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初雪
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十二月
ーーーーーー
未明から、今年初めての雪が降り始めた。使用人が目覚め仕事を始める頃には、玄関先や裏庭に雪が積もりはじめていた。
アイラが窓から外を眺めていた時、ソフィアが入ってきた。
「おはようございます。今日はお早いのですね」
「おはようソフィア」
「どうされましたか?」
(昔は雪が好きだったわ。雪だるまを作ったり、みんなで雪合戦したり。時々お父様も参加して)
今は雪を見ると、別宅へ向けて必死に馬を走らせた時の事ばかり思い出す。雪の中を走り、物言わぬ両親に会い葬儀を行った。お墓の周りに積もった雪は、冬の柔らかい日差しでキラキラと輝いていた。
「何でもないわ。さぁ今日は忙しくなるから、気合を入れなくちゃ」
昼前に、馬車でアルフレッドの屋敷へと向かった。雪は止む気配をみせず、細雪から牡丹雪に変わり始めた。王都の道は普段より人通りが少なく、ちらほらと見かける馬車もゆっくりと走っている。
馬車に乗っているのはアイラとソフィア、そしてウィルソン。アイラとソフィアは膝掛けに包まれているが、それでも寒さが染み込んでくる。
「新年は領地で迎えたいわ」
「クリスマスは良いのですか?」
「そうね、ミサに参加出来れば嬉しいけど。流石に厳しいかなって」
「ギータへの連絡はその事だったのですか?」
「他にも細々とした事があるけど、教会への寄付とか。私がいなくても、例年通りご馳走を作って振舞って欲しいから、その手配なんかを頼んだの」
「デイビッドには今日、絶対に話をさせるわ。彼が喋ったら、ビクターを捕まえる。デイビッドは自己保身の為になら、何だって喋ると思うの。ビクターに対して腹を立ててる様だし、きっと上手くいくわ」
「どうしてもアイラ様お一人で話されるのなら、デイビッドは牢の中にいさせた方が」
「手は拘束しておくけど、牢からは出します。デイビッドを油断させたいの」
「それは分かりますが、自暴自棄になったら何をしでかすか分かりません」
「無茶はしないから」
「その言葉が信用出来れば良いのですが」
ウィルソンとソフィアが同時に溜息をついた。
「アルフレッド様、色々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「タウンハウスに牢がある家は珍しいからね。アイラの役に立てて光栄だよ。直ぐにはじめるのかい?」
「はい、出来れば早く片付けてしまいたいので」
「では、特設会場に案内しよう。ソフィアはそこの部屋で待っていてくれるかな。アイラ、マントは着たままで。地下はかなり冷えるからね」
屋敷の奥に、地下へ続く階段があった。既にランプが灯されていて、階段下のドアが見える。ドアを開けた先に、男が二人立っている。男達の後ろにはドア二つ並んでいる。多分そこが尋問室なのだろう。
「彼の様子は?」
「はい。いつも通り食事に文句をつけていましたが、完食してベッドでふて寝しています」
「アイラは奥の部屋へ、ウィルソンは手前の部屋に入っていてくれ。準備ができたら、デイビッドを連れて来る」
「ジファール侯爵、デイビッドの拘束はきつめにお願いします。アイラ様、本当に「ウィルソン大丈夫、心配しないで。隣の部屋にはみんながいてくれるんだし」」
「しかし」
「さて、心配性のウィルソン君。準備して頂けますかな?」
「ジファール侯爵、楽しまないでください。アイラ様は本当に無茶ばかりされるので」
尋問室の中には机と椅子が2脚あった。隅に置かれた小さなテーブルの下には、スツールが押し込まれている。しっかり換気されているのか、埃やカビの気配がない。
(しょっちゅう利用しているのかしら、それとも掃除して下さったとか?)
アイラは、ドアから遠い方の椅子に腰掛けた。暫くすると両手を拘束され、腰縄をつけたデイビッドが男達と共に入ってきた。
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未明から、今年初めての雪が降り始めた。使用人が目覚め仕事を始める頃には、玄関先や裏庭に雪が積もりはじめていた。
アイラが窓から外を眺めていた時、ソフィアが入ってきた。
「おはようございます。今日はお早いのですね」
「おはようソフィア」
「どうされましたか?」
(昔は雪が好きだったわ。雪だるまを作ったり、みんなで雪合戦したり。時々お父様も参加して)
今は雪を見ると、別宅へ向けて必死に馬を走らせた時の事ばかり思い出す。雪の中を走り、物言わぬ両親に会い葬儀を行った。お墓の周りに積もった雪は、冬の柔らかい日差しでキラキラと輝いていた。
「何でもないわ。さぁ今日は忙しくなるから、気合を入れなくちゃ」
昼前に、馬車でアルフレッドの屋敷へと向かった。雪は止む気配をみせず、細雪から牡丹雪に変わり始めた。王都の道は普段より人通りが少なく、ちらほらと見かける馬車もゆっくりと走っている。
馬車に乗っているのはアイラとソフィア、そしてウィルソン。アイラとソフィアは膝掛けに包まれているが、それでも寒さが染み込んでくる。
「新年は領地で迎えたいわ」
「クリスマスは良いのですか?」
「そうね、ミサに参加出来れば嬉しいけど。流石に厳しいかなって」
「ギータへの連絡はその事だったのですか?」
「他にも細々とした事があるけど、教会への寄付とか。私がいなくても、例年通りご馳走を作って振舞って欲しいから、その手配なんかを頼んだの」
「デイビッドには今日、絶対に話をさせるわ。彼が喋ったら、ビクターを捕まえる。デイビッドは自己保身の為になら、何だって喋ると思うの。ビクターに対して腹を立ててる様だし、きっと上手くいくわ」
「どうしてもアイラ様お一人で話されるのなら、デイビッドは牢の中にいさせた方が」
「手は拘束しておくけど、牢からは出します。デイビッドを油断させたいの」
「それは分かりますが、自暴自棄になったら何をしでかすか分かりません」
「無茶はしないから」
「その言葉が信用出来れば良いのですが」
ウィルソンとソフィアが同時に溜息をついた。
「アルフレッド様、色々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「タウンハウスに牢がある家は珍しいからね。アイラの役に立てて光栄だよ。直ぐにはじめるのかい?」
「はい、出来れば早く片付けてしまいたいので」
「では、特設会場に案内しよう。ソフィアはそこの部屋で待っていてくれるかな。アイラ、マントは着たままで。地下はかなり冷えるからね」
屋敷の奥に、地下へ続く階段があった。既にランプが灯されていて、階段下のドアが見える。ドアを開けた先に、男が二人立っている。男達の後ろにはドア二つ並んでいる。多分そこが尋問室なのだろう。
「彼の様子は?」
「はい。いつも通り食事に文句をつけていましたが、完食してベッドでふて寝しています」
「アイラは奥の部屋へ、ウィルソンは手前の部屋に入っていてくれ。準備ができたら、デイビッドを連れて来る」
「ジファール侯爵、デイビッドの拘束はきつめにお願いします。アイラ様、本当に「ウィルソン大丈夫、心配しないで。隣の部屋にはみんながいてくれるんだし」」
「しかし」
「さて、心配性のウィルソン君。準備して頂けますかな?」
「ジファール侯爵、楽しまないでください。アイラ様は本当に無茶ばかりされるので」
尋問室の中には机と椅子が2脚あった。隅に置かれた小さなテーブルの下には、スツールが押し込まれている。しっかり換気されているのか、埃やカビの気配がない。
(しょっちゅう利用しているのかしら、それとも掃除して下さったとか?)
アイラは、ドアから遠い方の椅子に腰掛けた。暫くすると両手を拘束され、腰縄をつけたデイビッドが男達と共に入ってきた。
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