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意趣返し
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十二月
ーーーーーー
「アイラ!」
デイビッドを椅子に座らせて、男達が出て行く。
「アイラ、よく来てくれた。早くこれを外してくれ、手首がもげそうだ」
「お久しぶりです、デイビッド。お話が終わったら外せると思うので、もう少し辛抱してくださいね」
「ったく。ここは寒くて、飯も不味くて最悪だよ。何で俺をこんな目に遭わせるんだ?」
「・・今日は朝から雪が降っていますの。もう積もり始めているので、夜はもっと冷えるかもしれませんね」
「アイラ、それよりここはどこなんだ? 何でこんな目にあわせる? 頼むよ、これを外して一緒に帰ろう。な?」
「今日は、お話の続きを聞きに参りましたの。ビクターに騙されたのですよね」
デイビッドは目を逸らし、黙り込んだ。
「ビクターの居場所は掴んでいますの。見張りもつけていますし。では、先にあちらの方からお話を伺う事に致しますね」
「そんな嘘には騙されないよ。奴は見つからない。狡猾で姑息な奴だから、お前なんかが見つけられるわけがない」
「残念ですわ。時間を無駄にしてしまった様ですね。デイビッドにはもう一度牢に戻って頂いて、ビクターに会いに行ってきます」
「ハッタリだ」
「そう思われるのでしたらご自由にどうぞ。茶髪でグレーの目、小柄で少し猫背気味。後の特徴はなんでしたかしら。そうそう、あった方全員が気持ち悪いって仰ったのでした」
「本当に見つけたのか」
「はい。今はスラムに近い宿屋で巣篭もり中のようです。この寒さでは、見張りの方が苦労されていると思うので、この後直ぐ行ってきます。デイビッドは迎えの方が来てくれるまで、暫くお待ちくださいね」
そう言って、アイラは席を立つ。ドアの取っ手に手をかけた時、
「待ってくれ。奴はお前の父上達を殺したんだ」
「続きを」
「奴は馬車に細工して、父上達の事故を起こした」
「何故?」
「俺が爵位を継げるように。あの頃俺は、仲間に馬鹿にされて落ち込んでたんだ。あいつはそれを見ていて、助けてやるって」
「ビクターの指示で、お父様達を呼び出したのですね?」
「そうだ、俺は嵌められたんだ。親切そうな振りをして、まさか殺すとは思ってなかったんだ」
「本当に? お父様が亡くなれば、伯爵になれると思っていたのでしょう?」
「確かに誤解してた。それは認める。でも殺すつもりはなかったんだ。信じてくれ」
「その後からビクターは、デイビッドにあれこれと指示を出しはじめたのですか?」
「そうだ、ブリジットを連れて領主館へ行けとか、工房の情報を取ってこいとか」
「ブリジットの名前をビクターが?」
「いや、お前が追い出せない女で、領主館で騒ぎを起こすような女を見つけろと言われた」
「他に知っていることは?」
「ビクターは、領主館へ忍び込んだって言ってた」
「その方法は?」
「それは知らないが、簡単だったって。お前を殴って気絶させたのも奴だ」
「色々話して頂いて、ありがとうございました。お話の内容を確認して参りますので、もう暫くお待ち下さい」
「待て、これを外してくれるんじゃないのか」
「牢に戻ったら外して貰えますわ」
「全部話しただろ、俺をここから出せ!」
デイビッドが飛びかかってきた。アイラはマントの下から手を出した。
「ぐぇっ」
デイビッドが膝をついた。アイラが強く壁を叩くと、ドアが勢いよく開き男達が雪崩れ込んできた。
ウィルソンがアイラを抱え込む。男達が、床に倒れ悶絶しているデイビッドを抱えて牢に連れ戻した。
「アイラ様!」
ウィルソンが青筋を立てて怒っている。
「合図が遅すぎます!」
「ウィルソン、落ち着け。アイラは元気そうだぞ」
アイラがにっこり笑っている。手には棒状の何か。
「正当防衛ですわ」
「はぁ?」
「どんなに酷い人相手でも、こちらから手を出すのは良くありませんでしょう。ですから、デイビッドに先に行動して貰いましたの」
「アイラ、手に持っているのは何だい?」
「擂粉木ですわ。今朝方、厨房から借りてまいりました。これなら怪我はしないでしょう?」
「はっはっは、流石アイラだ。すっきりしたかね?」
「はい、おかげさまで。後は司法にお任せするつもりですが、その前にちょっぴり意趣返し出来ました」
やっぱりアイラ様は、とんでもない事をしでかす。いつか絶対に、思いっきりお尻を
「ウィルソン、先に言っておきます。お尻は叩かせませんからね」
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「アイラ!」
デイビッドを椅子に座らせて、男達が出て行く。
「アイラ、よく来てくれた。早くこれを外してくれ、手首がもげそうだ」
「お久しぶりです、デイビッド。お話が終わったら外せると思うので、もう少し辛抱してくださいね」
「ったく。ここは寒くて、飯も不味くて最悪だよ。何で俺をこんな目に遭わせるんだ?」
「・・今日は朝から雪が降っていますの。もう積もり始めているので、夜はもっと冷えるかもしれませんね」
「アイラ、それよりここはどこなんだ? 何でこんな目にあわせる? 頼むよ、これを外して一緒に帰ろう。な?」
「今日は、お話の続きを聞きに参りましたの。ビクターに騙されたのですよね」
デイビッドは目を逸らし、黙り込んだ。
「ビクターの居場所は掴んでいますの。見張りもつけていますし。では、先にあちらの方からお話を伺う事に致しますね」
「そんな嘘には騙されないよ。奴は見つからない。狡猾で姑息な奴だから、お前なんかが見つけられるわけがない」
「残念ですわ。時間を無駄にしてしまった様ですね。デイビッドにはもう一度牢に戻って頂いて、ビクターに会いに行ってきます」
「ハッタリだ」
「そう思われるのでしたらご自由にどうぞ。茶髪でグレーの目、小柄で少し猫背気味。後の特徴はなんでしたかしら。そうそう、あった方全員が気持ち悪いって仰ったのでした」
「本当に見つけたのか」
「はい。今はスラムに近い宿屋で巣篭もり中のようです。この寒さでは、見張りの方が苦労されていると思うので、この後直ぐ行ってきます。デイビッドは迎えの方が来てくれるまで、暫くお待ちくださいね」
そう言って、アイラは席を立つ。ドアの取っ手に手をかけた時、
「待ってくれ。奴はお前の父上達を殺したんだ」
「続きを」
「奴は馬車に細工して、父上達の事故を起こした」
「何故?」
「俺が爵位を継げるように。あの頃俺は、仲間に馬鹿にされて落ち込んでたんだ。あいつはそれを見ていて、助けてやるって」
「ビクターの指示で、お父様達を呼び出したのですね?」
「そうだ、俺は嵌められたんだ。親切そうな振りをして、まさか殺すとは思ってなかったんだ」
「本当に? お父様が亡くなれば、伯爵になれると思っていたのでしょう?」
「確かに誤解してた。それは認める。でも殺すつもりはなかったんだ。信じてくれ」
「その後からビクターは、デイビッドにあれこれと指示を出しはじめたのですか?」
「そうだ、ブリジットを連れて領主館へ行けとか、工房の情報を取ってこいとか」
「ブリジットの名前をビクターが?」
「いや、お前が追い出せない女で、領主館で騒ぎを起こすような女を見つけろと言われた」
「他に知っていることは?」
「ビクターは、領主館へ忍び込んだって言ってた」
「その方法は?」
「それは知らないが、簡単だったって。お前を殴って気絶させたのも奴だ」
「色々話して頂いて、ありがとうございました。お話の内容を確認して参りますので、もう暫くお待ち下さい」
「待て、これを外してくれるんじゃないのか」
「牢に戻ったら外して貰えますわ」
「全部話しただろ、俺をここから出せ!」
デイビッドが飛びかかってきた。アイラはマントの下から手を出した。
「ぐぇっ」
デイビッドが膝をついた。アイラが強く壁を叩くと、ドアが勢いよく開き男達が雪崩れ込んできた。
ウィルソンがアイラを抱え込む。男達が、床に倒れ悶絶しているデイビッドを抱えて牢に連れ戻した。
「アイラ様!」
ウィルソンが青筋を立てて怒っている。
「合図が遅すぎます!」
「ウィルソン、落ち着け。アイラは元気そうだぞ」
アイラがにっこり笑っている。手には棒状の何か。
「正当防衛ですわ」
「はぁ?」
「どんなに酷い人相手でも、こちらから手を出すのは良くありませんでしょう。ですから、デイビッドに先に行動して貰いましたの」
「アイラ、手に持っているのは何だい?」
「擂粉木ですわ。今朝方、厨房から借りてまいりました。これなら怪我はしないでしょう?」
「はっはっは、流石アイラだ。すっきりしたかね?」
「はい、おかげさまで。後は司法にお任せするつもりですが、その前にちょっぴり意趣返し出来ました」
やっぱりアイラ様は、とんでもない事をしでかす。いつか絶対に、思いっきりお尻を
「ウィルソン、先に言っておきます。お尻は叩かせませんからね」
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