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1.いざ、階段落ち
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「さっき急にアンダーソン公爵家から連絡が来たの。一体何があったのかしら」
あったかって? ええ、ありましたとも。
学園でね、伝説? 予定調和? の階段落ち、見事なやつを見せて頂きましたの。
逆の意味ですけどね。
(マジか、想像以上にショボすぎ。
39段とかじゃないんだ~。
サンドラだから、もしかしてって思ってたけど想像以上だわ~)
前世で大好きだったのは、乙女ゲームと昭和の映画と炭酸飲料。
何でかよく分かんないけど、古い映画っていーのよ。
乙女ゲームやりながらコーラをゴクゴク。昭和の映画を見ながら涙拭き拭きビールをプハー。
別の世界に転生したって気付いた時、
(あっシュワシュワがないじゃん!)
ってそれだけが心残りだったの。
今日の階段落ちはたったの3段。マジかよーって感動ならぬショックを受けた私。
昭和の映画で階段落ちといえば、39段に決まってる。
あの子にそんな勇気がないのは知ってるけど、流石に3段ってどうよ。
【あなたの覚悟、見せて頂くわ!】
なんて張り切って見に行ったのに、このガッカリ感どうしたらいいの・・。
しかも手すり掴んでるじゃん。
期待ではちきれんばかりの今朝の私は何だったの?
帰りの馬車にユラユラ揺られながら溜息つくこと15回。
ここが乙女ゲームの世界だって知った時から、ワクワクドキドキしてたのになぁ。
そう言えば、
「エミリア、何で酷いことをするんだ!」
なんて叫んでた奴がいたなぁと思い出したのは自宅前で馬車を降りる頃。
私、エミリア15歳。
酷いこと? 出来るわけないじゃん。だって私階段下で待ち構えてたんだから。
キラッキラからガーンに変身中だったもん。
叫んでたのは私の婚約者のギルバートだった。で、落ちてきたのはギルバートの従姉妹のサンドラ。
「痛~い、お兄様ぁ」
うっ、あんたの演技の方が痛~い。
「大丈夫かい? 直ぐに保健室へ連れて行ってあげるからね」
お姫様抱っこでサンドラを抱え上げてるけど、ギルバートの腕がプルプルしてるの。
そっちの方が大丈夫かい?
乙女ゲームにありがちの、ありふれたストーリーでこの一年が進行してきたから、次の予定は卒業パーティーでの断罪&婚約破棄の筈よね。
教科書破ったり物を隠したりと、サンドラが頑張って真面目にストーリー進めてくれたから、これで全てのノルマクリアの筈。
何にもしなくても婚約破棄出来るのって便利~なんて思ってたけど、何かつまんなくなっちゃった。
「お兄様、エミリアが!」
って嘘泣きするのも、聞き飽きたし。
「エミリア、なんて酷いことを!」
って、サンドラに騙されてるギルバートの阿呆面見るのも見飽きたし。
卒業パーティーどうしようかなぁって思いながら家に入ったら、まさかの公爵家からの呼び出し。
このパターンは知らないやつだ。そんな乙女ゲームあったっけ?
うちの父様と母様は超がつくほどのお人好しさんだから、頼まれると嫌と言えないのよね。
きっと、断るとか出来ないんだろうなあ。
私、フィッツロイ伯爵家の一人っ子なんだけど、
「嫁に下さい」
って言われて父様はうっかりOKしちゃったの。
その後、跡取りどうしようなんて相談に来てたし。
サンドラがせっせとストーリー進めているのに気付いた時、
(勝手に婚約破棄してくれるから放っとこ)
なんて気楽に構えてたんだけど。うーんなんで呼び出された?
怪しい、すっごく怪しい。ちょっと準備して行きますか。
「えっ? ここが私の部屋ですか?」
「はい、そのように指示を頂いてます。何かご不満でも?」
「・・いえ、ないです」
(なんで部屋の準備? 私泊まんないよ?)
「それでは、お部屋からはお出になりませんように。食事の準備が出来ましたらお声をおかけ致します」
慇懃無礼の鏡のようなメイド長がいなくなって、辺りを見回した。
(ここって物置だよね。埃っぽいし)
(て言うか、なんで拉致監禁されてるの?)
取り敢えず、置いてある衣装箱や木箱を移動して、念の為の生活用のスペースを確保。
(雑巾とバケツ下さいって言ってみようかしら、鼻がむずむずする)
(泊まんないけどね)
あったかって? ええ、ありましたとも。
学園でね、伝説? 予定調和? の階段落ち、見事なやつを見せて頂きましたの。
逆の意味ですけどね。
(マジか、想像以上にショボすぎ。
39段とかじゃないんだ~。
サンドラだから、もしかしてって思ってたけど想像以上だわ~)
前世で大好きだったのは、乙女ゲームと昭和の映画と炭酸飲料。
何でかよく分かんないけど、古い映画っていーのよ。
乙女ゲームやりながらコーラをゴクゴク。昭和の映画を見ながら涙拭き拭きビールをプハー。
別の世界に転生したって気付いた時、
(あっシュワシュワがないじゃん!)
ってそれだけが心残りだったの。
今日の階段落ちはたったの3段。マジかよーって感動ならぬショックを受けた私。
昭和の映画で階段落ちといえば、39段に決まってる。
あの子にそんな勇気がないのは知ってるけど、流石に3段ってどうよ。
【あなたの覚悟、見せて頂くわ!】
なんて張り切って見に行ったのに、このガッカリ感どうしたらいいの・・。
しかも手すり掴んでるじゃん。
期待ではちきれんばかりの今朝の私は何だったの?
帰りの馬車にユラユラ揺られながら溜息つくこと15回。
ここが乙女ゲームの世界だって知った時から、ワクワクドキドキしてたのになぁ。
そう言えば、
「エミリア、何で酷いことをするんだ!」
なんて叫んでた奴がいたなぁと思い出したのは自宅前で馬車を降りる頃。
私、エミリア15歳。
酷いこと? 出来るわけないじゃん。だって私階段下で待ち構えてたんだから。
キラッキラからガーンに変身中だったもん。
叫んでたのは私の婚約者のギルバートだった。で、落ちてきたのはギルバートの従姉妹のサンドラ。
「痛~い、お兄様ぁ」
うっ、あんたの演技の方が痛~い。
「大丈夫かい? 直ぐに保健室へ連れて行ってあげるからね」
お姫様抱っこでサンドラを抱え上げてるけど、ギルバートの腕がプルプルしてるの。
そっちの方が大丈夫かい?
乙女ゲームにありがちの、ありふれたストーリーでこの一年が進行してきたから、次の予定は卒業パーティーでの断罪&婚約破棄の筈よね。
教科書破ったり物を隠したりと、サンドラが頑張って真面目にストーリー進めてくれたから、これで全てのノルマクリアの筈。
何にもしなくても婚約破棄出来るのって便利~なんて思ってたけど、何かつまんなくなっちゃった。
「お兄様、エミリアが!」
って嘘泣きするのも、聞き飽きたし。
「エミリア、なんて酷いことを!」
って、サンドラに騙されてるギルバートの阿呆面見るのも見飽きたし。
卒業パーティーどうしようかなぁって思いながら家に入ったら、まさかの公爵家からの呼び出し。
このパターンは知らないやつだ。そんな乙女ゲームあったっけ?
うちの父様と母様は超がつくほどのお人好しさんだから、頼まれると嫌と言えないのよね。
きっと、断るとか出来ないんだろうなあ。
私、フィッツロイ伯爵家の一人っ子なんだけど、
「嫁に下さい」
って言われて父様はうっかりOKしちゃったの。
その後、跡取りどうしようなんて相談に来てたし。
サンドラがせっせとストーリー進めているのに気付いた時、
(勝手に婚約破棄してくれるから放っとこ)
なんて気楽に構えてたんだけど。うーんなんで呼び出された?
怪しい、すっごく怪しい。ちょっと準備して行きますか。
「えっ? ここが私の部屋ですか?」
「はい、そのように指示を頂いてます。何かご不満でも?」
「・・いえ、ないです」
(なんで部屋の準備? 私泊まんないよ?)
「それでは、お部屋からはお出になりませんように。食事の準備が出来ましたらお声をおかけ致します」
慇懃無礼の鏡のようなメイド長がいなくなって、辺りを見回した。
(ここって物置だよね。埃っぽいし)
(て言うか、なんで拉致監禁されてるの?)
取り敢えず、置いてある衣装箱や木箱を移動して、念の為の生活用のスペースを確保。
(雑巾とバケツ下さいって言ってみようかしら、鼻がむずむずする)
(泊まんないけどね)
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