58 / 89
鷹狩り
しおりを挟む
十一月
ーーーーーー
鷹狩りの当日も天候に恵まれた。東の空が薄紫から次第に青く澄み渡り、百舌鳥やアオジの鳴き声が聞こえてきた。アイラはテラスに出て、目をすがめて鳥の姿を探している。
「アイラ様、お召替えされませんと風邪をひいてしまいます」
「ソフィア、すごく近くで百舌鳥の鳴き声がしたの。きっと百舌鳥の高鳴きだわ」
「今日は鷹狩りの日ですから、急いで準備されませんと、置いていかれてしまいますよ」
アイラは大急ぎで準備を済ませ、部屋を出た。玄関に向かう階段を降りると、既に10人以上の人が集まっていた。
「おはよう、今日は最高の鷹狩り日和だよ」
ストックトン侯爵と話していた、アルフレッドが声をかけてきた。
「おはようございます、本当に良いお天気ですね。お義父様お久しぶりです」
「やあ、昨日は会えなくて残念だった。ゲームでは中々の凄腕だったって聞いたよ」
「とんでもない。初めて見るゲームが沢山あってとても楽しかったです」
ご機嫌なアルフレッドが、
「楽しんでもらえて良かった。次は私と哲学者のゲームの相手をして貰えるかな? あれは中々相手が見つからなくてね」
「トマス様とアルフレッド様の対戦を是非観戦させてくださいまし。私は昨日負けてしまいましたし、お父様にも勝てた事がなくて」
乗馬服を着込んだトマスが現れた。
「アイラは今日、馬車で行くんだって?」
「はい、昨日リリアナ様に誘っていただきましたの」
アルフレッドは、
「それは残念。一緒に馬を走らせたかったな。お父上からアイラは乗馬が得意だと聞いていたんだが」
「いつか是非ご一緒させて下さい。今日は大人しくしている予定ですので」
アルフレッドのシロハヤブサと、ストックトン侯爵のオオタカが鷹匠と共に現れた。集まってる人全員が感嘆の声を上げた。
「“天空の女王” だ。初めてみた」
「綺麗。空を飛ぶ所を見るのが楽しみだわ」
「大人しいのね」
「オオタカってやっぱり良いね」
「どうして顔に何か被せてるのかしら?」
「鷹が興奮しない様にフードを被せてあるんだ。あれを外したらオオタカは、白い眉斑と黄色い目が迫力満点なんですよ」
「シロハヤブサは優しい顔をしているから、驚くんじゃないかな?」
猟犬と犬引きが出てきて荷馬車に乗り込んだ。その後に続いて、大勢の勢子が荷馬車に乗り出発した。
「彼らは何をするのですか?」
「勢子と言ってね、獲物を追い立てて鷹に狩りをさせる役目なんだ」
鷹狩りの経験者らしき年配の男性が、隣の女性に説明していた。
「鷹狩りに参加するのは初めてなので、なんだか緊張してきました」
成人したばかりに見える青年が、頬を赤らめ拳を握る。
「ではそろそろ出発しましょう。彼らはお腹が空き過ぎると、言う事を聞かなくなるのでね」
アルフレッドの声掛けで、馬車で移動する人と騎馬で行く人に分かれて出発した。
等間隔に並んだ勢子と猟犬が一斉に走り出し、その後を鷹匠が追いかける。
勢子の出す音に驚いて鳥達が飛び立つと、鷹匠達はタイミングを見計らいシロハヤブサとオオタカを飛ばした。
シロハヤブサが鋭い爪で獲物を叩き落とした。鷹匠が急いで駆け寄り、獲物の上で休憩しているシロハヤブサに別の餌を与える。
オオタカはウサギを仕留めたようだ。
一瞬の出来事に、参加した者たちは呆然としている。
長く先の尖った翼で、上空を高速で滑空するシロハヤブサが、羽根を窄めて獲物に向けて急降下する。
オオタカは、早い羽ばたきに短い滑空を交えて飛び、急降下と上昇を繰り返して獲物を狩った。
その後も何度か場所を移動して、夕方近くまで鷹狩りを堪能した。
ーーーーーー
鷹狩りの当日も天候に恵まれた。東の空が薄紫から次第に青く澄み渡り、百舌鳥やアオジの鳴き声が聞こえてきた。アイラはテラスに出て、目をすがめて鳥の姿を探している。
「アイラ様、お召替えされませんと風邪をひいてしまいます」
「ソフィア、すごく近くで百舌鳥の鳴き声がしたの。きっと百舌鳥の高鳴きだわ」
「今日は鷹狩りの日ですから、急いで準備されませんと、置いていかれてしまいますよ」
アイラは大急ぎで準備を済ませ、部屋を出た。玄関に向かう階段を降りると、既に10人以上の人が集まっていた。
「おはよう、今日は最高の鷹狩り日和だよ」
ストックトン侯爵と話していた、アルフレッドが声をかけてきた。
「おはようございます、本当に良いお天気ですね。お義父様お久しぶりです」
「やあ、昨日は会えなくて残念だった。ゲームでは中々の凄腕だったって聞いたよ」
「とんでもない。初めて見るゲームが沢山あってとても楽しかったです」
ご機嫌なアルフレッドが、
「楽しんでもらえて良かった。次は私と哲学者のゲームの相手をして貰えるかな? あれは中々相手が見つからなくてね」
「トマス様とアルフレッド様の対戦を是非観戦させてくださいまし。私は昨日負けてしまいましたし、お父様にも勝てた事がなくて」
乗馬服を着込んだトマスが現れた。
「アイラは今日、馬車で行くんだって?」
「はい、昨日リリアナ様に誘っていただきましたの」
アルフレッドは、
「それは残念。一緒に馬を走らせたかったな。お父上からアイラは乗馬が得意だと聞いていたんだが」
「いつか是非ご一緒させて下さい。今日は大人しくしている予定ですので」
アルフレッドのシロハヤブサと、ストックトン侯爵のオオタカが鷹匠と共に現れた。集まってる人全員が感嘆の声を上げた。
「“天空の女王” だ。初めてみた」
「綺麗。空を飛ぶ所を見るのが楽しみだわ」
「大人しいのね」
「オオタカってやっぱり良いね」
「どうして顔に何か被せてるのかしら?」
「鷹が興奮しない様にフードを被せてあるんだ。あれを外したらオオタカは、白い眉斑と黄色い目が迫力満点なんですよ」
「シロハヤブサは優しい顔をしているから、驚くんじゃないかな?」
猟犬と犬引きが出てきて荷馬車に乗り込んだ。その後に続いて、大勢の勢子が荷馬車に乗り出発した。
「彼らは何をするのですか?」
「勢子と言ってね、獲物を追い立てて鷹に狩りをさせる役目なんだ」
鷹狩りの経験者らしき年配の男性が、隣の女性に説明していた。
「鷹狩りに参加するのは初めてなので、なんだか緊張してきました」
成人したばかりに見える青年が、頬を赤らめ拳を握る。
「ではそろそろ出発しましょう。彼らはお腹が空き過ぎると、言う事を聞かなくなるのでね」
アルフレッドの声掛けで、馬車で移動する人と騎馬で行く人に分かれて出発した。
等間隔に並んだ勢子と猟犬が一斉に走り出し、その後を鷹匠が追いかける。
勢子の出す音に驚いて鳥達が飛び立つと、鷹匠達はタイミングを見計らいシロハヤブサとオオタカを飛ばした。
シロハヤブサが鋭い爪で獲物を叩き落とした。鷹匠が急いで駆け寄り、獲物の上で休憩しているシロハヤブサに別の餌を与える。
オオタカはウサギを仕留めたようだ。
一瞬の出来事に、参加した者たちは呆然としている。
長く先の尖った翼で、上空を高速で滑空するシロハヤブサが、羽根を窄めて獲物に向けて急降下する。
オオタカは、早い羽ばたきに短い滑空を交えて飛び、急降下と上昇を繰り返して獲物を狩った。
その後も何度か場所を移動して、夕方近くまで鷹狩りを堪能した。
26
お気に入りに追加
1,944
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる