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13.秘められた恋

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「ジェイクには大切な人がいるみたい」

「恋人とかそういった方のことですか?」

「離れにね女の方が住んでるようなの。それも若い女性」

 ステラはエリンの学生服にブラシをかけながら、
「覗きに行かれたんですか?」


「秘密にしているみたいだから、近くには行ってないの。
でも、ジェイクがそこに出入りしているのを何度も見かけたし、メイドが明るい色のドレスを持って出て来たのも見たわ」


「それで最近、元気がなくなってしまわれたのですね」

「ステラの言い方は何だかあれだけど、確かにそうかも。
だって敷地内に囲いたい程大切な方がいらっしゃるのに・・私、邪魔者よね」


「ジェイク様にお聞きしてみては如何ですか?」

「殆どお会いすることもないのに?
屋敷におられる時は、お食事も離れで取られてるみたいだもの」


 ステラがクスッと笑い、
「随分と気にされてるようですね」

「別に。ジェイクに恋人がいようが愛人がいようが構わないわ。
ジェイクと私はそう言うのとは違うから」


「平民の方かもしれませんね。身分差がある恋愛はなかなか公にはし辛いですから」


「筆頭公爵と平民の恋かぁ、ジェイクが結婚って言い出したのはそのせい? 私を隠れ蓑に使うためとか。

それなら早く問題を片付けて、お二人を祝福してあげなくちゃね」


「どうなさるおつもりですか?」

「お父様にお願いしてその方を養女にしてもらうとか。それなら結婚できるでしょう?」


「・・あまり先走りされませんように。ジェイク様のお考えを聞くまで、おかしな事をなさらないで下さいね」

「わかってるわ、今はまだ秘められた恋ですもの。揶揄ったりなんてしないから」


「普通は同じ敷地内に愛人がいたら嫌がるものですよ。不誠実な行いですからね」

「私達は結婚じゃなくてただの契約だもの。勘違いして騒ぎ立てたら惨めになるだけだわ。
どんな方なのかしら。凄い美人とか、きっと素敵な方なんでしょうね。
毎日会いたいって思われるくらい愛されるってすごく・・」

 話しながらだんだん元気がなくなっていくエリンだった。



 エリンとジェイクが結婚してから既に3ヶ月が経っていて、庭の木々や街路樹は葉を落とし今日は朝から雪が降り積もっている。


 学園に登校し教室に入ると、ざわざわと話していた声がピタリと収まり皆がエリンを見つめてきた。

「おはようございます」

 いつも通り小さな声で挨拶をして、教室の隅の自分の席に座った。


 遠巻きにした生徒達がチラチラとエリンを見ながら小声で話しているが、何を話しているのかエリンには聞こえなかった。

 午前中の授業が終わりエリンが食堂に向かおうとした時、教室のドアが大きな音を立てて開いた。


 バイオレットを先頭にした集団がエリンの元へズカズカと歩いて来た。


「あんた、リーガン公爵を誑し込んだってほんとなの?」

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