【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

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1.ボロボロの空き店舗

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「必要なのは、捺染職人と仕立て屋と刺繍工。まずはそんな感じかしら。
布はチンツインド更紗か絹でいくつもり。上質の布を作ってる織り工と契約を結びたいんだけど、クロエに心当たりはある?」

「織り工なら任して! 腕の良い人を知ってるから。で、お店はどうするの?」

「3丁目に大きな空き店舗が出たの知ってる? あれをクロエの名前で買って欲しいの。現金一括で払うわ」

「あそこ? ボロボロじゃない」

「だから安くて助かるの。あの値段なら改修する費用もなんとかなるから」

「全て計算済み?」

「勿論よ。改修が済み次第はじめるわ」

「お給料の殆どを溜め込んでたのはこの為なのね。大工の手配は私に任せて」

「ありがとう、私は職人と話をつける。目をつけてる人はいるから、そんなに時間はかからないと思うの」



 ウォーカー商会の仕事の傍ら、シエナとクロエは新しい商会の立ち上げに奔走した。

 キャンベル伯爵家に見つからないよう、細心の注意を払いながらの準備だったが、とうとう出来上がった捺染布が職人から届けられた。

 シエナとクロエはこっそりと改装の終わった新店舗に行き、テーブルに荷物を置いた。

「小花模様のこれでペティコートを作って、ガウンは淡いピンクの無地で裾とロビングスガウン正面の縁飾りに刺繍を入れるの。
勿論レースもつけるわ。
ストマッカーは・・小さなリボンと宝石かしら」

 布を広げ出来上がりを細かくチェックしながら、詳しく説明するとクロエの目が輝いた。

「うわぁ! めちゃめちゃ良いじゃん、若いレディが泣いて喜びそう」

「それと⋯⋯こっちの布を使って、新しいスタイルのドレスを作ろうと思うの」

 シエナはクロエにスケッチブックを開いて見せ⋯⋯。

「今の流行は肩から裾まで切り替えなしの後ろ姿が多いでしょう?だけどこれは、背中のラインをピタリと体に沿わせるの。
袖も今のようなヴィラーゴ・スリーブじゃなくて、もっとシンプルにして。装飾は袖口とコートにレースのみ」

「それなら大振りの花模様が映えるわね。デザインがシンプルな分、模様の華やかさが引き立つわ」

「普段は裾を下ろしておくんだけど、ガウンの裾を両サイドのスリットから引き出して、後ろ腰の所に寄せてからげるようにするの」

「えーっと⋯⋯つまり、野外では裾を上げておいて、着いたら下ろせば良いのね。これは良いわ、絶対流行りそう」


 シエナは別のページを開き『後はジャケットを作るわ』と呟いた。

「これ?」

ルダンゴト男性用乗馬コートからイメージしたの。
スカートは白のリノンを使って軽やかな感じにして、ジャケットはウエストをキュッと絞るの。腰にはこんな風に大きなバッスルを入れて膨らまして。
これで、日傘を持ったら素敵じゃないかと思うんだけど・・」

 シエナは、スケッチブックを見つめ何も言わないクロエを見て不安になった。

「これ、駄目かしら?」

「⋯⋯凄いわ! ビックリし過ぎて言葉が出なかったの。まさか新しいスタイルのドレスを考案してるとは思わなかった」

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