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王妃
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十二月
ーーーーーー
デイビッドを拘束した翌日、ヘンリーが帰ってきた。
「お疲れ様でした。銀龍亭はどうでしたか?」
「デイビッド様とブリジット様は、領主館への行きと帰りに一泊ずつされた様です。デイビッド様があの宿を利用したのは、この2回のみでした。宿の亭主は、貴族の方が宿泊するのは珍しいので、色々覚えていました。お二人とも相変わらずだった様で、食事の文句や部屋の文句などとても手がかかった、貴族は懲り懲りだと言っていました。お二人を訪ねて来た人はいませんでした」
「デイビッド様達が泊まった部屋は?」
「はい。宿の裏庭に面した部屋で、デイビッド様が選ばれたそうです」
「忍び込めそうだった?」
「はい。少し大きめの窓があって、身軽な奴なら簡単に忍び込めると思います」
「デイビッドが自分で選んだの?」
「裏庭に面している端の部屋、と指定されたそうです」
「他に気になった事は無かった?」
「はい。特には」
「ありがとう。疲れたでしょう、休憩してね」
ヘンリーが部屋を出て行った。
「ビクターが部屋に忍び込んだのは間違いなさそうですね。ブリジットは、睡眠薬を飲まされた気がすると言ってましたから、部屋で話すのが一番安全ですし」
「エドムントの様子はどんな感じ?」
「初めてのカジノでそわそわしていましたが、随分慣れてきた様です。かなりの金をばら撒いたので、そろそろカジノの使用人達の口が軽くなる頃かと。ジファール侯爵からの連絡では、ビクターはまだ動いていないので、出来れば一気に片をつけたいのですが」
「無理は禁物よ。後3日待ってデイビッドに会いにいきましょう。そのくらい経てば、デイビッドは牢屋暮らしに嫌気がさして、色々話したくなってくるんじゃないかと思うの。デイビッドに喋らせる方法は思いついているから、必ず話して貰うわ」
「ではエドムントには3日後の朝、カジノの者達にビクターの事を聞くようにと話します」
「ヘンリーには、領主館への連絡を頼まなくては。ギータに届けて欲しい書類があるの」
ウィルソンが手紙を一通持ってやってきた。
「アイラ様、招待状が届いております」
「わざわざ持ってくるなんて、一体どなたから?」
「王妃様からです」
「・・お会いした事ないんだけど」
「グラフトン公爵の事ではないでしょうか」
「どう言う意味?」
「陛下は弟君のグラフトン公爵を、とても可愛がっておられます。そのグラフトン公爵が最強親しくされているアイラ様に、会ってみたいと思われたのではないでしょうか」
封蝋を開けると、美しい手書きの招待状が入っていた。
「少人数のお茶会みたい」
「大勢の方々が出席されている場所では、あまり話ができないからでしょう。もしかしたら偶然を装って陛下が通りがかるとか」
アイラは招待状を何度も読み直した。
「王妃様達は勘違いされているのね。トマス様はお優しいから、社交界に慣れていない田舎者の私に、親切にしてくださっているだけなんだけど。それとも王族の方々には、私には分からない何かがあるのかしら」
「グラフトン公爵とは何度か夜会で会っておられますが、毎回アイラ様とダンスしてるおられます」
「そうね。知らない方が多いからって、いつも親切にして下さるわ」
「ジファール侯爵の別荘でも、ずっとご一緒におられました」
「あの時も知らない事ばかりで、一杯助けて頂いたわ。ウィルソンが帰ってこなくて心配していた時、トマス様とアルフレッド様が声をかけてくださって、色々お話を聞いて頂いたの。考えてみたら私、助けて頂いてばかりで、ちゃんとお礼を言ってない気がするわ」
「・・ソフィアの言った通りだよな。アイラさま、鈍すぎ」
「ウィルソン、何? 嬉しくない事を言われた気がしたんだけど」
「気のせいです。グラフトン公爵がダンスを踊るのは、アイラ様だけだって気付いておられますか?」
「そうなの?」
「アイラさまが出席されていない夜会では、どなたとも踊られません」
「ポーレット公爵の夜会とジファール侯爵の鷹狩りは、アイラ様の参加が決まった途端、グラフトン公爵も参加される事になりました」
「・・ウィルソン、詳しいのね」
「お茶会は一週間後。お断りするわけにはいかないのよね」
「余程のことがない限りは」
「お礼とお茶会参加のお返事を書きます。お会いしてお話しすれば、誤解もとけるから」
「逆効果かもしれませんし」
「? 兎に角、陛下がいらっしゃらない事を祈るわ」
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デイビッドを拘束した翌日、ヘンリーが帰ってきた。
「お疲れ様でした。銀龍亭はどうでしたか?」
「デイビッド様とブリジット様は、領主館への行きと帰りに一泊ずつされた様です。デイビッド様があの宿を利用したのは、この2回のみでした。宿の亭主は、貴族の方が宿泊するのは珍しいので、色々覚えていました。お二人とも相変わらずだった様で、食事の文句や部屋の文句などとても手がかかった、貴族は懲り懲りだと言っていました。お二人を訪ねて来た人はいませんでした」
「デイビッド様達が泊まった部屋は?」
「はい。宿の裏庭に面した部屋で、デイビッド様が選ばれたそうです」
「忍び込めそうだった?」
「はい。少し大きめの窓があって、身軽な奴なら簡単に忍び込めると思います」
「デイビッドが自分で選んだの?」
「裏庭に面している端の部屋、と指定されたそうです」
「他に気になった事は無かった?」
「はい。特には」
「ありがとう。疲れたでしょう、休憩してね」
ヘンリーが部屋を出て行った。
「ビクターが部屋に忍び込んだのは間違いなさそうですね。ブリジットは、睡眠薬を飲まされた気がすると言ってましたから、部屋で話すのが一番安全ですし」
「エドムントの様子はどんな感じ?」
「初めてのカジノでそわそわしていましたが、随分慣れてきた様です。かなりの金をばら撒いたので、そろそろカジノの使用人達の口が軽くなる頃かと。ジファール侯爵からの連絡では、ビクターはまだ動いていないので、出来れば一気に片をつけたいのですが」
「無理は禁物よ。後3日待ってデイビッドに会いにいきましょう。そのくらい経てば、デイビッドは牢屋暮らしに嫌気がさして、色々話したくなってくるんじゃないかと思うの。デイビッドに喋らせる方法は思いついているから、必ず話して貰うわ」
「ではエドムントには3日後の朝、カジノの者達にビクターの事を聞くようにと話します」
「ヘンリーには、領主館への連絡を頼まなくては。ギータに届けて欲しい書類があるの」
ウィルソンが手紙を一通持ってやってきた。
「アイラ様、招待状が届いております」
「わざわざ持ってくるなんて、一体どなたから?」
「王妃様からです」
「・・お会いした事ないんだけど」
「グラフトン公爵の事ではないでしょうか」
「どう言う意味?」
「陛下は弟君のグラフトン公爵を、とても可愛がっておられます。そのグラフトン公爵が最強親しくされているアイラ様に、会ってみたいと思われたのではないでしょうか」
封蝋を開けると、美しい手書きの招待状が入っていた。
「少人数のお茶会みたい」
「大勢の方々が出席されている場所では、あまり話ができないからでしょう。もしかしたら偶然を装って陛下が通りがかるとか」
アイラは招待状を何度も読み直した。
「王妃様達は勘違いされているのね。トマス様はお優しいから、社交界に慣れていない田舎者の私に、親切にしてくださっているだけなんだけど。それとも王族の方々には、私には分からない何かがあるのかしら」
「グラフトン公爵とは何度か夜会で会っておられますが、毎回アイラ様とダンスしてるおられます」
「そうね。知らない方が多いからって、いつも親切にして下さるわ」
「ジファール侯爵の別荘でも、ずっとご一緒におられました」
「あの時も知らない事ばかりで、一杯助けて頂いたわ。ウィルソンが帰ってこなくて心配していた時、トマス様とアルフレッド様が声をかけてくださって、色々お話を聞いて頂いたの。考えてみたら私、助けて頂いてばかりで、ちゃんとお礼を言ってない気がするわ」
「・・ソフィアの言った通りだよな。アイラさま、鈍すぎ」
「ウィルソン、何? 嬉しくない事を言われた気がしたんだけど」
「気のせいです。グラフトン公爵がダンスを踊るのは、アイラ様だけだって気付いておられますか?」
「そうなの?」
「アイラさまが出席されていない夜会では、どなたとも踊られません」
「ポーレット公爵の夜会とジファール侯爵の鷹狩りは、アイラ様の参加が決まった途端、グラフトン公爵も参加される事になりました」
「・・ウィルソン、詳しいのね」
「お茶会は一週間後。お断りするわけにはいかないのよね」
「余程のことがない限りは」
「お礼とお茶会参加のお返事を書きます。お会いしてお話しすれば、誤解もとけるから」
「逆効果かもしれませんし」
「? 兎に角、陛下がいらっしゃらない事を祈るわ」
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