7 / 14
5.パーティーに潜り込んだの
しおりを挟む
「これか・・なんか凄いな。貴族のレディってこんなの着るわけ?」
シエナとクロエが、出来上がったドレスをトルソに着せかけるのを見ながら、ルカが呆れ顔で呟いた。
「あんた知らなかったの?」
「知るわけないじゃん。遠目でチラッと見るだけだし、それも大概が馬車に乗ってるかマントを羽織ってるかだし。シエナ達が知ってる方が意外だよ」
「そりゃ、あたし達だって女だもん。華やかなドレスとパーティーには興味津々よね、シエナ」
クロエが振り返ると、シエナはしゃがみ込んでドレスの裾の刺繍をチェックしていた。
「まあね、夜こっそり忍び込んだりしたもの」
「「はあ?」」
「どんなドレスが流行ってるのか知らないままじゃ作れないもの。迷子になった女中のフリしてパーティーに潜り込んだり」
「あんた、よく捕まんなかったわね。捕まってたら即牢屋行きじゃん」
ルカはかなり腹を立てているようで、こめかみをピクピクさせている。
「シエナ、今度馬鹿なことをやる時は先に教えてくれないか?」
シエナは二人の様子を気にも留めず、ストマッカーに縫い付けたリボンをチェックしている。
一番上の大きなリボンには模造ダイヤが縫い付けられ、下に行くに従ってリボンは小さくなっていく。
「何で?」
「ケツを引っ叩いて部屋に閉じ込める!」
「も、もうしない。ここまで来たら後は決行あるのみだからね」
握り拳を作って気合を入れているシエナを見て、ルカが溜め息を吐いた。
「反省してないじゃん」
「ねぇ、もし仮にこれが失敗してキャンベル伯爵にバレたらどうすんの?」
「うーん、考えてなかった。失敗するのは実力不足で仕方ないけど、伯爵にバレるのは不味いわね」
腕組みして悩み始めたシエナを見ながら、クロエが呆れたように首を横に振った。
「全く、無鉄砲にも程があるわ。ここまででシエナ無一文になったんでしょ?」
「ご飯くらいなら食べられるから大丈夫」
「先に力を貸してくれそうな顧客に相談したらどうだろう?ストレンジ公爵、ダートマス侯爵とウェリントン伯爵の三人なら話に乗ってくれると思う」
「女性の強い後押しが絶対に必要なの。皆さん同情はしてくれるかもしれないけど、それだけじゃ足りないの。だって、女から言い出す離婚を後押ししてくれるとは思えないから。
離婚を申し立てても、相手はウォーカー商会のお陰で肥え太った貴族よ。何を言い始めるか分かったものじゃないわ。
だから、新しい商会の為なら、離婚訴訟にも立ち会っても良いって思われる位にならなきゃ上手くいかないわ。
アーリントン公爵夫人がドレスに太鼓判を押してくれれば、新しい商会が成功する可能性は高まる。どう考えても彼女がキーマンよ」
「面会は明後日だ。ダートマス侯爵が二つ返事で仲介をしてくれた」
「あんた、侯爵に何て説明したの?」
「知り合いが、新しい刺繍のデザインをアーリントン公爵夫人に見て貰いたがってるって」
「えーっ、そんなんで上手く行ったの?」
「言ったろ? ダートマス侯爵は、うちの刺繍に目がないんだ。奥方からも、ウォーカー商会以外のコートは駄目だって言われてるってさ」
シエナとクロエが、出来上がったドレスをトルソに着せかけるのを見ながら、ルカが呆れ顔で呟いた。
「あんた知らなかったの?」
「知るわけないじゃん。遠目でチラッと見るだけだし、それも大概が馬車に乗ってるかマントを羽織ってるかだし。シエナ達が知ってる方が意外だよ」
「そりゃ、あたし達だって女だもん。華やかなドレスとパーティーには興味津々よね、シエナ」
クロエが振り返ると、シエナはしゃがみ込んでドレスの裾の刺繍をチェックしていた。
「まあね、夜こっそり忍び込んだりしたもの」
「「はあ?」」
「どんなドレスが流行ってるのか知らないままじゃ作れないもの。迷子になった女中のフリしてパーティーに潜り込んだり」
「あんた、よく捕まんなかったわね。捕まってたら即牢屋行きじゃん」
ルカはかなり腹を立てているようで、こめかみをピクピクさせている。
「シエナ、今度馬鹿なことをやる時は先に教えてくれないか?」
シエナは二人の様子を気にも留めず、ストマッカーに縫い付けたリボンをチェックしている。
一番上の大きなリボンには模造ダイヤが縫い付けられ、下に行くに従ってリボンは小さくなっていく。
「何で?」
「ケツを引っ叩いて部屋に閉じ込める!」
「も、もうしない。ここまで来たら後は決行あるのみだからね」
握り拳を作って気合を入れているシエナを見て、ルカが溜め息を吐いた。
「反省してないじゃん」
「ねぇ、もし仮にこれが失敗してキャンベル伯爵にバレたらどうすんの?」
「うーん、考えてなかった。失敗するのは実力不足で仕方ないけど、伯爵にバレるのは不味いわね」
腕組みして悩み始めたシエナを見ながら、クロエが呆れたように首を横に振った。
「全く、無鉄砲にも程があるわ。ここまででシエナ無一文になったんでしょ?」
「ご飯くらいなら食べられるから大丈夫」
「先に力を貸してくれそうな顧客に相談したらどうだろう?ストレンジ公爵、ダートマス侯爵とウェリントン伯爵の三人なら話に乗ってくれると思う」
「女性の強い後押しが絶対に必要なの。皆さん同情はしてくれるかもしれないけど、それだけじゃ足りないの。だって、女から言い出す離婚を後押ししてくれるとは思えないから。
離婚を申し立てても、相手はウォーカー商会のお陰で肥え太った貴族よ。何を言い始めるか分かったものじゃないわ。
だから、新しい商会の為なら、離婚訴訟にも立ち会っても良いって思われる位にならなきゃ上手くいかないわ。
アーリントン公爵夫人がドレスに太鼓判を押してくれれば、新しい商会が成功する可能性は高まる。どう考えても彼女がキーマンよ」
「面会は明後日だ。ダートマス侯爵が二つ返事で仲介をしてくれた」
「あんた、侯爵に何て説明したの?」
「知り合いが、新しい刺繍のデザインをアーリントン公爵夫人に見て貰いたがってるって」
「えーっ、そんなんで上手く行ったの?」
「言ったろ? ダートマス侯爵は、うちの刺繍に目がないんだ。奥方からも、ウォーカー商会以外のコートは駄目だって言われてるってさ」
187
お気に入りに追加
3,173
あなたにおすすめの小説

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
共に伯爵家の令嬢と令息であるアミカとミッチェルは幸せな結婚式を挙げた。ところがその夜ミッチェルの体調が悪くなり、二人は別々の寝室で休むことに。
その翌日、アミカは偶然街でミッチェルと自分の友人であるポーラの不貞の事実を知ってしまう。激しく落胆するアミカだったが、侯爵令息のマキシミリアーノの助けを借りながら二人の不貞の証拠を押さえ、こちらの有責にされないように離婚にこぎつけようとする。
ところが、これは白い結婚だと不貞の相手であるポーラに言っていたはずなのに、日が経つごとにミッチェルの様子が徐々におかしくなってきて───

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました
新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる