんだ」
ビルワーツ侯爵代理は子爵家の次男だったが、子爵家は既に兄が継いでいるため、特になんの功績も上げていない侯爵代理は平民になるしか道はない。
「いくら美人でも平民じゃあなぁ。あ、でもでも⋯⋯何年も家族だったんだし、平民になる時財産を分けてあげるとか、使ってない爵位をあげるとかする予定かもよ?」
それなら愛人にする手があるよねと言い出したケニスは、齢9歳にして『ゲスな脳筋』確定。
「それはないって父上が仰ってた。女侯爵が生きてた頃から、婿が愛人を囲って子供まで作ってたんだから、そんな親切をするはずがないってさ」
ユージーンもケニスと同じ事⋯⋯ターニャを愛人にしたいと考えて父親に聞いた『ゲスフレンド』または『ゲス眼鏡』
かなり苛烈な性格の女侯爵は、夫の愛人に子が産まれたと知って大激怒。財産問題等で夫につけ込まれないように、準備していた可能性があると言っていた。
「長女が成人した途端、無一文で放り出されるのは間違いないって」
「それは凄いかも」
(となると僕の相手は、辛気臭いお化けのエレーナかあ⋯⋯うん、絶対に無理)
「可愛い平民は断然却下だけど、お化けの女侯爵もやだよなあ⋯⋯でもでもかなり酷かったから、縁談なんてなさそうじゃね?」
今現在、縁談が進んでいるエドワードは顔を引き攣らせた。
「ビルワーツ侯爵家は公国の貴族だけどさ、この国の貴族だった時からもの凄い資産家だったんだ。だから、釣書はかなり届いてるんじゃない?
爵位しかない貧乏貴族は結構いるって言うし、結婚したら大金持ちだもん。不細工なお化けなんて領地の隅っこにでも押し込んで、普段は美人をそばにおけばいいだけだからね」
ゲスとゲスは同じ考えになるらしく、ユージーンの意見はエドワードや国王夫妻と全く同じ。
「え? もしかしてユージーンはエレーナを狙ってる?」
「うちはそんなに貧乏じゃないから、父上は考えておられないはず。でもさあ、ビルワーツ侯爵領の鉱山は良いなあって思う人は多いと思う」
計算高いユージーンはビルワーツ侯爵領の鉱山を狙って、父を説得している最中で『領地の隅っこに押し込む』と言うのはかなり本気の発言。
(だって、お金なんていくらあっても困らないじゃん)
エドワードの婚約が議題に上がったのを知らされていないユージーンは、ケニスが興味を示していない様子にホッとしていた。
(父上が、王家とビルワーツは絶対関わらないはずだって仰ってたから、エドワードは大丈夫)
マクベス前国王時代から立て続けに二回起きた『婚約破棄騒動』は大人達の中では有名で、エロイーズのしでかしを口にするのも時間と共に解禁になり、二つの婚約破棄騒動はいい酒の肴になっていたりする。
『ビルワーツの資産を捨てて、悪魔を国に引き入れた王家』
『ビルワーツにせっせと恥をかかされる王家』
『ビルワーツの資産を捨てて、無一文になりたがる王家』
「エ、エレーナってさ⋯⋯そんなに酷かったの?」
「あれだろ? 挨拶以外は隅の方の席に座ったままで、お茶にもお菓子にも手を出さなくて⋯⋯微動だにしないから、死んでるんじゃないかってみんなが笑ってた」
「エレーナは腐るほど金を持ってるくせに、古くてヨレヨレのドレスを着てるのが嫌味ったらしいとか、骸骨令嬢とか幽霊令嬢とか言われてた。
オルドリッジ公爵家は別に困窮してないから、ビルワーツ侯爵家には興味がなくてラッキーだと思うくらい⋯⋯エレーナは気持ち悪かった」
(そこまで酷いの!? うげぇ⋯⋯そんなのと婚約の話が出てるってだけで、僕の価値が下がるじゃん!)
ユージーンとケニスが帰った後、生まれて初めて落ち込んだエドワード。
政略だと言うだけでも我慢できないのに、可愛くないどころか『辛気臭い・お化け・幽霊』最後には気持ち悪いとまで言われているなんて。
(絶対無理! そんなのを僕の婚約者にしなきゃいけないほど困ってないはずだし。だって王族だもん。もしかして他に理由があるのかも。父上達は当てにならないし⋯⋯エロイーズ様に聞いてみようかな)
思い立ったが吉日と部屋を飛び出したエドワードは、エロイーズが幽閉されている北の塔に向けて馬車を走らせた。
北の塔は、王宮から馬車で30分程の高台に建てられている。
忍び返しまで設置された高い鉄柵に囲まれた北の塔は、蔦が蔓延り瓦礫があちこちに散乱し不気味な様相を示していた。
本来は幽閉された祖母に会うことなどできないが、母に甘いランドルフの強引な指示と幼い子供のお強請りで、なし崩し的に面会ができている。
毎回『今回だけは特別です』と形ばかりの抗議らしい言葉と共に頑丈な扉が開かれる。この状況なら簡単に脱走できそうだが、今のところそれらしき兆候は見られないのが、エロイーズの不気味さを増している。
そんなゆるゆるの警護を担当しているのは、ケニスの父親が率いている第二騎士団。
(エロイーズ様がこんなところが好きなはずないよ。僕が国王になったら絶対に、一緒に暮らしてあげるね)
エロイーズは幽閉ですからね、一緒に暮らすってことは⋯⋯ん? もしかして、北の塔でお暮らしに?
門の外からエロイーズがいる最上階を見上げたエドワードは強く拳を握りしめた。
「久しぶりね、元気にしてたかしら?」
「突然やってきてごめんなさい。お邪魔じゃなかったですか?」
「ふふっ、いつも退屈してるから、エドワードに会えて嬉しいわ」
「あの⋯⋯この間、父上から僕の婚約者候補が決まったって言われたんです」
「エレーナ・ビルワーツでしょう? ビルワーツ侯爵家なら良い選択肢だと思うわよ。ビルワーツの鉱山はまだまだ産出するはずだもの」
「でも、エレーナは骸骨令嬢だって聞きました! 辛気臭くて幽霊みたいで、気持ち悪いって」
「ププッ! 誰に聞いたのか知らないけど気に入ったわ。気持ち悪い⋯⋯確かにあの娘は不気味よねえ」
北の塔に幽閉されているのに最新情報を持っているエロイーズは、王国内に信者が残っている可能性大。
陰険そうな笑みを浮かべたエロイーズは、上品な仕草で扇子を取り上げて口元を隠した。
(漸く、あの家を叩きのめすチャンスがきたのかもねぇ。ここでずーっと待ってた甲斐があったわ)
大量の罪が暴露され北の塔に幽閉されたエロイーズは、今までやりたい放題していたパワーを全て恨みに変えて待っていたのかも⋯⋯。
妖気が漂う悪鬼の微笑みも、エドワードの色眼鏡を通せば悲嘆暮れる貴婦人に見える。
(ここを出る時は、あの女を踏みつける時って決めてたのよ! だってほら、わたくしがまだここで生きているってだけで、ハラワタが煮えくり返ってるはず⋯⋯って、そうなるはずだったのに! 何度も何度も、わたくしの予想を裏切って。お陰で最高の登場を演出するチャンスを逃したじゃないの!
でも、その娘をぐちゃぐちゃにして、墓の前に転がしてやる⋯⋯その為なら、ここを出てあげても良いわね)
その為に⋯⋯簡単に脱走できそうな塔に、閉じこもっていた? 女の執念、恐るべし。
「そんなのと婚約しなくちゃいけないなんて、絶対に嫌だ! エロイーズ様はビルワーツが嫌いだって父上が言ってたから、きっと反対してくれるって思ったのに」
唇を尖らせてエロイーズを上目遣いに見るのは、エドワードが拗ねた時にやる幼い頃からの癖。
「⋯⋯亡くなったビルワーツ女侯爵は本当に忌々しい女だったわ。もう昔のことだからわたくしは気にしていないけれど、この塔に幽閉されたのはあの女狐の陰謀だったの。
もしあの女狐に陥れられなければ、毎日エドワードに会えたのにって思ってるわ」
エドワードはすっかり騙されて眉間に皺を寄せたが、エロイーズの悲しそうな顔は途轍もなく嘘くさい。
「あの時は⋯⋯本当に恥ずかしくて惨めで⋯⋯何度命を断とうと思ったか数えきれないわ。でも、ランドルフ達の事が心配だったから我慢するしかなかったの。それから何年か経って、赤ちゃんだったエドワードに会えた時は心から神に感謝したわ。
エドワードがここまで会いに来てくれて、色々な話を聞かせてくれるから、心を強く持っていられるの」
「僕も! 僕も、エロイーズ様とお話しできてとても嬉しいです!」
「わたくしはね、ビルワーツ侯爵家がこの国を腐らせた元凶だって知っているから、騙されてここに閉じ込められたの。
あの女の娘の顔が問題なのでしょう? 醜い顔は厚化粧で隠せるかもしれないし、それでも誤魔化せない程酷いならいつもベールを被るよう言いつければいいわ。王太子の命令に従わなければ鞭で打って従えなさい。貴方にはその資格があるんだもの。
まずは立場を理解させる⋯⋯ビルワーツの血は穢れていて、生きている資格さえないのだと教え込むの。
大人しく従う時は優しく⋯⋯だけど調子に乗らせないように気をつけて。少しでも反抗的な様子を見せた時は、徹底的に打ち据えるの。
ビルワーツに隙を見せてはダメ。アレは悪魔の申し子だから、ほんの少しの気の緩みでも付け入る術を持っているわ。
何もできないように全てを取り上げてしまいなさい。それができるのは王太子であるエドワードしかいないわ。
エドワードとあの女の娘が結婚した後でなら、わたくしもここを出て躾を手伝ってあげてもいいわ」
「やっぱり、ここが気に入ってるんじななかったんだ!!」
エドワードの注目ポイントはエロイーズの狙いとは少しズレたようだが⋯⋯。
長い幽閉生活で恨みを募らせたエロイーズこそ悪魔の申し子のようで、呪いのお札も魔導具も効かなくて当然かも。
ビルワーツ侯爵代理は子爵家の次男だったが、子爵家は既に兄が継いでいるため、特になんの功績も上げていない侯爵代理は平民になるしか道はない。
「いくら美人でも平民じゃあなぁ。あ、でもでも⋯⋯何年も家族だったんだし、平民になる時財産を分けてあげるとか、使ってない爵位をあげるとかする予定かもよ?」
それなら愛人にする手があるよねと言い出したケニスは、齢9歳にして『ゲスな脳筋』確定。
「それはないって父上が仰ってた。女侯爵が生きてた頃から、婿が愛人を囲って子供まで作ってたんだから、そんな親切をするはずがないってさ」
ユージーンもケニスと同じ事⋯⋯ターニャを愛人にしたいと考えて父親に聞いた『ゲスフレンド』または『ゲス眼鏡』
かなり苛烈な性格の女侯爵は、夫の愛人に子が産まれたと知って大激怒。財産問題等で夫につけ込まれないように、準備していた可能性があると言っていた。
「長女が成人した途端、無一文で放り出されるのは間違いないって」
「それは凄いかも」
(となると僕の相手は、辛気臭いお化けのエレーナかあ⋯⋯うん、絶対に無理)
「可愛い平民は断然却下だけど、お化けの女侯爵もやだよなあ⋯⋯でもでもかなり酷かったから、縁談なんてなさそうじゃね?」
今現在、縁談が進んでいるエドワードは顔を引き攣らせた。
「ビルワーツ侯爵家は公国の貴族だけどさ、この国の貴族だった時からもの凄い資産家だったんだ。だから、釣書はかなり届いてるんじゃない?
爵位しかない貧乏貴族は結構いるって言うし、結婚したら大金持ちだもん。不細工なお化けなんて領地の隅っこにでも押し込んで、普段は美人をそばにおけばいいだけだからね」
ゲスとゲスは同じ考えになるらしく、ユージーンの意見はエドワードや国王夫妻と全く同じ。
「え? もしかしてユージーンはエレーナを狙ってる?」
「うちはそんなに貧乏じゃないから、父上は考えておられないはず。でもさあ、ビルワーツ侯爵領の鉱山は良いなあって思う人は多いと思う」
計算高いユージーンはビルワーツ侯爵領の鉱山を狙って、父を説得している最中で『領地の隅っこに押し込む』と言うのはかなり本気の発言。
(だって、お金なんていくらあっても困らないじゃん)
エドワードの婚約が議題に上がったのを知らされていないユージーンは、ケニスが興味を示していない様子にホッとしていた。
(父上が、王家とビルワーツは絶対関わらないはずだって仰ってたから、エドワードは大丈夫)
マクベス前国王時代から立て続けに二回起きた『婚約破棄騒動』は大人達の中では有名で、エロイーズのしでかしを口にするのも時間と共に解禁になり、二つの婚約破棄騒動はいい酒の肴になっていたりする。
『ビルワーツの資産を捨てて、悪魔を国に引き入れた王家』
『ビルワーツにせっせと恥をかかされる王家』
『ビルワーツの資産を捨てて、無一文になりたがる王家』
「エ、エレーナってさ⋯⋯そんなに酷かったの?」
「あれだろ? 挨拶以外は隅の方の席に座ったままで、お茶にもお菓子にも手を出さなくて⋯⋯微動だにしないから、死んでるんじゃないかってみんなが笑ってた」
「エレーナは腐るほど金を持ってるくせに、古くてヨレヨレのドレスを着てるのが嫌味ったらしいとか、骸骨令嬢とか幽霊令嬢とか言われてた。
オルドリッジ公爵家は別に困窮してないから、ビルワーツ侯爵家には興味がなくてラッキーだと思うくらい⋯⋯エレーナは気持ち悪かった」
(そこまで酷いの!? うげぇ⋯⋯そんなのと婚約の話が出てるってだけで、僕の価値が下がるじゃん!)
ユージーンとケニスが帰った後、生まれて初めて落ち込んだエドワード。
政略だと言うだけでも我慢できないのに、可愛くないどころか『辛気臭い・お化け・幽霊』最後には気持ち悪いとまで言われているなんて。
(絶対無理! そんなのを僕の婚約者にしなきゃいけないほど困ってないはずだし。だって王族だもん。もしかして他に理由があるのかも。父上達は当てにならないし⋯⋯エロイーズ様に聞いてみようかな)
思い立ったが吉日と部屋を飛び出したエドワードは、エロイーズが幽閉されている北の塔に向けて馬車を走らせた。
北の塔は、王宮から馬車で30分程の高台に建てられている。
忍び返しまで設置された高い鉄柵に囲まれた北の塔は、蔦が蔓延り瓦礫があちこちに散乱し不気味な様相を示していた。
本来は幽閉された祖母に会うことなどできないが、母に甘いランドルフの強引な指示と幼い子供のお強請りで、なし崩し的に面会ができている。
毎回『今回だけは特別です』と形ばかりの抗議らしい言葉と共に頑丈な扉が開かれる。この状況なら簡単に脱走できそうだが、今のところそれらしき兆候は見られないのが、エロイーズの不気味さを増している。
そんなゆるゆるの警護を担当しているのは、ケニスの父親が率いている第二騎士団。
(エロイーズ様がこんなところが好きなはずないよ。僕が国王になったら絶対に、一緒に暮らしてあげるね)
エロイーズは幽閉ですからね、一緒に暮らすってことは⋯⋯ん? もしかして、北の塔でお暮らしに?
門の外からエロイーズがいる最上階を見上げたエドワードは強く拳を握りしめた。
「久しぶりね、元気にしてたかしら?」
「突然やってきてごめんなさい。お邪魔じゃなかったですか?」
「ふふっ、いつも退屈してるから、エドワードに会えて嬉しいわ」
「あの⋯⋯この間、父上から僕の婚約者候補が決まったって言われたんです」
「エレーナ・ビルワーツでしょう? ビルワーツ侯爵家なら良い選択肢だと思うわよ。ビルワーツの鉱山はまだまだ産出するはずだもの」
「でも、エレーナは骸骨令嬢だって聞きました! 辛気臭くて幽霊みたいで、気持ち悪いって」
「ププッ! 誰に聞いたのか知らないけど気に入ったわ。気持ち悪い⋯⋯確かにあの娘は不気味よねえ」
北の塔に幽閉されているのに最新情報を持っているエロイーズは、王国内に信者が残っている可能性大。
陰険そうな笑みを浮かべたエロイーズは、上品な仕草で扇子を取り上げて口元を隠した。
(漸く、あの家を叩きのめすチャンスがきたのかもねぇ。ここでずーっと待ってた甲斐があったわ)
大量の罪が暴露され北の塔に幽閉されたエロイーズは、今までやりたい放題していたパワーを全て恨みに変えて待っていたのかも⋯⋯。
妖気が漂う悪鬼の微笑みも、エドワードの色眼鏡を通せば悲嘆暮れる貴婦人に見える。
(ここを出る時は、あの女を踏みつける時って決めてたのよ! だってほら、わたくしがまだここで生きているってだけで、ハラワタが煮えくり返ってるはず⋯⋯って、そうなるはずだったのに! 何度も何度も、わたくしの予想を裏切って。お陰で最高の登場を演出するチャンスを逃したじゃないの!
でも、その娘をぐちゃぐちゃにして、墓の前に転がしてやる⋯⋯その為なら、ここを出てあげても良いわね)
その為に⋯⋯簡単に脱走できそうな塔に、閉じこもっていた? 女の執念、恐るべし。
「そんなのと婚約しなくちゃいけないなんて、絶対に嫌だ! エロイーズ様はビルワーツが嫌いだって父上が言ってたから、きっと反対してくれるって思ったのに」
唇を尖らせてエロイーズを上目遣いに見るのは、エドワードが拗ねた時にやる幼い頃からの癖。
「⋯⋯亡くなったビルワーツ女侯爵は本当に忌々しい女だったわ。もう昔のことだからわたくしは気にしていないけれど、この塔に幽閉されたのはあの女狐の陰謀だったの。
もしあの女狐に陥れられなければ、毎日エドワードに会えたのにって思ってるわ」
エドワードはすっかり騙されて眉間に皺を寄せたが、エロイーズの悲しそうな顔は途轍もなく嘘くさい。
「あの時は⋯⋯本当に恥ずかしくて惨めで⋯⋯何度命を断とうと思ったか数えきれないわ。でも、ランドルフ達の事が心配だったから我慢するしかなかったの。それから何年か経って、赤ちゃんだったエドワードに会えた時は心から神に感謝したわ。
エドワードがここまで会いに来てくれて、色々な話を聞かせてくれるから、心を強く持っていられるの」
「僕も! 僕も、エロイーズ様とお話しできてとても嬉しいです!」
「わたくしはね、ビルワーツ侯爵家がこの国を腐らせた元凶だって知っているから、騙されてここに閉じ込められたの。
あの女の娘の顔が問題なのでしょう? 醜い顔は厚化粧で隠せるかもしれないし、それでも誤魔化せない程酷いならいつもベールを被るよう言いつければいいわ。王太子の命令に従わなければ鞭で打って従えなさい。貴方にはその資格があるんだもの。
まずは立場を理解させる⋯⋯ビルワーツの血は穢れていて、生きている資格さえないのだと教え込むの。
大人しく従う時は優しく⋯⋯だけど調子に乗らせないように気をつけて。少しでも反抗的な様子を見せた時は、徹底的に打ち据えるの。
ビルワーツに隙を見せてはダメ。アレは悪魔の申し子だから、ほんの少しの気の緩みでも付け入る術を持っているわ。
何もできないように全てを取り上げてしまいなさい。それができるのは王太子であるエドワードしかいないわ。
エドワードとあの女の娘が結婚した後でなら、わたくしもここを出て躾を手伝ってあげてもいいわ」
「やっぱり、ここが気に入ってるんじななかったんだ!!」
エドワードの注目ポイントはエロイーズの狙いとは少しズレたようだが⋯⋯。
長い幽閉生活で恨みを募らせたエロイーズこそ悪魔の申し子のようで、呪いのお札も魔導具も効かなくて当然かも。
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