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王妃
しおりを挟む愛奈は、急に笑い出した二人をキョトンとした瞳で見つめている。
「いいのよ!愛奈ちゃん。愛奈ちゃんが、そこからあれを連想するのは、ほぼ皆無なんだから」
「あの~・・・」
「きっと、言っても信じられないわよ。なにせ、ここにいる裕子でさえ未だに信じられないみたいなんだから」
すると裕子が・・・
「そりゃそうよ!だって、今だって、正直、あの大晦日の夜の雪子が信じられないのよ」
「でしょうね・・・。でもね、あの夜のあやつが、あやつの偽りのない本当の姿なの」
「いつも、あんな感じだったの?」
「そうよ。いつも、いつか捨てられてしまうんじゃないかって怯えている子猫・・・。それが、あやつだったの」
夏樹は、少し寂しそうな表情になると、窓際の席に座りながらため息を吐く。
アトリエの2階にも幾つかのテーブルが並べられていて、レストランだった頃の雰囲気が、
そのまま、アトリエとして過ぎていく時間の中を見つめているかのように優しく包んでいる。
「そして、あたしも、あやつと同じだったの・・・。あたしも、いつか、あやつに捨てられてしまうんじゃないかって怯えながら、あやつを愛していたの」
「知らなかったわ・・・。夏樹さんが、そんな風に思っていたなんて」
「でしょ?あたしって、昔からモテまくってたから」
「そんなにいたの?」
「だから、あやつに言われたのよ。初めての日に(私は、何人目?)ってね」
「うそ・・・初めて聞いたわ」
「そりゃそうよ。今まで、誰にも言った事なんてないもの」
「雪子が・・・?」
「それにね、あやつの最初のビンタも、その時だったのよ」
「うそ・・・何か、言ったの?」
「何も、言わないわよ。ただ、あやつのお股からお顔を出したら、いきなり飛んできたわよ!」
「雪子のお股って・・・何、やってたのよ?」
「何って・・・それよりも、あたしゃビックリしたわよ。んでもって、ケラケラって笑うのよ?」
「うそみたい・・・」
「でもね、ケラケラ笑ってる時のあやつってね、とっても可愛いのよ。お目目をまん丸に開いて、ほんと、ワクワク子猫みたいに笑うの。あたしは、そんな、あやつが好きでね・・・。あやつってね、身体全部を使って愛してくるの」
「雪子が・・・」
「そんなあやつを好きになればなるほど怖くなっていってね。いつか、あやつの姿が見えなくなってしまう日が来るような気がして・・・。だからかもしれない、いつからか、気がついたら、あやつの心を傷つける日々になっていたの。きっと、あやつを傷つける事で、あやつの愛を確かめてしまっていたのかもしれないわね。あやつを傷つける度に、自分が悲しくて悲しくて仕方がなかったのに・・・。それなのに、そんな自分の感情を止める事も出来なくてね」
「それで、別れてしまったの?」
「そう・・・。最後はお互いがお互いを傷つける日々の繰り返しになっていったのよ・・・。そして・・・ある日、一本だけ残っていた最後の糸が、プツンって切れちゃったの」
「そうだったの・・・。でも、雪子は、ちょっと変な事を言ってたのよ」
「変な事・・・?」
「ええ・・・今年になって、確か、雪子のお父さんが入院した時じゃなかったかしら?」
「あたしの父親が、やくざと繋がりがあるとかってやつね」
「えええ===っ?そうだったの?」
「あら、違ったかしら?」
「違うも何も、夏樹さんのお父さんが、そんな人だったなんて私も知らなかったわよ」
「あたしの家族って、あたしがまだ小さい頃にあの街に引っ越してきたのよ。知らない街で商売をしようとしたら、そっち系の人と知り合いになった方が、何かと仕事も上手くいく時代だったから、そんなに珍しい事でもないわよ」
「そうなの?私は商売とかよく分からないけど、それで、雪子があんな事を言ってたのね」
「あやつは、今でも、父親の事を憎んでいるでしょ?」
「夏樹さん、知ってたの?」
「いいのよ!愛奈ちゃん。愛奈ちゃんが、そこからあれを連想するのは、ほぼ皆無なんだから」
「あの~・・・」
「きっと、言っても信じられないわよ。なにせ、ここにいる裕子でさえ未だに信じられないみたいなんだから」
すると裕子が・・・
「そりゃそうよ!だって、今だって、正直、あの大晦日の夜の雪子が信じられないのよ」
「でしょうね・・・。でもね、あの夜のあやつが、あやつの偽りのない本当の姿なの」
「いつも、あんな感じだったの?」
「そうよ。いつも、いつか捨てられてしまうんじゃないかって怯えている子猫・・・。それが、あやつだったの」
夏樹は、少し寂しそうな表情になると、窓際の席に座りながらため息を吐く。
アトリエの2階にも幾つかのテーブルが並べられていて、レストランだった頃の雰囲気が、
そのまま、アトリエとして過ぎていく時間の中を見つめているかのように優しく包んでいる。
「そして、あたしも、あやつと同じだったの・・・。あたしも、いつか、あやつに捨てられてしまうんじゃないかって怯えながら、あやつを愛していたの」
「知らなかったわ・・・。夏樹さんが、そんな風に思っていたなんて」
「でしょ?あたしって、昔からモテまくってたから」
「そんなにいたの?」
「だから、あやつに言われたのよ。初めての日に(私は、何人目?)ってね」
「うそ・・・初めて聞いたわ」
「そりゃそうよ。今まで、誰にも言った事なんてないもの」
「雪子が・・・?」
「それにね、あやつの最初のビンタも、その時だったのよ」
「うそ・・・何か、言ったの?」
「何も、言わないわよ。ただ、あやつのお股からお顔を出したら、いきなり飛んできたわよ!」
「雪子のお股って・・・何、やってたのよ?」
「何って・・・それよりも、あたしゃビックリしたわよ。んでもって、ケラケラって笑うのよ?」
「うそみたい・・・」
「でもね、ケラケラ笑ってる時のあやつってね、とっても可愛いのよ。お目目をまん丸に開いて、ほんと、ワクワク子猫みたいに笑うの。あたしは、そんな、あやつが好きでね・・・。あやつってね、身体全部を使って愛してくるの」
「雪子が・・・」
「そんなあやつを好きになればなるほど怖くなっていってね。いつか、あやつの姿が見えなくなってしまう日が来るような気がして・・・。だからかもしれない、いつからか、気がついたら、あやつの心を傷つける日々になっていたの。きっと、あやつを傷つける事で、あやつの愛を確かめてしまっていたのかもしれないわね。あやつを傷つける度に、自分が悲しくて悲しくて仕方がなかったのに・・・。それなのに、そんな自分の感情を止める事も出来なくてね」
「それで、別れてしまったの?」
「そう・・・。最後はお互いがお互いを傷つける日々の繰り返しになっていったのよ・・・。そして・・・ある日、一本だけ残っていた最後の糸が、プツンって切れちゃったの」
「そうだったの・・・。でも、雪子は、ちょっと変な事を言ってたのよ」
「変な事・・・?」
「ええ・・・今年になって、確か、雪子のお父さんが入院した時じゃなかったかしら?」
「あたしの父親が、やくざと繋がりがあるとかってやつね」
「えええ===っ?そうだったの?」
「あら、違ったかしら?」
「違うも何も、夏樹さんのお父さんが、そんな人だったなんて私も知らなかったわよ」
「あたしの家族って、あたしがまだ小さい頃にあの街に引っ越してきたのよ。知らない街で商売をしようとしたら、そっち系の人と知り合いになった方が、何かと仕事も上手くいく時代だったから、そんなに珍しい事でもないわよ」
「そうなの?私は商売とかよく分からないけど、それで、雪子があんな事を言ってたのね」
「あやつは、今でも、父親の事を憎んでいるでしょ?」
「夏樹さん、知ってたの?」
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