4 / 14
3.見た目も中身もプレーリードッグ
しおりを挟む
「ただいまー、仕立て屋のマチルダったら布とデザイン画を見た途端大騒ぎよ」
壁に寄りかかり腕組みをしたルカが『マチルダって?』と聞きただした。
「あっ、やばい・・あのね、えーっと」
ルカに睨まれ慌てたクロエが、シエナに手を合わせて頭を下げた。
「大丈夫、今から話すつもりだったからね」
シエナは引き出しから鞄を取り出しながら、二人に声をかけた。
「ここで話すのは不味いと思うの。クラリッサの店に行かない?」
クラリッサの店は、ウォーカー商会から歩いて5分ほどのコーヒーショップ。毎日の日替わり手作りケーキが自慢の店。
ルカはコーヒー、シエナとクロエはコーヒーとアップルパイを注文した。
焙煎の強いコーヒー豆独特の“スモーキー” な香りと、甘酸っぱいアップルパイの香りが漂ってくる。
「これ、食べにくいのよね。男の人の前だと絶対注文できないと思う」
「クロエ、俺⋯⋯男」
「あんたは別、多分おんなじ部屋で寝ても平気。もしかしたら着替えもできるかも」
「そんなの、俺が見たくない」
「わぁ、仲間! 私も見たくな~い」
二人の掛け合いはいつもの事なので、シエナは気にせずパイをちまちまと食べている。
「シエナって見た目は小動物よね」
「プレーリードッグ?」
「⋯⋯プレーリードッグって、一夫多妻制で結構凶暴なのよね」
「調べたの?」
「クロエがしょっちゅう言うから、この間図書館で調べたわ。ぽやっとした見た目なのに、臭い攻撃とか色々エグかった」
「次から別の動物にしてあげる。臭いかあ⋯⋯それは女として⋯⋯申し訳ない」
シエナはおかしな謝罪を受けて、ケラケラと笑った。
「多分大丈夫。毎日お風呂入ってるもの」
アップルパイを食べ終わり、コーヒーを飲みながら本題に入った。
「新しく商会を立ち上げることにしたの。出来れば、クロエとルカにも参加して欲しい」
「私はすでに手伝ってるじゃん」
「俺も参加して良いの?」
「勿論、二人にはどうしてもきて欲しいって思ってる。それに、いずれは他の商会員にも声をかけたいの。
今、商会の収益の50パーセントを持っていかれていて、離婚したらウォーカー商会自体を取り上げられちゃうのは知ってるでしょう? 私達がいなくなって売り上げが下がったら、あの人達が商会員達に何をするか分からないもの」
「それで新しい商会か。納得」
「実はね、父さんが銀行から融資を受けられなくなったのは、キャンベル伯爵家の差し金だったの」
ルカは黙り込んでシエナを見つめ、クロエが聞いてきた。
「どう言う事?」
「キャンベル伯爵は最初、父さんに共同経営の話をしにきたの。で、父さんが断ると銀行の頭取に圧力をかけて、うちと取引させないようにした。
それでもなんとか粘ってたら、今度は従業員の家族を人質に取って脅しをかけてきたの」
「それで契約書にサインを?」
「そう、相手はお貴族様でしょう? 手を尽くして頑張ったけど、平民の父さんにはどうにもならなかったって」
「新しく商会を作って、その先は?」
「ウォーカー商会を潰す」
「「やっぱり、プレーリードッグ!」」
壁に寄りかかり腕組みをしたルカが『マチルダって?』と聞きただした。
「あっ、やばい・・あのね、えーっと」
ルカに睨まれ慌てたクロエが、シエナに手を合わせて頭を下げた。
「大丈夫、今から話すつもりだったからね」
シエナは引き出しから鞄を取り出しながら、二人に声をかけた。
「ここで話すのは不味いと思うの。クラリッサの店に行かない?」
クラリッサの店は、ウォーカー商会から歩いて5分ほどのコーヒーショップ。毎日の日替わり手作りケーキが自慢の店。
ルカはコーヒー、シエナとクロエはコーヒーとアップルパイを注文した。
焙煎の強いコーヒー豆独特の“スモーキー” な香りと、甘酸っぱいアップルパイの香りが漂ってくる。
「これ、食べにくいのよね。男の人の前だと絶対注文できないと思う」
「クロエ、俺⋯⋯男」
「あんたは別、多分おんなじ部屋で寝ても平気。もしかしたら着替えもできるかも」
「そんなの、俺が見たくない」
「わぁ、仲間! 私も見たくな~い」
二人の掛け合いはいつもの事なので、シエナは気にせずパイをちまちまと食べている。
「シエナって見た目は小動物よね」
「プレーリードッグ?」
「⋯⋯プレーリードッグって、一夫多妻制で結構凶暴なのよね」
「調べたの?」
「クロエがしょっちゅう言うから、この間図書館で調べたわ。ぽやっとした見た目なのに、臭い攻撃とか色々エグかった」
「次から別の動物にしてあげる。臭いかあ⋯⋯それは女として⋯⋯申し訳ない」
シエナはおかしな謝罪を受けて、ケラケラと笑った。
「多分大丈夫。毎日お風呂入ってるもの」
アップルパイを食べ終わり、コーヒーを飲みながら本題に入った。
「新しく商会を立ち上げることにしたの。出来れば、クロエとルカにも参加して欲しい」
「私はすでに手伝ってるじゃん」
「俺も参加して良いの?」
「勿論、二人にはどうしてもきて欲しいって思ってる。それに、いずれは他の商会員にも声をかけたいの。
今、商会の収益の50パーセントを持っていかれていて、離婚したらウォーカー商会自体を取り上げられちゃうのは知ってるでしょう? 私達がいなくなって売り上げが下がったら、あの人達が商会員達に何をするか分からないもの」
「それで新しい商会か。納得」
「実はね、父さんが銀行から融資を受けられなくなったのは、キャンベル伯爵家の差し金だったの」
ルカは黙り込んでシエナを見つめ、クロエが聞いてきた。
「どう言う事?」
「キャンベル伯爵は最初、父さんに共同経営の話をしにきたの。で、父さんが断ると銀行の頭取に圧力をかけて、うちと取引させないようにした。
それでもなんとか粘ってたら、今度は従業員の家族を人質に取って脅しをかけてきたの」
「それで契約書にサインを?」
「そう、相手はお貴族様でしょう? 手を尽くして頑張ったけど、平民の父さんにはどうにもならなかったって」
「新しく商会を作って、その先は?」
「ウォーカー商会を潰す」
「「やっぱり、プレーリードッグ!」」
181
お気に入りに追加
3,173
あなたにおすすめの小説

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
共に伯爵家の令嬢と令息であるアミカとミッチェルは幸せな結婚式を挙げた。ところがその夜ミッチェルの体調が悪くなり、二人は別々の寝室で休むことに。
その翌日、アミカは偶然街でミッチェルと自分の友人であるポーラの不貞の事実を知ってしまう。激しく落胆するアミカだったが、侯爵令息のマキシミリアーノの助けを借りながら二人の不貞の証拠を押さえ、こちらの有責にされないように離婚にこぎつけようとする。
ところが、これは白い結婚だと不貞の相手であるポーラに言っていたはずなのに、日が経つごとにミッチェルの様子が徐々におかしくなってきて───

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました
新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる