【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

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十二月 一部暴力シーンがあります。

ーーーーーー

「あなたに近付くとか、怖すぎて無理だわ」

「心配すんなって。今あんたに手を出しても、俺には何の得にもならねえ。それよか、奴らを道連れにした方が、よっぽど楽しいってもんよ。側に来いよ、知りたいだろ? どうやって俺が屋敷に忍び込んだか」

 アイラは右手を脇に挟み、左手を頬に当てて、ビクターを見ていた。

「興味はあるけど」
 アイラは仕方なさそうに、少しだけ側に寄った。
 ビクターが鉄格子に顔を近づけて、
「もっと近くに来て、耳を貸せ。裏切り者の名前を教えてやる」

 アイラが近づくと、ビクターは突然右手を伸ばしアイラの髪を鷲掴みにした。髪を強く握られて、アイラの顎が上った。
 アイラは左手で鉄格子を掴み、脇に挟んでいた右手を前に出す。その手には小型のナイフが握られていて、ビクターの腹に当たっている。

「手を離しなさい。あなたより私の方が有利な様ね」
 ビクターは髪から手を離し、
「ひゅう、やるねぇ」

「話したければ聞くけど、どうする? 因みに私はどっちでも構わないわ。あなたが1人で全部の罪を背負って逝っても、仲間を道連れにしても。前者を選んだら、あなたは仲間に感謝してもらえるわね。間違いなく」

「ストックトンが指示してきた手紙を全部隠してる。手紙はいつも、ストックトンがカジノの胴元に預けて行く。それを俺が回収してた。必ず処分しろって言われてたが、するわけないだろ?
場所はニケーア墓地、一番奥に頭んとこが欠けた墓がある。その裏に埋めた壺の中だ。それから裏切り者の名前は××××だ。奴が裏口の鍵を盗んだ」

「もし無駄な手間をかけさせたって分かったら、どうなるか分かってるんでしょうね」
「どうせ俺は助からねえ、だったら全員道連れにしてやる」



「アイラ、すごい手際だったね。まるで別人だ」
「トマス様! いらっしゃったのですか?」

「うん、予定が変わってね。帰って来たら、丁度アイラ達が来たって連絡が来たから、驚かせようと思ったんだ。こっちが驚かされたけど」
「お恥ずかしい所をお見せしました」
「アイラは女優でもやっていけそうだね」
 トマスに揶揄われ、顔を真っ赤にするアイラ。

 ウィルソンは2人の男に羽交い締めにされている。
「ウィルソンは、途中で飛び出そうとしたから止めたんだ。もう大丈夫だから、離してあげなさい」

 ウィルソンがアイラを睨んでいる。
「・・アイラ様、お疲れ様です。根に持つタイプの執事でございます。本日は確か、危険な事はしないお約束だったように思いますが?」
 ウィルソンを横目で睨みながら、
「でも、上手くいったでしょう?」

「イメージはブリジットですか?」
 つんと横を向きながら、
「シンディも入れてみたわ」


「その証拠を取りに行くのかな?」

「はい、それはウィルソンに行ってもらいます。ウィルソン。カジノの胴元を捕縛するよう指示を出して。警戒しているはずだから用心する様に。その後、ビクターが言っていた証拠の回収を。私はストックトン侯爵の所へ行きます」

「「「駄目です(だ)」」」

「ストックトンは、アイラ様が狙いだって言っていたではありませんか。そんな所に乗り込むなんて」
「例え証拠があっても、それだけで侯爵を捕まえるのは難しいかも知れない。だって悪事は全部人にやらせてるんだもの」
「確かにそうだが」

「今のままでは、せいぜい社交界から追い出すとか、その位で終わってしまう。彼に罪を償わせなきゃ」

「まさか、また何か考えついてるとか言わないですよね。アイラ様が何か思い付くと碌なことがない」

「今日は問題なかったでしょう?」
「あれを問題ないと言うのは、アイラ様だけだと思います。それにアイラ様の場合、次の策も安全ではないと断言できます」


 全員から反対され、アイラ達はいったん屋敷に戻った。証拠の回収は、トマスが請け負ってくれた。

「ヘンリーとエドムントは?」
「ヘンリーはまだ領地から戻って来ていません。エドムントはカジノの近くの宿屋です」

「エドムントに連絡を入れて、胴元を捕縛したらアルフレッド様の所へ。怪我をしない様十分注意するように伝えて」
「分かりました。エドムントへの連絡と応援は、ジファール侯爵の手の者に行ってもらう様頼んできます。その時に何人か借りて来るので、帰ってくるまで絶対に屋敷から出ないで下さい」

「分かってる。使用人もいるし、しっかり戸締りしておくから」
「ソフィア、頼んだぞ」
 ウィルソンが出て行く。


「ソフィア。家中の戸締りを確認して、使用人に外出しないように言ってきてちょうだい」

 アイラはポケットから、昨日の夜書いた書類を取り出した。多分これでストックトン侯爵を追い詰められるはず。


 ドアがノックされて、ソフィアが入ってくる。アイラは慌てて、書類をポケットにしまった。

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