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馬上槍試合
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一月
ーーーーーー
祝賀会2日目。今日は闘技場で、10年ぶりの馬上槍試合が行われる。参加者は、王国騎士団と貴族所有の騎士のみとされており、他国からの参加は禁止された。
通常、前夜祭として行われるジョスト(一騎打ち)は行われず、トゥルネイ(団体戦)のみ。日の入りか、陣営全員の敗退をもって終了とし、両陣営で最優秀騎士が選ばれる。
観客席は、貴族と平民で分かれてはいるものの、どちらも多くの人々がひしめき合い、興奮の坩堝と化している。
午前10時過ぎ、騎士たちが左右に分かれて整列した。鎧兜を身につけ、それぞれが意匠を凝らしたランスを手にしている。敵と味方を見分ける為、兜には赤と青のリボンが巻かれている。
騎乗した馬の中には、バーディング(馬鎧)を着けているものもいる。さらに全員が、所属する王国や領主の紋章をつけた、カパリスンと言う布製のカバーを着けている。
ヘラルドと呼ばれる、紋章官の掛け声が響き渡った。
騎士達は一斉に、ランスを水平に構え突撃する。すれ違いざま敵を攻撃し、ターンしては再度攻撃に戻る。馬から落とされた者は、境界線の外へと退場する。
観客席前には、予備のランスを持った従者が控えており、騎士達は途中武器を変えては戦いに戻る。
「トーナメントを観るのは初めて?」
「はい、前回はまだ幼かったので、家でお留守番でした。凄い迫力ですね」
「今回は、他国からの参加者がいないだけまだマシな方だ。多分300人程度だと思う」
「あんなに激しく戦って、怪我はしないのですか?」
「ランスの刃先は鈍らせてあるからね。余程運が悪くない限り、重症にはならないだろう」
両陣営とも多くの落馬者が出て、残った者達は次第に乱戦となっていった。
日の入りと共に、数発の空砲が響き渡った。最後まで残った者達は、その後の祝勝会で金一封と様々な褒賞が与えられた。最優秀騎士となった者達には、更なる褒賞と共に名声と出世への道が与えられた。
数日に渡って行われた祝賀会は、華やかな余韻をそれぞれの胸に残し、閉会となった。
今日も、仮面執事がやってきた。
「アイラ様、本日分の釣書でございます。有象無象は省いてございますので、ご確認ください」
「お断りのお返事を書くわ」
「近々領地にお戻りでしたら、ある程度話をまとめておきませんと、顔合わせが難しくなります」
「お断りのお返事を書きます。顔合わせの必要はないから」
ソフィアは部屋の隅で、ハラハラしながら2人を見ている。
(2人とも、一触即発って感じ)
「伯爵家の為には、後継者が必要です。将来の事を考えますと、1日も早いご婚「そんな事分かっているわ。出かけます。ソフィア、馬車の準備をお願い」」
「アイラ様、どちらへ向かわれますか?」
御者が聞いてくる。
「ごめんなさい、考えてなかったわ。取り敢えず適当に走ってくれるかしら」
静まりかえった馬車の中には、アイラとソフィアの2人。
「さっきは、ごめんなさいね。癇癪を起こすなんて」
「ウィルソンはこの頃態度が悪すぎます」
「アルフレッド様が、ウィルソンは駄々を捏ねてるって」
「ぷっ」ソフィアが吹き出した。
「仮面執事なんて、大っ嫌い」
「では、馘にしますか?」
「まさか、ウィルソンが居なくなるなんて、考えられないわ」
「・・先日、ジファール侯爵様から私宛てにお手紙を頂きました。その中にこれが」
「私宛て?」
「はい。もし、どうにもならなくなったら開けるようにと」
夜、アイラはひとりで暖炉の前に座り込んでいた。昼間、ソフィアから渡された手紙を見つめていたが、封を開ける勇気がない。
(以前だったら、ウィルソンが来て声をかけてくれてたのよね)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです」
「俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「不安なのですね、アイラ様」
「次は必ず、アイラ様を幸せにしてくださる方を見つけます」
「アイラ様を護るのは私」
「他の誰にも譲らない」
「アイラ様を連れて逃げると」
(ウィルソン・・)
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祝賀会2日目。今日は闘技場で、10年ぶりの馬上槍試合が行われる。参加者は、王国騎士団と貴族所有の騎士のみとされており、他国からの参加は禁止された。
通常、前夜祭として行われるジョスト(一騎打ち)は行われず、トゥルネイ(団体戦)のみ。日の入りか、陣営全員の敗退をもって終了とし、両陣営で最優秀騎士が選ばれる。
観客席は、貴族と平民で分かれてはいるものの、どちらも多くの人々がひしめき合い、興奮の坩堝と化している。
午前10時過ぎ、騎士たちが左右に分かれて整列した。鎧兜を身につけ、それぞれが意匠を凝らしたランスを手にしている。敵と味方を見分ける為、兜には赤と青のリボンが巻かれている。
騎乗した馬の中には、バーディング(馬鎧)を着けているものもいる。さらに全員が、所属する王国や領主の紋章をつけた、カパリスンと言う布製のカバーを着けている。
ヘラルドと呼ばれる、紋章官の掛け声が響き渡った。
騎士達は一斉に、ランスを水平に構え突撃する。すれ違いざま敵を攻撃し、ターンしては再度攻撃に戻る。馬から落とされた者は、境界線の外へと退場する。
観客席前には、予備のランスを持った従者が控えており、騎士達は途中武器を変えては戦いに戻る。
「トーナメントを観るのは初めて?」
「はい、前回はまだ幼かったので、家でお留守番でした。凄い迫力ですね」
「今回は、他国からの参加者がいないだけまだマシな方だ。多分300人程度だと思う」
「あんなに激しく戦って、怪我はしないのですか?」
「ランスの刃先は鈍らせてあるからね。余程運が悪くない限り、重症にはならないだろう」
両陣営とも多くの落馬者が出て、残った者達は次第に乱戦となっていった。
日の入りと共に、数発の空砲が響き渡った。最後まで残った者達は、その後の祝勝会で金一封と様々な褒賞が与えられた。最優秀騎士となった者達には、更なる褒賞と共に名声と出世への道が与えられた。
数日に渡って行われた祝賀会は、華やかな余韻をそれぞれの胸に残し、閉会となった。
今日も、仮面執事がやってきた。
「アイラ様、本日分の釣書でございます。有象無象は省いてございますので、ご確認ください」
「お断りのお返事を書くわ」
「近々領地にお戻りでしたら、ある程度話をまとめておきませんと、顔合わせが難しくなります」
「お断りのお返事を書きます。顔合わせの必要はないから」
ソフィアは部屋の隅で、ハラハラしながら2人を見ている。
(2人とも、一触即発って感じ)
「伯爵家の為には、後継者が必要です。将来の事を考えますと、1日も早いご婚「そんな事分かっているわ。出かけます。ソフィア、馬車の準備をお願い」」
「アイラ様、どちらへ向かわれますか?」
御者が聞いてくる。
「ごめんなさい、考えてなかったわ。取り敢えず適当に走ってくれるかしら」
静まりかえった馬車の中には、アイラとソフィアの2人。
「さっきは、ごめんなさいね。癇癪を起こすなんて」
「ウィルソンはこの頃態度が悪すぎます」
「アルフレッド様が、ウィルソンは駄々を捏ねてるって」
「ぷっ」ソフィアが吹き出した。
「仮面執事なんて、大っ嫌い」
「では、馘にしますか?」
「まさか、ウィルソンが居なくなるなんて、考えられないわ」
「・・先日、ジファール侯爵様から私宛てにお手紙を頂きました。その中にこれが」
「私宛て?」
「はい。もし、どうにもならなくなったら開けるようにと」
夜、アイラはひとりで暖炉の前に座り込んでいた。昼間、ソフィアから渡された手紙を見つめていたが、封を開ける勇気がない。
(以前だったら、ウィルソンが来て声をかけてくれてたのよね)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです」
「俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「不安なのですね、アイラ様」
「次は必ず、アイラ様を幸せにしてくださる方を見つけます」
「アイラ様を護るのは私」
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「アイラ様を連れて逃げると」
(ウィルソン・・)
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