【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

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信頼

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十一月

ーーーーーー

「シンディ達が心配だわ。ストックトン侯爵が何かするんじゃないかしら」
「一応、暫くの間身を隠すようには言ってありますが、奴が尾行していたとしたらバレているかもしれません」


「取り敢えず今すぐできる事はなさそうだ。あまり時間はないが、少しでも休んだ方がいい」

 ウィルソンが起き上がり、ベッドから出ようとする。
「ヘンリー、そのマントか上着を貸してくれないか? この格好で、アイラ様の部屋から出る所を見られると不味い」

「私はテラスから失礼しよう。君達2人なら仕事だと誤魔化せるが、私が見つかったら醜聞になる。アイラが良ければ、私は大歓迎だがね」
「ジファール侯爵、テラスからどうぞ。良ければ俺がお供します」
「怪我人では私には勝てんと思うが?」
「若さでは負けません」
「酔っ払って木から落ちられたら迷惑だ。1人で行くよ」

 ストックトン侯爵は、朝まだ暗い時間にメモ書きを残し出発していた。


十二月

ーーーーーー

 ジファール侯爵邸では、ストックトン侯爵にデイビッドの居場所を聞くことが出来なかった。ウィルソンが怪我をした事はショックだったが、ストックトン侯爵と指無しが、一緒にいる所を確認できた事は大きな進展と言える。
 デイビッドはいずれ私の所にやってくるだろう。調査員の報告では、予想通り全ての貴族から見放され、仲が良かった筈の友人からも見捨てられた様だ。
 金貸しのガスパーとカジノの胴元から、かなり強引に返済を求められており、デイビッドは宿を転々とし逃げ回っている。

 指無しはあの後、昼夜を問わず走り続け王都に逃げ込んだと、アルフレッドから連絡が来た。今はそのまま監視を続けている。デイビッドから情報を引き出す事が出来れば、指無しを拘束出来る。


 数日後、予想通りデイビッドがやってきた。

「この間は留守にしていたんだね」
「アルフレッド様に鷹狩りにお誘い頂いたので」
「鷹狩りか、呑気で羨ましい限りだ」

 デイビッドはいつもに比べ、なんだか覇気がない。顔色も悪いようだし、落ち着きなくそわそわしている。
 デイビッドの用向きは予想がついている。多分ポーレット公爵達への取りなしだろう。
 結婚してからはいつも横柄で、人を見下したような態度をとっていたデイビッドとは、まるで別人のようだ。

「今日は何かご用でも?」
「うん、頼みたいことがあるんだ。何なのかは分かってると思うけど」
「そうですね、多分分かっていると思います」
「よろしく頼む。アイラなら直ぐに何とかできるだろう?」

 冷静を装っているが、よほど切羽詰まっているのだろう。媚びへつらう様な様子に、アイラは嫌気がさした。

(お父様達に何をしたのか、忘れたのかしら。私が気付いてないと思ってるのよね)

「・・直ぐかどうかは分かりませんが、出来なくはないと思います」
「やっぱり。アイラなら、何とかしてくれると思ったんだ。本当はもう少し早く頼もうと思ってたんだけど」

 デイビッドは安心したらしく、ソファの背もたれに寄りかかり笑顔を浮かべた。

「出来なくはありませんが、やるかどうかは・・」
「えっ? 何で? 俺は被害者だぞ? 俺が社交界に出入りできないなんておかしいだろう?」
「ではポーレット公爵に、その様にお伝えになれば?」
「だから、君にそれを話して貰おうと頼んでるんじゃないか」
 デイビッドの口調が段々と厳しくなっていく。

「お義父様に頼まれてはいかがですか?」
「出来るわけないだろう? 父上は大激怒してて、怖くて会えやしない」
「あれからお会いになってないのですか?」
「当然だろう?」

「では幾つか教えて頂きたいことがあります」
「ああ良いとも、何でも聞いてくれ」

「執務室から持って行ったメモは何処に?」
「えっ? あれは、あれは無くした」
「では何故、あのメモを持って行かれたのですか?」
「・・特に理由はない。何となく」

 アイラは黙ったままデイビッドを見つめた。
「そんな事、今は関係ないだろ? たかがメモの一枚、気にしてる場合じゃない」
「私は気になりますの」
「そんな細かいこと、いちいち覚えてない。それよりポーレット公爵、いやグラフトン公爵かジファール侯爵でも良い。話をしてきてくれ」

「分かりました。では思い出したらいらして下さい。これで失礼します」

「待ってくれ、それじゃあ困るんだ」
「私は別に困りませんから」

 アイラは席を立った。

「頼まれたんだ、誰なのかは知らない。本当に知らないんだ」
「詳しく話していただけますか?」
「うちに帰る前に、たまたま行った酒場であった奴なんだ」
「いつ渡したのですか?」
「領主館を出た日の夜、奴が宿屋に来た」
「では、ブリジットさんか宿屋の亭主はその人に会ってるのですね」
「いや、会ってない」

「偶々会った人に頼まれて、執務室からメモを盗んで渡した? 何だかおかしな話ですね」
「ほんとのことなんだ。信じてくれ」
アイラはにっこり笑って言った。

「信じられません」
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