【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

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招待

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十二月

ーーーーーー

「ビクターは牢の中で、傷の治療をしています。大袈裟に痛がっていて、今日は尋問できそうにないので帰ってきました」
「トマス様はおられたのかな?」
「はい、ご挨拶だけして参りました」

「では今頃、アイラの武勇伝を聞いて、大喜びしておられる事だろう」

「アルフレッド様、どうかウィルソンを刺激しないで下さい。漸く落ち着いてくれた所なので」
「アイラ様、私を猛獣扱いするのは止めていただきます」
「ウィルソンはガチガチの頑固だけど、猛獣じゃないわ。どっちかと言うとお母さ「アイラ様?」っ、何でもないわ」

「ソフィア、2人はいつもこうなのかい?」
「そうですね。いつもの風景ですね」

「それは毎日が楽しそうだ。ウィルソンが従者を辞める時、とても嬉しそうに帰っていった理由が分かったよ。さて、私はそろそろ静かで寂しい我が家に帰るとするよ」

「アルフレッド様、今日はありがとうございました。デイビッドの事、もう暫くお願いします」

「ストックトン侯爵には、くれぐれも注意するように。お勧めは、トマス様か私が一緒に行く事だ。彼は権力者に弱いし、社交界での評判を酷く気にする矮小な男だからね」
「ビクターが捕まった事は、ストックトン侯爵に直ぐ伝わると思うので、少し揺さぶりをかけて様子を見ます」
「デイビッドの時のように?」
「はい、“策士策に溺れる” と言いますから」
「その間の彼の見張りは、今まで通り続けておく。何か変化があれば直ぐに知らせる。ウィルソン、必要なら護衛を貸す。遠慮はしなくていい」
「はい、遠慮はしません。今はジファール侯爵のお力がどうしても必要なので」
「ほう、ウィルソンにそれを言わせるとは。アイラは凄いな。アイラ、先日の伝言は伝えてくれたかな?」
「はい、あっ」
 その時のウィルソンの反応を思い出した。
「ん?」
「いえ、あの、ウィルソンには意味が分かったようなので、大丈夫です」

「はは、どんな反応をしたのか想像がつくよ」


 アルフレッドが帰っていった。
「アイラ様、少しお部屋で休まれてはいかがですか?」
「そうね、流石に今日は疲れたわ。ソフィアとウィルソンも休憩してね」

 アイラが部屋を出て行く。


「ウィルソン? 結構愛されてるんじゃない?」
「はぁ? 何言ってるんだお前」
「さっきのアイラ様の話、ちゃんと聞いてなかったの?」
「聞いてた。でも、どこにそんな話が」
「あんたがビクターのとこに駆けつけて、怒鳴り声が聞こえてきた。その途端、アイラ様は馬車の屋根に登った。さて、何故でしょうか?」
「怪我を心配されたんだろう。アイラ様は使用人に優しい主だからな」

「あんた達ってほんと、似たもの同士だわ」


「アイラ様、じっとして下さい。あと少しです」
「ソフィア、これじゃ飾り立てすぎじゃないかしら」
「王妃様のご招待ですよ。これ位しないと目立ちません。ジファール侯爵様に確認いたしましたので、これで問題ありません」

「いつの間に? ソフィアもウィルソンも何だか別人みたい」
「アイラ様もですよ。最近は昔のアイラ様に戻られたようで、嬉しゅうございます」

「そんなに、あれだった?」
「はい、お一人で領地管理されている重責で、酷く生真面目になられて」
「そうかしら」
「偶には、王都で夜会やお茶会に参加されるのも、良い刺激になるのではありませんか?」

「そうね、今度は純粋に遊びにきましょう。リリアも連れてきたら喜びそうね」
「その時は、ギータも一緒にお願いしますね」
「いいけど、どうして?」
「リリアはギータのこと・・何でもありません。何となくです」


 先日降り積もった雪が溶けかけて、石畳を濡らしている。道路脇に寄せられた雪は薄黒いかたまりになっていた。

「ソフィア、雪が黒くなるってびっくりね」
「そうですね。領地では茶色くなりますから」
「その通りね。学院に通ってた時は気づかなかったわ」
「足元にお気をつけください。ドレスの裾を持ち上げて、汚れないようにしませんと」

 馬車に乗り王宮へ向かう。朝早くに起こされて、お風呂にマッサージにと準備に追われたアイラは、馬車の中でうとうとしてしまう。
 王宮が近くなりソフィアが起こしてくれた。
 王宮前の長い一直線の道路。両脇には大木のプラタナスが並んでいる。

「紅葉の季節は圧巻でしょうね」

 道の向こうに王宮が見えてきた。想像した以上の、巨大で絢爛豪華な佇まいに早くも逃げ出したくなったアイラだった。
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