【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との

文字の大きさ
上 下
10 / 14

8.後見人GET

しおりを挟む
 イライザとシエナの攻防をハラハラしながら見ていたジェイクは、手もみしそうな勢いで身を乗り出していた。

「イライザ、話は纏まったかな? 私は帰る前に、コートを個人的に手がける条件というのを聞いておきたいんだ」

 シエナは意を決して話し出した。

「離婚訴訟の前後だけ、後見人になってくださる高位貴族の方を探しています。私の夫は伯爵家の三男ですので、平民からの申し立てが受理されるかどうか不安があるものですから」

「随分と意外な望みだね。離婚して商会を離れたら、商会はどうなるんだい?」

「結婚時の契約で、離婚した場合は理由を問わず商会は相手方のものになると決められております」

「商会は元々ウォーカー家の物なのに?」

「それはそうなのですが、色々ありまして⋯⋯そのような契約が結ばれてしまったのです」



「キャンベル伯爵は離婚を認めないと考えてるのね?」

「いえ、離婚自体は問題ないと思います。元々結婚相手とは一度もお会いした事もありませんし、伯爵家は商会を丸々手に入れられるわけですから」

「では何故後見人が必要なの?」

「伯爵家からこれ以上の無理難題を言われない為、親しい人達を守る為の保険のような感じです」

「詳しく聞かせてくれるかしら? 内容によっては私も後見人になりましょう」



 シエナは八歳で結婚した当初から、現在の状況までを説明した。

「とんだ古狐ね、あの体型だと古狸だわ。相手が平民だとしても、やって良い事のレベルを超えているわね。良いでしょう、私も後見人になります」

「勿論私も後見人になるとも。刺繍を手に入れたい邪な気持ちはあるが、それよりも今は怒りの方が大きい。
キャンベル伯爵のやった事は貴族の面汚しだ。そんな非道が12年も罷り通っていたなど到底許せるものではない」



 荷物を片付け公爵邸を後にした二人が、シエナの自宅に戻り⋯⋯家の前で馬車を降りると、クロエが慌てて飛び出してきた。

「で、どうだった?」

 シエナはクロエに飛び付いた。

「大成功よ! 商品のお買い上げと注文を沢山いただいたの。しかも後見人を二人もゲットしたわ」

「マジ? 良かった~。中に入って詳しく聞かせて」

 家に入りルカがコーヒーの準備をする間に、ドレスを片付けて公爵邸での一部始終をクロエに話した。



 台所にいるルカの元に行ってコーヒーを受け取ったクロエが、わざとらしく溜め息をついた。

「ああ、やっぱり一緒に行けばよかったわ。平民が公爵夫人に啖呵を切るとこなんて絶対見られないもの。
シエナったら、ほんとに怖いもの知らずなんだから。ご機嫌を損ねたらどうしようとか思わなかったの?」

「うーん、何となく媚びちゃダメだって思ったの。平民だからって下手に出てたら、真面に話を聞いてくれなさそうな気がしたのよね」

「それを近くで黙って見てる俺の身にもなってくれよ。心臓が破裂するかと思ったよ」

「クロエについてきて貰えば良かったって私も思ったわ。ルカなんて、荷物持ちとトルソーの組み立て以外、役に立たないんだもの」

「仕方ないだろ? ドレスなんて扱い方分かるわけないし」

「あんたは脱がす専門だもんねえ」

 クロエがとんでもないことを言い出した。

「ばっ、馬鹿げたこと言うな。シエナが本気にしたらどうすんだよ」



 クロエがドヤ顔で、サムズアップした。

「少しは男として意識してもらえるかもよ?」

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 共に伯爵家の令嬢と令息であるアミカとミッチェルは幸せな結婚式を挙げた。ところがその夜ミッチェルの体調が悪くなり、二人は別々の寝室で休むことに。  その翌日、アミカは偶然街でミッチェルと自分の友人であるポーラの不貞の事実を知ってしまう。激しく落胆するアミカだったが、侯爵令息のマキシミリアーノの助けを借りながら二人の不貞の証拠を押さえ、こちらの有責にされないように離婚にこぎつけようとする。  ところが、これは白い結婚だと不貞の相手であるポーラに言っていたはずなのに、日が経つごとにミッチェルの様子が徐々におかしくなってきて───

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

処理中です...