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帳簿
しおりを挟む ジェトレ村を、お昼前に出発した俺達は夜に少し休憩したくらい。
殆ど休憩も取らずに、夜通し歩いていた。
イザベラの姉の挙式が、刻一刻と迫っている事もある。
少しでも早く迷宮に行くという意見で、全員が一致していた。
どうやら……
改造された俺のチートな身体は、数日くらい眠らないでも平気らしい。
しかし、それ以上に凄いのが悪魔だ。
イザベラやアモンに聞いた所、彼等は睡眠を全然取らないでも平気だという。
だがメンバーの中で、まともな人間であるジュリアは、そのようなわけにはいかない。
竜神族の血が流れているらしいとはいえ、眠気を訴えるジュリア。
俺は、背中を差し出してやった。
ジュリアは嬉しそうにおぶさる。
これって、ジェトレへ来た時と同じ。
以前より、遥かに絆が深くなっているからジュリアは俺に甘えまくる。
そして「こてん」と寝てしまった。
そんなジュリアの様子を、イザベラはじっと見つめていた。
イザベラにしてみれば、ジュリアがとっても羨ましいと思ったようだ。
彼女からもジュリアが起きたら、交代で背負ってくれとせがまれたのは当たり前の事だった。
ジュリアも、多分断らないだろう。
俺はまたひとつ、嫁に対する接し方を学んだ。
常に公平であれと!
明け方になって漸《ようや》く目覚めたジュリア。
理由を話すと快諾してくれた。
なのですぐ交代すると、イザベラはおもちゃを与えられた子供のように無邪気に笑った。
そして安心したのか、ぐっすりと眠ってしまったのである。
旅立った時から目指す先がキャンプと聞いて、迷宮とのマッチングが余りピンと来なかった俺。
道すがらジュリアに、色々と疑問をぶつけてみた。
ジュリアによると……
この世界では迷宮が発見された場合、規模にもよるが一攫千金を狙って冒険者が殺到するという。
冒険者が大勢居れば、武器防具、魔道具、ポーション、薬草などの迷宮攻略用の商品が大量に必要とされる。
稼ぎになれば取り扱う商人も大挙して押し寄せる。
加えて、日々の生活用品も必要になるから、こちらを扱う商人達も集まるのは当然だ。
こうして人が集まれば、小さな集落や村が直ぐに出来る。
それがこの世界での『キャンプ』と呼ばれる拠点だそうだ。
移動が出来るような露店に近い店がまず出店し、小さな村の形態となる。
迷宮が攻略されるにつれて、得られる冒険者達の利益に比例して段々と大きな店や施設……それらが発展して大きな村、そして町が造られて行くらしい。
本来、俺とジュリアは商人だから店を出す方の立場。
だけど現在はイザベラの依頼を受けているので冒険者という立ち位置である。
そんなこんなで漸く、コーンウォールのキャンプへ到着した。
イザベラも起きていて元気一杯。
悪魔でも眠ればすっきりするのは同じみたい。
俺は改めてキャンプを見た。
ここも外敵の襲来に備えて、頑丈な岩壁でキャンプ全体を囲っている。
俺達は正門から入る。
当然所定の入場料、すなわち税金は必要だ。
その際、身分証明書としてジェトレ村の村民証が役に立ったのは言うまでもない。
だけど、入って吃驚。
聞いていたとはいえ、キャンプ内は冒険者と商人ばっかりだから。
たまに見られる綺麗で且つケバイ女性は、『お水』関係の女性が殆ど。
ちなみに冒険者の女性は、香りで敵に感づかれてしまうから、あまり化粧をしないのだ。
俺はつい、ジロジロ観察をしてしまった。
このコーンウォールのキャンプは、かつての旧ガルドルド魔法帝国の廃墟を囲むように造られた小規模な集落であったという。
しかし現在、人間族は勿論、アールヴやドヴェルグ、そして俺が初めて見る獣人族など冒険者と商人達の人種は多種多彩となっている。
ごみごみしているが、俺はこのコーンウォールのキャンプの雰囲気が嫌いではない。
昔、熱中したロールプレイングゲームの町に酷似しているからだ。
「ジェトレの村に比べればずっと規模が小さいけど何か活気がある場所だな」
俺の言葉を受けて、ジュリアが解説してくれる。
「この規模じゃあ、一般市民は殆ど居ない場所だよ。居るのは冒険者と彼等に対して商売をしようとする商人だけだもの」
「納得! 全てが迷宮ありき……って事か」
「そうだね、迷宮っていうのはこのコーンウォールみたいに古代の遺跡の中にある物もあれば、何者かが意図して最近作られた物もあるんだ。後者はだいたい邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って造り上げた物が多いんだよ」
邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って作り上げただと!?
駄目だ!
俺、何か……「うきうき」して来た!
「もう! トールったら呆れた! 凄く嬉しそうな顔をしてるんだから」
「そうか?」
「顔に出まくりだよ!」
「あはは……」
「もう! 言っとくけど、そんな危険な迷宮なんか絶対に行かないからね。闇の魔法使いは死霊術師が多いんだ。稀少なお宝を餌にして人間の魂を収集してから悪魔に契約を持ちかけるとんでもない輩共だよ」
悪魔!?
悪魔だったらもう俺とジュリアの目の前に居るけど……
それもふたりもだ。
「悪魔に契約を持ちかける、とんでもない輩共」と言ってからジュリアはハッと気がついた。
だって悪魔と『契約』したって今の俺達であり、それも単なる契約ではなく家族になってしまったのだから……
ジュリアはバツが悪そうにイザベラを見た。
そして、申し訳無さそうに両手を合わせたのであった。
殆ど休憩も取らずに、夜通し歩いていた。
イザベラの姉の挙式が、刻一刻と迫っている事もある。
少しでも早く迷宮に行くという意見で、全員が一致していた。
どうやら……
改造された俺のチートな身体は、数日くらい眠らないでも平気らしい。
しかし、それ以上に凄いのが悪魔だ。
イザベラやアモンに聞いた所、彼等は睡眠を全然取らないでも平気だという。
だがメンバーの中で、まともな人間であるジュリアは、そのようなわけにはいかない。
竜神族の血が流れているらしいとはいえ、眠気を訴えるジュリア。
俺は、背中を差し出してやった。
ジュリアは嬉しそうにおぶさる。
これって、ジェトレへ来た時と同じ。
以前より、遥かに絆が深くなっているからジュリアは俺に甘えまくる。
そして「こてん」と寝てしまった。
そんなジュリアの様子を、イザベラはじっと見つめていた。
イザベラにしてみれば、ジュリアがとっても羨ましいと思ったようだ。
彼女からもジュリアが起きたら、交代で背負ってくれとせがまれたのは当たり前の事だった。
ジュリアも、多分断らないだろう。
俺はまたひとつ、嫁に対する接し方を学んだ。
常に公平であれと!
明け方になって漸《ようや》く目覚めたジュリア。
理由を話すと快諾してくれた。
なのですぐ交代すると、イザベラはおもちゃを与えられた子供のように無邪気に笑った。
そして安心したのか、ぐっすりと眠ってしまったのである。
旅立った時から目指す先がキャンプと聞いて、迷宮とのマッチングが余りピンと来なかった俺。
道すがらジュリアに、色々と疑問をぶつけてみた。
ジュリアによると……
この世界では迷宮が発見された場合、規模にもよるが一攫千金を狙って冒険者が殺到するという。
冒険者が大勢居れば、武器防具、魔道具、ポーション、薬草などの迷宮攻略用の商品が大量に必要とされる。
稼ぎになれば取り扱う商人も大挙して押し寄せる。
加えて、日々の生活用品も必要になるから、こちらを扱う商人達も集まるのは当然だ。
こうして人が集まれば、小さな集落や村が直ぐに出来る。
それがこの世界での『キャンプ』と呼ばれる拠点だそうだ。
移動が出来るような露店に近い店がまず出店し、小さな村の形態となる。
迷宮が攻略されるにつれて、得られる冒険者達の利益に比例して段々と大きな店や施設……それらが発展して大きな村、そして町が造られて行くらしい。
本来、俺とジュリアは商人だから店を出す方の立場。
だけど現在はイザベラの依頼を受けているので冒険者という立ち位置である。
そんなこんなで漸く、コーンウォールのキャンプへ到着した。
イザベラも起きていて元気一杯。
悪魔でも眠ればすっきりするのは同じみたい。
俺は改めてキャンプを見た。
ここも外敵の襲来に備えて、頑丈な岩壁でキャンプ全体を囲っている。
俺達は正門から入る。
当然所定の入場料、すなわち税金は必要だ。
その際、身分証明書としてジェトレ村の村民証が役に立ったのは言うまでもない。
だけど、入って吃驚。
聞いていたとはいえ、キャンプ内は冒険者と商人ばっかりだから。
たまに見られる綺麗で且つケバイ女性は、『お水』関係の女性が殆ど。
ちなみに冒険者の女性は、香りで敵に感づかれてしまうから、あまり化粧をしないのだ。
俺はつい、ジロジロ観察をしてしまった。
このコーンウォールのキャンプは、かつての旧ガルドルド魔法帝国の廃墟を囲むように造られた小規模な集落であったという。
しかし現在、人間族は勿論、アールヴやドヴェルグ、そして俺が初めて見る獣人族など冒険者と商人達の人種は多種多彩となっている。
ごみごみしているが、俺はこのコーンウォールのキャンプの雰囲気が嫌いではない。
昔、熱中したロールプレイングゲームの町に酷似しているからだ。
「ジェトレの村に比べればずっと規模が小さいけど何か活気がある場所だな」
俺の言葉を受けて、ジュリアが解説してくれる。
「この規模じゃあ、一般市民は殆ど居ない場所だよ。居るのは冒険者と彼等に対して商売をしようとする商人だけだもの」
「納得! 全てが迷宮ありき……って事か」
「そうだね、迷宮っていうのはこのコーンウォールみたいに古代の遺跡の中にある物もあれば、何者かが意図して最近作られた物もあるんだ。後者はだいたい邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って造り上げた物が多いんだよ」
邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って作り上げただと!?
駄目だ!
俺、何か……「うきうき」して来た!
「もう! トールったら呆れた! 凄く嬉しそうな顔をしてるんだから」
「そうか?」
「顔に出まくりだよ!」
「あはは……」
「もう! 言っとくけど、そんな危険な迷宮なんか絶対に行かないからね。闇の魔法使いは死霊術師が多いんだ。稀少なお宝を餌にして人間の魂を収集してから悪魔に契約を持ちかけるとんでもない輩共だよ」
悪魔!?
悪魔だったらもう俺とジュリアの目の前に居るけど……
それもふたりもだ。
「悪魔に契約を持ちかける、とんでもない輩共」と言ってからジュリアはハッと気がついた。
だって悪魔と『契約』したって今の俺達であり、それも単なる契約ではなく家族になってしまったのだから……
ジュリアはバツが悪そうにイザベラを見た。
そして、申し訳無さそうに両手を合わせたのであった。
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